なんか思いついちゃった   作:極丸

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あけおめことよろ


その名は……(ワンパンマン)

「なぁ知ってるか?この怪人協会の噂」

 

 怪人協会本部の地下通路にて、小声で噂話をする怪人達がいた。その怪人達は所詮下っ端レベルで、ヒーロー協会の定める災害レベルで言うところの『虎』レベル、A級ヒーローに瞬殺される様な実力の怪人である。

 

「噂?なんだってんだよ」

 

 話を振ったムシ型の怪人に、隣を歩いていた魚型の怪人が疑問の声を上げる。そもそもの存在が噂や都市伝説の様なこの怪人協会においてまたさらに噂があると言うのは、なんともややこしい話だからだ。そう思うのも、彼等自身もその噂などを耳にしてこの怪人協会にやってきたからではあるが。

 

「なんでもこの怪人協会にはよ、ギョロギョロ様ですら恐れを抱いて命令出来ない怪人がいるらしいぜ?」

「それって幹部の『エビル天然水』だろ?そんなもん噂でもなんでも無いぞ?」

「違ぇよ!エビル天然水は自我を持ってないからギョロギョロ様もそこまで問題視してねぇだろ?もっとヤバいやつって事だよ」

「それが本当だとして、なんで知られてねぇんだよ」

「ああ、なんでもそいつ自身が名を知られたく無いみたいでな?一応は俺たちと同じ末端の構成員って事になってるらしいが、実力は最低でも幹部クラスらしいぞ?」

 

 その言葉に他の怪人達は呆れ返る。それほどの実力を有していながら下克上上等のこの怪人協会にて無名というのはありえないからだ。話を聞いた怪人達は途端に興味が失せる。

 

「つくんだったらもっとマシな嘘をつけってんだ。今、怪人協会は一斉襲撃に備えてピリピリしてんだからよ。下手な嘘でイラつかせんなよ」

「いやいや、オレはこれ嘘じゃねぇと思ってんだよ?」

「どういう事だ?」

 

 ムシ怪人に、虎の顔をした怪人が疑問を浮かべる。ムシ怪人は待ってましたと言わんばかりに喜の表情を浮かべ、話を続ける。

 

「幹部の『ゴウケツ』様がいるだろ?あのお方が一度ボロボロの体になってこの怪人協会に帰ってきたところを見てな?この協会の中じゃ怪人同士の殺し合いは禁止されてるし、ひょっとしたらその怪人がゴウケツ様に手を下して、ギョロギョロ様もそれを見過ごすしかなかったんじゃねぇのかなって思ってな?」

「まじか!?ゴウケツ様を瀕死に追い込める奴なんてそれこそ幹部クラスの誰かだぞ?しかも一方的ってなると、幹部でも出来るヤツは限られてくるしよ、『黒い精子』か『ホームレス帝』位だろ」

「ってことは、幹部クラスのヤツが一人お咎めなしにこの怪人協会の中で暴れまわってる可能性があるって事か?」

 

 虎の顔の怪人の推測に、他の怪人二人も黙り込む。怪人たちは基本的に自分が誰よりも上であることを自負することが多いが、それはこの怪人協会の中では少しばかり変わってくる。『鬼』や『竜』クラスの怪人が大量にいるこの協会内では、『虎』や『狼』は下っ端レベル。怪人になったことにより己の能力に自負を持っていたとしても、『オロチ』や幹部クラスといった上の存在を目の当たりにし、プライドを粉砕された怪人も少なくは無い。少なくともこの3人の怪人はそうだ。しかし中には向上心を持ち続けた怪人もいるわけで……

 

「下らねぇ!!」

「「「!?」」」

 

 突如として聞こえてきた一喝に先ほどまで話し込んでいた怪人三人は肩をびくりと震わせる。振り返ってみると、そこには二足の太い足で佇み、鋼の様な皮膚を身に纏ったレスリングのユニフォームを着込んだサイが頭に血管を浮かび上がらせていた。

 

「サ、サイレスラー……いつから居たんだ?」

「んな事はどうでもいい!おいオメェら!さっきから黙って聞いてりゃ幹部が何だとウザってぇな!!だったら俺がそいつをブチのめしてやるよ!俺の強さの証明になってくれそうだからな!おい!へラクレス大将!」

「な、なんだよ?」

 

 サイの怪人、サイレスラーに話を振られ、少しばかり驚く虫型怪人、ヘラクレス大将。その同様の様子にサイレスラーは苛立ちを覚えながらも、顔をヘラクレス大将に近づけて話を続ける。

 

「俺をその場所に案内しろ!ギョロギョロの奴が怖気づいて手をこまねいてんだったら、誰も咎めねぇだろうしな」

「わ、分かった……連れてく……」

 

 そう言って半ば脅しの様な交渉の結果、ヘラクレス大将を案内に付けてサイレスラーはその場所へと向かう。それを他の2人の怪人も追いかけていった。

 

 

 

 

 

「おや、珍しいね。ここにお客とは。ここは幹部しか知らないし、あいつらもあまり来ることは無いんだけどな?」

「おい!オメェか?ギョロギョロの奴が命令出来ない怪人ってのは!!」

「ああ、たぶん俺の事だと思うよ?ギョロギョロから『なるべくこの存在がばれない様にしていてくれれば、あとは自由にしてくれて構わない』、て言われてるからね?もちろん、オロチ様からの了承も得てるさ。ところで、君たち名前は?」

「俺はサイレスラーだ!」

「……で、君たちは?」

「へ?へ、ヘラクレス大将……」

「タイガーヘッド……」

「カナヅチシャーク……」

 

 サイレスラー達が着いた先は一つの空洞だった。そこに光源は一つしかなく、中心に差し込む一本の光がオペラハウスのスポットライトの様にその怪人を照らしていた。その怪人の見た目は至って怪人らしくなかった。否、怪人らしいところがあまりにも見当たらない。背丈は普通の成人男性より少し高い位で、黒のパーカーに黒のジーンズと言った全身黒のコーデをしており、聊か怪人というよりは非行に走った不良といった印象が強かった。顔はフードを被り、光が顔に影を差している為分からない。サイレスラーはその見た目から肩透かしを食らった。

 

「ふん!やっぱり噂は噂か!こんなひょろい奴が幹部クラスだ?笑わせんな!」

「笑わすつもりは無いんだけどな?で、なんの様だい?君たち?」

「俺と戦え!そして俺は俺の強さを証明してやるんだよ!」

「…………ああ、そういう事?良いけど大丈夫?怪人協会は怪人同士の殺し合いを禁止してるんじゃなかったっけ?」

「そんなモン後で何とも言えんだよ!それによ、てめぇはさっき言ってたよな!『自由にしてくれて構わないって言われてる』てな!だったらてめぇが俺を倒そうと関係ねぇだろ!おれが勝つがな!」

 

 サイレスラーの言い分に、その怪人は笑った、様に見えた。その笑みにサイレスラーは気づかず、虎の怪人も指摘するほどの事ではないと考え、何も言わずにいた。

 

「よし、分かった。それじゃ…………抗ってくれよ?」

 

 

 

数秒後、そこにはサイレスラーの角が無残に転がっているだけだった。

 

 

 

 

「嘘だろ……仮にも最近になって鬼になったサイレスラーだぞ……つーか、あんなやり方……」

 

サイレスラーの最後を見たヘラクレス大将がそう呟く。彼とサイレスラーの戦いはあまりに一方的なものだった。いや、戦いとも言えない様なものであった。そしてそれを行なった彼は角を眺めた後に、残った3人を見る。

 

「さて、後は君達だけだけど、どうする?」

「……どう言う意味だ?」

「俺に挑まなくていいのかって話。俺と言う災害に立ち向かえば、うまく行けば今以上の進化が見込めるかもしれないぜ?どうする?」

 

彼はサイレスラーの事など忘れた様に3人に話を振った。特に疲れた様子も無く、戦闘によって溢れ出たアドレナリンの高ぶりを見せることもないその姿に、3人は恐怖を覚えた。

 

「ふざけんな!あんなもん喰らって生き残れるわけねーだろ!俺は逃げるぞ!」

 

魚の怪人、カナヅチシャークが一目散に元来た道へと帰る。しかしそれは徒労に終わった。

 

「逃げるな」

「んぶぇ!」

 

見えない壁が行く手を阻んだ。それに驚くカナヅチシャークであった。彼はすぐさまその原因に目を向ける。

 

「おお、ギョロギョロ!久しぶり!お前からくるなんて珍しいな?」

「お前のいる部屋がどうにも騒がしいと思ったらこう言うことだったか」

 

それは目玉の化け物だった。人の形はギリギリ保ててはいるが体はブヨブヨに肥えており、頭には謎の突起がイソギンチャクの様に生えていた。顔のほとんどを目玉一つが占めており、その目は監視カメラの様に俯瞰して彼と残った怪人たちを見つめていた。

 

「お前たち、どこからこの場所を見つけ出したかは知らないが、こうなってしまったら仕方がないな……消えてもらうよ」

 

ギョロギョロは手をカナヅチシャークの方にかざすと、カナヅチシャークの体が圧縮され始める。徐々にキューブの様にまとまり始め、体からバキボキと音を立てながらカナヅチシャークは小さくなって行き、何も出来ずにいた。

 

「ギョ、ギョロギョロ様!い、一体何を……」

「こいつの存在は完全なまでに隠蔽しておきたいんだよ。知っての通りだけど、こいつの実力は未知数だ。幹部以上の実力を有して尚且つ遊撃兵としての役割を担ってもらうから、なるべく知られて欲しくないんだよ」

 

そう言ってギョロギョロはカナヅチシャークをルービックキューブほどの大きさに縮め込むと、浮かせたままどこかへと飛ばした。

 

「なんだい?彼もオロチに食べさせるのかい?」

「まぁな。カス程度の力でもオロチ様の力になれるのなら有効活用しなくてはな」

「効率主義だな相変わらず。そんなんじゃ抗えないぜ?」

 

 一つの命が潰えたにも関わらず、二人の間を取り巻く空気は変わることは無かった。それを見て残った二人の怪人は次は自分の番だと感じ取り背中から冷たい衝撃が走る。

 

「さてと……それじゃあさっさと他を処分するか」

 

 ギョロギョロの一言に二人はびくりと肩を震わせる。ギョロギョロは手をかざし、ゆっくりと指を真ん中に引き寄せる。

 

「ぐ、ぐがぁあああ!」

 

 対象はヘラクレス大将であった。ボキボキと先ほどのカナヅチシャークと同様に縮んでいく姿を見つめ、残ったタイガーヘッドは恐怖がむしろ引いていくのを感じた。

 その代わり湧き上がってきたのは、抵抗心。怪人としてどれだけ最後が醜くとも抗おうと決めた瞬間だった。

 次に自分にギョロギョロが手を伸ばそうとしたその瞬間に自分は無駄だと分かっていても、喉元に食らいつこうと決めた。

 

「………………ちょっと待ってギョロギョロ」

 

 その瞬間、先程の怪人から声がかかる。ギョロギョロは手を止める。

 

「なんだ?」

「いや、そこの虎頭の彼。中々に気に入ったよ。オレが指導してもいい?」

 

 男の提案にギョロギョロは一瞬ばかり身体が硬直した。それは()()もそうだが、()()も一瞬ばかりあまりの驚きに操作が鈍る。男は気にする事無くタイガーヘッドに近づきながら独り言のように話始める。

 

「いやー、彼だけど、いい素質を持ってるかもしれない。ただ開花の仕方が良くなかった」

「開花の仕方?」

 

 ギョロギョロは悟られない様操作に意識を集中させながら問いかける。男とタイガーヘッドの距離が半分ほどに縮んだ。

 

「うん、そう。君なら知ってると思うけど、怪人の強さっていうのはその本人の素質も大きいけど、開花する状況も重要だと考えてるんだ。……オロチみたいにね?」

「!!!」

 

 ギョロギョロは驚く。誰にも話していない怪人協会最大の戦力、災害クラス『神』の怪人、『怪人王オロチ』の秘密を知っているのではないかと、ギョロギョロはその大きな目を細める。

 

「まぁ安心してくれ、誰にも言わないから。それに……言ったところで幹部クラスは興味はないだろうし、一般兵レベルじゃそう簡単に見当たらないしね……話を戻そう。どれだけ大きな才能をその怪人が持っていようと、それに会った環境が無かったら意味がない。どれだけ立派な花を咲かせる種であろうと、泥水を浴びせ、日陰に放置し続けたらその花は十二分な開花は出来ない。要するに環境さ。怪人っていうのはどれだけ怪人になることに適した環境に置くかで、同じ才能でも雲泥の差が生まれるのさ」

 

 男の顔を覗き込むことはギョロギョロには出来なかった。男とタイガーヘッドとの距離がまた半分に縮まる。

 

「ギョロギョロ。お前に足りないものは『教育』さ。お前は即戦力を求め過ぎた。それを俺なら補える。何だったらこいつを幹部クラスにまで押し上げることも出来るぜ?」

「…………だったらやってみろ」

 

 男の提案にギョロギョロは裏を読もうとするが、途中であきらめる様にそう言い残して去っていく。去った後には男とタイガーヘッドしかいなかった。

 

「さて、それじゃあオレと君一人になったけど……やるかい?」

「当然だ」

「うん、いい顔だ。才能ある証拠だね。それじゃあ始めるかい?」

「ちょっと待て」

「うん?」

 

 男がタイガーヘッドから去ろうとするとき、タイガーヘッドは男を止めた。男は不思議に思いながら振り返る。

 

「お前の名前はなんだ?」

「んんん?あれ?言ってなかったっけ?オレの名前は……」

 

 男はその言葉と同時にゆっくりとフードを下ろす。

 

 

 

「災害皇。全ての害の頂点に立つもの。オレに認められたって事は、誇ってもいい事だぜ?」

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