モブ厳な世界で時の王者やってます。   作:あんこパンパンチマン

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更っ新っっ!
今回は約五千文字と短め。

 


モブ厳な世界で王様説明会。

 

  

────カチッ、カチッ、と一定の間隔で時間を刻む時計の秒針の動く音が聞こえる。ソウゴは冷や汗を流しながらゆっくりと顔を上げて目の前の彼女を見上げる。

 

「えっと……その、なんで俺は正座させられている、んですかね。未来……さん……っ?」

 

 

「…………」

 

営業終了状態にした時計店の一室の床でソウゴは正座をしていた。目の前には私は怒っていますと言わんばかりの様子で仁王立ちしている未来の姿がある。

 

その背後には大きなクッションを抱きしめてソファに腰を下ろすクリス。

 

ソウゴは助けを求めるように視線を向けるがそれに気づいたクリスは無言で必死にブンブンと首を横に振っている。

 

市街地に出現したノイズを殲滅してから既に一日程時間が経過している。二度もノイズとの戦闘に遭遇した未来は響が現場処理に来ていた弦十郎に頼み込んだことで特異災害対策機動部二課の外部協力者として認められた。

 

機密保持やら協力者としての手続きで軽く拘束状態になっており話を聞きに行こうにも行けない状況になっていた。そしてようやく時計店に足を運ぶことができた。

 

「ちゃんと、話してください。あの姿の事とか、どうしてノイズと戦ってるのか」

 

「は、はいっ」

 

未来から放たれる威圧感に思わず圧倒されているソウゴの姿にクリスが面白そうにニヤニヤ笑っていると、未来の眼光がギロリとクリスを捉えた。

 

「クリスも後でちゃんとお話聞かせてね?」

 

「………ッ!」

 

綺麗な笑顔を浮かべて振り向いた未来に、ビクンッと反応したクリスが首が取れそうな勢いで頷く。哀れなクリス、彼女も未来のお話から逃げられない。笑顔とは本来、威嚇の意味を持つものであるというが、まさにその通りだった。

 

長い話になると予想したソウゴは、ココアを注いだマグカップを人数分用意してテーブルに置くと席についた。

 

「……話す前に聞くけど、もしかしたら聞かなければよかったって思うかもしれない。それでも聞きたい?」

 

「……はい。聞かせてください」

 

「アタシも……知りたい。アンタの力の事とアンタが何を語るのか」

 

真剣な様子で未来たちを見つめるソウゴ、空気が重くなるのを二人は感じた。自分が知っている彼のいつもとは違う雰囲気を纏ったソウゴに圧されるように、未来は固唾を飲み静かに頷く。

 

「……わかった、じゃあ説明会と行こうか。何から語ろうかな……そうだな、まずは俺の……いや、ライダーの力について語ろうか」

 

ソウゴはそう言ってジクウドライバーとジオウライドウォッチを取り出した。取り出された二つのアイテムはカチャッと音を鳴らしながらテーブルに置かれる。

 

「なんですか、これ?」

 

「これってアンタが使ってた……」

 

未来とクリスは目の前に置かれたドライバーとライドウォッチを覗き込むようにマジマジと見つめる。ソウゴは並べた変身アイテムを指差し説明を始める。

 

「これが何で作られていて、どういう仕組みで出来ているとかは俺もよくわからないし理解してる範囲で説明しても長くなるからすっごい簡単に言うと、俺はこの二つのアイテムを使って仮面ライダージオウに変身……まあ戦う力を使ってるんだ」

 

「仮面、ライダー……なんだよそれって」

 

「仮面ライダーっていうのは、悪の組織が使う異端の力をあえて受け入れて、それを正義のために行使する者たち……かな? まあ、俺は自分で“仮面ライダー”を名乗ったことはないけどね」

 

「はあ? なんだそりゃあ」

 

ハハハと照れ臭そうに笑いながら頬を掻くソウゴ。なんだかあやふやな説明をされたクリスは呆れるようにため息をついた。

 

ジオウライドウォッチを手に取り眺めていた未来は、ソウゴに視線を向けた。

 

「ソウゴさんはいつからその、仮面ライダーの力を?」

 

「俺が初めてジオウに変身したのは高校三年生の夏ぐらいかな、その時にウォズっていう胡散臭そうな男が現れてね、そのベルトを渡されて変身したんだ。そこから全部始まった」

 

そこからソウゴは語り出した。自分が魔王になる為に歩んできた物語を。

 

──50年後に“常磐ソウゴ”が最低最悪の魔王と呼ばれる存在になる事。

 

──そして、そんな最低最悪な未来を変えるために、ソウゴを抹殺しに50年後の未来から過去へとやってきた未来人の戦士と少女。

 

──同じく50年後の未来から現れた預言者。

 

──別の時間軸からやって来た、時間改変を目論む謎の組織タイムジャッカー。

 

──最低最悪ではなく最高最善の魔王になる為に、19人の仮面の英雄の力と世界を継承する旅。

 

──救世主と呼ばれた戦士と何度もぶつかり、認め合い親友(とも)になれた。

 

──家臣の預言者と王家の少女と絆を育み、仲間になれた。

 

──様々な英雄との出会いが、様々な強敵との出会いが自分を強くし変化させていった。

 

──そして、玉座を欲する暴君との最後の戦いを終えて崩壊していく世界を救い、気がつけば自分一人だけ知らない世界に迷い込んでいた。

 

ソウゴの口から語られたのは、どれも現実味が薄い、夢物語のような話だ。仮面ライダーの歴史、ジオウの物語を未来とクリスは固唾を飲み、愕然とし、呆然としながら聞き入っていた。

 

ソウゴも全てを語った訳ではない。

自分が“常磐ソウゴ”に“憑依した誰か”という事や、オーマジオウの時空を破壊し創造する力、世界一つ簡単に生み出す事のできる……規模の大きすぎる能力の事などは語らず、少し濁す形で伝えた。

 

語り終えた頃には二人の表情は暗かった。そんな二人の様子にソウゴは苦笑いしてしまう。

 

「これが俺の隠し事かな。なにか感想とかある?」

 

「感想って……もうどこからどう突っ込めばいいのかわかんねえっての」

 

「まあ、そうだよね」

 

いきなりこんな事語られても情報量が多すぎて頭が回らないか。ソウゴはそう思いながら空になったマグカップをテーブル端に退かすと、俯き暗い表情をしていた未来が顔を上げた。

 

「ソウゴさんは……怖く、なかったんですか? ある日突然戦う力を渡されて、命も狙われて、王様になる為に戦う事になって」

 

マグカップを握る両手には力がこもりその声は震えていた。

 

「……戦うのが怖くなかった訳じゃないよ、死ぬかもしれないって思って逃げ出したくなる時もあった。中途半端に借り物の夢を掲げて追いかけて、それで全部投げだして諦めた事もあった」

 

「……じゃあ、どうして」

 

「それでも戦うしかなかったってのもあるけど、夢を諦めきれなかったていうのが一番かな。王様になりたいって言った“彼”と同じ道を歩んで、その借り物だった夢を本気で追いかけた」

 

ソウゴの言った“彼”とは誰の事なのか未来にはわからなかったが、照れ臭そうに尊敬する相手の事を口にするソウゴの様子から、悪い人ではないのだろうと判断した。

 

「気になってたんだがフィーネたちが探ってたオーマジオウの正体って」

 

「俺です」

 

「……一緒にこの世界に来たとかじゃなくてか?」

 

「俺です」

 

無駄にキリッとした表情で答えるソウゴの様子に、クリスは思わず頭を押さえる。

 

フィーネや二課の連中が知り得ず、騒がせていた未確認の正体が同一人物だった。なんでノリノリで一人二役演じてるんだこの魔王。実はバカなんじゃないのかとツッコミたくなる気持ちをグッと堪えた。

 

「……なあ、アンタはそれでいいのか?」

 

「えっ、なにが?」

 

「……いや、やっぱりいい。なんでもない」

 

クリスはどうしても気になっていた事を聞こうと思い口を開くが、数秒程思考してやめた。

 

クリスの両親は幼い頃に内戦に巻き込まれてこの世を去っている。ソウゴもまた幼い頃に事故で両親を亡くしており、その時から既に戦う運命にあった。

 

幼い頃に両親を亡くしているという似たような境遇に対して、思うことがない訳ではないクリス。

 

世界を救う為に戦い、挫折し傷つきながら進み続け、大切な親友と仲間を喪いながらも勝利して、崩壊しつつあった世界を救った。そして最後には別の世界に迷い込んで一人ぼっちだ。

 

目の前の青年が見返りを求めて世界を救った訳ではないことはわかっている。それでも必死に戦った彼にそんな結末を迎えさせるのかと、ぶつけようのない怒りが沸いてくる。

 

「とまあ、俺の話はこれくらいかな。そこでお願いなんだけど……今俺が話した事とライダーの力の事は他の人には黙っててもらえないかな。自分で言うのもなんだけど俺の持つ力は強力すぎる、もしバレたらこの力を利用しようとする奴が現れる筈だ」

 

「………ッ!」

 

「実際、仮面ライダーの力を軍事兵器として利用しようとした人たちがいて……それでたくさんの人が傷ついた。そんな光景は見たくない、だからこの事は誰にも話さず黙っていてほしいんだ」

 

二人に対して頭を下げるソウゴ。

 

未来に対して酷い事をお願いしているな、と軽く自分に嫌気が差した。大切な人に隠し事をしたくないと言っていた未来、嘘を嫌い親友に隠し事をされて怒っていた彼女に対して、隠し事をしてほしいとお願いしているのだから。

 

「……アタシは別に構わねえけど、シンフォギアとかも似たような理由で隠されてるしな」

 

仮面ライダーの力で戦争なんてたまったもんじゃないとソウゴの願いと理由に納得し承諾したクリスは、チラッと未来に視線を送った。視線の先にはどこか表情の硬い未来がいる。

 

「響にも話しちゃいけないんですか?」

 

「うん、できれば響にも黙っててほしい。響は二課と繋がってるし響は隠し事とか得意じゃないでしょ? 響から芋づる式にバレちゃう可能性だってあるし」

 

「……そうですね」

 

ふとした拍子にポロッと口を滑らせて、知られたくない秘密をバラしてしまい慌てふためきながら墓穴を掘っていく親友の姿が容易に想像できて、未来は苦笑いする。

 

未来は悩むように唸ると深く溜息を吐いた。

 

「……わかりました。ソウゴさんの隠し事については誰にも言いません、けど」

 

「けど?」

 

「この事はいつかちゃんと響に話してくださいね、あの子はソウゴさんのことを信頼も信用もしてますから。ソウゴさんも信じてあげてください」

 

そう言ってソウゴを真っ直ぐと見つめる未来。自分の評価が意外に高いのと、そんな事を言われるとは思ってもいなかったので驚くが、しっかりと頷く。

 

「それとですね」

 

「え、まだあるの?」

 

「当たり前です! 言いたい事はまだまだいっぱいあります、けど今回は手短に伝えます。響もそうですけど……ソウゴさんも強いからってあまり無茶しないでくださいね」

 

「……えっと、善処する」

 

「む、それしない奴ですよね」

 

未来の言葉に思わず目を見開く、今日一番の驚愕だった。憂いを帯びた表情でそう伝える未来。

 

ソウゴはぎこちなく返事を返すが、それは未来の望むような返事ではなかったのか、不満げな表情を浮かべている。

 

 

 

 

 

ソウゴが一通り説明し終えた頃には、日が暮れて辺りは暗くなってきていた。ソウゴは未来を学生寮までバイクで送ろうとしたが、買い物もしたいしゆっくり帰りたいからそこまでして貰わなくても大丈夫と断られてしまった。

 

ソウゴも一旦頭の中を整理したいのだろうと納得して玄関まで見送るだけにした。

 

「それじゃあ、お邪魔しました」

 

「うん。暗いから気を付けてね」

 

帰り支度を終えて帰宅しようと未来が、クリスの姿がない事に気がついた。さっきまで一緒にいたのに、玄関にその姿は見えなかった。

 

その事をなんとなくソウゴに尋ねると。

 

「ああ、雪音さんには洗い物を頼んでてね。衣食住を保証する代わりに家事は手伝ってねって頼んだんだ」

 

「……衣食住?」

 

「うん。行くところがないみたいだし、雪音さんもまだ狙われてるから暫く時計店で匿う事にしたんだ。部屋も余ってるし」

 

ソウゴの言葉にピシッと固まる未来。

 

「そ、それはクリスがソウゴさんのお家で寝泊まりするって事ですか?」

 

「そうだけど」

 

「つつつつ、つまり若い男女が一つ屋根の下という事ですか!?」

 

「いやなにその誤解を生みそうな言い方。とりあえず未来が思ってるような事はなにもないよ、そもそも前にも一回泊めた事あるし」

 

顔を真っ赤にしてあわわと震えていた未来に稲妻が落ちたかのような更なる衝撃が走る。

 

前にも泊めたと言ってもカレーをたらふく食べお腹が膨れて寝落ちしたクリスを善意で一泊させただけなのだが、なんて事のないような言い方をするソウゴの発言がさらに誤解を生み出していく。

 

顔をリンゴやトマトのように真っ赤に染めて出て行く未来の後ろ姿を、疑問符を浮かべて頭を唸らせながら見送るソウゴ。自分がなにを言ったのか全くわかってない魔王。

 

後日、未来から話を聞かれたクリスが「誤解されるような言い方するんじゃねえ!」とあの時の未来以上に耳まで真っ赤に染めてソウゴの部屋へとのりこんだ。

 

時計店には頬に綺麗な紅葉模様を作った魔王の姿があったとか。

 

 

 

 





えー、前回の投稿からだいぶ間が開いてしまい申し訳ありません。言い訳をさせてもらいますと大学の課題や試験勉強、バイトとちょい早めの就活で色々とゴタゴタしておりまして更新が遅れました。すみません。

もしかしたら今後も遅れる事があるかもしれませんが多めに見てください! 忙しくても執筆&更新はしていきますので。

それはそうと、冬映画の最新情報来ましたね。個人的には001が今のところゼロワンライダーの中で一番デザインが好きかも。涙ラインもグッド。

アナザーゼロワンは安定の不気味なアナザーライダー化されてて好き、映像で我が魔王がジオウIIライドウォッチ構えてたから活躍すると考えていんですよね? やったぜ。

そしてジオウII好きの自分は最近アーツのジオウIIを手に入れたんです。クオリティも高いしガシガシ動かして満足してるんですけど不満があるんです、ぼくライドストライカーのセット持ってないの……。

サイキョージカンギレードにできないんですよ! ライダーマシンとのセット商法にはその方が売れるだろうしな、と納得できるんですけどせめて1号ライダーと二号ライダーの初期武器はアーツ本体とセットにしてくれませんかね!?

ウォズは武器ついてたじゃん! うわーん!

おのれ財団B、ゆ゛る゛さ゛ん゛!!

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