モブ厳な世界で時の王者やってます。 作:あんこパンパンチマン
ふえええ、大学と就職キツいよぉ。飯食ってゲームして寝る、そんなだらけた生活をして生きてきたい(真顔)
感想、評価、誤字報告ありがとうございます!
そろそろフィーネ戦が近づいてきました。後執筆してたんですけど結構長くなったので一旦切ったのはいいんですけど切った所が適当すぎて特に話が進んでない…。
「──なんだよ、これ……」
少女、雪音クリスの目の前には信じられないような光景が広がっていた。場所は山間部に存在するフィーネの邸宅、その邸宅で決して短くはない時間を過ごしたクリス。
そんなクリスでも見慣れないモノが邸宅の一室にはあった。
部屋の窓ガラスは割れて散らばり、家具などもボロボロの状態で散乱していてひどい状態。明らかに争った形跡があり、何よりも血溜まりに力なく沈む幾人もの人の姿が部屋中にあった。
「……ダメだ全員、やられてる。状況を見るからにそれほど時間も立ってないと思う」
ジオウの姿へと変身したソウゴは既にこと切れた状態の武装集団に近づいて彼らの状態を確認して何があったのかを調べていた。
ソウゴとクリスの二人がこの場にやって来たのがほんの数分前、クリスにフィーネの企みを阻止する約束をしていたソウゴだがクリス本人がフィーネと戦う準備と気持ちの整理が出来るまで待っていた。そして覚悟の決まったクリスを連れてこの邸宅へと乗り込んだのだが既に邸宅内部はこのありさまだった。
「なにが……どうなってんだよ……っ!」
呆然と目の前の光景を眺めていたクリスだが背後から近づいてきた気配を感じ取り弾かれるように振り向いた。視線の先には派手な色のシャツにネクタイを身に着けた男性、弦十郎がこの部屋の惨状とそこに居合わせた二人の姿を見つめていた。
クリスはその男、弦十郎の姿に見覚えがあった。
フィーネの出現させたノイズが市街地に襲撃してきた時、ジオウの正体がソウゴだと未来とクリスに知られてしまった日の事。
ジオウとひと悶着あった後、襲い掛かるノイズを殲滅しながら逃げ遅れた人を救助している時に弦十郎と遭遇したのだ。逃げ遅れた人を庇いながら生身の状態でノイズと対峙しその人間離れした身体能力で立ちまわっていた姿が強く記憶に残っていた。
「違っ……これはあたしたちじゃ!」
状況が悪かった。この悲惨な部屋の状況とそこにいた二人、第三者がこの状況を目撃すれば勘違いされたって可笑しくはない。
誤解されてしまう前に弁明しようとするがそれよりも早く武装した黒服の集団が部屋に乗り込んできた。黒服の登場にクリスは思わず身構えるがそんなクリスを素通りして黒服たちはジオウを取り囲み拳銃を構えた。
「……え、俺?」
「な、何してんだアンタらッ!」
ジオウに拳銃を向ける黒服たちの姿にクリスは一瞬固まるがすぐに正気に戻りジオウを庇うように射線上に割り込んだ。だが黒服たちはそんなクリスの事を気にも留めずに拳銃のグリップを強く握り構えていた。ジオウの事を警戒しているのが見て取れた。
ジオウも彼らが発砲するような事があればすぐにでもクリスを庇うことのできるよう構えていると。
「やめろお前たち! 銃を下ろせ!」
「し、しかし……風鳴司令、こいつは危険ですっ」
「いいから下ろすんだ。前にも言ったように未確認二号と事を荒立てるつもりはない……それよりも今はこの屋敷の調査が先だ」
弦十郎の言葉に黒服たちは渋々といった様子で構えていた拳銃を下ろして作業に取り掛かった。そんな彼らの様子に弦十郎は溜め息を吐いた後、ジオウに向き直り頭を下げた。
「俺の部下がすまない。まさかこの場にジオウ……君がいるとは思いもしなくてな、許してくれ」
「あ……いや、別に気にしないでいいよ。ああいう反応が普通だろうし、それにこの有様じゃ疑われるのも仕方ない」
「いや、これをやったのが君達だとは疑ってはいない。全ては、俺達の近くにいた“彼女”の仕業だ」
弦十郎の言う“彼女”とは誰の事なのかわからずジオウは頭を捻っていると弦十郎はジオウから視線を外して横にいるクリスへと向き直った。
「久しぶり、と言うべきか。また会ったなクリス君……元気そうで何よりだ」
「ハッ……元気も元気だっての、どっかの誰かさんのおかげでな」
毎日喧しいくらいにな、弦十郎の言葉にクリスは素っ気ない態度で返事をしながら周りに気づかれないようにしながら一瞬だけジロリと視線を向けた。そんな視線を向けられたジオウはなぜクリスが睨んできているのか理解できず首を傾げている。
「風鳴司令!」
黒服の一人が弦十郎に呼びかける。黒服の足元には武装集団の一人の亡骸が横たわっている、その亡骸のジャケットには【 I Love You SAYONARA 】と血文字で書き記された白い紙切れが貼り付けられていた。
「……ッ! ダメだそれに触るな!」
黒服がその紙切れに触れて回収しようとした姿を見たジオウが叫ぶ。彼の直感がぞわり警報を鳴らして危機を知らせていた。ジオウの叫び声が聞こえていた筈の黒服はそれを無視して紙切れをジャケットから引き剥がすように拾い上げる。
その瞬間、何か引き抜かれる音と起動を知らせる電子音が鳴り響いた。
武装集団の亡骸と邸宅内部に仕掛けられていた爆弾の起動スイッチと繋がっていた紙切れを引き剥がしたことで起動したのだ。一瞬で轟音が山間部へと鳴り響き邸宅は熱波と爆風に包まれる。爆発の衝撃で部屋は崩壊し天井や壁の一部が崩壊し音を立てて落下して来ていた。
「な、どうなってんだよ。こいつは……っ」
「衝撃なら俺が発勁でかき消した」
「は、はっけい?……いや、そうじゃねえよっ!」
爆発が収まると重なった瓦礫の山の中からクリスを抱えた弦十郎が巨大な瓦礫を片手で持ち上げながら姿を現した。衝撃を発勁でかき消したと訳の分からない事を言う弦十郎にクリスは困惑していたが、正気に戻ると自分を抱えている弦十郎の腕を強引に振り解き距離をとる。
「なんで変身する事もギアも纏う事も出来ないアンタがアタシを庇ってるんだよ!」
「……俺がお前を守るのはギアのあるなしじゃなくて、お前よか少しばかり大人だからだ。大人ってのは仕事を全うして子供を守ってやるもんなのさ、それが大人の務めってやつだ」
「大人!? 大人の務めときかッ! 悪いがアタシは大人が嫌いだ! 余計な事以外はいつも何もしてくれない癖に、知った風な顔して近づいて来て、そして叶えられもしない夢を見るッ! アタシのパパとママだってそうだった、アタシはそんなパパとママが…ッ」
「い、ヨイショーッ!」
歌で世界を救う、クリスにいつもそう言っていた彼女の両親。小さい頃のクリスはそれはとても素晴らしい夢だと思っていた。しかし成長していき現実の過酷さを知っていきそれはなんて甘い夢だったのだろうと思うようになっていった。
そんな叶いもしない甘い夢を見ていた両親が大嫌いだ。そう言葉を続けようとしたその時、彼女の背後で瓦礫の山が大きく吹き飛んだ。
「ふぅー、びっくりした。まさか爆発するとは思わなかった」
積み重なった瓦礫の山を崩しながらジオウが姿を見せる。ジオウの側には爆弾を起爆させてしまった黒服とその近くで爆発に巻き込まれた黒服たちがいた。
「うっわ……煙すごいな」
「な、なんでだ……」
「ん?」
ジオウは舞い上がった土煙とボディスーツに掛かった埃を手で払っているとジオウの側で腰を抜かして座り込んでいた黒服の一人が声を震わせながら信じられないものを見るかのようにジオウを見上げていた。
「どうして、爆弾が爆発したあの瞬間……俺を、俺たちを助けたんだ。俺たちは風鳴司令の命令を無視してお前に銃を向けた、さっきの罠だって気がつかなかった自分の責任だ。死んだって自業自得なのに、なぜ」
爆弾が起動した瞬間、ジオウはその身体能力の高さを利用して爆弾を起動させてしまった黒服との距離を一瞬でゼロにして彼を爆発から庇うように助け出した。その後も崩落してくる瓦礫に巻き込まれそうになっている黒服たちを自分の周りに集めさせて邸宅の崩壊から救った。
黒服は射殺するつもりで銃を構えていた自分たちを身を挺して助けたジオウを困惑するよう見上げている。
「俺たちなんかを助けようとするぐらいならあそこの少女を助けるべきだ。彼女はノイズに対抗する力を持ってる、なのになんで俺たちなんか……」
「……“なんか”じゃないよ。人の命に優先順位なんてない、どっかのドクターもそんなことを言ってた気がする。それにお礼を言ってほしくて助けた訳でもないから、助かったラッキーってくらいに思ってくれればいいよ」
そう告げるとジオウは瓦礫を退かしながら背中を見せて離れていく。人を助けて見返りを求めずに去っていく。黒服にはその後ろ姿が幼い頃に憧れていたヒーローの姿と重なり、大きくとても遠い存在に見えていた。
「ああ、それとクリス」
突然ジオウに名前を呼ばれたクリスは驚きビクリと反応する。
「それ以上、先のことは言葉にしないほうがいいよ。クリスは優しいからきっと後で後悔すると思う、大切な家族なんでしょ」
「……ッ!」
ね、と小さな子供を諭すようにクリスに語りかけるジオウ。
短い時間だがクリスと共に生活するなかでどれだけ悪態を吐き凄んでも彼女が本当は優しい人だという事をソウゴは理解していた。だからこそ両親が大嫌いだなんて言葉を言ってほしくなかった、彼女は両親のことを本当は大切に想っているのだからと。
ジオウの言葉に何か思うことがあったのかクリスは俯いて黙り込んでしまった。そんな二人の様子を見て弦十郎は驚きながらも二人は何か深い関わり合いがあるのかと密かに思考していた。
その時なぜか一人の青年の顔が脳裏に思い浮かんだがまさかなと思いながらその思考は切り捨てた。
それから邸宅内部を隅々まで捜索したがコンピュータなどの機材からは情報が消去されていた事によりこれと言った収穫はあらず弦十郎と黒服たちは撤収の準備をしていた。
「未確認二号……いや、ジオウ。俺の部下を守ってくれた事、感謝する」
弦十郎はジオウに向き直ると深く頭を下げて感謝の言葉を述べた。
「感謝されるような事はしてないよ。だからアンタが俺に頭を下げる必要なんてない、俺がやりたくてやっただけの事だから」
「それでもだ。君が俺の部下を救ってくれた事には変わりはない」
「え、ど、どういたしまして……?」
姿勢を正して真剣な声音でそう告げる弦十郎。面と向かって感謝される事にあまり慣れていないジオウはどもりながらもなんとか言葉を返していた。
数十秒程、頭を下げていた弦十郎が顔を上げるとジオウとクリスを見つめて口を開いた。
「ここ最近の一連の事件の黒幕、俺たちの目的は同じ筈だ。君たちの力が借りたい、俺たちと共に戦ってくれないか?」
「なっ……今まで戦ってきた相手と手を組もうってのかよ」
弦十郎の申し出にクリスは目を見開いて動揺を露わにする。
どうだろうか、と弦十郎の言葉にクリスは悩むように視線を行き来させた後答えを求めるかのようにジオウを見上げた後ゆっくりと口を開いた。
「……悪い。アタシはまだそこまで気持ちの整理がついてない」
「なに、急かしはしないさ。ゆっくり考えてくれ」
弦十郎は申し訳なさそうに顔を伏せるクリスから視線を外してジオウへと視線を向ける。
「ごめん無理」
「そ、そうか、わかった。ならばその時にまた」
ジオウの率直な返答に僅かに吃ったが、二人の返答を予想していたのか大して堪えた様子はなく。弦十郎は気にしていないかのように明るく笑みを浮かべて用意してあった車の方へと戻っていく。
その時顔を伏せていたクリスが顔を上げると大きな声で弦十郎を呼び止めた。
「──カ・ディンギル!」
「……ん?」
「フィーネが言ってた。そいつが何んなのかはわからないけど、それはもう完成しているみたいなことを……」
「カ・ディンギル、情報感謝する。ああ、それと……ほれ」
派手な色の車に乗り込んだ弦十郎が車の窓から腕を伸ばして通信端末をクリスに投げ渡した。ジオウにも投げ渡そうとしたがジオウはそれを軽く手で制した。
「これ、通信機……」
「そうだ。限度額内なら交通機関も利用できるし自販機で買い物もできる代物だ、もっておけ便利だぞ。それとこれは独り言だが金銭面でも生活面でもあまり時計店の彼に迷惑は掛けるなよ……さて後手に回るのはもう終いだ」
そういうと弦十郎は先ほどの独り言の意味を理解して固まっているクリスの様子に頬を僅かに緩ませた後、車のアクセルを踏み込み土煙を舞い上がらせながら勢いよく発進した。
それに続くように黒服たちの乗り込んだ車も発進していく。遠ざかっていく車の後姿を固まったままのクリスと呑気に手を振っているジオウが見送っていた。
「今更だけど、限度額以内まで使えるんだったら受け取ってもよかったかも……」
「……な、なんで」
通信機を受け取っておけばよかったとぼやいているジオウの隣で固まっていたクリスが再起動するとジオウの肩に掴みかかりガクガクと揺らしながら唾を飛ばす勢いで捲し立てた。
「なんで、あの、おっさんが、アタシがアンタのところの時計店に身を潜めてる事を知ってるんだよ! 言え! 正直に言え! どうせアンタが原因だろ!?」
時計店から外に出る時も二課の人間に見つからないように変装して尾行されていないか周囲の人間にも警戒していたクリス。
私用で外出する機会も少なく時計店にいる時間のほうが長い、後をつけられていない自信だってあった。ならば考えられる原因は隣にいる魔王だけだ。
「いや、その……こないだの買い物の帰りに弦十郎さんに会ってその時に、色々と成り行きというか。てかそんなに強く揺らさないで首痛い」
「はああ!?」
そう伝えるとジオウの言葉にクリスが絶叫する。肩を掴む手には力がこもりガクガクと揺れる頭は更に加速する。
そんな彼女を何とか宥めながらオーロラカーテンを時計店の一室と繋げて帰還した。
原作に沿った展開でジオウ助太刀ルート、装者の見せ場を奪ってしまうが魔王ブチギレのフィーネ戦、今のところ2パターン考えてるけど悩む……あと関係ないけどシャイニングホッパーかっこいい。令ジェネも今月ですね。