ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 外典   作:ミストラル0

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更新時間がずれて申し訳ありません。

今回もユーリヤメインのお話です。
主にユーリヤの出生に関する事がメインとなります。


九話 ユーリヤとリヴィラ

その日、八雲はユーリヤの様子が変な事に気付き、その日のダンジョン攻略を取り止めて気分転換と言ってオラリオを散策していた。

 

「あの………訊かないんですか?」

 

「ユーリヤが言いたく無いなら無理に訊く気はないよ」

 

「でも、それでダンジョンに行けなくなっては!」

 

「うーん………数日は余裕もあるし、ダンジョン以外にも稼ぐ宛はある。最悪1人でも潜れなくは無いし」

 

「………そう、でしたね」

 

元々サポーターとして同行しているのはユーリヤの希望があったからであり、今なら八雲1人でも装備を絞り、持ち帰る魔石を厳選すればダンジョン攻略は可能なのだ。

 

「まあ、ユーリヤがいるのといないのでは効率とか稼ぎが段違いだけどな………そういう意味では凄く助かってるんだぜ?」

 

「そうなんですか?」

 

「今日潜らなくていいのもユーリヤがいて稼ぎが順調で蓄えが出来たからだしな」

 

そう笑う八雲にユーリヤはドキリと胸を熱くする。

 

「顔、真っ赤だけど大丈夫か?」

 

「だ、だだだ大丈夫です!」

 

熱でもあるのかとユーリヤの額に手を伸ばす八雲だったが、ユーリヤは慌てて瞬時に3m程後退してそれを避ける。

 

「………そうか。もし辛くなったらちゃんと言えよ?」

 

「わ、わかりました」

 

その後、大通りで屋台を回ったり、普段は回れない服屋等の店を回ってみたり、世間一般にはデートに見られる事を2人はしていた。そのせいか、時折八雲達を睨むような視線を感じたが、今に始まった事では無いので2人は特に気にしていなかったが。

 

******************

 

オラリオの街が夕暮れに染まる頃、2人が最後に訪れたのはオラリオの外壁の上であった。

 

「やっぱここから見る夕陽は絶景だな」

 

「………あの、ヤクモさん」

 

「ん?」

 

「お話したい事があります」

 

八雲が夕陽を眺めていると、意を決したユーリヤがそう告げた。

 

「いいのか?」

 

「今日で色々と気持ちの整理がついたので」

 

「そっか、なら誘って良かったよ」

 

「はい、ありがとうございました」

 

そこからユーリヤはガネーシャからアフロディーテファミリアに改宗(コンバージョン)しないかと言われた事を説明した。

 

「改宗か………そういうルールもあるっては聞いてはいたが」

 

「まあ、普通には滅多に無い事ですので」

 

「仮にも自分が信じる神を乗り変える訳だし、簡単にはやろうとは思わないだろうな………それで悩んでたのか?」

 

「はい、ガネーシャ様のお話は理解してはいるのですけど、ガネーシャ様やガネーシャファミリアには返し切れない恩がありますから」

 

「恩?」

 

「私、“リヴィラ”の生まれなんです」

 

「リヴィラって確か」

 

「ええ、あのリヴィラです」

 

リヴィラとはダンジョンの18階層にある安全地帯に冒険者達が築いた街の名前だ。

 

「私の両親はそれぞれ別のファミリアに所属していました」

 

そのファミリアはファミリアとしてはライバル関係にあるファミリアで、眷属同士はともかく主神同士はとても仲が悪かった。

 

「当然そんな2つのファミリアに所属していた2人が恋仲になるなんてその2神の神様はお認めにはなられませんでした」

 

「どっちも改宗させてもらえなかったのか」

 

「はい。なので両親は強行策に出ました」

 

「………リヴィラまで駆け落ちしたのか?」

 

「ヤクモさんのおっしゃる通りです」

 

「行動力すげぇな、ユーリヤの両親………」

 

駆け落ちした2人は当時のパーティーメンバー等の助けも借りつつリヴィラで生活し、その数年後にユーリヤが生まれた。

 

「けれど、増えた家族を養う為に無茶をした父はダンジョン攻略中に亡くなったそうです」

 

「そうです、って事はユーリヤが物心付く前の事なのか」

 

「はい」

 

その後、ユーリヤの母親は女手一つでユーリヤを育てていたものの、数年前に起きた怪物の宴(モンスターパーティー)のスタンピードで街が襲撃に遭った際に亡くなってしまったらしい。

 

「身寄りもなく恩恵も無い私1人ではリヴィラでは暮らしていけず、かと言ってリヴィラから出る事もできませんでした」

 

そんな時、偶々リヴィラを巡回に来ていたガネーシャファミリアの面々に拾われ、そのままガネーシャファミリアの一員になったのだという。

 

「私がサポーターをしてまで冒険者をしているのは、ガネーシャファミリアに恩返しするのは勿論、いつかリヴィラにある両親のお墓に自分の力でお墓参りをする為なんです」

 

「………そっか」

 

「でも、リヴィラはおろかまだ中層にも辿り着けて無いので、このままだと何年掛かるか分かりませんけどね」

 

明るく見せようとはしているものの、ユーリヤの顔には寂しさのようなものが見え隠れしていた。

 

「ガネーシャ様はそれも見越して今回の改宗を薦めて下さったのだと思います」

 

今のガネーシャファミリアにはユーリヤを新たに加えて中層に向かえるようなパーティーは無く。一方で着々と実力を付けつつある八雲とならばユーリヤの目的も叶え易いとガネーシャは判断しアフロディーテにユーリヤの改宗を相談したのだ。

 

「それに、例えガネーシャファミリアを離れたとしても受けた恩は返せると分かりましたから」

 

「ユーリヤ………」

 

その言葉は改宗に対するユーリヤの答えだった。

 

「ヤクモさん、今すぐという訳にはいきませんが、もう少し自分に自信が持てたら………私をアフロディーテファミリアに加えてくれませんか?」

 

「その時は喜んで」

 

「はいっ!」




ユーリヤみたいな出自の子供もいそうな気がするんですよね、ダンまちって。
まあ、わざわざリヴィラまで駆け落ちしたのはユーリヤの両親ぐらいでしょうけど………

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