黒子のバスケ キセキを討つ奇跡   作:のなめん

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不 定 期 更 新 ! !

遅くなりました、、、


第10Q

三和高校との準々決勝を前に、椿丘メンバーは控え室でミーティングを行っていた。

 

「スタートだが、吉永、重松、来栖、森田、熊谷でいく」

 

若林がスターティング5を告げる。攻撃型のチームである三和が相手ということもあり、バックコートをディフェンスのできる3人で固め、ツーセンター対策にチーム1の長身である2人を当てる。川崎をインサイドに据えるパターンも考えたが、まずは純粋に高さで対抗しようという考えとなった。

 

「熊谷は公式戦では初スタメンで緊張もあるだろう、4人がしっかりサポートしてやれ。熊谷も、お前の武器である高さを存分に活かして戦ってこい」

 

「「「はい!!!」」」

 

「今日の相手は今までとは違う。少しの油断で足元すくわれるからな、気ぃ張っていくぞ!」

 

「「おう!」」

 

若林の指示と吉永のチームを引き締める言葉でミーティングは終了となり、メンバーはコートへと向かう。

 

「来栖くん!」

 

「橋本か」

 

試合へ向かう黎を橋本が呼び止める。

 

「今日は責任重大だね」

 

「ああ、向こうのエースとのマッチアップだからな」

 

「来栖くんなら勝てるよ、応援してるから頑張ってね!」

 

「ああ、ありがとう。勝ってくるよ」

 

エールをくれた橋本に笑って応え、コートへと足を向ける。

 

「…綾菜ちゃん、やっぱり来栖くんのこと好きなの?」

 

「え!?ど、どうして??」

 

それを見ていたもう1人の1年生マネージャー、五十嵐が黎の去った後からかうように橋本に言う。

 

「だって来栖くんにだけ見てて態度違うもん、その反応、やっぱり好きなの?」

 

「うーん…どうなんだろう…憧れ、が近いのかな」

 

ニヤニヤとしている五十嵐に若干悩みながら答える橋本。

 

「初めて来栖くんのプレーを見た時さ、かっこいいと思うと同時に住む世界が違うな、追いつけないなと思っちゃったから、プロの選手とかに抱く憧れに近いものなのかも」

 

そんな話をされているとは知る由もない黎の背中を、橋本はゆっくりと見送った。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

「出てきたぞ!!千葉の王者椿丘だ!!!」

 

「今大会全て100点ゲームで圧勝!今日も期待してるからな!!」

 

椿丘の入場で観客のボルテージも上がる。

 

「対するは千葉の新星、三和高校!」

 

「エースの佐久間を中心に去年より力をつけてきた新鋭だ!王者椿丘を食らうか!?」

 

観客が期待しているのは椿丘だけではない。近年着実に力をつけ、千葉の王座争いに加わった三和に期待を寄せる観客もたくさんいた。

 

「向こうも落ち着いてるな」

 

「うん、、のまれてる感じじゃなさそうだね」

 

吉永と重松が三和ベンチを見据えて話す。今までの対戦相手は自分たちを相手にするのに恐れがあったり、雰囲気にのまれていたりしたが、三和にそれはない。今までのようにはいかないことを改めて察した。

 

 

 

「割と俺たちの応援もいるんだな」

 

「番狂わせを期待してる奴らもいるってとこだ」

 

場所は変わって三和高校ベンチ。キャプテンでセンターある木元と副キャプテンでガードの中島だ。こちらも王者を相手にする前ではあるが、非常に落ち着いている。

 

「今日はちょっと骨が折れそうだ、初っ端から飛ばしていきましょう」

 

エースである佐久間が待ちきれないという様子で試合開始を待つ。これまでの試合でも全て攻め勝ってきた三和だ。今回も点の取り合いを望む。

 

「今日も頼むぜ、インサイド陣」

 

「はい、中の主導権は絶対渡しません」

 

sgの吉野が2年生でツインタワーの一角である長田の背中を叩き、長田もうなずいて応えた。

 

「両チーム整列!」

 

「時間だ、行くぞ」

 

「よし、今日も攻め勝つぞ」

 

2人のキャプテンの言葉に続き、両軍の選手がセンターサークルへ向かう。

 

「「お願いします!!!」」

 

椿丘スターター

#4 吉永優斗 180cm pg

#5 森田康平 190cm pf

#8 重松恭弥 179cm sg

#17 熊谷和人 202cm c

#18 来栖黎 188cm sf

 

三和スターター

#4 木元 匠 197cm c 3年

#5 中島 凛 179cm pg 3年

#6 吉野 淳也 178cm sg 3年

#7 佐久間 翔也 184cm sf 2年

#8 長田 裕史 196cm pf 2年

 

シャンプボールは熊谷と木元。高さで勝る熊谷がボールを弾き、吉永がボールを抑えて椿丘ボールでスタートだ。

 

「よし、1本!」

 

速攻にはいかず、ハーフコートで確実に先取点を狙う動き。椿丘は吉永、重松、黎のバックコート陣だ。ゲームメイクが1番しやすい布陣といえよう。吉永は1度重松にパスをさばくと、中へとカットイン。熊谷と森田のダブルスクリーンを利用して左コーナーへと走り込む。誰もが重松から吉永へのスキップパスを予想したが、ここで黎がハイポストにシールし、重松からボールを受けた。

 

「こいよルーキー、千葉のてっぺんはそう容易くねえぞ」

 

佐久間が黎を挑発するように言う。

 

「わかってますよ、それと勝負はお預けです。まずは、ここだ!」

 

スクリーンのあとローポストでポジションを取っていた熊谷へとパスが通る。ゴール下での熊谷の支配力は相当なものだ。高さを活かしてゴール下のシュートを決めた。

 

「よし!いいぞ熊谷!」

 

吉永も重松も黎も、最初は熊谷でいこうと考えていた。公式戦初スタメン、しかも相手は強豪校ということで、まずは熊谷の緊張をとろうと思っていたのだ。

 

「よし!」

 

ベンチで若林も満足げに頷く。大事な試合の入り、まずは問題なく先取点を取れた。

 

「構うか!攻めてくぞ!」

中島がボールを運んでくる。三和はあくまでも点の取り合いを望んでいる。吉永もプレッシャーをかけるが、中島はそれで簡単にボールを失うようなガードではない。ハーフラインを超え、フロントコートに侵入してくる。1度中を経由し、ボールが佐久間に渡った。

 

「さて、初っ端から飛ばしていこうか」

 

「お手柔らかに頼みますよ」

 

睨み合う両エース、いきなりのエース対決が見れるかと、観客も湧いた。

 

「来るか!?エース対決!」

 

「いけ佐久間!千葉の厳しさを教えてやれ!」

 

盛り上がる会場をよそに、向かい合うふたりを静寂が包む。目線や身体でのフェイクの後、佐久間は不意にスリーポイントを放った。

 

(くそ、いきなりかよ!)

 

ボールはリングの中央を綺麗に射抜いた。

 

「きたああああああ!!!」

 

「エース対決はまず佐久間が1本!」

 

 

「おいおい寝てんのか?警戒してくれねえと困るぜ」

 

「今ので目が覚めましたよ、もうさせません」

 

佐久間の皮肉を受け流し、次は椿丘のオフェンスだ。

 

「来栖、大丈夫か?点を取られた直後のオフェンスで止められては流れを一気に持ってかれるぞ」

 

「大丈夫です、ボールください」

 

吉永が心配して黎に声をかけるが、その時の黎の表情は真剣そのもの、自分に任せてほしいとの答えだった。

 

「よし、やり返してこい」

 

吉永がフロントコートまでボールを運んだあと、黎にボールを託す。黎はスリーポイントラインの外側でゆっくりとボールをついている。左右に揺さぶりをかけた後、得意のステップバックで佐久間から距離をとり、スリーポイントを放った。

 

(こいつ、スリーポイントラインからさらにステップバックしてくんのかよ!)

 

佐久間が心の中で毒づく。ボールはリングの中心を綺麗に射抜いた。

 

「そちらも目が覚めましたか?次もやりますよ」

 

最後に相手への挑発も忘れない。完全にやられたことをやり返した。

 

「…ったく、生意気なルーキーだ」

 

続く三和のオフェンスも、佐久間へとボールが渡る。

 

佐久間はクロスオーバー、スピンムーブと色々試すが、なかなか黎を振り切れない。ここで佐久間は強引に右へドライブ、黎と身体が接触するが、そのまま突っ込んでくる。黎が押し込まれないよう踏ん張ったところで、レッグスルーを使って急停止、後に体重がかかっている黎は反応できない。落ち着いてミドルジャンパーを決めた。

 

「両者譲らねえ!!」

 

「序盤からガンガンやりあってるぜ!」

 

黎と佐久間の点の取り合いに観客のボルテージも最高峰だ。続く黎のオフェンス。黎は揺さぶりの後、宣言通りステップバック、これに佐久間もついてくる。

 

「連続でさせるかよ!」

 

「そりゃ次もやるって言ったんですからついてきてもらわないと困りますよ!」

 

黎は佐久間がついてきたのを確認して逆をついてドライブ、佐久間もすぐにコースへ入るが、黎はここで佐久間と身体をぶつけてすぐにもう一度ステップバック、後ろへ下がっているとこにさらに黎の体で押された佐久間は倒れないように踏ん張るのが精一杯で、とてもステップバックについていけない。再び黎のスリーが決まった。

 

椿丘 8

三和 5

 

「…俺と同じやり方で点取りやがった」

 

佐久間に出来ることは自分にも出来るという言外のアピール。さらに佐久間はツーポイントだったのに対し黎はスリーポイントだ。取られたもの以上のことをやり返した。続く三和のオフェンス。ボールはまたしても佐久間に渡る。

 

「あいにくうちのオフェンスは俺だけじゃねえ、うちのもうひとつのうりは…」

 

佐久間はローポストに陣取る木元にパスをさばいた。

 

「インサイドだ」

 

ボールを受けた木元は熊谷を背中に背負い、ジリジリと押し込んでいく。熊谷もただ押されているだけではなく、踏ん張って木元を押し返している。

 

「キャプテンのオフェンスはこっからだ」

 

木元は右へスピンムーブ、熊谷が反応したところでそれを中断し、左へターンしながらフックシュートを放った。これが決まり、三和もインサイドから得点をあげる。

 

「木元匠、抜群のパワーはもちろん、最近はああいう細かいプレーにも磨きがかかってきたいいセンターだ。熊谷がどこまでくらいつけるか」

 

ベンチで若林が呟きながら試合を見つめる。若林がこの試合で熊谷を起用した最大の理由が、木元に熊谷をぶつけるためであった。

 

「ドンマイ!1本取り返すぞ!」

 

吉永がボールを運んでいく。中島がディフェンスについているが、吉永は左右の揺さぶりを高速で繰り返し、中島の体制が崩れたところをスピードで抜き去る。ヘルプに来た木元を確認し、熊谷にバウンズパスを出した。

 

「いけ!熊谷!」

 

「遅い!!」

 

ボールを受けた熊谷がダンクに向かうが、木元が追いつきダンクを阻んだ。熊谷は決して速い選手ではない。木元はパワーに加えてスピードも兼ね備えたセンターであるため、熊谷のダンクに追いつくことが出来た。

 

「ナイスブロック、キャプテン!速攻!」

 

佐久間がボールを確保し駆け上がる。そこに黎が立ちふさがった。

 

「っと、やっぱ簡単には点取らせてくれねえな」

 

「最初に1本決めたとはいえ熊谷もまだ緊張してるみたいなんでね、解れるまでは俺達が踏ん張るしかないっすね」

 

「あいにく俺らはそれを待ってやるほどお人好しじゃないんでな、よっと!」

 

佐久間はスリーポイントラインの外からゴールに向かってふわりとボールを投げた。その先には

 

「木元だ!!」

 

先程ダンクを阻んだ木元が既に走り込んでいた。熊谷と一番違うのはスピードだ。熊谷では木元に追いつけない。

 

「一気に主導権いただきだ!」

 

木元がボールをリングに叩き込もうとした時、

 

「させん!!」

 

それを阻んだのは森田。森田は木元同様スピードもパワーも兼ね備えている。熊谷には追いつけなくとも森田ならば可能だ。

 

「ナイスだ森田!やり返すぞ!」

 

こぼれたボールを拾った吉永が攻め上がっていく。スピードに乗り、自身のマークマンである中嶋をあっさりと抜き去り、ゴール下へと侵入、長田がヘルプに来るが、吉永は構わずシュート体制に入る。長田のブロックを超える高いループのフローターを放ち、沈めた。

 

「フォローは俺達がしてやる、ガンガン攻めてけよ」

 

自陣へと戻る際、熊谷に声をかけることも忘れない。熊谷がブロックされての速攻を森田が防ぎ、吉永がカウンターを決めた。この事実は熊谷にとってとても大きい。

 

「頼りになる先輩たちだな、あの人たちが一緒に戦ってくれんだ、何も怖いものはないよな?」

 

黎も熊谷に声をかける。試合開始からまだ動きが硬かった熊谷も、落ち着きを取り戻したようだ。

 

「ああ、俺は俺のできることをやるよ」

 

「頼むぜ、あと木元さんのシュートなんだがな…」

 

ーー

 

続く三和のオフェンス、ボールはまたしても木元へと渡る。

 

(こいつ、また重くなった…!?)

 

熊谷の緊張がほぐれたことで身体に入っていた余計な力が抜け、さらにパワーが増した。木元は熊谷をほとんど押し込めなくなっていた。

 

(だがスピードは俺の方が上だ、パワーだけじゃ勝てないのさ1年坊主!!)

 

木元得意のスピンムーブからのフックシュート、熊谷ではこれは追いつけない。

 

「追いつく必要は無い」

 

黎のつぶやきと同時に、熊谷が僅かに木元のシュートに触れた。そのままアウトオブバウンズになる。

 

「お前…なぜ…?」

 

「来栖からアドバイスをもらったんです」

 

「なに…?」

 

ーーー

 

「木元さんのシュートなんだが、スピンムーブしてからゴールから遠い手でフック、あれに追いつくのは至難の業だ。でもフックは打点が低い、リリースに追いつけなくてもゴールのあいだに手を伸ばせばお前なら届くはずだ」

 

熊谷のスピードではボールを放つ瞬間に追いつく事は出来ない。しかし熊谷の高さなら低い打点から放たれたボールに触れることは可能だ。黎の授けた木元のフックシュート対策だった。三和側のスローインになる。ボールを受けた木元が再度ローポストで熊谷に挑む。熊谷を背負いながら左右の揺さぶりを繰り返し、スピンムーブからフェイダウェイの体制に入る。熊谷が反応したのを見てシュートを中断、ピポットを使って熊谷をかわし、再度シュートを放つ。

 

「させない!」

 

しかし熊谷のブロックが間に合った。こぼれたボールは黎が抑え、椿丘の速攻となる。

 

ーーー

 

「飛ばなくていいことが分かったんだ」

 

観客席、椿丘と三和の試合を観戦していた相葉学院の選手たちが熊谷が急に木元に対応し始めたことについて語っている。

 

「 これまで熊谷は木元の高さに対抗するには自分も飛ばなければならないと思ってた、でもあのフックのブロックでそうじゃないことが分かったんだ。さっきのフェイダウェイにしても、打点が下がるのなら自分は木元が飛ぶのを待ってからでもブロックできる、できなくても充分プレッシャーをかけることが出来ると思ったんだな」

 

そう話すのはキャプテンでpgの島村雄也。

 

「今の一連のプレーだけでよくそこまで分かったな」

 

副キャプテンであり、sgの東祥平が感心したように言う。

 

「伊達にガードやってねえって、まあ、あの高さは脅威だが、俺ら相手に出てくるかはわからないけどな」

 

「ああ、うちのセンターの横野は木元よりスピードもパワーも上だ。熊谷じゃパワーではいい勝負しても平面の勝負ではお話にならない」

 

「森田に勝つために鍛えてきたからな、1年生に負けるわけには行かない」

 

エースの能登優馬とセンターの横野拓也も続いて話す。

 

「……」

 

そして、モリス・ブラウンは何を言うでもなく速攻に走る黎を静かに見ていた。

 

ーーー

 

駆け上がる黎の前に立つのは佐久間。2回連続で攻撃を防がれての速攻など、決められれば流れを一気に持っていかれてしまう。

 

「止めてやる、来いよ来栖」

 

「じゃあ行きますよ」

 

まず右へ、佐久間が反応したのを見て左へ、これにも佐久間はついてきた。一度様子を見るように左手でボールをついた黎だったが、そこから身体の左側にあるボールを右手でコントロールし、そのまま佐久間を抜き去った。

 

「くそ!シャムゴッドか!」

 

シャムゴッドクロスオーバー、進行方向とは逆の手でポールをコントロールし、ディフェンスの逆をつくテクニックだ。左へ進むことを意識させての急な切り返しに、佐久間は反応出来なかった。そのままペイントエリア突き進む黎のもとに吉野がヘルプに来る。ここで黎は高速でバックビハインドを繰り返し、吉野の動きが止まったのを見てギャロップステップで抜き去り、レイアップを沈めた。得意のシェイクアンドベイクだ。

 

椿丘 12

三和 7

 

「さあ、このクォーター一気にいただきますよ」

 

挑発するように黎が三和メンバーに告げた。




次も必ず書きます…
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