ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 外典 作:ミストラル0
今回は捜索隊とのアレコレとなります
八雲がボールスのところから帰ってくると、天幕の中の人数が増えていた。
「あっ、帰ってきました」
「言いたい事は色々あるが………何でテメェとヘスティア様がここにいる?ヘルメス」
「な、何でって俺はヘスティアの眷属であるベル君達の捜索に来たのさ」
「俺は何で入るのを禁止されている神々がダンジョンの中に来てんだ?って聞いたんだが?どうせヘスティア様はお前がついてくと知って監視で来たんだろうけども」
そう、ベル達の救助に来た面々とロキファミリアの幹部らだ。
それだけなら八雲もとやかく言うつもりはなかったが、そこにヘスティアとヘルメスがいたとなれば話は変わってくる。
本来ならばダンジョンを刺激するという事で禁止されている神のダンジョン侵入は見過ごす事が出来ない案件だからだ。
しかし、八雲にはもう1つ気になる点が有り、捜索隊に加わっていた3人へと向き直す。
「まあいい、この件については後で問い詰めるとして………桜花、命、千草」
「「は、はいっ!」」
「ベルから聞いた話とお前らのその反応から察するに、ベル達に【怪物贈呈】やらかしたのはお前らだな?」
「はい………」
「でも、俺はあの時の判断が間違っていたとは思いません!」
「お、桜花!?」
「ほぅ………」
その瞬間、まるで氷結魔法が使われたかのように天幕内の空気が冷えた。
実際には八雲から漏れ出した殺気がその場にいた者達を刺激して震えを感じたからであるのだが………その殺気を直接向けられた桜花はそれでも言葉を続けた。
「た、確かに【
言い切った。
あの絶対零度もかくやという殺気を前にして桜花は八雲にそう言い切ったのだ。
「そうか………」
桜花の言い分を聞き、八雲はそう呟くと一瞬で桜花の傍へ近付き、その胸倉を掴むと天幕の入口に向かって桜花を目にも留まらぬ速さの拳で殴り飛ばした。
「お、桜花っ!?」
殴り飛ばされた桜花は天幕から放り出され、地面を転がる。
だが、それで八雲が許すはずがなく、八雲も外へ出て再び桜花の胸倉を掴んで引っ張り起こす。
「巫山戯るのも大概にしておけよ、桜花………俺個人の責任?そう言って罪を被るのは勝手だが、そうして何の責任も背負わせてもらえない千草の事を少しでも考えたのか!?お前は!」
「!?」
「もしお前がこの件で処罰されれば当然事の原因となった千草の心に傷を残すと何でわからない!そもそもその場でベル達に助けを求めてモンスターをどうにかしてから回復薬等を融通してもらうとか方法は他にもあっただろう!他の冒険者が信用出来ない?そもそも相手を信用しないやつを誰が信用する!?そんな事を繰り返していればいつかしっぺ返しを食らうのはお前だけじゃなくお前のファミリアもなんだぞ!それがわかってんのか!?」
「お、俺は………」
「責任と身勝手をはき違えてんな。俺からはこれ以上言う事はない………そこで少し頭冷やしてろ」
そう言って八雲が手を放すと桜花はその場でへたり込み、命と千草が桜花へと駆け寄る。
「桜花!」
「大丈夫か!?桜花!」
そんなタケミカヅチファミリアの3人を残し八雲は天幕へと戻る。
「ったく、世話が焼ける」
「貴方があそこまで怒りを露わにするのはあの時以来ですね………あの時も貴方はクラネルさんの為に怒りを露わにしていた」
「それもあるが、桜花の野郎があんまりにも情けない事を口にしやがったもんだからついな………というか、何してんです?リューさん」
「これはその………」
帰ってきてからずっと気になっていた顔見知りのエルフに何故この場にいるか訊ねると彼女はそっとヘルメスの方を向く。
それで彼女もヘルメスに振り回されたのだろうと察した八雲は溜息を吐く。
「はぁ………深く追求するのはやめておきますね」
「………助かります」
そしてそれまで沈黙していたフィンが口を開く。
「気は済んだかい?」
「お騒がせしました」
「いや、僕も身内がこのような事になれば同じようにしていただろうからね」
それもあるが、ロキファミリアもリュー同様にあの殺気には覚えがあり、下手に割り込むと例のトマト事件の事を蒸し返される恐れがあったので口を挟めなかったというのが真相だったりする。
「とりあえず状況は大体察した。ベル達に桜花達が【怪物贈呈】やらかしたのを知ったタケミカヅチ様がヘスティア様に謝罪に来てお詫びがてら捜索隊を出そうってところでそこの
「八雲君、俺の扱いが酷くないかい?」
「それは普段の行いのせいかと」
まるで見てきたかのように話す八雲にヘルメスが扱いの悪さを嘆くが、アスフィからはフォローでなく追撃が飛ぶ。
「んで、ベル達はどうしたい?」
最終的に八雲は桜花達のやらかしについては当事者であるベル達に一任する事にした。
「と言われましても………」
「私達が言いたい事は大体八雲様が言ってしまいましたし………」
「俺としてはさっきの旦那の一撃で十分な気もするんで………」
レベル差もあるので手加減はしていただろうが、明らかに人間を殴るのに出してはいけない速度が出ていた先の一撃と説教でもう十分罰は受けただろうとベル達は判断したらしい。
「はぁ………あんなんでも一応俺には後輩みたいな連中なんでな、今後は仲良くしてやってほしい」
「後輩?」
「タケミカヅチ様とは個人的に懇意にしててな。それで少し面倒を見てやってた時期があってな」
「そういえば八雲様も極東出身なんでしたっけ?」
「まあ、そんなもんだ」
極東(日本)出身なので嘘は言ってない。
「タケも八雲君がカンカンになってるだろうってアフロディーテに聞いて青褪めてたっけ」
主に桜花がボコボコにされないかを心配していた。
「話はこれで終わりか?ならベル達は怪我人だし、お開きとしよう。桜花達やアスフィ達には別の天幕出してやるからそっちで休んでくれ。ヘスティア様はベル達と一緒でいいな?」
「うん!」
「あの〜、俺は?もしかしてアスフィ達と同じ天幕に?」
「アンタはその辺の木にハンモックでも吊るして寝てろ。旅で野営は慣れてるだろ?」
「やっぱ扱いが酷くないかい!?」
***********************
その後、八雲は再びジークの元へやってきて世話をしていると………
「ワ、ワイヴァーン!?」
眠れなかったのか八雲を訪ねてきたベルがジークを見て驚く。
「ん?ベルか………あ〜、ベル達には紹介してなかったな。コイツは下の方で俺がテイムしたイル・ワイヴァーンのジークだ」
「師匠、【調教】なんて持ってましたっけ?」
「ないぞ。ジークに関しては成り行きというか………色々あってな」
「色々って………」
色々思う事はあったが、ジークが大人しく八雲に撫でられている姿を見てツッコむ気が失せたベルも撫でさせてもらったが、ベルはジークからは同じ舎弟のようなものと認識されたようで特に嫌がる素振りは見せなかった。
「で、上に連れ帰るのはわかりましたけど、どうやって飼うんですか?」
「ホームのローンの返済は終わってるから将来的には周辺の土地買ってスペース確保してそこで飼うつもりだが、それまではガネーシャ様のとこに預けるつもりだ。確か飛竜の世話もしてたはずだし」
「そういえばガネーシャ様とも仲良いんでしたね」
「アフロディーテの次くらいには世話になってるからな………どっかで恩返ししたいとこだな」
そんな計画を立てているのを知ってベルも将来的に今のホームをリフォームするか新しいホームに引っ越すのを考えないとなぁ………と考え始める。
「それはそうと、ヘルメスには注意しろよ、ベル」
「ヘルメス様に、ですか?」
わざわざ見知らぬ自分達の救助に来てくれた神なので、現状ベルからの評価の悪くないヘルメスだが、八雲からしたら警戒対象らしい。
「よく考えてもみろ。本来なら禁止されてるダンジョンにまで入ってくるような神だぞ?絶対に何か企んでるに違いない」
「わ、わかりました」
ヘルメスとはこんなんだが、アスフィとは何だかんだで仲は良く、下で使った【占星術師の護符】等のアイテムの開発のヒントをもらったりするくらいには交流がある。
アスフィからしたら最初は前の【食糧庫】での一件の借りを返すつもり程度の認識だったのだが、八雲が考案したアイテムが中々に興味を唆るものだったようで、実はいくつかのアイテムと引き換えに八雲や椿との共同開発でガンランスや改良型のスラッシュアックス等の作成にも関与しており、御得意の爆炸薬の知識から炸薬関係で色々と手を借りていたりする。
少し前にも“とある物”の扱いで知恵を借りているので八雲からしたら既に返済は済んでいるものと思われている。
そうこうしているうちに疲れが出たのか眠くなったベルは天幕へと戻っていく。
しかし、八雲の言う通りヘルメスのやらかしによって大変な事になるのをベルはまだ知る由もなかった。
桜花にブチギレたのは地雷の件もありますが、千草らの事を考慮せずに無責任な責任の取り方をしようとしたのでキレました
尚、八雲は千草の桜花に対する感情には気付いているので余計に腹が立った模様
ヘルメスの扱いに関しては前々からアスフィと交流があり、愚痴を何度か聞いているのと、ギリシャ神話を知っていて過去にアフロディーテにやらかしたアレコレも知っているからです
なので「悪神ではないが、信用ならない神」と思われてます
感想等がありますと執筆の励みになります