という訳でまた一ヶ月近く遅れてしまいました···
こんなクソ投稿速度ですが見てやんよという方は
どうぞよろしくお願い致します。
追記)改行をミスっていた部分を直しました。
(2019/12/26、0:59頃)←時間付けるの忘れてまし
た···
中央暦8月11日午前 ロウリア王国·クワ·トイネ
公国国境付近
ロウリア王国東方征伐軍 本陣
クワ·トイネ公国外務部から幾度となく国境から
の撤兵要求が魔信による連絡があったが、その全
てを無視する。最早戦争は決定事項なのだ。
「明日、ギムを落とす」
Bクラス将軍パンドールは、東方征伐軍全15万の
内、ギムへと攻め込む先遣隊約7万の指揮権を委
ねられていた。歩兵5万、重装歩兵7千、騎兵6千
(内軽騎兵4千、重装騎兵2千)、特化兵(攻城兵器
や投射機等、特殊任務に従事する兵)2500、遊撃
兵3千、魔獣使い750、魔導士300、そして竜騎士
450である。
この先遣隊だけで既にクワ·トイネ公国軍の1.5倍
近い兵力だが、この部隊の何よりの力は、たった
1部隊(10騎)で歩兵1万を足止め出来る空の覇者た
るワイバーンを450騎も備えている事である。
本来ワイバーンは非常に高価な兵器であり、ロウ
リア王国の国力であれば、国の総力を以てかき集
めても200騎程度がせいぜいである。
しかし今回の対クワ·トイネ公国戦では、総勢12
00騎ものワイバーンが投入されている。
噂では第三文明圏·フィルアデス大陸の列強であ
るパーパルディア皇国から大規模な軍事物資の支
援があったとされている。最も、それが本当かど
うかは不明だが。
兎に角、先遣隊に450騎という明らかに過剰かつ
圧倒的な戦力を得て、パンドールは満足げに部
隊に目をやり、不気味な笑みを浮かべた。
「パンドール様!ギムでの
しょうか?」
副将のアデムが問いかける。彼はロウリア王国軍
の中でも指折りの冷酷な騎士であり、ロウリア王
国が近辺の小国を次々併合した時代から占領地で
の語るに耐えぬ程の残虐性で名を馳せていた。
周りの諸将の顔が引き攣る。この男の残虐性は味
方にすら例外ではなく、彼の非人道的命令に反対
した何人かの部下が軍令違反を大義名分に上意討
ちに遭った程だ。
「副将アデムよ、お前に任せる」
「了解致しました」
アデムは将軍に一礼すると、後ろを振り返り、直
ぐ様部下へ命じる。
「ギムでは、如何なる略奪も咎めない。好きなだ
け奪い尽くせ。女も同様に嬲って良いが、使い
終わったら必ず処分するよう徹底せよ。絶対に
一人たりとて生きて帰すなと全軍に知らせよ」
「はっ!!!」
アデムの命を受けた部下は直ぐ様天幕を出ようと
する。それをアデムが呼び止めた。
「いや、待て!やはり100人程適当に逃がせ。そ
いつらによって恐怖を伝染させるのだ。
それと·····敵騎士団の家族がいた場合殺さず
に私の元に連れて来る様に。私自らより残虐に
処分する」
人を人とも思わぬ恐怖の命令。
このアデムの心は人のものではない。
そう思いながら部下は天幕を飛び出し、その命令
を一切の相違なく伝えた。
(何という命令だ···だが、ある意味幸運とも言え
るな、容赦等ということを考えずに済む)
命令を耳にした一人の雑兵は顔色を変えぬよう努
力しつつ静かに去って行った。
彼がオスマン帝国の放った諜報部の構成員である
事に気付いた者は居なかった。
中央暦1639年8月11日午後
クワ·トイネ公国西部 国境より20㎞の町 ギム
「遂にロウリア軍が来るか!!!」
クワ·トイネ公国軍西方軍集団軍団長のモイジは
予測していた報告を受け、体を震わせた。
西方軍集団の兵力は、歩兵4500、弓兵1000、重
装歩兵100、騎兵1200(全て軽騎兵)、竜騎士60、
航空機兵(アトモットを運用)110、魔導士30。
その総勢7000。準有事態勢であり総兵力が5万の
クワ·トイネから考えれば中々の兵力。だが国境
に張り付くロウリア軍の総兵力はこちらの20倍を
超え、諜報員によって判明した先遣隊だけでも我
が軍の10倍の兵力を有している。
加えて、こちらからの一切の通信を、ロウリア側
は無視していた。
多少の兵力差は作戦次第で十分補う事が出来る。
寧ろ、そういう時こそ軍師の腕の見せ所だろう。
だが、今回は10倍20倍という圧倒的な差がある。
本来なら、今のモイジの震えは、そういった絶望
的な戦力差を前に敗北を予想した事による震えだ
っただろう。
しかし、モイジの震えはその様な類いのものでは
なかった。
だ。
オスマン帝国と接触してから早半年。対ロウリア
の最前線であるギムは城塞都市エジェイを除けば
最も大規模な軍事改革を受けた都市と言える。
歩兵には次々と鉛玉を撃ち込む小銃が行き渡り、
ワイバーンには安全帯が備え付けられワイバーン
に代わる新たな空の覇者としてアトモットが配備
された。他にも重装歩兵には機関銃という小銃が
比べ物にならない程の速度で弾丸を放つ化け物が
与えられ、弓兵にもオスマン帝国製の強力な弓が
支給された。
又、ギム市民の万が一を考えての疎開も順調だ。
その時、モイジ達がいる部屋のドアがノックされ
て、「失礼します」という声が聞こえた。
「ようこそいらっしゃいました。ギム市民の疎開
活動の支援、感謝します」
「いえ、非戦闘員の保護は重要な義務であり、兵
力の少ない我々が現状行える最善の行動です。
私としても、何とかロウリア軍の侵攻前に完了
した事にほっとしています」
ロウリア王国のクワ·トイネ公国侵攻計画が発覚
した8月14日に、オスマン帝国は同盟国の危機の
救援を大義名分に陸軍及び海軍の援軍派遣を決定
しており、クワ·トイネ国内に有事に備え駐屯し
ていたIZM-カルパチアを有する第五師団属第六旅
団2500名が先行派遣されていた。
無論火器すら保有していないロウリア軍とオスマ
ン帝国軍では戦力には比べてはならない程の差が
あるが、圧倒的な物量戦を仕掛けられると死者が
出る可能性も考慮され、第六旅団の任務はギム市
民の疎開の補助、ギム前方の塹壕の設営、そして
西方軍集団の戦術的撤退時の殿軍とされた。
因みに現在第六旅団の旅団長のアリ·フアト·ジェ
バソンはかつての初代オスマン帝国の全盛期であ
る16世紀中盤の軍服を着込んでいる。
これは少し前に行われた三軍合同の演習の際オス
マン帝国の軍服の人気が芳しくなく、時代を合わ
せた方がクワ·トイネやクイラの民達に親近感が
湧くのではと考えられた(実際は初めて見た迷彩服
の異様さが恐怖·畏怖を買っていただけで別に問
題ではなかったが)事が理由である。
尚、これによってオスマン帝国軍人内で旧軍服ブ
ームが起こって平時やプライベートで旧軍服を着
る様になる者がいたのは別の話。
ジェバソンの服装を見たモイジが思う。
(我が国を容易く滅ぼせる国力を持ちながら、それ
を驕らずこちらを配慮して下さる器の大きさ。
これが一流国というものか···!)
モイジとジェバソンの間で対ロウリア軍の作戦が
練られていく。
◯戦闘はギム前方数キロ地点に張り巡らされた塹
壕地帯を主戦場に戦う。
◯翌日早朝にギム西方国境より魔信が入り次第ワ
イバーン50騎とアトモット80機を対空戦闘及び
制空権確保を目的とする航空部隊を出撃させ、
魔信がなかった場合は偵察用のワイバーン5騎
とアトモット10機の索敵が完了次第航空部隊出
撃とする。
◯重装歩兵は25式軽機関銃(マドセン機関銃の改
造品)を装備し、塹壕地帯から前方500mに掘ら
れた坂を登り切った所で射撃、400m近くまで
迫ったら37式歩兵小銃を装備した歩兵も射撃を
開始する。弓兵も同様に射程に合わせ射撃。
◯敵の攻撃で味方に必要以上の被害が出ると予想
された場合、敵の攻勢が止んだ隙を見計らい、
第六旅団を殿軍としてエジェイまで退却する。
7000対70000。それも敵は空の覇者たるワイバー
ンを450騎も揃えている。
普通なら間違いなく勝てない戦争だろう。
だが、必ず勝てるはずだ。
先日の合同演習にてオスマン帝国軍の圧倒的な力
と、クワ·トイネ軍とクイラ軍の飛躍的な戦力上
昇を確信していたモイジは恐れを振り払い、明日
のロウリア軍来襲の報を待った。
中央暦1639年8月12日早朝 ギム西方の国境上空
ロウリア王国東方討伐軍先遣隊 飛竜第一攻撃隊
総勢90騎
飛竜隊を統率する竜騎士団長アルデバランは絶対
的な自信を持ってクワ·トイネ領空を突破した。
地上から突如として赤い煙が上がったのを見た部
下数名が導力火炎弾を発射し、煙近くの小さな小
屋が炎に包まれ崩落する。中にいたと思われる者
は即死だろうが何も思う事はない。既に戦争は始
まり、愚かしき亜人がこの大陸に住まう事が許さ
れる時代は終わりを告げたのだ。
「団長!クワ·トイネの飛竜隊を発見しました!」
部下の報告とほぼ同時に彼も飛竜隊とおぼしき多
数の点を視界に捕らえた。
(ざっと70···いや80か?随分な数を揃えたものだ
な。だが言い換えればこの一戦でクワ·トイネ
のワイバーンを一掃する好機でもある)
「導力火炎弾による空間制圧射撃を実施する」
彼は一気にケリをつけようと決断した。
90騎ものワイバーンが一斉に導力火炎弾の準備に
掛かる。
面内側の導力火炎弾は回転による推進力で通常よ
り射程が伸びる。高々数十メートル、だがその差
はクワ·トイネの飛竜隊の射撃の機先を制し戦力
を大幅に削ぐ事が出来る。
「発射5秒前、4、3、2、1、発射!!!」
全部で90個の導力火炎弾がクワ·トイネの飛竜隊
を目掛けて飛翔する。彼はクワ·トイネのワイバ
ーンがバタバタと墜ちていく様を幻想する。
だが、彼らはその直後に二つの誤算を悟った。
一つ目は彼らが導力火炎弾の制圧射撃に速やかに
対応しこれをかわした事。
そして二つ目は···
「だ、団長!奴等、わ、ワイバーンに乗っていま
せん!」
クワ·トイネの飛竜隊と思っていた連中が、鉄製
のトンボの様な奇妙な物体に乗っていた事だ。
(な、何なんだあれは!?ワイバーンではない!
しかも導力火炎弾の制圧射撃をあっさりとかわ
した!?明らかにワイバーンより速い!)
動揺しつつも彼は次の指示を出そうとした。
だが、それは僅かに遅きに失した。
鉄竜の先頭にあり、先程の制圧射撃を急降下でか
わした鉄竜が二対の翼の下部分を赤く光らせた。
(何だ!?奴は何をし)
それが何なのかを知る事もなく、彼は良く分から
ない何かから発射された良く分からない何かによ
ってこの世を去った。
「よし!!!いける、いけるぞ!!!」
クワ·トイネ公国軍第三航空隊所属としてアトモ
ットのパイロットとなったマールパティマは自信
を確信に変え、一人叫んだ。
数分前にロウリア軍のワイバーンの空間制圧射撃
によって始まったこの空戦は今やクワ·トイネ軍
の一方的優勢となっていた。
アトモットの装備された12.7㎜機関銃はワイバー
ンの強固な鱗を容易く砕きロウリアの飛竜を次々
と撃墜していた。
無論ロウリアの飛竜隊も反撃するが単発の導力火
炎弾で尚且つ150㎞/h以上の速度差が命中を許さ
ない。たまにかする機体もあるが、金属製で対導
力火炎弾の特殊加工を施した翼がいつまでも燃え
続ける事はなく被撃墜機は一機たりとも出ていな
い。
アトモットに遅れる形で上空から飛来した30騎の
ワイバーン部隊も順調だ。アトモット部隊の機銃
掃射から逃れようと散り散りになったロウリアの
ワイバーンを導力火炎弾で狙い撃ち、生き残りを
6騎一組で殲滅する。クワ·トイネ軍は練度でロウ
リア軍に劣るが、機先を制し物量差で押し潰すク
ワ·トイネ軍はほぼ被害のないままロウリアの飛
竜隊を各個撃破していく。
空戦が勃発して十数分後、ロウリアの飛竜隊全
90騎が撃墜された。対するクワ·トイネ軍の被害
はアトモットの要修理機が7機とワイバーンの損
失が8騎(搭乗員は脱出し負傷者合計11名に留ま
った)の大勝であった。
「ギム司令部へ報告!我が空軍ロウリア軍の飛竜
隊と交戦しこれを全騎撃墜!制空権の確保を認
める!繰り返す!制空権の確保を認める!」
「航空部隊がやってくれたか!」
モイジが歓喜の声を上げる。
彼とてアトモットの性能は頭で理解していたが、
それでも圧倒的な戦力を擁するロウリア軍に立ち
向かう事に不安がない訳ではなかった。
いける、勝てる!
彼は己の迸る感情のまま、兵士達を激励する。
「栄光あるクワ·トイネ公国軍の諸君!遂にロウ
リア軍が我らがギムに魔の手を向けて来た!敵
は我々の十倍の兵力であり、諸君らも経験した
事のない大合戦となるだろう。だが我らに先駆
け、勇敢なる航空部隊は90騎ものワイバーンを
撃破する事に成功した!我々も続け!ロウリア
軍の鼻っ柱をへし折ってやれ!!!」
「「「「「「「オオーーーーーーーッッ
!!!!!」」」」」」」
「全軍、前へ!」
クワ·トイネ軍は鬨の声を上げ、ロウリア軍との
決戦に臨む。
「何イイイッ!!!???ワイバーンが全騎撃墜
されたダトオオオッ!?」
第一攻撃隊全騎撃墜の報を聞いたアデムが冷や汗
をかきつつ吼える。
伝令員が震えた声で詳細を報告した。
「だ、第一攻撃隊はギム前方上空にてクワ·トイ
ネ軍のワイバーンを確認し、これに空間制圧射
撃を実施したものの、クワ·トイネ軍は鉄製の
トンボの如き飛行物体80機とワイバーン30騎で
これに応戦。飛行物体の飛行速度はワイバーン
を大幅に上回っていたらしく、波状攻撃をかけ
られ、全滅した模様です」
その時、事態を察したパンドールがアデムの元に
訪れた。
「アデム君、第一攻撃隊が撃破された様だな」
「はっ、それについてですがパンドール様、その
原因と思われる飛行物体について、私に少々気
になる所が」
パンドールは「君もかね、アデム君」と驚くと、
再び口を開いた。
「飛行物体と呼んでいたが、全滅前の魔信による
と、その物体は鉄の翼を持ちその翼から橙色の
光と聞き慣れない音が出た次の瞬間に遥か前方
のワイバーンが墜ちて行ったと言っていた。こ
れが私が以前耳にした列強国のムーが運用する
飛行機械の特徴と一致するのだ。これを考慮す
るともしかするとクワ·トイネは·····ムーかそ
の属国の支援を受けているのかもしれない」
アデムの冷や汗の量が更に増える。もし本当にク
ワ·トイネの連中がムーの支援を受けているとし
たらクワ·トイネの討伐難易度は想定を大幅に上
回る事になる。飛行機械を輸入していたとすれば
歩兵装備も輸入していない訳がないだろう。今の
戦力で勝てるか?援軍を待つべきではないか?そ
んな思いがアデムの胸の内を去来する。
だが、しかし。
「パンドール様、攻撃しましょう。いくらクワ·
トイネ軍が装備で我々に勝ったところで兵力は
たかが10分の1。我らの物量で押してしまえば
少なからず損害は出ますが勝てるでしょう。そ
れに列強の支援を受けた軍を撃破したと喧伝す
れば我が軍の威信は飛躍的に高まります」
無論理屈もあったが、何より、目の前に殺せる
亜人達がいる以上、アデムにこの機を逃すとい
う選択はなかった。
「分かった。君に任せると言った以上、今回のギ
ム攻撃の指揮権は君にある。君の思う様にやり
たまえ」
アデムは「はっ!!!」とパンドールへ一礼する
と、歩兵部隊へ指示を飛ばす。
「ロウリアの諸君!クワ·トイネの亜人どもはあ
ろう事か文明国の支援を受けている。だが我ら
の物量をもってすれば恐れるに足らず!愚かし
き亜人どもに絶望と死をくれてやれ!!!」
「「「「「ウオオオオオォォォォォォォ
!!!!!」」」」」
ロウリア軍7万人が一体の巨獣の如く、一斉に進
撃を開始した。
後世において、ロデニウス大陸、ひいてはこの世
界初の現代戦闘として歴史を変えた一戦と評され
た「第一次ギム攻防戦」開幕の瞬間であった。
「「「突撃ィィィ!!!」」」
ロウリア東方征伐軍第一歩兵攻撃隊3万が全速力
で突撃する。敵兵力は詳細こそ不明だが恐らく1
万もいないだろう、6年に渡って文明圏式の訓練
を施された我が軍が負ける筈がない!
「ん、何だ·····?塹壕?にしては随分浅いが
···」
見渡す限り半円形に掘られた塹壕と呼ぶには浅過
ぎる穴にロウリアの歩兵が首を傾げる。何の為に
クワ·トイネ軍はこんなものを?
(まるで意図が読めない···だが飛竜隊を全滅さ
せて来た相手だ、警戒するに越した事はない)
そう思いながら斜面を登り切った瞬間、彼らの戦
争の常識は音を立てて崩れ落ちた。
一瞬の出来事だった。
斜面を登った500m先にクワ·トイネ軍がやや深い
塹壕に身を隠し、鉄製とおぼしき妙な何かを向け
たと思うと、聞き慣れない轟音が響き、自分の周
りの兵が次々と斃れていったのだ。
「な、何が起こって」
そして彼が口に出来た言葉もそこまでだった。
「ぎゃっ!!!」
「が·······!」
「ぐわっ!?」
「い···痛い!助けてくれ!!!たす···」
蜂の巣にされ鋭い悲鳴を上げ死ぬ者。眉間や心臓
を撃たれ声も出せず即死する者。四肢を撃ち抜か
れ死への恐怖に絶叫しながら死んでいく者。ただ
死だけが平等にロウリア軍へと襲いかかる。
それでもロウリア軍は突撃続行を選んだ。
―これ程の攻撃魔法が長時間展開し続けられる訳
がない、魔力が尽きたところを反撃すれば必ず
勝てる―と。
しかし、400m程まで接近したところでロウリア
軍はある勘違いに気付いた、いや気付かされた。
それがどうしようもない程甘い考えだった事に。
「歩兵部隊、一斉に射撃開始!!!ギムを、クワ
·トイネ公国を護るのだ!!!」
攻撃魔法は一向に止まず、寧ろ更に増加した。
足の遅い重装歩兵が多かった事も災いし、当初は
3万を数えた第一歩兵攻撃隊は今や2万強にまで数
を減らしていた。
それでもまだだ、あと少しとロウリア軍は無謀と
半分理解しつつ進撃する。
何せ指揮官が
しようものならどのような処罰を受けるか分かっ
たものではない。その恐怖と亜人への優越感やプ
ライドが無謀な攻撃を続けさせた。
だが、頑なに続けていたロウリア軍の突撃は200
m程まで接近したところで起こった二つの攻撃で
唐突に異常を来たした。
一つはクワ·トイネ軍のワイバーン部隊に加え、
自軍のワイバーン部隊を全滅させたという鉄竜
が姿を現した事。
そしてもう一つは、クワ·トイネ軍の矢がこの距
離でロウリア軍に襲いかかって来た事だ。
空の覇者たるワイバーンを90騎も墜とした鉄竜も
さる事ながら、200m先から届く矢はロウリア軍
に決定的な衝撃を与えた。
自分達の知らない謎の攻撃であれば、文明国の力
と断じる事で認めずに済んだ。
だが、クワ·トイネ軍は弓矢の様な同格の技術に
おいても自分達を圧倒しているという事実は、ロ
ウリア軍に残っていた僅かな自信を打ち砕くには
十分なものだった。
何処からか歩兵の一人がクワ·トイネ軍に背を向
けて逃亡を図る。
それが波及し、ロウリア軍は遂に壊走状態に陥っ
た。
元が大軍であるが故に、一度崩れるとその混乱ぶ
りは酷いものになった。励まし合いつつ前進して
いた歩兵達が我先にと罵り合い、押し退け合いつ
つ逃げようとする。
だが、ロウリア軍の非人道的命令を知り憤激し、
一度戦闘を開始したこの時のクワ·トイネ軍にロ
ウリア軍への“情け”等というものは存在しない。
これ以上のロウリア軍の前進がない事を確信した
モイジは塹壕を打って出ての追撃を決定し、軽騎
兵隊の突撃に銃の着剣を済ませた歩兵が続く。
これまでの強引な突撃で騎兵の殆どが死傷した上
混乱状態に陥っていたロウリア軍は一気に距離を
詰められ、ろくに迎撃体制も整わないままクワ·
トイネ軍の猛攻を受け、瞬く間に死傷者の数を膨
れ上がらせた。
ロウリア軍歩兵の主兵装の長槍は距離を詰められ
れば小回りの利かない棒でしかなく、ロウリアの
歩兵は次々とクワ·トイネ歩兵の銃剣の刺突を受
けて屍を晒して行った。
騎兵の戦いは更に一方的だ。
対抗出来る騎兵が死に絶えた所を襲われたロウリ
ア軍はまともな抵抗も出来ずに騎兵隊の一閃に吹
き飛ばされていく。
尚この時のクワ·トイネ軍の騎兵達は桁外れの戦
果を叩き出し、50人切りを達成した者が数名出た
他、中には100人切りをこなした猛者もいたと言
われる。
無論ロウリア軍とて全くの無抵抗ではなく、反撃
を受け戦死した者もいた。
後にクワ·トイネ軍にて装甲車師団が創設された
際に、「クワ·トイネを護りし英雄達への供養と
する」として、この第一次ギム攻防戦にて戦死し
た騎兵や乗馬の名が引用される事となるが、それ
はまた別の話。
銃剣と長槍が交錯し、無数の絶叫が戦場を木霊し
た。だが、終わらない物語がない様に、終わらな
い戦闘もない。
中央暦1639年8月12日午後5:50、陽も深く沈み行
く頃、動くロウリア軍の兵の姿はなく、そこでは
クワ·トイネの兵達の鬨の声が鳴り響いた。
ロウリア王国東方征伐軍第一攻撃隊3万の内、本
陣へと帰還出来た兵は僅か7千。残りの2万3千の
全員が戦死·降伏·逃亡の何れかの道を辿った。
一方でクワ·トイネ軍の損失は竜騎士3名の出血多
量による衰弱死と追撃戦での死者37名、負傷者
100名足らずに収まった。
こうして第一次ギム攻防戦はクワ·トイネ公国軍
の大勝利に終わった。
「モイジ閣下、この度は戦勝おめでとうござい
ます」
「いえいえ、この度の勝利はオスマンのお力添え
あってのことです、貴国の軍事改革無しには、
我が軍はロウリア軍に勝利はおろか一矢を報い
る事すら出来なかった」
「いいえ、我が国の軍事改革も使いこなせてこそ
のものです、貴方方の銃や航空機への順応能力
は我々の予想を遥かに超えていた···ロウリア
軍もこれ程の損害を受ければ現有戦力では今回
程の軍事行動は取れないでしょう」
「では、予定通り、ですかな?」
「はい、退路はお任せを。クワ·トイネ軍の絶対
的な安全を保証しましょう、又我らに朗報があ
ります」
「朗報?それは一体···」
「帝国議会にて派遣が決定されていた第一機甲師
団と第十八歩兵師団がエジェイへと到着間近と
の事です」
「おお、それは心強い!彼らの力は私達も演習で
特に圧倒的だったと感じました。必ずやギムを
取り戻せるでしょう」
「エジェイに到着した後、作戦立案し直ちに実行
の用意ありとの事です。モイジ閣下も兵達に伝
えておいて下さい、「帰郷の準備をしろ」と」
その後、クワ·トイネ公国西方軍集団は戦勝祝い
もそこそこに城塞都市エジェイへ向け日付の変わ
る直前にギムを粛々と出発。日の昇る頃には殿軍
の第六旅団含む全ての者がギムを後にしていた。
中央暦1639年8月12日深夜
ロウリア王国東方征伐軍本陣
「クソがあああああああ!!!!!」
死人の様に顔を青ざめさせ平伏する第一攻撃隊隊
長の腹を蹴り上げつつアデムが激昂する。その激
情のまま隊長を切り捨てようとするアデムを必死
に部下が宥めていた。
「何故止めるのですかぁ?」
「アデム様、落ち着きなさいませ!聞くところに
よると、クワ·トイネ軍はやはり文明国の兵器
を運用していた模様です。今回の戦闘では多く
の将が戦死しております、これ以上将を失えば
幾ら兵がいてもそれを束ねる者がおらず、我ら
の強みである兵力差を生かす事が不可能となり
ます、今一度ご再考を!」
「ぬううう·····!!!ならば貴様ぁ!一体奴等
はどのように我が軍と戦った!!貴重な兵を2
万以上消費したのだ、分からなかったとは言わ
さんぞぉ!!!」
元々青い顔をしていた隊長は恐怖で更に青ざめつ
つも顔を起こすと、ぽつぽつと語り始めた。
「て、敵は自陣に塹壕を掘っており、前方500m
地点にも浅い塹壕を半円形に掘っていました。
そしてその塹壕を登り切った所でクワ·トイネ
軍は鉄の装置の様なもので我々に遠距離攻撃を
仕掛けて来ました。正体については当初不明で
したが、私の記憶から察するに、ムー国での研
修時に目にした機関銃かと思われます。又、敵
は一般歩兵にも銃を行き渡らせていた様で、ワ
イバーンの導力火炎弾による対地攻撃と重ねて
この時点で我が軍は1万近い損害を受けていま
した。そして200m地点にて、敵軍の航空戦力
に我が方のワイバーン部隊を撃墜したと思われ
る鉄竜が現れると同時に、その距離で矢が降っ
て来たのです!ここで我が軍は壊走し、追撃を
受け」
「黙りなさい」
アデムが言い終わらぬ内に隊長を切り捨てる。部
下が恐怖で居竦むが気にもせず口を開く。
「何を驚いているのですかぁ?亜人どもが7000も
の文明国の兵器を揃えている?200mも飛ぶ弓
矢を所持しているぅ?あり得ません。頭のイカ
れた指揮官など不要。···違いますかぁ?」
部下達は「しかし撃退されているのは事実ですか
らねぇ、どのようにして動くべきか···」と思案
するアデムにおずおずと献策する。
「あ、アデム様、再びギムにワイバーンで偵察を
行っては如何でしょうか?それも300騎を動員
してです。幾ら敵の航空戦力が強かろうと物量
では我々に確実に利があります。3万の軍で大敗
した以上、我々も全軍を以てして敵軍にあたる
必要があるかと」
「ほう·····成る程、では翌日の明朝、300騎を
ギムに差し向けましょう。今度こそ確実に、徹
底的に亜人どもを殺す為にねぇ·····!!!」
何故この方はここまで亜人を敵視するのだろうと
思いつつ、部下達は翌日の作戦の準備に入った。
K-1戦闘機「アトモット」
最高速度:380㎞/h
到達限界高度:11100m
航続距離:880m
武装:12.7㎜機関銃×2
7.7㎜旋回機銃×1
オスマン帝国がクワ·トイネ公国に輸出した35式
戦闘機をベースにクワ·トイネ公国軍新兵器開発
部が初めて開発した兵器。
7.7㎜機銃を12.7㎜機関銃に変更した事とエンジン
を生産性重視の物に変更した結果、最高速度の低
下と引き換えに高い生産性とワイバーンの鱗をも
容易く砕く高火力を手に入れた。
現在オスマン帝国の援助を受けつつ500機以上生
産されており、又オスマン帝国の資料を元に単葉
機の開発に乗り出している。