阿多曼帝国降臨記   作:SAWA χTERU

6 / 8
まーた1ヶ月以上かかってるってウッソだろぉ
お前ぇ!?(小並感)



てな訳で又1ヶ月以上かかってしまいました···
大体これ位の頻度での投稿になると思われますの
でひつこい様ですがそれでもおkという方はお楽
しみ頂ければと思います。



追記)改行のミス部分を修正しました。
   せめてミスがない様にしたい···
(2019/12/26、1:03)

追記2)文章の細かい部分を変更しました。
    恐らく大きな影響はないと思います。
(2019/12/27、11:27)


其ノ四 海戦と対空戦闘とCIWS

中央暦1639年8月27日 マイハーク港

 

ロウリア王国海軍が4000隻以上の大艦隊を出向さ

せた旨を諜報員から伝えられ、ここマイハーク港

を本拠地とする新生クワ·トイネ海軍第一艦隊は

抜錨·出撃した。

 

この第一艦隊はオスマン帝国の支援の下に完成し

た、クワ·トイネ海軍で初めて大砲による砲撃を

主要攻撃手段とし、動力を用いた航行を可能とし

た軍艦を擁する艦隊である。

 

軽巡洋艦7隻、駆逐艦18隻の計25隻(内軽巡1隻、

駆逐艦6隻が自国建造)と数こそ以前の半数だがそ

の戦力は以前の数千倍にまで跳ね上がっているだ

ろう。

 

艦隊の軽巡唯一の自国建造艦にして第一艦隊旗艦

であるイオノンの艦橋でクワ·トイネ艦隊司令官

のパンカーレは艦隊を見やりつつ呟く。

 

「壮観な光景だな」

 

「ロウリア海軍は4000隻を超える大艦隊との事。

 我が艦隊も物量で押し破られるかもしれませ

 ん」

 

「幸い敵海軍に火砲は存在しない故に弾薬は限界

 まで積めるからな、一隻でも多く沈めるぞ。そ

 う言えばオスマン帝国海軍の支援艦隊との合流

 が近い筈だ、見張員に注視するよう伝えろ」

 

暫くしてパンカーレの下に報告が届く。

 

「艦長、右舷1000mにて艦影見ゆ!オスマン帝国

 海軍です!!!」

 

「陣容を報告しろ」

 

「巡洋艦3隻、駆逐艦7隻、計10隻です!」

 

「オスマン帝国海軍より通信です!」

 

「こちらオスマン帝国海軍クワ·トイネ海軍支援

 艦隊司令、ホルティ·ミハーイ。オスマン帝国

 より参戦する。ワイバーンとの対空戦闘は任

 せて貰いたい」

 

「援軍を感謝する。我が艦隊はロウリア艦隊を攻

 撃する!」

 

「了解した。パンカーレ殿、この戦、勝ちましょ

 うぞ!」

 

「無論。全艦機関全速!目標はロウリア艦隊。繰

 り返す、目標はロウリア艦隊!!!」

 

ロウリア王国東方征伐海軍  海将シャークン

 

「いい、実にいい景色だ。美しい」

 

大海原を幾つもの帆船がマストに力強くも爽やか

な潮風を受け一本の巨大な銛の如く進む。その総

数4400隻が大量の水夫と揚陸部隊を乗せ、クワ·

トイネ公国の経済都市のマイハークへ向かってい

た。見渡す限り船ばかりで海面すら見えやしない

程だ。

 

シャークンは今回の海戦に圧勝する確信を持って

いた。6年もの準備期間をかけ、パーパルディア

皇国からの軍事援助を受けて完成したこの大艦隊

を防ぐ手立てはこのロデニウス大陸には存在しな

い。それどころか、パーパルディア皇国すら制圧

出来そうな気さえする。

 

(いや、パーパルディア皇国には砲艦という船ごと

 破壊可能な兵器があるらしいな·····)

 

彼は一瞬燃え上がった野心の炎を直ぐ様理性で打

ち消す。第三文明圈の列強国に今挑むのはやはり

リスクが高すぎる。

 

彼が東の海を見据えると同時に、見張員の報告が

入る。

 

「前方にて敵船団発見、船数25隻!」

 

「25隻だと?随分少ないな···二手に分けている

 のか?一応警戒を怠るなと伝えろ」

 

向かって来た船は右舷側で1㎞程の距離を置きつ

つ並走を開始した。

 

「·····大きいな」

 

シャークンは一人呟く。

この4400隻の大艦隊はその殆どが全長50mもない

小舟で占められており、最も大きい船で100mをギ

リギリ超える程度だ。

それに引き換え、あの船団は数の多い小さめの船

ですら100mを優に超え、大きめの船に至っては

間違いなく150mを超えているだろう。

加えて、マストもなく、オールも見えないのに我

らの船達より確実に速いという事も彼を驚かせて

いた。

 

「ロウリア艦隊と思われし艦隊に告ぐ!この先は

 クワ·トイネ公国の領海であり、即時撤退を要

 求する!繰り返す―――」

 

こちらから1㎞は離れているにも関わらず、クワ·

トイネの船団はまるで目の前で叫んでいる様な大

音量でこちらに警告を送っている。

 

シャークンは暫く迷った。だが、幾ら敵の船が強

かろうと所詮25隻。圧倒的な物量差で押し潰して

しまえば負ける筈がないと結論を出したシャーク

ンは攻撃を命令した。

 

「大きいな···」

ロウリア海軍の帆船4400隻が次々と旋回してクワ

·トイネの船団との距離を詰めにかかる。

軍船長の指示で船員達は油の壷に矢を浸け、松明

で火を灯し弓を構えた。

 

敵船との距離が200mを切った。

「放てェ!!!」

近くにいた軍船数十隻から火矢が放物線を描いて

敵船に殺到する。その場のロウリア海軍の全員が

敵船に火矢が突き刺さり炎上する様を幻想した。

―――そうなる筈だった。

 

カカンッカンカンッ!

クワ·トイネ海軍の駆逐艦に降り注いで来た火矢

は外壁に命中すると無機質な金属音を響かせ、塗

られた塗料を傷付ける。これを受けてクワ·トイ

ネ海軍の艦隊が一斉に遠ざかり、約5㎞程距離を

置きつつ旋回した。

 

「ヒャッハハハハハァ!!!逃げやがった!」

水夫達が距離を取るクワ·トイネ船団を馬鹿にし

て聞こえないと知ってか知らずか野次を放つ。

一方でシャークンや攻撃を仕掛けた軍船の船長は

敵船が全くの無傷である事と船足があまりに速い

事を再確認した事で驚愕と不安で胸中が満たされ

ていた。

 

「船が燃えぬ···それにあの金属音、やはり船体

 は金属か?どうやって浮かんでいるのだ·····

 しかしまあ幾ら大きかろうと25隻ではこちらの

 勝ちは揺るぎまい」

 

 

 

クワ·トイネ海軍の駆逐艦が攻撃を受けた事で、

クワ·トイネ海軍も反撃を開始する。

「第二駆逐隊所属の駆逐艦8号艦が攻撃を受けた

 為、攻撃を開始する。尚今回は敵船が密集して

 いる為、初撃から斉射する。全艦主砲用意!」

 

駆逐艦の12㎝単装砲が、軽巡洋艦の14㎝単装砲が

一斉にロウリア艦隊に砲口を向ける。

 

「全艦主砲、一斉射!!!テーーーーーッ!」

 

クワ·トイネ海軍第一艦隊25隻が備える全約140門

が轟音と共に一撃を打ち込んだ。

 

 

 

目の良いシャークンは敵船の変化に気付いた。

敵船25隻の全てに備わっていた黒い巨大な筒の様

なものが少しずつこちらを向いて来ていた。

 

次の瞬間、その筒から膨大な量の黒煙が吐き出さ

れた。

 

「何だ?勝手に燃え始めでもしたのか···?」

 

シャークンがそう呟いた刹那、前方を航行してい

た軍船を“何か”が襲い、軍船が木端微塵に砕け散

った。それも次々と、何回も。

 

爆散した軍船の木片や部品、乗っていた船員だっ

たとおぼしきものがあちこちで舞い上がり周囲の

味方の船上に降り注ぐ。少し遅れて、敵船の方角

から何かが爆ぜる様な轟音が聞こえた。

 

経験した事のない攻撃に無事だった軍船の船員全

員が「何が起こった!?」「敵の攻撃かよ!?」

「あんな遠くから当てやがるってのか!?」と狼

狽える。

 

「不味いな···ただ、ワイバーンの届く距離だっ

 たのは不幸中の幸いと言うべきか。通信士!司

 令部に航空支援を要請しろ!『敵主力船団と交

 戦中』とな」

 

 

 

ロウリア王国 王都防衛騎士団 総司令部

 

「ロウリア王国東方征伐海軍より魔信です。『現

 在敵主力船団とおぼしき船団と交戦中。敵船は

 巨大かつ高威力の魔導兵器らしき兵器を搭載。

 既に敵の攻撃によって当艦隊の軍船十数隻が撃

 沈されており、反撃の為に可及的速やかな航空

 支援を要請する』·····との事です」

 

「ほう、敵主力か·····よろしい、500騎全騎を

 差し向けよ」

 

報告を聞いたパタジンは暫し考え込むと魔力通信

士へ口元を歪めつつ指示を出した。

 

「ご、500騎ですか?ですがパタジン様、既に先

 遣隊に450騎が分けられており、王都防衛用の

 ワイバーンが250騎と決定されている以上、本

 隊から攻撃用ワイバーンがいなくなりますが

 ···それに先日、先遣隊からもワイバーンの補

 充要請が来ています」

 

「聞こえなかったか?全騎だ。敵主力なら大戦果

 となろう。先遣隊には帰還した者で傷の浅い者

 を見繕ってやれば良い。戦力の逐次投入は下策

 だ。·····なに、所詮奴等に王都までたどり着

 く戦力などあるわけなかろう」

 

「···了解しました。飛竜隊に告ぐ。マイハーク

 西方の東方征伐海軍より入電。東方征伐海軍は

 敵主力と交戦中、待機騎は全騎発進し海軍の支

 援に当たれ!繰り返す―――」

 

出番を今か今かと待ちわびていた竜騎士達が歓声

を上げた。司令部に待機していたワイバーン500

騎が緊急発進し次々と大空で風を掴んで行く。

 

 

 

マイハーク北方海上 オスマン帝国海軍支援艦隊

旗艦 ミサイル巡洋艦トラブゾン

 

トラブゾンのCICは既に『それ』の姿を捉えてい

た。

 

「対空レーダーに感あり。ワイバーンと思われし

 飛行物体約500、当艦隊に接近中」

 

500という数に誰かが息を飲んでいた。

しかしオスマン帝国が誇る大海の猛者としての矜

持が次の瞬間には臨戦態勢を整えていた。

 

「出番だな·····クワ·トイネ第一艦隊へ通信!ワ

 イバーンを探知。退避されたし」

 

 

 

「オスマン帝国支援艦隊から通信です。当方ワイ

 バーンを探知、退避されたしとの事です」

 

「成程、了解した。各艦退避開始せよ」

 

 

 

「離れて行く?」

 

傍に立つ部下の一人がそう呟いたのをシャークン

は聞いた。

 

敵船団の良く分からない攻撃によってロウリア艦

隊は一時間余りでその数を3500隻強にまで減らし

ていた。

 

しかし味方ワイバーン部隊の到着も後僅かで、さ

あ反撃だという所でこの退避である。

 

(もしかしたらワイバーン部隊の来襲を掴んでいる

 のかもしれんな)

 

聞いた所によると文明圏には魔力を探知できる装

置なるものが存在するらしい。クワ·トイネ如き

がその様なものを保有しているとは思えないが将

たるもの最悪の事態も想定して動く必要がある。

もしその様な装置があるのであればワイバーン部

隊の来襲に対抗しようとするのもおかしくない。

 

(とは言え、好機な事は間違いない)

 

幾らクワ·トイネの軍船が強力であろうとワイバー

ンの航空攻撃には少なからずダメージを受けるだ

ろうし、そこで肉薄攻撃を仕掛ければ必ずや仕留

められる筈だ。

 

(見ているか散った同胞達よ。お前達の仇、必ず取

 って見せる)

 

「全艦に通達!これより我が艦隊は迫りつつある

 ワイバーン部隊と共に敵船団に肉薄攻撃を仕掛

 け、船団を撃滅する!全艦、前へ!!!」

 

 

 

クワ·トイネ北方海域上空

 

500騎のワイバーンが咆哮を上げつつクワ·トイネ

の船団を滅せんと迫る。

王国建国以来最大の500騎による作戦行動、その

勇姿は地上から見る者を圧倒する。

 

竜騎士団長アグラメウスは、既に圧勝を確信して

いた。

魔信の報告で敵主力と交戦との事で出撃したが、

クワ·トイネ海軍の主力はせいぜいが50隻程度、

多くとも100隻もありはしないだろう。

 

海軍だけでも十分滅する事は可能と思われるが、

恐らくシャークン海将は我が王国の武威を誇示さ

せるつもりなのだろう。

 

1回の作戦行動としてこれだけのワイバーンを動

員するのは初めての事で、これ程の部隊であれば

伝説の魔帝軍すらも打ち破れるだろう。

ましてやクワ·トイネ海軍如きに我らを止められ

る筈がない。

 

アグラメウスだけでなく、竜騎士の誰もがそう考

えていた。

 

「ん?あれは一体···」

 

目のいい者がまず気付いた。

 

「―――!!!」

 

突如として現れた幾つかの黒点は、一瞬にして竜

騎士達と距離を詰めて来た。

 

「光の―――矢!?」

 

彼が言い終わるか言い終わらないかという瞬間、

隊列を組織していたワイバーン部隊の前方が轟音

と爆炎が包み込む。

一瞬で23騎分の残骸が爆散し、大小の塊が次々と

海に落下していく。生者も死者も何が起こったか

も分からぬまま、更に十数秒後には13騎が2発目

の光の矢に屠られる。全員が事態を把握した数秒

後も19騎と、次々と墜とされる。

 

流星の様な光の尾を引いたそれは、ある者を避け

る間も与えずに撃墜し、又ある者が類稀なる動体

視力を以て回避行動を取るのを嘲笑う様に意思を

持っているかの如く追尾する軌道を描き撃ち落と

す。加えて高威力の爆炎が周囲を飲み込む為、直

撃を避けても仲間の爆死に巻き込まれ道連れに遭

う者もいた。

 

「何だ!?一体何が起きているんだ!」

 

恐怖に駆られたアグラメウスが絶叫するが、答え

られる者は居ない。何が起きているかも分からな

いまま、苦楽を共にした仲間が、戦友が、そして

世界最強の戦力である筈のワイバーンが、血も涙

もなく効率的に殺処分されていく。

 

この様な事は、ロデニウス大陸の歴史上、ただの

一度もない。

 

『バカな!そんな···!!!』『何故!何故追っ

て来るんだ!?うわっ···』魔信器が数々の悲鳴

を奏でる。

 

一通りの嵐が過ぎ去った頃にはワイバーン部隊は

その数を500騎から250騎と半減させていた。

部隊は混乱状態に陥っていたが、やっとロウリア

王国海軍の艦隊が視界に入り、隊列の再編にかか

った。

 

そしてその時、彼らは眼前に敵船団を発見した。

数こそ40隻にも満たないが、一隻一隻が我が王国

の最も大きな軍船よりも大きい。 

 

そしてその中でも一際大きい灰色の巨船が7隻、

次々と光の矢を再度上昇し始めていたワイバーン

部隊に発射した。

 

「あいつか·····!あいつかぁーーーッ!!!」

 

アグラメウスが吼える時も竜騎士達は一騎、また

一騎と墜とされていく。光の矢が発射されて暫く

すると、巨船達についている鉄の棒から何かが光

の矢と共に発射され始めた。それらも一発当たり

一騎を確実に射貫いていき、竜騎士達の全滅を加

速させていく。

 

味方が、それも最強である筈の竜騎士達が、まる

で雨の様に墜ちる様を見ていたロウリア水夫達の

士気は崩壊し、彼らは既に戦意を喪失していた。

 

アグラメウス達竜騎士達が大体艦隊直上付近であ

る3㎞まで近づいた頃には、竜騎士達は70騎を割

っていた。

 

「魔導が切れた様だな·····仲間の仇を討ってや

 る!」

 

500騎もの大編隊を壊滅させられ、既に70騎も残

っていない。このままおめおめと引き下がる事な

ど出来る筈がない。王国に戻ったとしても無能の

烙印を押される事が確定している以上、アグラメ

ウスの頭の中に一矢を報いる以外の選択肢は無か

った。

 

アグラメウスの号令でワイバーン達があぎとを開

き、導力火炎弾の発射準備にかかる。

 

 

 

アグラメウス達が必死にミサイルから逃げる頃、

対空ミサイル巡洋艦トラブゾンのCICでは500騎の

ワイバーン部隊が見る見る内にその数を減らして

いく状況をレーダーが映していた。

 

表立っての大戦争が無くなった時代に生を受けた

この艦にとってもこれ程の量の航空戦力との攻防

は未知数であったが、レーダー監視員は落ち着い

て行動していた。「帝国が誇る大空の盾」と讃え

られたこの艦を信じていたのである。

 

導力火炎弾の発射まで後僅かというその瞬間、近

接火器システムCIWSである対空30㎜機関砲が一

斉に作動する。毎分3000発に達するタングステン

弾の嵐が70騎のワイバーン部隊残党に殺到し、そ

の数を50騎、16騎、7騎、3騎、2騎と急速に減ら

していく。

 

「あがっ―――」

 

そして最後の一騎も直ぐに仲間の後を追った。

 

 

 

大海原を静寂が包み込んでいた。

「···············」

その場にいた誰もが眼前の事態を信じる事が出来

ず、声を出す事も叶わなかった。

 

ロデニウス大陸の歴史上において、ワイバーンは

最強の兵器であった。

同じワイバーンで対抗出来なければ撃破は困難を

極め、まして海上では一騎墜とすのも至難の技で

ある。

 

しかし、敵はそのワイバーンを直接見えただけで

も400騎以上―――そう、400騎以上の精鋭ワイバ

ーン部隊を蚊トンボでも叩き落とすかの様に血の

雨を降らせ、墜としていった。

 

初めて見たその軍船―――いや軍艦は途方もなく

巨大であった。奴等は次々と光の尾を引いた何か

が轟音を伴いつつ飛ばしていくのを見て、何のこ

けおどしだと驚いていたが、それらは瞬く間にワ

イバーンを撃ち墜としていき、遂にワイバーン部

隊は全滅してしまった。

 

だが、だからと言ってシャークン達海上部隊を見

逃してくれる程オスマン帝国海軍は甘くはなかっ

た。先程ワイバーン部隊を蹴散らした化け物の様

な巨艦がもう2隻、一回り小さいがそれでも大き

いものが7隻、彼らの眼前に姿を現した。

 

その全てが灰色の船体で、クワ·トイネ海軍が猛

威を振るった長大な魔導兵器を有していた。

 

眼前に奴等が現れてから僅か数秒後、軍船やワイ

バーンを易々と消し飛ばした兵器がクワ·トイネ

海軍のそれよりも遥かに正確に、そして冷酷にロ

ウリア艦隊に襲いかかった。

 

 

 

そこからの戦いは短いながらも、余りにも一方的

で、無惨な戦いであった。

 

帝国海軍の艦船の砲撃の数だけロウリア艦隊の軍

船は破砕され、着実に沈められていく。

 

元々砲弾の数が乏しかった駆逐艦や、それまでの

戦いで弾切れが近く、遂に起こしたクワ·トイネ

海軍の艦船達はよりロウリア艦隊に接近すると備

え付けられた機銃を打ち込み、一隻一隻沈黙させ

ていく。最早実戦演習とでも言うべき状態であっ

た。

 

 

 

戦況は最悪等という生易しい言葉で言い表せる状

態になく、むしろ勝手な撤退が起こっていない事

自体奇跡とすら言えた。

 

「·······駄目か」

 

海将シャークンは既に絶望を超越し、諦観の域に

あった。どう足掻いても勝ち目がない。

 

このままズルズルと戦い続けた所で、部下が徒に

死んでいくのは確実だ。だがもし降伏して捕虜に

でもなれば、ギムで大虐殺を行った筈のロウリア

人が許される筈がない。

 

彼に残された選択肢は、撤退以外になかった。

 

ロデニウス大陸史上最大の艦隊の半数以上を失っ

ての大敗に加え敵前撤退。国に帰れば死刑は免れ

ず、歴史書にこれ以上ない愚将として名を遺す事

だろう。

 

だとしても彼にこれ以上部下を死なせるつもりは

なかった。

 

『全軍撤退せよ。繰り返す、全軍撤退せよ』

 

魔信から撤退命令を残存する全艦に下す。

シャークンが搭乗する旗艦も撤退するべく回頭を

開始したその瞬間、砲弾が直撃する。

爆発の衝撃で吹き飛んだ部下にぶち当たり、シャ

ークンは海に投げ出されていた。何とか海に浮か

び上がった彼が見上げた光景は、自分が搭乗して

いた軍船が真っ二つにへし折れ、瞬く間に轟沈す

る様であった。

 

 

 

「敵軍、撤退を開始しました」

「全艦、撃ち方やめ!」

ホルティの鋭い命令が飛んだ。

「総員、海上の生存者を捜索し救助せよ。各々が

 出来る事を全力で成せ!」

 

 

 

こうして後にロデニウス沖大海戦と呼ばれる事と

なった一大海戦の幕が下ろされた。

尚海将シャークンは彼の搭乗艦唯一の生き残りと

して帝国海軍に救助された。

 

 

 

「艦長、ロウリア艦隊は撤退を開始。オスマン帝

 国海軍は生存者の救助に移るとの事です」

 

通信員の報告で第一艦隊の面々に驚愕と歓喜が押

し寄せた。

 

幾度となく図面演習を繰り返し、負ける筈がない

と頭では理解していたが、それでも不安を拭い切

る事は出来なかった。

 

だが、本当に勝つ事が出来た。予感は確信に変わ

り、自信が彼らを満たしていた。

 

一方で、彼らは帝国海軍がロウリア海軍の生存者

の救助を行った事にも驚いていた。たとえ自分達

を滅ぼそうとしていた国の兵であっても命を助け

ようとする姿勢に、パンカーレは我々もまだまだ

なのだなと笑っていた。

 

「燃料に余裕のある艦はオスマン帝国海軍が救助

 した兵を乗せて帰港せよ。我が艦に続け!」

 

この後、クワ·トイネ海軍は世界有数の海軍とし

て大成長を遂げ、8月27日は海軍記念日として国

の祝日となる。

 

 

 

ロウリア王国東方征伐艦隊 

ロデニウス沖大海戦後のとある軍船

 

パーパルディア皇国の観戦武官ヴァルハルは、ロ

ウリア海軍に与えられた自室で震えていた。

 

この軍船は運良く撃沈を免れたが、周囲の何隻も

の軍船がいとも容易く撃沈させられていく様を直

に目の当たりにしたからだ。

 

ロウリアの4400隻に及ぶ大編隊がどの様にクワ·

トイネ公国を蹂躙するかの経緯を記録する事が彼

の任務の筈だった。

蛮族に相応しい大型弩弓に火矢、そして切り込み

による白兵戦という原始的な戦法でもこれ程の数

を揃えればどうなるのか。彼自身の個人的興味も

あって彼はこの任務に期待していた。

 

だが、戦場に現れた敵艦は、彼の常識すらも凌駕

するものだった。

 

まず、彼にとって民間船·軍船問わず船と言えば

帆船であり、船の速さは船の帆が受ける風を人工

的に増やし増速させる「風神の涙」の有無及びそ

の純度が大きく影響する筈だった。なのに、敵艦

はそれを使った形跡はおろか帆と呼べるものすら

ないのにも関わらず、船足が恐ろしく速かった。

 

又、その艦の殆どが80門級戦列艦より、そして一

部の艦は100門級戦列艦すら超える船体の巨艦で

あるにも関わらず、巨大な·······長身かつ細身

ではあったが、紛れもなく大砲だった。それが多

くても5門も積んでいなかったのを見て、彼は何

の冗談かと暫し理解に苦しんだ。蛮地にない筈の

大砲があった事には少々驚いたが、大砲はそう易

々と当たるものではない。1発2発では当たらない

が故に、数打ちゃ当たる理論で100門級戦列艦等

が存在するのである。なのに、彼らはあろう事か

3㎞も離れた距離から、たった2、3発、後述の国

籍不明艦達に至ってはただの1発で命中させた。

加えて極めて高威力で、密集していた際には爆発

の衝撃で周囲の艦が数十隻単位で破壊され、爆発

の際に発生した高波を被って転覆し、沈む艦すら

あった程だ。

 

そして、彼を最も驚愕させたのが、ワイバーンの

波状攻撃を防いだ事。もし我が軍であれば竜母を

運用し、ワイバーンにはワイバーンで対抗する。

我が軍のワイバーンは上位種は言うまでもなく、

その上位種と訓練している原種のワイバーンも蛮

地で生産される個体よりも遥かに性能で勝る為、

同数であれば確実に勝てるし、上位種が万全の状

態で戦えれば半数でも十分勝ち目があるだろう。

だが、件の国籍不明艦はワイバーンはおろか、火

食い鳥等を含む一切の航空戦力を用いずこれを殲

滅して見せた。

 

もし我が軍が同様に航空戦力を持ち得ない状況で

蛮地のそれとはいえあれ程の規模のワイバーン部

隊に襲撃されればどうなるだろうか?

恐らく、全滅はしなくても浅からぬ被害を被る事

は想像に難くない。

だが、あの国籍不明艦は被害以前に傷一つ付かぬ

ままにワイバーン部隊を蹴散らしてしまった。

 

そもそも、点攻撃である砲撃が空中を高速で飛び

回るワイバーンに当たる筈がない。それが常識で

あった。しかし、あの国籍不明艦は、そのワイバ

ーンさえも一発で命中させて見せた。最早人間業

とは思えない。

 

奴等の存在を無視して事を進めると、パーパルデ

ィア皇国すらも脅かすかもしれない。

ヴァルハルは魔信を通じ、海戦の一部始終を見た

まま、ありのままに本国へと伝えた。




クワ·トイネ海軍第一艦隊初代旗艦
軽巡洋艦「イオノン」

基準排水量:6360t
全長:162.0m
全幅:16.4m
機関:39式ボイラー6基
   39式タービン4基
乗員:690名
最高速度:37.3㏏
武装:14㎝単装砲3基3門
   8㎝連装高角砲2基
   20㎜機銃3基
  53㎝三連装魚雷発射管2基6門(魚雷20本)
   40式機雷38個
(魚雷·機雷はロウリア戦後に搭載)

オスマン帝国海軍が提供した軽巡洋艦の技術を基
にクワ·トイネ公国海軍が初めて建造·就役させた
国産軽巡洋艦。
ワイバーンが普及している事から対空武装を重視
した設計かつ、鋼鉄製の軍艦がほぼ存在しない為
やや装甲を削って速度を出せる様にしている。
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