Mystery of Nameless 作:hilite989
筆者、ベイン・クロフォードは紛争ジャーナリストである。なぜ自分が紛争のことではなく、一人のレイヴンに焦点を当てた取材をするには理由があった。
軍事企業ミラージュ社の基地にて、いつ終わるかも分からない紛争で疲弊している兵士たちの日常を取材しているときだった。
突如、襲撃した一機のACによって、筆者が駐留していた軍事基地が壊滅した。
筆者は同伴していたカメラマンと共に、なんとか生き延びた。もうお分かりかと思うが、そのACを操縦していたのは間違いなくネームレスだった。
ここから先の映像コンテンツは、同伴していたカメラマン、シンジ・ムラカミが撮影した映像や生存者の証言及びACのシミュレーターソフトを基に、再現したものである。
当時の状況。
日時:地球歴204年9月1日。午前11時32分。
場所:ミラージュ社軍事基地「コサイタス」
備考:資源採掘地域「フロンティア」より二〇キロ地点の前線基地。ミラージュ社軍事部隊が駐留。戦力としては、PAC部隊及びMT部隊を主流とした機甲大隊を保有。
筆者は基地中央部の兵舎にて、歩兵部隊の小隊長にインタビューしていたところから事が始まる。
「その時に負った傷が、ここさ。まぁ名誉の負傷ってことだな――」
「ボーダーラインに未確認勢力の侵入を確認。総員、第二種警戒態勢。繰り返す、第二種警戒態勢」
クリスチーノ少尉のインタビューを、彼の個室で受けていたところだった。
不安を煽るかのようなサイレンが鳴り響き、それに驚く自分とは対照的に、今まで温和な表情を浮かべていたクリスチーノ少尉の目つきが険しく変わった。
「少尉、アンノウン(未確認機)です」
インタビューに同伴していた、クリスチーノ少尉の部下である曹長が、我々に悟られないように彼に耳打ちをした。
「曹長、記者たちをセーフゾーンへ。俺は部隊を集結させる」
「了解。ここは危険です、急いで付いて来てください」
私は一瞬にして、ここが戦場と化したのを察した。無論、戦場ジャーナリストという経験上、パニックになることはない。私は曹長の指示に従い、セーフゾーンと呼ばれる場所へ誘導されることになった。
その間、カメラマンのシンジ・ムラカミには「カメラを止めるな」と指示を出す。
私とムラカミのやり取りを聞いていたのか、曹長は苛立った表情を見せながら、立ち止まってこちらに振り返った。
「緊急事態ですので、取材は――」
曹長が撮影を止めようとした矢先だった。
私たちが居た兵舎からちょうど、窓際から見える五十メートルほど離れた格納庫。それが、頭上から降り注ぐ一本の「光」に貫かれた。直後、内側から爆発。
さらに周囲の兵舎に、真紅の閃光が襲い掛かった。それは瞬く間に兵舎を蜂の巣に仕立て上げると、遅れて「砲声」が鳴り響いた。
爆発によって煽られた破片は、周囲の――私たちが居る兵舎に向かってくるのは明白だった。
反射的に私とムラカミは、地べたに這いつくばる。無論、目の前に居た曹長もほぼ同時のタイミングで、身を屈めようとした。
「――」
轟音、衝撃。
意識を失いかけた私を、ムラカミが呼び戻す。
「ベイン、大丈夫か」
ずっしりと圧し掛かる何かを払いのける、ムラカミの声が遠くから聞こえる。
同時に、失っていた感覚が濁流のように押し寄せた。
痛み、重み、耳鳴り――そして、ここが今、戦場になったということを実感した瞬間。
「しっかりしろ」
身体が軽くなると同時に、ぼやけていた視界が徐々に晴れてきた。
声が聞こえる方向に、視線を向ける。そこには、土埃で塗れたムラカミの顔があった。
「ここは危険だ、外に出よう」
ムラカミに支えながら、薄らと聞こえてくるサイレンや砲声にようやく現実が戻ってきながら、私はぼそりと呟いた。
「カメラは無事か」
元ミラージュ社ACパイロット、ルシールは神妙な面持ちで当時の様子を語ってくれた。
「コシュマールは『TYPE-008』と『TYPE-002』によって編成されたPAC部隊だ。六機編成で、ACパイロットは全員、未踏査地区紛争で何かしらの実戦経験を積んでいる。もちろん、俺もだ」
やや呂律が回らない口調で、ルシールは震えた手で紙コップに入ったコーヒーを啜った。
坊主頭に、筋骨隆々の肉体。身に着けているシャツの上からでも、その筋肉が浮かび上がっている。
ルシールはミラージュ社を退職した後、民間警備会社に再就職。現在はシティガードとして、勤務している。未だ現役の風貌を醸し出しているが、ネームレスの話をしている間はその気迫は微塵も感じられなかった。
状況説明。
午前11時35分(ネームレスによるコサイタス強襲から三分が経過)
部隊:ミラージュ社軍事PAC部隊「コシュマール」元所属ACパイロット「ルシール」
状況補足:コサイタスから十キロ離れたエリアにて、コシュマールは哨戒任務を遂行。当該基地が所属不明のACによる襲撃を受け、急遽帰投命令が下される。
「哨戒中の全ユニットへ。即時帰投せよ。即時帰投せよ。緊急防衛戦闘の要あり」
「コサイタスは所属不明のACによる襲撃を受けており、現在も応戦中。基地の防衛戦力では敵ACの対処が極めて難しい。即時帰投せよ」
「――全機、通信は聞いたな。オートマティック操作によるルート移動は継続し、目的地をコサイタスに変更。ジェネレーター出力、六十パーセントまで使用許可。隊列を維持し、コサイタスへ帰投する」
ルシールは部隊に指示を出しながら、すぐさまコサイタスへ帰投しようとしていた。
帰投命令から五分後、コシュマールはコサイタスから五キロ圏内まで近づいたところで、通信が入った。
「哨戒中の全ユニットへ。敵ACは撤退した模様。繰り返す、敵ACは撤退した模様。帰投命令は継続。至急、帰投せよ」
「隊長、我が隊は十分後にコサイタスへ到着します。哨戒に出ている部隊からの通信を集約すると、我が隊はコサイタスに先着です。二分後にエキュロイユ及びルートルが到着予定」
長距離偵察用レーダーを搭載した002式に搭乗しているジョルジュからの報告と同時に、ルシールは「了解」と返事した。
ルシールが隊長を務めるコシュマールは、ジョルジュの偵察型TYPE-002を除ければ、最新鋭のPAC「TYPE-008」が支給されており、部隊の練度も申し分ない。
しかし、コサイタスがものの数分で甚大な被害を出すこととなったレイヴンに、ルシールは底知れぬ違和感を覚えていた。
「ジョルジュ、敵ACが撤退した方角は報告されているか」
「コサイタス及び各方面から帰投している部隊からの通信が錯綜としており、情報の精査に遅れが生じております」
「不確定でもいい、何か情報はあるか」
「了解。敵機はECMメイカーを展開し、撤退した模様。北西方面及び北東、我々の進行ルートへ撤退したという報告が挙がっています。なお、北西方面にはエキュロイユのルートです。通信は繋げます」
ジョルジュからの報告を聞き、ルシールは即断する。
「キュロイユに繋げてくれ。全機、敵ACと会敵する可能性がある。オートマティック操作からマニュアル操作へ移行。隊列はそのまま。レーダーに気を配れ」
現状、コサイタス司令部の指揮系統は麻痺しており、各部隊による判断が任せされている。
ジョルジュからの情報を基に、敵ACと接敵する可能性が考えられるコシュマールとキュロイユは連携が必要だとルシールは判断した。
ルシールは操縦桿を握り締めると、コンソール上にキュロイユとの通信許可を求める通知が表示される。
「通信、繋げました。どうぞ」
「こちらコシュマール、隊長のルシールだ。応答を願う」
「コシュマール、こちらキュロイユ。隊長のベネリだ」
キュロイユは、カイノスEO/2とTYPE-002による混成AC/MT小隊。その隊長であるベネリとは多少の面識があった。ベネリは先の未踏査地区紛争で、クレスト社によるミラージュ本社強襲事件に立ち会ったという経歴を持っている。
「敵ACの撤退した方角が、コシュマール及びキュロイユの進行ルートとこちらでは計算している。情報の精査は不十分だが、データリンクを求める」
「了解。コシュマールの指示に従う。データリンク、開始」
ジョルジュのACを通じて、キュロイユとのデータリンクを同期させる通知がコンソールに表示。ルシールはすぐにデータリンク権限を許可した。
コシュマール及びキュロイユとの距離、部隊数や詳細な機体の状況――それら全てが双方に共有される。
ベネリ、他ACパイロットが操縦しているTYPE-002、計三機。MTパイロットが操縦している、カイノスEO/02三機の部隊編成。カイノスの速度に合わせているため、時速約70キロのペースでコサイタスに向かっている。
なお、キュロイス周辺にIFF(敵味方識別装置)に反応する熱源反応無し。
データリンクによって得られた情報を、ルシールは確認。
(キュロイユのルート上で敵ACと会敵した場合、こちらのOBによる巡航機動で即応できる。しかし、こちらのルート上で遭遇した場合、キュロイユは――)
ルシールは想定している事態に備え、ベネリとの通信を行うことにした。
「こちらルシール。ベネリ、そちらのルート上で敵ACと会敵した場合、こちらはすぐに即応できるが――」
「こちら、ベネリ。分かっている。俺を含めたTYPE-002でそちらに即応する予定だ。随伴しているカイノスには、コサイタスへの急行を命令させている」
ベネリはルシールの意向を汲んでいた。それを聞いたルシールは、少しだけ緊張の糸が解れたのか、鼻で笑う。
「すまない、ベネリ。それを聞いて安心したよ」
「旧式のTYPE-002、三機じゃ分が悪いかもしれないが――」
それが、ベネリからの最後の通信だった。彼が話そうとした刹那、ノイズが走ると同時にデータリンクしているベネリのACの反応が消失。
ルシールが驚きの余りに瞬きをしている間に、随伴している二機のTYPE-002からのデータリンクが消失。
「メーデー、メーデー。こちらキュロイユ、周辺の全ユニットに通達。遠距離からの砲撃を受けている。即時救援を求める」
残存しているカイノスのパイロットから、緊急通信の発信。その間にも、カイノスからの反応消失。残り二機。
「キュロイユ、TYPE-002全機及びカイノス一機反応消失。高熱量弾による狙撃と断定――熱源反応感知。パターン赤、AC。方角西、キュロイユとの距離約五〇〇〇」
ジョルジュが詳細な情報と、敵ACを感知したことを報告。
「敵ACはこちらの存在を認知しているか」
「キュロイユとのデータリンクが傍受されている場合、こちらを確認している可能性が非常に高いです」
敵ACに奇襲を仕掛けるプランを実行しようとしたが、ルシールはジョルジュからの報告を聞いて断念する。
「全機、キュロイユの救援に向かう。OBの使用を許可。AIによる最適路を計算し、ルート共有。ジョルジュはコサイタス及び全ユニットに現状を報告」
数的有利を活かして、正攻法で行くしかない。ルシールはキュロイユと合流を第一とし、その間に救援へ駆けつける他部隊との合流を繰り返し、数的有利によって敵ACを撤退させる考えへ至った。
「ルート設定、完了。十五秒後、ポイント246にてOB巡航機動が終了」
ルシールはキュロイユと合流するために、OBによる巡航機動を部隊に通告。その間に、AIが最適路を計算し、キュロイユから四キロ地点で巡航機動が終了すると報告した。
「ルート設定を開始。OBによるオート操作で、マークした地点へ向かう。カウントダウン開始」
隊列を揃えるために、AIによる自動操縦を設定。そうでなくても、OBによる巡航機動は特別な技量や知識を要するため、殆どのACパイロットは自動操縦を推奨されている。
「3、2、1、OB駆動します」
AIによるアナウンスと同時に、六機のPACはOBによる時速四〇〇キロを維持した巡航機動を開始。身体に襲い掛かるGにルシールは慣れてしまった痛みを感じた。
キュロイユへの襲撃からOBによる即応行動開始。約一分間の出来事。その間に、残存しているキュロイユのカイノス部隊は一機となっていた。
「ジョルジュは敵熱源反応を監視。ECMジャマーの使用が考えられる。常に動きを報告。現状はどうなっている」
ルシールはコシュマール周辺のレーダーを確認しながら、敵ACの状況をジョルジュに一任。
「敵AC、キュロイユに接近中。距離三〇〇〇。残存しているカイノス、コールサインはブラボー1-2。回避行動を続けています」
「ブラボー1-2に、こちらと合流するように通信を」
残存している味方を見捨てるわけにはいかない。ルシールは焦る気持ちを抑えながら、操縦桿を強く握り締めた。
「ポイント246まで残り五秒」
「目的地到達後は、フォーメーションDに移行し交戦開始」
AIが設定したルートに到達することを報告。その通信を聞きながら、ルシールは部隊に交戦後の指示を伝える。
モニター上には、エキュロイユの部隊のものだと思われる、黒煙が点在するように靡いていた。
「敵ACよりECMジャマー反応。エキュロイユを含む、周囲三〇〇〇メートルにジャミングが発生。カウンターECM起動。ジャマー除去まで十秒」
「ポイント到達。OB、駆動停止」
想定通りの敵ACの動きに、ルシールは動揺しない。同時に、目的地へ到達したことをAIは報告した。
一斉に散開しながらも、コシュマールは互いの距離を二〇〇メートルに維持したフォーメーションDの陣形を構築。
ルシールはジョルジュのPACと共に、後衛へ。残る四機のPACはエキュロイユのブラボー1-2と合流するために、前進。
「ノイズキャンセリング(NC)通信を開始。ブラボー1-2とのデータリンク開始」
ジョルジュの報告と共に、ECM下の影響を受けないNC通信によるデータリンクが開始。しかし、ブラボー1-2からの通信が来ない。
「こちらコシュマール。ブラボー1-2、現状を報告しろ」
レーダー上には、ブラボー1-2は感知されている。だが敵ACの熱源反応はデータ上ではカウントされているのに関わらずその所在が掴めなかった。
ジョルジュはブラボー1-2からの返答を求めるが、帰ってこない。
「ECMジャマー指数がレベル5の可能性がある。確認しろ」
「ネガティー。ECMレベル3と確定。NC通信は良好」
ジョルジュからの報告を余所に、先行しているPAC、ドルリュー機が敵ACにロックオンされていることを告げるアラームが鳴り響いた。
ドルリューは急いで回避行動を取ろうとするが、爆発が鳴り響く。同時に、彼とのデータリンクが消失した。
突然の事態だが、コシュマールは隊列を維持。しかし、パイロット間での動揺が波紋のように広がった。
「攻撃だと。どこからだ」
「レーザー照射、距離三〇〇〇。ブラボー1-2から――違う、敵ACはブラボー1-2を盾にしています」
ドルリュー機に次いで、先行しているバルビゼからの報告と同時に望遠カメラによる映像がコンソール上で表示された。
距離三〇〇〇、棒立ちしているブラボー1-2のカイノス。その後ろに、一機のACが見え隠れしていた。
しかしその映像は、すぐに途切れる。バルビゼからのデータリンク消失。
「後退、後退しろ。各機、散開」
どうやって敵ACがブラボー1-2の反応を欺瞞していたかの精査よりも、ルシールは部隊に後退を促す。ECMジャミングが除去され、ブラボー1-2の反応が消失するのと同時に、爆発音が鳴り響く。
刻一刻と状況が変化し、ジョルジュがそれを報告する。ルシールは無意識にそれに対する返答を送りながら、操縦桿を慌しく動かしていた。
自身の生存を第一とする本能が、そうさせていた。
なぜなら、敵ACは強化仕様だったからだ。
(敵ACのスキャン完了。移動しながらの、レーザーキャノンの使用を確認。強化仕様です)
数分前の、ジョルジュからの報告が耳の中にこびりついている。
特殊なデバイスを埋め込むことによって、ACの各種リミッターを解除した強化仕様AC。それならまだしも、パイロット――レイヴン自身に特殊な手術を施し、ACに適合させる技術。
強化人間。その可能性が大いにあった。
眉唾話ではない。現に敵対するACは、コサイタスという軍事基地を陥落させていた。
ジョルジュが思考を張り巡らせている間に、既に前衛のジスカールとラクルテルからの反応は消失。残存するのは、ジョルジュと自分だけになった。が、その時には、コシュマールからの通信に駆けつけた友軍の部隊が合流していた。
PAC部隊、混成機甲部隊、更にはミラージュ本社から要請を受けたレイヴン――それら全てを、敵ACは「破壊」した。
レーザーキャノンで数キロ先から狙撃し、それでも仕留められなかったのをリニアガンで砲撃。肉薄するPACに対して、両手に装備されたマシンガンで文字通り蜂の巣にする。
味方からの、砲撃やミサイルによる攻撃は、まるで戦闘機のような機動で回避。
操縦の大半をAIによるオートマティック操作で任せている、ACパイロットでは出来ないことだった。
並大抵のレイヴンでも、この敵ACの機動は出来ないと断定できる。
その時、ルシールは確信した。このACのパイロット――レイヴンは強化人間だと。
紫色に塗装された中量二脚ACに、ルシールは恐怖を通り越した感情を抱いた。
状況報告。
損害:通常のAC一機、PAC及びMT部隊、損害過多。コサイタスが保有する機甲部隊の三分の一が大破として認められた。
備考:ルシールは独断で撤退した責を取られ、ミラージュ社軍規違反として懲戒解雇を受ける。
追記:ミラージュ社に雇用され、破壊されたACのブラックボックスから、コサイタスを襲撃したACのスキャンデータが確認された。
ACネーム:ミステリー。
レイヴンネーム:ネームレス。
「当時の現場検証で、ネームレスは残存したブラボー1-2のパイロットだけを殺害したんだ。恐らく、コクピットだけを狙ってマシンガンで狙撃したんだろう。カイノスを盾にし、その熱源反応を自身の熱源反応に重ねた。当時の熱感知レーダー技術の、裏を掻いた戦術だ」
自慢げに語るルシールだったが、その目は恐怖に駆られているようだった。
「あんたも、あの場に居合わせたのなら分かるだろう。あいつは、一体何者だろうってな」
一呼吸突きながら、ルシールは椅子に背中を預ける。天井に吊り下げられた、間接照明をしばらくの間、見つめていた。
「レイヴンの恐ろしさは俺も知っている。だが、ネームレスは別格だ」
「たった一機で軍事基地を壊滅させた。文字通りだよ。ただのレイヴンじゃそんなことできない。軍事ニュースでも、滅多に聞かない文面だ」
「ああ、そうかもしれないな。たまに『聞くかもしれない』文面だ。だが俺やあんたは、そいつに出会ってしまった」
「俺は今でも悪夢にうなされるよ。あんたはどうだ」
私は、今でもそれを尋ねてきたルシールの顔を忘れることはできない。
恐怖を通り越して、まるで「憧れ」を感じられる瞳で話しかけてきたルシールの表情は、不気味だった。
現時点で判明したネームレスの情報。
地球暦204年8月以前から活動を開始。
その一か月後に、筆者ベインが取材していたミラージュ軍事基地を強襲。
強化AC「ミステリー」に搭乗。非常に扱いづらいアセンブルをしている模様。
暫定的だが、ネームレスに強化人間の可能性が浮上。
取材協力:ルシール氏及びグローバルコーテックス、ミラージュ社。
追記。
ルシールはインタビュー後、民間警備会社を退職し、レイヴンとして活動。
企業間紛争が激化しているエリアでの依頼を受け続けていた。彼を知るレイヴンは皆、「何者」かに会うかのように、激戦区へ赴いていたとのこと。
地球歴207年12月20日、作戦遂行中に戦死が確認された。
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状況説明。
日時:地球歴205年2月12日
ジャーナリストの仕事と並行しているネームレスの取材は、難航していた。
筆者は単刀直入に、ネームレスを担当していたオペレーターへの取材を申し込むため、傭兵斡旋企業「グローバルコーテックス」へアポを申し込んだ。しかしながら、守秘義務のため、取材の方は門前払いされてしまう。
暗礁に乗り上げた取材だったが、私はあるレイヴンに取材を申し込んだ。
それは、アリーナという舞台で、ネームレスと戦ったことがあるという一人のレイヴン。
エクレールと名乗る人物だった。
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