誰も間違いじゃない
その心が決めたことに従え
それが間違えた私のできる最大限の最悪を招かない助言だ。
そう別世界(本編)でいいながらバグって矛盾して壊れるつっちーが好き
「さぁ、本題といきましょうか、元帥」
声は先程まであった優しく暖かいものではなく、冷たくて恐ろしい、そしてどこか悲しい声だった。
「えぇ、そのためにここまで来たのです」
彼はただ落ち着いて答える。
汗も一つ流さずただ視線を鋭くし怪物を捉える。
「・・・そう、アラハバキやインテゲルタイラント、駿河がいてくれたのね・・・やっぱり近江は駄目だったのね、本当にあの娘似ね」
彼女はただ目を閉じてどこか懐かしむように喋り始める
だが、今、私たちの世界には居ないような
「フィンブルさん」
「え、あ、えぇ、ごめんなさいね、『記録』を見たくなっちゃって・・・皆が兵器ではなく、生命として生きているのがとてもね」
記録
一体なんだろうか
「『記録』・・・ですか・・・菊花さんも・・・言ってましたね」
「さてと、何も私が無意味に見ていたわけじゃないわよ、私はあなた達みたいなのが大嫌いなのよ、自分の娘を殺されて、苦しめられて、えぇ本当に殺したいわ・・・・でもそれは無意味、だからこうやってただの墓の管理人に徹するの、そして欲しいのは力よね・・・はいどうぞ、持っていきなさい」
袖から一枚のUSBメモリーを取り出し机に置く。
「それを持って帰っても良いけど・・・一つ見ないかしら、『二人の記録』、時間はかけないわ」
「・・・私は構いませんが、二葉さんはどうします?」
「いや、見たいのは山々だが、本土が壊滅した今そんなことに時間はかけられません、一人でも多くの命を救う、それが『軍人』ですから」
「そう、なら無理に止めないわ、所詮その程度の・・・いえ、彼を基準に捉えるのは残酷ね、だから、『力なき正義』に憐れんで助言をしておくわ、『テュランヌス』は敵でも味方でもないわ」
それを最後に彼はただ、一礼した後、メモリーを手に取りその場を離れた。
そこからは迅速に私達を除いて全員が全力で本土へ向け帰路に付いた。
「・・・はぁ、面倒くさい、どいつもこいつも話を聞かず無茶苦茶するわ・・・貴女も早く帰りなさい、今、明確に人類の敵になっているのは『近江』、『ヴォルケンクラッツァー』、そして『播磨』の三人だけよ、テュランヌスは放っておいても彼女が消すわ、ただ、残った『組織』は別問題だけどね」
「どうしてそこまで親切に話すのですか」
言った。
もうどうしようもないぐらい純粋に単純に
ただ、言った。
いつもじゃあり得ないことに疑問を述べる。
女はただ黙って冷蔵庫からビールを取り出し蓋を開ける。
「簡単な話よ、『播磨本人』に人類を殺してもらう算段よ」
そう、ただよくある会話のように軽く言った。
その重みを知っているのに
その辛さを知っているだろうに
コイツは
「・・・ふざけないでください」
「ふざけて何が悪いのかしら、『おもちゃ風情』が」
「その呼び方をあなたがしますか、えぇ、そうですか、殺しますよ、沈めるなんて生半可ですね」
誇りも
意思も
何もないただの虚空に何がわかる
「ハハハッ、やっぱり貴女とはいい酒が飲めそうね蒼天、えぇ、当然よねぇあの娘の死体の半分で無理矢理作った文字通りの人間の『おもちゃ』ですものねぇ、まったく、無知とは最高にして最善、よく言ったものだわ。なにもしらなければ最善こそが最高であり、最高こそが最善となる、ね、誰が好き好んでこんなことするものですか」
もう喋っているのもわずらわしかった。
知っていてもまだ隠す、だから殴り倒して聞くしかない。
「いい加減黙れ、本気でキレますよ」
「そうね、貴女には私が終始、播磨を理解しきれていないせいで地雷原で寝ているようなやつだと思うでしょう、私も無知ならどれだけ嬉しかったか、全能とはそれすなわち結果の覚悟をしなければならない、えぇ本当にね」
そういった瞬間世界が暗転し
再び明るくなったときには薄暗い海の底だった。
いや、空がない
ただ無数の小さな青白い炎が燃えているだけだった。
「こ、ここは」
理解が追い付かなかった
いや追い付けない
なぜここにいる
なぜあの女もいる
「知らないでしょうね、超兵器機関の仕組みなんて、そもそもこの事実は私だけの秘密のはずだったのに」
「秘密?」
「えぇ、秘密、感じたことはないかしら『機関を全力以上』で動かしたときのあの絶大な力と光の正体」
「いえ、まったく」
「じゃあ言っておくわ、それは『魂』を喰らう兵器よ」
理解できた
したくなかった。
つまりなんだ
無数の生死に関わらず『魂』を喰った。
「冗談じゃあありませんよ、じゃああの人たちは」
「えぇ、今もただの全力としか思ってないでしょうね、逆にこれに気づいた播磨とヴォルケンクラッツァーは本当にイカれてるわ、『全てを守る』為にこの『墓場』の魂全てを燃やそうと考えるもの、超兵器機関は無限の永久機関じゃないのよ、ただ『膨大すぎる自分の魂』を自分で喰って燃やしているだけ、ガス欠は無いけど所詮用量だけのもんだいね、じゃあ『あなた程度の魂』はどうするか?簡単ね、『死体から奪い取り、生物から吸いとる』そもそもね、魂が一番エネルギー効率が良いなんて誰が思い付くかしら、私の超兵器復活だって『魂』というメモリーがないと出来ないのにあの二人は全く」
そう言いながら手を叩くと世界はまたもとに戻り目の前にコーヒーが入れてあるカップがあった。
「だからそれを乱用するといつかは全人類を喰い殺す事になるわね、せいぜい足掻きなさい、終末装置にね」
呉
何もない更地
無数の鉄くず
万を越える死骸
あぁ、勝てたのか。
「はぁ、結局、『私達だけ』ですかまったく」
血で汚れた服を着ながらゆっくりと赤い海に手を入れる。
少しかき混ぜると冷えきった肉や骨に当たりベッタリと引っ付いた。
「アイツらも帰ったみたいだしそろそろおいとましようかね、私も」
「お気をつけて、私はもう少しここで寝てからウラジオストクに向かいます」
「お疲れ様、播磨」
遠く離れる先輩を見送りながら跡地の大地に大の字で倒れ込む。
まだ、戦争は始まったばっかなのに、これじゃあまだまだ不安としか言いようがない。
海底
「たっだいまぁー!はりまー」
「あぁ、お帰りなさい皆、カレーしかないけどいい?」
「構わないって、酒ならあるからさぁ」
すぐに机にカレーを並べ適当に串カツをぶっさしておく。
シュトラールがビールを両手で抱えないといけないぐらい巨大なジョッキに入れてカレーの横にいくつも並べる。
そこからぞろぞろ皆が帰ってきて一瞬にして宴会場の出来上がりだ。
こんな海の底に何があるのだろうか
何もない。
ただ私の残骸があるだけ。
冷たい
「はーりまっ、そんな海ばっか見ないで飲みましょ?」
「ヴィント・・・えぇ、そうね」
「お、初めて笑った、そうそう、私達は兵器、だが同時に過去であり未来の生命、だからいいのよ、そうやって笑っても」
笑う?
笑っていた?
「・・・そう」
「そうそう、じゃあちょっと死んできますかぁ・・・」
「ヴィント───」
言いたいことを言い切る前に彼女は霧のように軽やかに消滅し、海上に巨大な船が浮いていた。
次回Aラストステージ 疾風のノイズ