モブ厳な世界で時の王者やってます。   作:あんこパンパンチマン

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時間を見つけながらちびちび執筆して投稿。いつも誤字報告ありがとうございます!


モブ厳な世界で邂逅。

 

──最近俺は夢を見る。

 

この世界ではない別の世界、仮面ライダージオウの世界にいた頃の過去に起きた、体験した出来事を振り返るような不思議な夢だ。

 

真っ暗な空間でプロジェクターに映し出された映像を立ち尽くして眺めるように、延々と続く同じ光景を眺めさせられている。

 

景色が切り替わる。

 

 

『悪いが、お前の相手は俺だ。少し遊ぼうか……魔王見習い』

 

『ッ……あんた……門矢、士』

 

 

目の前に立ち塞がった世界の破壊者とぶつかり合った。

 

 

『君は偽物で偽善者だ、なのに王様になりたいだなんてよく言えたよね。本来、王様になる資格もその力も無かったのにそれを奪ったんだよ……真の王者となるべき“彼”を玉座から引きずり下ろして。ねえ、どんな気分か教えてよ偽りの王様。奪った資格と力で手に入れた玉座から世界を見渡すのは、さあッ!』

 

『う、ぐぁっ! お、俺は……それ、でもッ! 俺はぁッ!』

 

 

ミラーワールドで遭遇した、鏡の中に存在するもう1人の自分との戦い。

 

 

『常磐ソウゴ、お前さえいなければっ……お前だけは必ず俺がこの手で消してやる!』

 

『……そうかもね、俺自身も俺なんかいなければって考える事はあるよ。けど立ち止まらない、歩き続けるってもう決めたんだ。だから俺は君と戦うよ』

 

 

目の前に現れた同じ“ジオウ”の力を持つアナザーライダーと対峙した。

 

 

『構えろジオウ。もはやお前に語りかける言葉はない……俺は俺の使命を果たす』

 

『ゲイツ……ッわかった、ゲイツがそう決めたのなら俺も全力で行く』

 

 

救世主の力を覚醒させたゲイツと死闘を繰り広げた。

 

 

『この世界に王は2人もいらない。だからお前の代わりに、俺が最低最悪の魔王になってやる!』

 

『……そっか、君はその道を選んだんだ……なら、なりたきゃ勝手になってろ。俺は最高最善の魔王になるっ、お前が俺の前に立ち塞がるなら越えて行くだけだっ!』

 

 

再び現れたすべてのアナザーライダーの力を統べる裏の王と戦うことになった。

 

 

途切れ途切れに切り替わって行く映像を眺めていると決まって最後に俺の体験していない、知らない映像が流れ出す。

 

場所はかつて俺が通っていた光ヶ森高校。

 

そこにはゲイツやツクヨミ、タイムジャッカーのウールとオーラが高校の制服を着て楽しそうに笑い合いながら登校している日常の風景が映し出される。

 

そしてその中心には俺ではない別の“常磐ソウゴ”がみんなと並び歩いていた。彼らが学校で勉学に励み青春を謳歌している光景。

 

……最初はこの光景がどういう事なのか意味がわからなかったが今ではなんとなく理解している、きっとあの“常磐ソウゴ”は本物の“常磐ソウゴ”だ。偽物の常磐ソウゴ(おれ)なんかとは違う本物の。

 

ここはどこかの並行世界なのか俺が創り出した新世界なのか、本来ならこうなるべきだった世界なのか、ありえたかもしれない可能性なのか、その世界の光景を俺は眺めさせられている。

 

最後に鏡が割れるかのように目に焼き付けていた景色が砕けて消えて行く。真っ暗な空間だけが残ると突然眩い光に包まれる。

 

そして気がつけば見に覚えのある荒野に俺は立っている。

 

「……なぁ、これを俺に見せて何がしたいんだ?」

 

振り返れば荒れ果てた大地に1人、魔王が立っていた。

 

彼は歴代ライダーたちが取り囲むように並び、荒野にそびえ立つ初変身の像を背後にこちらを見つめていた。

 

オーマジオウは何も語らない、ただそこに立ち尽くしこちらを見つめているだけだった。いつも気が付けば彼はそこにいる、その姿を見ても初めて会った時のようなプレッシャーや恐怖はもう感じない。

 

いつもここで夢が終わる。

次第に意識が薄れていく、そろそろ目が覚める時間だ。

 

視界がぼやけていくなか、オーマジオウは燃え上がる炎のように赤い複眼がずっと俺を見つめていた。

 

 

…………。

 

 

「んっ……何してんの雪音さん」

 

「へ?……あ、いや別にアンタが酷く魘されてたからちょっと気になっただけで! 別に何も!」

 

目が覚めると最初に視界に映り込んできたのは見慣れた天井ではなくこちらを覗き込む雪音さんの姿だった。

 

迷子の兄妹をお父さんの元へ送り届けて見送った後俺は雪音さんを連れて時計店へと帰宅した。借りてきた猫、というよりは拾ってきた警戒心の強い野良猫のように唸っている雪音さんをテーブルで待たせて夕食の準備をした。

 

最初は俺のことを警戒して、「行く訳ないだろそもそも腹なんて減ってない!」と癇癪を起こしていたが再び腹の音が鳴り響いたことで勢いが止まる。

 

顔を赤くしてプルプル震えている雪音さん、その様子がなんだか少し面白くて思わずフッ……と俺は笑みを零してしまった。

 

それを見た雪音さんが俺の笑みをどう受け取ったのかはわからないが「食いに行ってやろうじゃねえか!」とやけくそ気味に叫んで時計店までついて来てくれた。

 

その日の夕食はオリエンタルな味と香り(たぶん)のビーフカレー、初めは運ばれて来たカレーを睨みながら警戒心MAXにしていたが恐る恐るスプーンで掬い一口食べると目を見開きそこからガツガツ食べ始めて行く。

 

その食べっぷりに唖然としていると空になったお皿が突き出されて目を逸されながら小さな声でおかわりを要求された。次の日のお昼に取っておくつもりが半分以上が雪音さんお腹の中に収まった、まあいいんだが。

 

美味しそうに食べてくれるのは嬉しいんだけど雪音さんの食べ方がなんというかその、個性的だった、うん。

 

口の周りとテーブルを汚しながら食べる彼女のフォローをしながらそう思った。

 

その後夕食を食べ終えてから片付けを終わらせて、雪音さんを途中まで見送ろうと思っていたら彼女が居間のソファで眠っていた……警戒されてないのか信用されたのかよくわからんが無防備な彼女に頭を痛めつつ起こそうとした時、パパママと呟きながら涙を流していた姿を見てなんだか起こす気になれなかった。

 

その後自分の部屋から持ってきた布団を彼女に掛けてから俺は非常用の寝袋を使って寝た。

 

そして現在。

 

「えっと、その、色々世話になったな……」

 

「気にしないでいいよ、困った時はお互い様ってやつだよ」

 

「はっ、そうかい。とんだ物好きだよアンタ……まあ、なんだ……ありが、とう」

 

帰る準備を済ませた雪音さんを玄関まで見送りに来ている。途中まで送って行く事も伝えたが別にそこまでして貰わなくてもいいと断られた。

 

「……じゃあな」

 

「うん、またね。お腹が空いたらいつでも来ていいよ」

 

「だ、誰が来るか! 今回だけだっての! じゃあなこのお人好しっ!」

 

雪音さんが出て行ってバタン、と玄関の扉が勢いよく閉じられた。昨日彼女と話した時、あまり踏みこんだ会話はしなかったが様子を見る限りどうしても彼女が平気で人を殺せるような性格の人間だとは思えなかった。

 

スウォルツのような自分の目的の為に平気で何も知らない他人を利用して切り捨てるような吐き気を催す邪悪な存在を知ってると、彼女の事をただの悪人だとは思えない。むしろ利用されている側なんじゃないかと思い始めている。かつて戦った加古川飛流のように。

 

「……雪音さんには悪いけど少しだけ調べてみるか」

 

<オーズ!>

 

懐から取り出したオーズライドウォッチを起動させると仮面ライダーオーズのサポートアイテムであるカンドロイドが出現する。オーズライドウォッチの力でカンドロイドを使えると気がついたのは最近だ。

 

<タカ・カン!>

 

<バッタ・カン!>

 

<ウナギ・カン>

 

<クジャク・カン!>

 

「よし、雪音さん……この時計店からさっき出ていった銀髪の女の子を追いかけてくれ、彼女の拠点と協力者が知りたい。あ、もちろん彼女や他の人にバレないようにこっそりとお願いね」

 

出現したカンドロイドのプルタブを開けるとカンモードのカンドロイドがアニマルモードへと変形してから俺の言葉に了承するかのように鳴き声を上げて窓から次々飛び出して行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私立リディアン音楽院、その地下深くに存在する特異災害対策機動部二課。その二課本部の発令所でいつものように午後の二課定例ミーティングが行われている。

 

ミーティングメンバーはシンフォギア装者である天羽奏、風鳴翼、立花響。シンフォギア装者とノイズの戦闘をサポートするオペレーターの藤尭朔也、友里あおい。特異災害対策機動部二課の司令官、風鳴弦十郎。

 

以下のメンバーでミーティングが行われていた。異端技術研究者である櫻井了子は別件の為この場にはいない。

 

「以上がここ最近増加しているノイズの発生規模と被害状況ですね」

 

モニターに表示された街の地図にノイズの反応を意味しているいくつもの点滅するマーカーが記録されている。そのマーカーの数は指では数えきれぬ程のものだった。

 

「……やっぱり最近ノイズの出現する頻度が多くなってきてるよな」

 

「奏の言う通りだ、ここ最近ノイズの出現が活発になっている。原因や関係があるとすればネフシュタンの鎧の少女雪音クリス、響君のシンフォギア装者としての覚醒……そして」

 

弦十郎が藤尭に視線を送ると藤尭が頷きモニターに表示されている映像を切り替える。

 

モニターには未確認一号オーマジオウと未確認二号ジオウの姿が映し出される。

 

「二年前のコンサート会場に姿を現した未確認一号オーマジオウと約一年程前に姿を現し活動し始めた未確認二号、ジオウ。この二人も何かしら関係してると見ていいでしょう」

 

「響ちゃんが未確認二号に対してコンタクトを取れた事で二号の情報を得る事ができましたが、それを鵜呑みにしていいのかどうか」

 

「じ、ジオウさんは嘘なんてついてません! 話ができたのはほんの少しですけど……あの人は私の事も守ってくれました!」

 

藤尭と友里、オペレーター二人の発言に響が食い付くように反応する。

 

「……そうだな。事実、ジオウがノイズの攻撃から響君を庇うのを俺たちは目にしてる」

 

地下鉄での戦闘でシンフォギアを纏っていなかった響をノイズの攻撃から身を挺して庇ったのをあの日発令所にいた弦十郎を始め二課のスタッフ全員がモニターで確認している。

 

そしてその強大な力も。

 

「……ジオウの力が強力なのは理解していた、しかしあの日見せつけられたオーマジオウの圧倒的な力量程ではないと思っていたがその考えは改めなければならないかもな」

 

モニターには翼と協力しても倒すに至らなかった虫のような外見の増殖分裂型ノイズとゴリラのような外見の結合増強型ノイズを姿を変化させたジオウがたった一人で圧倒している映像資料が流れている。

 

先日の戦いで確認できたジオウの形態変化は三つ。

 

一つがマゼンタカラーのゴテゴテとした鎧姿。

 

二つ目が増殖分裂型ノイズを消えたと錯覚する程の高速移動で葬った姿。

 

三つ目が強化され続ける結合増強型ノイズをそれ以上の力で押さえ込み消滅させた姿。

 

小型の奇妙なデバイスを扱い姿を変化させた事からまだ他にも力を隠していると弦十郎は考えていた、もしかするとあの時以上の力も。

 

「しかし今までの戦闘状況を見る限りジオウと名乗ったこの未確認二号は約二年前に姿を現したっきり姿を見せない未確認一号オーマジオウと比べれば危険性はないのでは?」

 

「そうですね、例外を除けば狙うのはノイズのみで、翼さんや奏さん、響ちゃんたちシンフォギア装者を狙って攻撃を仕掛けてきた事もありませんし、ノイズとの戦闘で協力的な面も見られます……」

 

「うーん、あたしは特に危険だとは感じてないけど……翼はどう思う?」

 

「そうね……未確認についてわからないことの方が大きいけれど、私たちが何度か助けられているのは事実だし。少しだけ……信用してみてもいいかもね」

 

「翼さん!」

 

その言葉に嬉しそうに顔を綻ばせて手を握る後輩の姿に翼は苦笑いをする。そんな二人の様子を奏と弦十郎は微笑ましそうに眺めていた。しかしすぐに弦十郎は表情を切り替える。

 

「(オーマジオウとジオウ、この二人が何かしらの関係を持っているとは思っていたが……今までこの二人を別個体だと認識していたがもしかしたら違うのか?)」

 

外見こそ面影を残していたがその立ち振る舞い方や声音、圧倒的な力の差から今までオーマジオウとジオウ、この二人を別の存在と二課の人間や弦十郎は考えていたが、それは違うのかもしれないと弦十郎は新たな仮説を立てていた。

 

「(オーマジオウが最後に俺たちの前に姿を見せたのは翼と奏がノイズの殲滅を完了した時に突然現れて響君の置かれていた環境の情報を渡してきた時だ……オーマジオウとジオウを同個体と考えて、この二年間でオーマジオウの身に何かがありその力を失い弱体化していると考えれば、姿を見せない理由や活動するジオウの力にも不明な点は多いが説明が付く所はある)」

 

ジオウの持つ形態変化能力、これがこの仮説を立てた要因となっている。姿形を変えてその能力までも変えたジオウの力、弦十郎はソファに背を預けて一人思考していた。

 

そんな弦十郎を置いて会話は進んで行く。

 

「このオーマジオウさんって……二年前の“あの日”私や奏さん、他の人を助けてくれた人ですよね」

 

「そうだな……ついでに言うとあたしが響に会えたのはこいつのおかげでもあるんだ」

 

「え、オーマジオウさんの?」

 

奏が語ったのはオーマジオウと最後に邂逅した日の出来事。オーマジオウから渡されたデータから響の置かれていた状況を知り、奏や二課が動く事が出来たこと。

 

「そうなんですか……」

 

「ああ、オーマジオウから響の事を知らされるまで気がつけなかった……もしかしたら助けた気になってそのまま終わってたかもしれない、ごめんな」

 

「そんな、奏さんが謝らないでください……よしっ、じゃあ今度オーマジオウさんに会う事が出来たらちゃんとお礼を言わなきゃいけませんね!」

 

「……ふっ、そうだな。なら次は二人でちゃんと礼を言うか」

 

立ち上がり胸の前で握り拳を作って曇りのない明るい笑顔を浮かべる響の姿に呆気に取られつつ肩を竦めてその笑顔に釣られるように奏も頬を緩ませる。

 

「未だ不明な所が多いオーマジオウを警戒しつつも、ジオウへとコンタクトを取り協力を仰ぐという形でよろしいんでしょうか?」

 

「……そうだな、俺たちや向こう側にも敵対する意思がないのなら協力を要請するに越したことはない。オーマジオウやジオウへ対しては拘束というよりは対話する方向で行くべきだな……っともうこんな時間か、ミーティングはここまでだな」

 

弦十郎が腕時計で時間を確認するとミーティング終了予定時刻を大幅に過ぎていた。響や翼は二課所属のシンフォギア装者だがそれ以前に学生であるため遅い時間まであまり無理はさせられない。

 

解散を言い渡された各々、持ち場に戻る者や休憩に出る者がいる。

 

「それじゃあお疲れ様ですぅ……」

 

先程までの明るさはどこに行ったのか悲壮感漂う様子で響が発令所を弱々しく歩きながら出て行く。

 

その後ろ姿を発令所に残っていた弦十郎と奏が見つめていた。

 

「あちゃあ……響の奴大丈夫かねえ」

 

「響君の親友の小日向未来君……だったな。いくら機密保持の為とはいえもう少し彼女たちの事を考えて支障が出ないように配慮すべきだったな」

 

ソウゴと食事を終えて帰宅途中だった未来は、偶然雪音クリスの襲撃に鉢合わせてしまい、雪音クリスと響の戦闘を目撃、巻き込まれてしまった。その日の夜から二人は喧嘩していて寮に帰っても会話が少なくなっていた。普段の響と未来の仲の良さを知っていれば信じられない程だ。

 

響に対して隠し事はしたくないと言っていた未来、そして響も自分の身を案じていてくれた彼女に本当の事を言えず自分も未来に対して隠し事はしていないと小さな嘘をついてしまった。

 

それが彼女たちの喧嘩の原因でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人里はなれた山間部、そこには隠れ家ともいえる邸宅が存在していた。

 

時計店を出たクリスは邸宅の玄関の扉を開け放つと慣れた様子で邸宅内部に上がり込む。その広い廊下を苛立ちを露わにするかのような歩みで迷う事なく進んで行き、目的の部屋へ辿り着く。

 

自分が信じていた相手の発言の真意を確かめる為に彼女はここ来た。

 

部屋の大きな扉を蹴破る勢いで開けて入る。

 

「昨日の言葉は、アタシが用済みってどういう事だよ!? もういらないって事かよ!? アンタもアタシを物のように扱って捨てるのかよ!」

 

広々とした開けた部屋には王室家具のようなテーブルに椅子、そしてそんな邸宅部屋の隅には檻や磔台に拷問器具のようなものが並んでいる。

 

悪趣味な物が揃う部屋の奥に“彼女”はいた。

小さなモニターがいくつも並ぶ作業台の前に受話器を取り腰掛けている。

 

「もう頭ん中ぐちゃぐちゃだ! 何が正しくて間違ってるのか、何がなんなのか訳わかんねえんだよ!」

 

クリスは頭を掻き毟りながら胸の内から溢れ出す感情を溢す。昨日の響との戦闘中に現れた“彼女”から告げられた言葉、信じていた相手からの言葉を理解できずにいた。

 

「どうして誰も、私の思い通りに動いてくれないのかしら……」

 

受話器を下ろし絹のような美しい金色の髪を靡かせながら“女性”は立ち上がった。その身体には肌を隠すような物を身に纏っておらず、裸体を惜しげもなく曝け出している。

 

苛立ちを隠そうとせず、クリスを見つめる。

 

「流石にそろそろ潮時かしら……」

 

「……え?」

 

背を見せていた“女性”が振り向くと持っていたソロモンの杖を掲げてノイズを出現させた。光を放ちながら現れた数々のノイズがクリスを取り囲む。

 

信じていた相手から向けられる敵意も目の前の光景も、クリスは受け入れる事が出来ず茫然と見つめていた。ノイズを差し向けられる意味を理解できない彼女ではない。しかし信じたくなかった。

 

「そうね、貴女のやり方じゃ争いを無くす事なんて出来やしないわ。精々一つ潰して、新たな火種を二つ三つばら撒くぐらいよ」

 

「そんなっ……アンタが言ったんじゃないか! 痛みもギアもアンタがアタシにくれたものだけがッ」

 

「私の与えたシンフォギアを纏いながら毛ほどの役にも立たないなんて……そろそろ幕を引きましょうか」

 

“女性”の身体が淡い光に包まれると、一瞬でネフシュタンの鎧が装着される。クリスが身に纏っていた時とは違い、銀色の輝きを放っていたネフシュタンの鎧は黄金に輝いている。

 

「既に“カ・ディンギル”は完成しているも同然、だからもう貴女の力に固執する理由なんてないわ」

 

「かでぃん、ぎる……?」

 

「貴女は知りすぎてしまったの……さようなら」

 

“女性”が掲げたソロモンの杖を操作するとノイズがそれに反応し形状を変化させながらクリスに向かって疾走して行く。

 

シンフォギアを纏っていない状態でノイズの攻撃を喰らえば死は免れない。茫然としていたクリスは意識を戻して慌てて回避するが判断が一瞬遅かった。

 

「………ッ!」

 

 

 

 

 

 

<フォーゼ! ギリギリスラッシュ!>

 

ノイズがクリスの身体に触れる、その瞬間。窓ガラスを蹴り破って現れた黒い影──ジオウがジカンギレードを振り下ろして電撃の刃を飛ばしてノイズを消し飛ばした。

 

「……なっ!?」

 

「……ほう」

 

ジオウは受け身を取りながら着地するとジカンギレードを構えてネフシュタンの鎧を纏う“女性”と対峙する。

 

「これは予想外のお客様だ、どうやってここを突き止めた?……いや、クリスの後をつけてきたのか。まさか最後の最後まで役に立たないとはな」

 

「……“フィーネ”」

 

女性──フィーネは酷い火傷の出来た片腕に一瞬視線を向けた後に憎悪の篭った瞳でジオウを鋭く睨みつける。

 

その火傷の痕は、ジオウとシンフォギア装者たちの戦闘で逃走したクリスを追いかけようとするジオウの行動を妨害した時に、ライドヘイセイバーの一撃を受けて出来た火傷だ。その火傷の痛みから夜も眠れない時もあった。

 

「しかし、会いたかったぞ未確認二号ジオウ。わざわざお前を探す手間が省けた。私も知らないお前の未知なる力には興味がある……貴様の頭蓋を砕きズタズタに引き裂いた後でたっぷり調べ尽くすとしようっ!」

 

フィーネが全身をバネのようにしならせながらジオウに向かって高速で鞭を伸ばす。ジオウが鞭を剣で弾き飛ばすとフィーネが近くにあった椅子を投げつけ怯ませようとするが、ジオウが投げつけられたそれを上手く蹴り返した事で自身に椅子が直撃し逆に怯ませられてしまう。

 

「は、ちょ、おい!? 離せ! 何しやがる!?」

 

ジオウはその隙に後ろにいた突然の乱入者に唖然としていたクリスを、米俵を担ぐように持ち上げる。顔を赤くして抵抗するクリスをなんとか抑え込むと、蹴り破った窓ガラスの破片が散乱するベランダから飛び出していった。

 

「……ッっ! 逃げるつもりかっ!」

 

フィーネは舌打ちをするとソロモンの杖を起動させて大量のノイズを出現させる。背中を見せて逃げる襲撃者に攻撃を仕掛けるが、ジオウはクリスを抱えたまま疾走し襲い掛かってくるノイズを消滅させていき、暗い森の中へと姿を消した。

 

フィーネの憤怒の咆哮が山間部中に響き渡った。

 

 

 

 

 




年頃の女の子をお姫様抱っこではなくお米様抱っこで連れていく我が魔王。

シンフォギアXDとバンドリってコラボしてたんですね知らんかった、コラボデザインのクリスちゃんと未来ちゃんが可愛かった。


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