ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 外典 作:ミストラル0
今回と次回はユーリヤがメインのお話になります。
6層を狩場としてから更に2ヶ月が経過した。
この頃には到達階層は10層になり、オークすら首を斬り取っていく姿から他の冒険者達は“
「このままだとレベルアップしたら間違いなくアレが2つ名にされそうだな」
「そりゃ、あれだけポンポン首を刎ねてればそう呼ばれますって。この前も助けたパーティーの皆さんの顔が引き攣ってましたよ?」
「うっ」
「私はもう慣れましたけど、普通はレベル1の冒険者の動きではないんですから」
「まあ、オーククラスになると流石に
「今になって思いますけど、それ絶対1万ヴァリスで買える武器じゃありませんよね?」
「やっぱそうだよな………これ、どう見てもあんな安売りコーナーに置いといていいモンじゃねぇし」
今では八雲のメインウエポンとなりつつあるこの脇差。見る者が見ればあの値段で売っていてはおかしいと判る逸品であった。
「あの店主のオヤジもメンテの仲介はしてくれるけど、打ち手に関してはだんまりだしな」
どうやらあの脇差以外にも紛れていた品質の良い武器は製作者に関しては伏せるのがルールらしく、偶然手にした者は運が良く、それを見抜く眼を持つ者は目利きが効く者としてチェックされているらしい。八雲は後者で、武器屋の店主から聞いたところ、あの時購入した武器は消耗前提の投擲武器以外は全てその品質の良い混ぜ物だったそうだ。その中でも例の脇差は1つか2つ程上の品質でかなり腕の良い鍛冶師が打ったモノだと八雲は睨んでいる。
「まあ、お陰で稼がせて貰ってるし、いつか礼を言わないとな」
「ですね」
その日も大量の魔石を換金して2人はホクホク顔で帰路に着くのであった。
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ユーリヤside
その日もサポーターとしては破格の稼ぎでホームへと帰還した私は定期的にヤクモさんから預かったホームの返済金をガネーシャ様にお渡しすべくガネーシャ様の部屋を訪れていた。
「おお!戻ったか、ユーリヤ!」
「はい、ガネー「俺が!ガネーシャだ!」………ガネーシャ様、ヤクモさんからこれを」
「ゆっくりで良いと言ったのだがな」
「ヤクモさん曰く『こういう貸し借りはお互いの関係の為に早めに清算する主義』なんだそうです」
「そうか」
ヤクモさんの言葉を伝えると、ガネーシャ様は目元は仮面で隠れているが、口元は優しい笑みを浮かべていた。それに釣られて私も笑みを浮かべると、それを見たガネーシャ様の笑みが深くなった。
「随分と彼とは親密になったようだな?」
「そ、そそ、そんな、親密だなんて!?」
た、確かにヤクモさんはちょっと?常識外れな所はありますが、割と優しいですし、頭もよく撫でてくれますし、一緒にいるとポカポカしますけど………
「ユーリヤ、帰ってこーい」
「はっ!?」
「その様子ならアフロディーテと話していた事は無駄にはならなそうだな!」
「アフロディーテ様?一体何のお話でしょうか?」
「実はな、ユーリヤ………
「改宗、ですか」
改宗とは、恩恵を与えて下さっている神のファミリアから別の神のファミリアへの移籍を意味する言葉。これは双方の神の同意が必要な上に一度改宗すると1年は再改宗出来ない為、滅多に行われず、多くは
「アフロディーテの眷属はまだヤクモ1人だけだ。今後も同じパーティーとして活動するなら同じファミリアの者であった方が都合が良かろう」
幸い、アフロディーテもお前ならばと言っているしな!とガネーシャ様は告げるが、私は突然の事に困惑していた。神の良いガネーシャ様の事なので「お前は不要だ!」という意図は無いのはわかってはいるが、長年仕えてきたのと“拾ってもらった恩”がある為、すぐに返事をする事が出来なかった。
「………少し考える時間を下さい」
「うむ!強制でもなければ急ぐ話でもない!ゆっくり考えるといい!」
「失礼します」
私はそう告げるのが精一杯でしたが、ガネーシャ様は怒ったりせず私の意見を尊重してくれるとの事だった。結局その日はその事で頭が一杯で一睡も出来ず、翌朝にヤクモさんに心配されダンジョン攻略はお休みになってしまった。
side out
ユーリヤの過去等については次回少し書いていこうと思います。