モブ厳な世界で時の王者やってます。   作:あんこパンパンチマン

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まず最初にシンフォギアXV完結おめでとうございます。

ネタバレなしでは語れないので見ていない人の為にもどこがどうとか言えないんですけど。最終話やばかったっすね、まじやばかった(小並感)。

自分は最終話のCMでトドメを刺されました。もうウルウルでした。

そして早く更新できるかもとか言っておきながら思ったよりも時間がかかってしまいました、色々悩んで途中から執筆し直した結果遅くなってしまいました。すいません。







モブ厳な世界で鎧の刻。

地下鉄を抜けて地上に出るとそこは公園のような場所で、ブドウ型ノイズの姿はなく、代わりにあの時の白銀聖闘士(シルバーセイント)の少女と、なぜか奏がいた。

 

分断されたのか少し離れた場所では響を守るように立ち回りながらノイズと戦っている翼の姿が確認できた。

 

……なんとなく予想はしてたがやっぱりあのブドウ型はあの少女が操ってたのか。そうなると俺も響もここにおびき寄せられた事になる。

 

「……未確認、いきなりで悪いが翼たちのフォローを頼む。こいつの相手はあたしがする」

 

奏が息を切らしながら肩越しに振り返って俺にそう言い、大きな槍を構えた。

 

何があったのかはわからないが、奏のあんな必死な形相は初めて見た気がする。けど正直に言わせて貰えば、下がるべきなのは奏の方だ。

 

鎧の少女と戦い劣勢に立たされていたのか、奏の纏う鎧には罅が入りその姿はボロボロだった。

 

「はっ、よく言えるなそんな事。さっきの打ち合いでわかったろ、アンタじゃアタシには敵わないって事ぐらい。それにアタシの目的はアンタじゃないんだよ」

 

「つれない事言うなよ……それにもう少しやってみないと、わからないだろぉ!」

 

ぶつかり合った槍と鞭がギチギチと火花を散らして応酬が始まる。

 

低く構えた奏が飛び出して突きを繰り出す。鎧の少女はそれを鞭で逸らすように防ぐと、刈り取るような回し蹴りを奏の顔面目掛けて放った。

 

奏はそれを身体を大きく仰け反らして回避すると、その勢いを利用したサマーソルトキックを喰らわせようとするが、回避されてしまい大きな隙を晒してしまう。

 

その瞬間に鎧の少女がガラ空きになった奏の胴体に蹴りを入れ吹き飛ばした。

 

「ぐっ……奏っ! この、邪魔だ!」

 

「奏さんっ!」

 

「……ッ来るな、下がってろッ!」

 

翼が奏の援護に入ろうとするが周囲に連続で発生しているノイズがそれを許さない。

 

響がノイズを切り抜けながら膝をつく奏に駆けよろうとするが奏は槍を振るって響を近寄らせない。

 

振るった槍は地面を抉り土を飛ばした。その衝撃で響はふらつき尻餅をついてしまう。

 

……これ以上は無理だな。そう判断して身体を引きずりながら前に進もうとする彼女の前に立ちふさがる。

 

「下がるべきなのはそっちだ。ボロボロじゃないか」

 

「未確認……どけ」

 

「退かないよ」

 

「退けって言ってんだよっ!……なっ!?」

 

奏は苛立ちを隠そうとせず、動かない俺に痺れを切らした奏が踏み込み槍を振り下ろす。

 

とてもじゃないが普通の女の子の膂力からじゃ繰り出せるとは思えない一撃を、防御する事なくその身で受け止め槍を押さえ込む。

 

受け止めた場所は火花を散らし煙を上げている。パワースーツの力のおかげなのかノイズの攻撃と比べるとその威力は段違いだ、滅茶苦茶痛いぞこれ。

 

「ッ……なんで君はそんなに焦ってるの? 聞かせてくれないかなその訳を」

 

「あ、あんたには関係ない……」

 

「あるよ、そんながむしゃらな戦い方されてもこっちが迷惑だ。これ以上君がそんな戦い方してれば響が悲しむ、君の相棒だってそうだ。それにいまの君を助けようとして彼女たちが無茶をすることになる」

 

「ッ!」

 

奏の背後には一刻も早く奏に合流しようと力任せな戦い方をする翼の姿が見える。焦りからか彼女の戦い方が大雑把になってきている。

 

そう伝えると槍を握る力が弱まっていき、ズルズルと崩れるように奏は座り込んだ。ガシャンと手からこぼれ落ちた槍が地面にぶつかる音が聞こえた。

 

そこから奏は絞り出すような小さな声でポツリポツリと語り出した。

 

「……あんたにこんな事話しても意味はない。けど、響は……普通の女の子なんだ。あたしとは違う、まだ引き返せる筈だ。あの子には戦う事なんか気にせずに普通の子として生活してほしい。あの子はまだ子供なんだよ……なぁ、あたしは……間違ってるか?」

 

「……君の響を思う気持ちは間違ってなんかないよ、けど正しくもないのかもしれない。あの子は自分の意思で戦場(ここ)に立ってる。誰かに強制された訳じゃないんだろ?」

 

「……ああ、あいつの自分の意思でここにいる。それでも……あたしはっ」

 

傷ついてほしくない、戦ってほしくないと思う気持ちは間違いじゃない。それが大切な人なら尚更だ。けど引き止めるだけじゃなく、その背中を押してあげる事も重要だと思う……辛い選択だろうが。

 

側にいた響に視線を向けるとそれに気がついた響が駆け寄ってきて奏を支える。

 

二人を下がらせて鎧の少女へと向き直った。

 

「わざわざ待っててくれてありがとう」

 

「……よく言うぜ。少しでもこっちが動けば行動できるように喋りながらずっと注意を向けてじゃねえか……まあいい今回はあの時と同じ様には行かねえぞ」

 

鎧の少女が特徴的な形状の杖を取り出してこちらに銃口を向けるかのように構える。前回の戦闘で使用していた杖だ。

 

「……その杖でノイズを操ってるんだよね?」

 

「なんだ、知らねえのか。無知なあんたの為に特別に教えてやるよ、こいつはソロモンの杖。聖遺物の欠片から作られたシンフォギアとは違う完全聖遺物だ。その力はノイズを任意に発生させてコントロールすることが出来る」

 

ソロモンの杖、シンフォギア、聖遺物の欠片、完全聖遺物、よくわからない単語がいっぱい出てきたがそれは一先ず置いておこう。

 

やっぱりあの杖、ソロモンの杖がノイズを発生させて操ってるみたいだ……それならとりあえずぶっ壊すか。

 

この国やどこかの国の悪いお偉いさんなんかがあんなもの持ったら、間違いなく兵器利用されるぞ、ビルドのライダーシステムだってそうだった。

 

まあ使用者、戦兎や龍我たちが愛と平和の為に使ってたから問題なかったが。

 

目標としてまず第一に鎧の少女の無力化、第二にソロモンの杖破壊でいこう。

 

「おっと、それ以上近づくなよ。お前の相手はこいつらだ」

 

ジカンギレードを握り鎧の少女に切っ先を向ける牙突のポーズで構える。すると鎧の少女が構えたソロモンの杖が発光し今までよりも強い光を放ちながら巨大なノイズが二匹現れた。

 

一匹は見る人によっては嫌悪感を覚えるようなイボイボのノイズに、もう一匹は一狩り行くゲームに出てきそうなツノの生えたゴツいゴリラのようなノイズ。

 

両方とも初めて見るタイプのノイズだ。イボイボの虫みたいなノイズのほうはよくわからないが、もう片方のゴツいノイズはどこからどう見てもパワータイプだ。

 

……少し様子を見ながら戦うか。

 

そう決めて一歩踏み出した瞬間、鎧の少女が高速で放った鞭をイボイボのノイズに叩きつけた。その一撃でノイズのブヨブヨとした肉片のような何かが辺りに飛び散る。

 

え? なんで自分で呼び出したノイズに攻撃したんだ? 訳がわからず困惑するが、今の行動をの意味をすぐに理解させられた。

 

「ノイズにも色々種類があってな、こいつらはその中でも特に変わったノイズでな。お前の相手をするにはピッタリのお客様だ」

 

「うっそーん……」

 

まさかと思い近くに飛び散った肉片を両断する……うん、増えてる。無限プチプチならぬ無限イボイボ(ノイズ)だな。面倒くさいぞこれ、攻撃しても消滅することなく斬ったそばから分裂して増殖してる。

 

下手に攻撃すれば数が増えるだけだ。

 

前に工場で使用した、ダブルライドウォッチを使った竜巻攻撃で増殖する暇を与えず一気に消し飛ばそうと考えライドウォッチを取り出そうとした瞬間に、ゴリラ型ノイズがその巨体に似合わぬスピードで突っ込んできた。

 

繰り出された拳打を受け止めて投げ飛ばそうと構えた瞬間、何か小さな違和感を覚えた。

 

「おっも……ぐっ!」

 

想像以上のパワーで放たれた拳を受け止めきれずそのまま殴り飛ばされてしまう。吹き飛ばされながら空中で回転し体勢を整えて地面を滑るようにしながら着地する。

 

ゴリラ型ノイズが加速しながら再び俺目掛けて突っ込んでくる。この時に先程感じた違和感の正体に気がついた。

 

──あれ、こいつさっきよりも大きく(・・・)なってないか?

 

<フィニッシュタイム! タイムブレーク!>

 

「グッ……おおおおおああああっ! 」

 

慌てて『ジクウサーキュラー』の回転させてエネルギーを込めた拳を放つ。ゴリラ型ノイズの拳打とライダーパンチがぶつかり合う。次の瞬間ゴリラ型ノイズは大きく吹き飛び、俺は発生した衝撃から思わずよろめく。

 

なんとか押し返したが嫌な予感がして周囲を見渡すと分裂増殖したノイズがその数を減らしていて、吹き飛ばしたゴリラ型ノイズが少し目を離した隙にまた大きくなっていた。

 

「気がついたみたいだなぁ。ノイズには色々と種類があるって言ったろ。飛び散ったノイズの方の特性は際限のない分裂と増殖、そっちのデカイノイズの特性は結合と増強だ。いい組み合わせだろ、お前の為にわざわざ用意したんだ」

 

「ったく……女の子からのこんなに嬉しくないサービスは初めてだよ」

 

つまりはこういうことか、このゴリラはあの増殖したイボイボを吸収して強くなってるのか。しかもイボイボには際限がないからゴリラはパワーアップし放題ってわけだ。

 

再び攻撃を仕掛けてきたゴリラ型ノイズの丸太のような豪腕から繰り出される拳打を『オウシグナル』のセンサーから得られる情報と培った戦闘経験を生かして捌いていく。

 

けどそれも時間の問題だ。たった数秒の応酬でまたゴリラ型が大きくなっていってる。しかもこっちが斬撃や拳を叩き込んでもノイズを吸収して炭素化せず回復してる。

 

「伏せろ! 未確認!」

 

「え?……ってうおおおお!?」

 

突然放たれた蒼色の巨大な斬撃。迫りくる斬撃を慌ててヘッドスライディングで回避するとその一撃を回避できずもろに受けたゴリラ型が吹っ飛ぶ。

 

……頭部にちょっと掠った気がする。頭をさすりながら立ち上がる俺の隣に刀を構えた翼が並び立つ。巨大な剣が排熱をしながら小振りな刀へと変形した。今の一撃はどうやら翼がやったようだ。

 

「えっと、ありがとう?」

 

「……お礼は言わなくていいわ。このノイズたちを片付けるのにあなたの力を借りるだけ、その次はネフシュタンの子とあなたよ」

 

「じゃあ……それまでは協力してくれるって事でいいんだよね、ありがとう」

 

返事はなかったが協力してくれるという事でいいんだろう。翼はゴリラ型を睨みつけ霞の構えをとり疾駆する。俺もそれに続くように走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響の視線の先でジオウと翼が協力しゴリラ型ノイズと戦っている。

 

ジオウがジカンギレードでゴリラ型の拳を逸らしながら弾くと、その隙に翼が接近して刀を振るい斬撃を浴びせていく。

 

ジオウが上手くカバーして翼が攻撃する、二人は即席のコンビとは思えない軽快な動きを見せている。

 

しかしそれでもゴリラ型を倒すまでには至らない。

 

ジオウと翼、二人の剣戟がゴリラ型ノイズのボディを捉えてその身を炭素化させていくがボディが、崩れきるよりも早くゴリラ型ノイズが周囲に分裂し増殖しているノイズを吸収してその傷を癒している。

 

どれだけ攻撃を叩き込んでも瞬く間に回復してしまう。しかも周囲のノイズを吸収する度にゴリラ型ノイズの力、速度が増していき動きのキレが良くなっていく。

 

ジオウと翼もカバーし合いそれを上手く捌いているが、徐々に押されていってるのは戦闘経験皆無の響の目から見ても明らかだった

 

「助けにいかなきゃ……」

 

無意識のうちに声が漏れていた。駆け出そうとした響の腕を奏が掴んで止めた。

 

「……待て、今お前が行ったって逆にあいつらの足を引っ張るだけだ」

 

「でもっ! 翼さんとジオウさんを助けに行かなきゃ、このまま見てるだけなんて私には出来ません!」

 

奏の言う通り経験も技術も足りない未熟な響が援護に入った所で、二人の邪魔になるだけだ。

 

響もそれを理解しているが、その性格上困ってる相手を見捨てるという事は出来ない。目の前で自分たちの代わりに戦い傷ついている二人の戦士を、響は奏の腕を振り払ってでも援護に行くつもりだった。

 

しかし響と奏の動きに気がついた鎧の少女の眼光が二人を射抜く。

 

「悪いが引っ込んでてもらおうか。そんなに焦らなくてもお前達の相手は後でしてやるよ。それまでそいつらと遊んでな」

 

鎧の少女がソロモンの杖を掲げると強烈な光を放ちながら響と奏を四方から取り囲むようにノイズが出現する。

 

視界を覆い尽くすほどの数のノイズに怯みそうになる響を庇うように、奏が立ち塞がり槍を構える。

 

いくら短い時間休む事ができたとはいえ、鎧の少女との戦闘で受けたダメージは抜けきっておらず体力も回復しきっていなかった。ふらつきながらノイズを睨みつける奏の前に、背後にいた筈の響が奏を庇うかのように出た。

 

「なっ! 何してんだ下がってろ!」

 

「奏さん……やっぱり戦います、私」

 

「っ……まだそんな事言ってるのかッ! いい加減にしろ、ここはお前みたいな奴がいていい場所じゃないんだよッ!」

 

恐怖で震えながらも自分を守るように構える響の後ろ姿に、怒りと悲しみの感情を爆発させ、響の胸ぐらを掴んで鋭く睨みつけながら怒号を浴びせる。妹のように可愛がっていた響に対して、普段の奏なら絶対にしないであろう行為。

 

しかし響は臆する事なく奏と向き合う。

 

「私はッ!」

 

「ッ!」

 

「私は……お母さんとお婆ちゃん、未来やソウゴさん、奏さんに翼さん。他にもたくさんの人に支えられて救われました。“あの日”から……自分は呪われてるってずっと思ってました、けど今はそれ以上に恵まれてるって思えるんです」

 

曇りにない真っ直ぐな瞳を向けられた奏は思わず呆然とし、掴み上げていた腕の力が抜けていく。

 

響の言葉は止まらない。

 

「私は救われました、けどそうじゃない人も沢山いる筈です。きっと今もどこかで周りから責められて泣いてる人がいるかもしれない、私はその辛さも寂しさも知ってます」

 

「………っ」

 

「だからもう、ノイズなんかのせいでこれ以上誰かの涙を見たくありません。私はみんなに笑顔でいてほしいんです」

 

目を逸らさず一言一言を噛みしめるように真剣に言葉を伝える響の姿に、奏は理解してしまった。もう自分には彼女を止めることは出来ないのだと。

 

「……それに奏さんは私のことをずっと助けてくれてましたよね?」

 

「……えっ?」

 

「奏さんと初めて会った次の日から少しづつ自分の周りが変化していくのに気がついたんです。近所の人たちやクラスメイトの子たちもどこか自分によそよそしくなって、学校が終わってから家に帰ると壁の落書きが消えて綺麗になってたりもしました」

 

「………」

 

「それにリディアンに入学してからも沢山いる生徒の中で未来と同じクラスになれたり寮で同室になれたり、最初はただの偶然で運が良かったのかと思ってました。けど、本当は奏さんのおかげなんですよね?」

 

「それ、はっ」

 

響の言葉に視線を逸らし言い澱む奏だが、全てその通りだった。自分たちのコンサートが原因で周囲から迫害を受ける響、疲労していく家族たち。

 

その悲惨な現状を目の当たりにした奏は、二課司令の風鳴弦十郎や他の大人たちに事情を話し、頭を下げて頼み込んだ。響を助ける為に力を貸して欲しいと。

 

響以外にもあの惨劇の被害者は山ほどいる。助けてあげたい気持ちもわかる、しかし一人だけを優遇するような事は出来ないと断られたが、奏は何度も何度も頭を下げて懇願し要望を聞き入れてもらった。

 

そこからはあっという間だった。学校全体に及ぶ虐め、それを知りながら黙認した教師たち、それらに適切な処分を下し、影ながら根回しをして響たちを支えていた。

 

リディアンに入学して二人が寮で同室になったのも奏の計らいである。

 

奏はその一連の行動を、自分の自己満足だからと響や未来には伝えていない。知っているのは二課の一部の人間と相棒の翼だけだ。

 

「今度は私が奏さんを助けます。“あの日”ノイズから私を助けてくれた時のように」

 

「……響」

 

「だから……見ててください、私の戦い」

 

胸ぐらを掴んでいた奏の腕を優しく解くと、屈託のない笑顔を浮かべる。心を落ち着かせるように呼吸を整えると、ノイズを見据えて拳を構えた。

 

拳を握り戦う事が怖くない訳じゃない。傷つけるのも傷つくのも怖い。けれどもそれ以上の理由が響にはあった。大切な人たちを守りたい、それだけで怖くても戦える。

 

響が飛び出そうとした瞬間横から伸びてきた槍に反応して動きを止めた。

 

「……それでもあたしはお前に傷ついてほしくない」

 

「奏さん……」

 

「──だから、一緒に戦うぞ」

 

「へっ?」

 

奏が口にした言葉に思わず変な声が漏れた響。そんなキョトンとする彼女の様子に、奏は愉しげにからからと笑った。

 

「お前一人に戦わせる訳ないだろ……あたしの相棒は翼だけど、今だけはお前が相棒だ。あたしはこっちから片付ける、そっちは任せたぞ。何かあればカバーする」

 

「……はいっ! 任せてください! 私と奏さんでダブルガングニールですねっ!」

 

「なんだそりゃ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……よかった、あっちは大丈夫そうだな」

 

「何をボサッとしている未確認!」

 

「うおっ! ごめん!」

 

翼の大きな声で、響たちの方からこっちに意識を戻す。

 

ゴリラ型の剛腕をスレスレの距離で避ける。ジカンギレードが手元から弾かれたので殴りつけるが、大した効果は見られない。

 

こっちの攻撃自体はゴリラ型に通っているが、大量のノイズを吸収して回復されているせいで結局ダメージはゼロだ。

 

相手の回復力に対して火力が足りてない。そして今もうじゃうじゃ増殖し続けているノイズも邪魔だ。こいつも中途半端な攻撃じゃ意味がない。

 

「というわけでこのままじゃジリ貧だ。なんか一気殲滅出来るようなすごい技はそっちにはある?」

 

「説明されなくてもわかっている……周辺のノイズを一気殲滅出来る手段がないわけではない。私もそれをいま考えていた所だ」

 

「……因みにどんな技?」

 

「……絶唱と呼ばれるシンフォギア装者の最大の攻撃手段。増幅させたエネルギーを一気に放出するものだ。凄まじい破壊力だが、それと同じくらい負荷も掛かる。多く使えても一、二回だ」

 

「じゃあ却下で。それ絶対危ないやつじゃん……仕方ないこっちでなんとかするか」

 

俺がこの世界に来てから初めてノイズと戦った時に奏が使ったやつだよねそれ。あの時はジオウIIの力で戻した(・・・)からいいけど、あんな自爆技みたいの翼に使わせる訳にはいかないし。

 

「巻き込まれたくなかったら下がっていろ未確認……っていったい!? い、いきなり何をする!?」

 

「いやだから却下だって言ってるでしょ」

 

呼吸を整え覚悟完了な表情を浮かべて唄を口ずさもうとしていた翼のお尻を蹴り飛ばし、行動を中止させる。臀部を押さえて赤面している翼を下がらせて前に出た。

 

……仕方ない。あまり手の内を見せるような事はしたくなかったんだけど、これ以上時間をかけるとさらに面倒くさい事になる。

 

「なんだ、随分と余裕そうじゃねえか!」

 

「余裕がある男はモテるっていうでしょ? そんな、感じ!」

 

ゴリラ型の攻撃を転がりながら回避。避けた先に回り込んできた鎧の少女の鞭と蹴りを弾きながら鎧の少女を蹴り飛ばして距離を稼ぎ懐から取り出したライドウォッチを起動させる。

 

<ディ・ディ・ディ・ディケイド!>

 

起動させたディケイドライドウォッチをジクウドライバー左側のスロット、『D'3スロット』に装填、ベルト上部のスイッチを叩きロックを解除して『ジクウサーキュラー』を回転させる。

 

<アーマータイム! カメンライド! ワーオ! ディケイド! ディケイド! ディーケーイードー!>

 

ジオウのライダーズクレストが描かれた幾枚もの半透明のカードがディケイドライドウォッチから飛び出すように現れて、クルクルと周りを回転しながらカードの形状が鎧に変化して重なるように装着される。

 

『キャリバーA』から変化した頭部の『ディケイドヘッドギアM』の前面部『ディメイションフェイス』が輝きディケイドの文字が表示される。

 

「……はっ? なんだ……そりゃあ」

 

「でぃ、けいど……?」

 

「更にこいつを!」

 

<ファイズ!>

 

ライドウォッチホルダーから取り外したファイズライドウォッチをディケイドライドウォッチの『F.F.T.スロット』に装填する。

 

ディケイドライドウォッチは他のライドウォッチとは違って特殊なライドウォッチで、ウォッチ本体にもう一つのレジェンドライダーのライドウォッチをセットする事が可能。

 

『F.F.T.スロット』に装填する事でそのライドウォッチの力を「次の段階」へと引き上げフォームチェンジすることができる。

 

<ファイナルフォームタイム! ファ・ファ・ファ・ファイズ!>

 

仮面ライダーディケイドを模したマゼンタと銀のゴツゴツとしたアーマー全身が一瞬モザイクのような光に包まれると、漆黒のボディに銀色のライン『シルバーストリーム』が伸びた姿に変化する。

 

ディケイドアーマーのデバイス装甲『コードインディケーター』もそれに合わせるように右肩に表示されていたベースとなるライダーの名前がディケイドからファイズに変更され、胸部から左肩にかけて表示されていたバーコード模様がフォーム名の『ファイズアクセル』に変化する。

 

最後に『ディメイションフェイス』がシャッフルされるように切り替わると仮面ライダーファイズ、アクセルフォームの頭部を再現し固定される。

 

 

「また姿が変わった……っ!」

 

「……だからなんだ、虚仮威しだそんなもん! 見て呉れが変わった程度でいい気になるなよっ!」

 

「そうかな、虚仮威しかどうかはすぐにわかる。とりあえず付き合ってもらうよ、10秒間だけだけどね」

 

<Start Up>

 

左腕に取り付けられているデジタルウォッチ型専用デバイス『ファイズアクセル』のボタンを押すと、音声とカウントダウンが開始され唸るようなエキゾーストノイズが轟き渡る。

 

低く構えて一息に疾駆し、伸ばされた鞭を高速移動で回避する。既に鎧の少女の視界から俺の姿は消えている。

 

「消えた!?」

 

「な、どこに……ぐあっ!?」

 

加速したすれ違いざまにゴリラ型を強く殴り飛ばし、そのついでに鎧の少女を軽く蹴り飛ばして銀色の軌跡を残しながら疾走する。

 

10秒間なんてあっという間だ、だから今は散らばった増殖分裂型だけに狙いを絞る。

 

残り時間は6秒程度。起き上がろうとしたゴリラ型を蹴り込み横転させた後に、一度手首をスナップさせてディケイドライドウォッチの起動スイッチ『ライドオンスターター』を弾く。

 

<ファ・ファ・ファ・ファイズ! ファイナルアタックタイムブレーク!>

 

跳び上がり既に右足に装着されている『ファイズポインター』からポイントマーカーの光線を発射して全ての増殖分裂型を円錐状の赤い光でロックオン。そして狙ったノイズ全てに連続でライダーキックを放つ。

 

<3……2……1……Time Out>

 

音声とともに1000倍の速度加速が解除される。

敵の分子構造を分断、破壊するというクリムゾンスマッシュを喰らった増殖分裂型ノイズは今までのように増殖分裂する事なく灰化して消滅した。

 

「嘘だろ……あれだけの数のノイズを、一瞬でッ」

 

「あとはそのゴリラだけだ。そして次はこいつをっと」

 

ファイズライドウォッチを『F.F.T.スロット』から引き抜き、ファイズフォームを解除してからライドウォッチホルダーから別のライドウォッチを取り外して起動させる。

 

<ビルド!>

 

ビルドライドウォッチを先程と同じように『F.F.T.スロット』に装填。

 

<ファイナルフォームタイム! ビ・ビ・ビ・ビルド!>

 

再び全身が一瞬だけモザイクのような光に包まれると、漆黒のボディに銀色のラインが伸びた姿から、黒いボディに赤色と青色の二色の鋭利な刃の装甲に白い装飾の入った姿に変化する。

 

『コードインディケーター』も右肩に表示されていたベースとなるライダーの名前がファイズからビルドに変更され、胸部から左肩にかけて表示されていたフォーム名が『スパークリング』に変化する。

 

『ディメイションフェイス』も再度シャッフルされるように切り替わると仮面ライダービルド、スパークリングフォームの頭部を再現し固定する。

 

「また変わった……今度は一体なにを……?」

 

「くそっ……そいつを潰せッ!」

 

鎧の少女の命令で、ゴリラ型が地面に亀裂を入れながら、撃ち出された弾丸のような速度で飛び出してくる。

 

先程までは受け止めきれず受け流すので手一杯だったが、今はもう違う。岩を砕く強烈な拳打を俺は片手で受け止める。

 

「……なっ、 受け止めやがった!?」

 

ゴリラ型がもう片方の腕で拳を打ち込んでくるが、それも難無く片手で受け止める。力を込めて拳を押し込んでくるが微動だにせず、逆に相手の動きを押さえ込む。

 

そのままゴリラ型の巨体を持ち上げて地面に叩きつけてから、ジャイアントスイングの要領で回転させて空中へと投げ飛ばす。

 

<ビ・ビ・ビ・ビルド!ファイナルアタックタイムブレーク!>

 

「勝利の法則は、決まった!」

 

ディケイドライドウォッチの『ライドオンスターター』を弾き『DCDラビットフットシューズ』を機能させて高く跳び上がる。

 

ワームホールのような形状の図形を空中に出現させ、その中にゴリラ型を吸い込ませるように閉じ込めて拘束する。

 

発生した赤、青、白、三色の無数の泡とともに拘束したゴリラ型にライダーキックを叩き込み、その巨体を貫通させながらワームホールの図形を潜り抜け地面に着地。

 

スパークリングフィニッシュを喰らったゴリラ型は爆散し赤と青の粒子に変換されて消滅した。

 

「あのノイズを、一撃で……」

 

「ふぅ……また同じようなノイズを召喚しても今みたいに倒せるけど、まだやる? 出来れば大人しくしてもらえると嬉しいんだけど」

 

「……るな」

 

「え?」

 

俯いている鎧の少女がボソボソと何かを口にしているが、距離があるのと小さな声なので何を口にしているのかうまく聞き取れない。しかし、次の瞬間鎧の少女が激しい怒りの形相で顔を上げた。

 

「ふざけるなっ! なんなんだお前は! お前みたいなデタラメな力を持つ奴がいるから争いがなくならないんだ……だから、アタシはッ!」

 

「………」

 

鎧の少女が拳を震わせて叫ぶ、その声音と表情は憎悪に染まっていた。鎧の少女の怒りに呼応するかのように鞭の先端に高エネルギーが収束されていき球体へと形状を変えて放たれる。

 

「消えちまえよッ!」

 

「………ッ!」

 

巨大な黒いエネルギー弾を両腕で受け止める。

 

その威力の高さから地面を削りながら引き摺られる。力技でエネルギー弾を抑え込み、上空へと蹴り飛ばして爆発させる。

 

「くそっ! まだだ、もう一発……はぁ!? なんでだよ!? アタシはまだやれるっ! あいつを今ここで……っ! わかったよ!」

 

もう一撃放とうとしていた鎧の少女の動きが突然止まった。不自然な動きを見せる鎧の少女、誰かと会話してるのか声を荒げている。

 

会話していた相手と話が纏まったのか、構えを解きながらもこちらを睨みつけている鎧の少女。

 

「……ッチ。今回はここまでみたいなんでな、続きはまた今度だ」

 

「悪いけど、次なんかない。君はここで捕まえてその杖も破壊する」

 

逃走を図ろうとする鎧の少女が空へ飛び上がるよりも早く接近。そして拳を叩き込もうとした瞬間、どこからか現れた飛行型ノイズがドリルのように変形しながら突っ込んできた。

 

咄嗟にガードしたが吹き飛ばされてしまい、鎧の少女と距離が開いてしまう。飛び上がった鎧の少女を慌てて追いかけようとするが、雨のように次々と飛行型ノイズが降り注いでくる。

 

「グッ……くそ、邪魔するなよ……ッ! そこか!」

 

<ライドヘイセイバー!>

 

<ヘイ! 龍騎! 龍騎 デュアルタイムブレーク!>

 

「せりゃあっ!」

 

ジクウドライバーから出現させたライドヘイセイバーを握り、グリップ付近に取り付けられている長針パーツ『ハンドセレクター』を回転させながら仮面ライダー龍騎を選択して『スクランブルトリガー』を引き、変な気配と向けられた明確な敵意を感じた、鎧の少女がいる場所とは別方向の物陰へとライドヘイセイバーを振り下ろす。

 

刀身から発生した強烈な炎の斬撃を飛ばす。轟音を響かせて木々や舗装路を爆発させ焼き払うが崩れた物陰には誰もおらず感じ取っていたはずの気配も消えていた。

 

周辺を確認すれば鎧の少女も完全に姿を消していた。

 

「なんだったんだ今の……何かおかしな気配だった。普通じゃないような」

 

鎧の少女は逃してしまったが、どうやら彼女には仲間、もしくは協力者がいる。そしてそいつもノイズを操ることができると考えていいだろう。さっきのノイズは明らかに妨害するように俺だけを狙って攻撃していた。

 

こちらに向かってくる響たちを視界に収めつつ、オーロラカーテンを発動させてこの場を素早く離れた。

 

そういえば朝から何も食べてないからお腹すいたな。

 

 

 




アーマータイムさせたいが為にオリジナルのノイズを用意してしまった、許してください……どうしてもアーマータイムしたかったんやッ。

しかも初のアーマータイムがディケイドという、最初はドライブアーマーとウィザードアーマーの予定でしたが戦闘シーンの資料になりそうな映像を漁っている時出会ってしまったんです奴に、ファイズアクセルに……ッ。

うぉー!ファイズカッケー!ってなってる時にディケイドアーマーファイズフォームの存在を知ってしまった、そしたらもう、ほら、使うしかないやん? 因みにビルドフォームは自分が好きだから出しました。

そんな感じで後半を大幅に削って執筆し直した結果時間がかかりました、はい。




―――――――――――――――――――
おまけ、ここのソウゴのアナザージオウII(海東)戦。

「士、ライダーの力は取られたはずだろ?」

「そんなこともあろうかと、予め俺の力の半分だけウォッチに託しておいたのさっ!」

「流石は士だ。でも、半分の力じゃ僕には勝てないっ!」

「え、半分……いま半分だけって言わなかった? ってことは俺は今まで半分の力しか使えない欠陥品つかまされてたってこと!? なあ!?」←記憶あやふやで忘れてた奴。

「なんだ、先輩の力を使わせてもらっといて口が悪いなお前」

「いや、その先輩を武器にして投げ捨てるようなあんたには言われたくない……」

「……ジオウにはジオウの力だ、お前も来いっ!」(カメンライド ジオウ!

「えっ? 無視か、無視なのか?」(グランド ジオウ! 


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