霧が濃いある夜の話だ。
私はいつものようにアイオワの手法を整備するただのそこら辺にいる米海兵だった。
明日、我々米英の連合艦隊は東洋の黄色人種の国
日本というところが進行目標にしていたミッドウェー海域で待ち伏せしていた。
つい先月に起きた謎の警備艦隊消滅の捜索も一つではあるらしい。
「・・・なぁフィリップ、この音はなんだ?」
そう、急に質問しだした同期の海兵が来たため一度整備を止め、耳を済ませる。
なにかが軋むような、一定のリズムを刻みながらどこか狂っている。
そしてそれは脳に謎の恐怖と安心を与えようとして。
「耳を塞げ!!こんなものあってたまるか!!」
だがその言葉を言うのは遅かったらしい。
一つの巨大な轟音が響いた。
数秒後にそれに反応するような爆音がひとつ
それが絶望の始まりだった。
その報告はこうだ
どこからか飛んできた砲撃により後ろにいたエンタープライズが一撃で大破、一人の生存者もなく吹き飛んだという報告が入った。
ありえない。
どれだけ巨大な戦艦を要すれば最新の改造を施し日本の『ナガト』級の砲撃を余裕で耐えれる重装甲を施し、搭載量を従来の三倍に増やしたため巨大化も果たし下手な戦艦より耐久性のあるエンタープライズを一撃で消し飛ばせる。
そんな思案はまさに無駄であり、絶望でしかなかった。
二回目の砲撃が聞こえ今度はたった一度の砲撃でヨークタウン、ホーネットの消滅報告。
三度目でガンビア・ベイの轟沈
敵の数も不明
敵の火力も不明
だがわかる。
奴等の戦艦は
『我々の全ての装甲を貫き』
『その精度は例え霧の中であろうと必中』
怪物だ。
ありえない。
すぐに戦闘態勢を取り、行動する。
まさにその時天の救いと言わないばかりに霧が晴れ艦隊の位置を目視でもしっかり確認し行動を開始しようとしたとき。
それが我々が『死神』にその鎌を首に当てられた時だった。
目の前にいるのはたった一隻。
しかしその船は
我々の船を三隻縦に並べても足りないぐらい長く
その横幅は空母を飲み込めるぐらい巨大な怪物であった。
ここで逃げれば生き残れたのかもしれない。
だがそうはならなかった、当然だ『空母戦艦含め大型艦百隻』と巡洋艦駆逐艦含め240隻を越える大艦隊に向かうがたった一隻
だからだ。
なぜ挑んでしまった
開戦から三時間。
我々の艦隊は一隻の駆逐艦と後方の補給艦隊護衛の戦艦二隻を除き全滅、生存者は私含め約二百人と後方の部隊の1割。
もはや思い出したくもない。
あらゆる戦艦の砲撃の雨が一撃もあの黒い装甲を貫通できないどこか傷ひとつなく。
食らえば致命傷のはずの魚雷を優に千発食らおうと一切止まることがなく
何千という急降下爆撃を永続的に降らせようと誘爆の一つも無し。
むしろそのドイツ戦線で噂される超巨大列車砲を複数搭載した怪物の口のような砲から放たれる嵐のような砲撃がたった一回の一斉射撃で艦隊がひとつ消し飛ぶような砲撃が全く絶えず放たれ続け逃げることもできずに必ず着弾し轟沈する。
そしてその怪物は我々のどの駆逐艦よりも早く
その対空砲火に突撃した全ての爆撃機はバラバラに吹き飛ぶ。
それどころか急に天候が荒れだし
もはや操舵も不可能なほどの大荒れの海になり雷が雨のように降り注ぐ海域で空母も駆逐艦も隔てなくその雷撃に誘爆し吹き飛び、戦艦ですらまともに動かない海流に流された駆逐艦は近くの戦艦に吸い込まれるように突撃しもはや陣形もなにもあったものではなかった。
だが
そんな大荒れの海であろうとその船はまさに自分の庭と言わんばかりにつつき進み私の乗艦であったアイオワにT字で接触、真っ二つに引き裂かれる自分の乗艦を見ながらその鳴りやむことのない砲撃に怯えながら渦潮すらできはじめる海域を死に物狂いで泳ぐ。
ある仲間は流れてきた駆逐艦に挽き殺され
ある仲間は怪物から放たれた機銃に撃ち抜かれ
ある仲間はたどり着いたと思えばそこに砲撃が当たり吹き飛んだと。
もはや誰も戦う意思なんてなかった。
何をあっても効かない
ならいっそ捕虜になった方がよかった
だから降参をし武装を解除する船もいた
だがそいつらすら容赦なく沈め
その砲撃音と独特のノイズはまさに悪魔の笑い声だ
あの船には悪魔がいる。
実際あの後もう軍部では戦う意思すらなくなったらしい。
ナチスドイツの我々を凌駕する圧倒的技術で作られた無数の艦隊を止めることもできず
日本の怪物はあれ一隻ではなくまだ六隻も存在するという事実が受け入れられなかった。
だが、神は見捨てなかった
『マンハッタン計画』
新型爆弾の製造が終わったのだ。
その威力は推定だけでもこれまでの兵器を圧倒的に凌駕した。
沈んだのだ。
あの東亜の悪魔が
たった一発の新型爆弾で船体が融解し
艦橋は焼き払われ
我々の前で燃えながら海底に沈んだ。
まさに逆転の好機。
ドイツの超巨大空母も
残りの東亜の悪魔共も
何もかもこの原子爆弾で沈めたのだ!!
そして再び奴は現れた。
あの憎き怪物は囮となるようにただその場に佇んでいた。
砲撃もなく
ただ待っていた。
カメラを回し全ての国民にあの悪魔を消すその瞬間を見せた。
地上から飛び出す水素爆弾を十発搭載した最新鋭の爆撃機が鉄槌を下した。
巨大なキノコ状の雲が上がりその爆風が我々にも感じさせる。
誰もが喜んでいた。
工業力で遥かに劣る黄色人種なんざもう恐くない。
そんな淡い希望を
「あーあー、聞こえるか海にゴミを浮かべる敗北者共、我は大日本帝国海軍総旗艦安土艦長、菊花である!!貴様らのカスみたいな爆弾数発ではこの安土は沈まん!!上層部の命令で渋々だが我々に投降せよ、さもなくば我々はミッドウェーや真珠湾に放った特殊弾頭を使用する!!!猶予は1日!!」
あの悪魔は何事も無かったようにその海を突き進んだ。
あの時我々は負けたのだ
一兵卒の私にはその過程は聞かされなかったが
結果はこうだった。
ナチスドイツの総統、アドルフ・ヒトラーの病衰により全ての役職をデーニッツ以下名だたる将軍、大臣に譲渡し党を脱退、ドイツはソヴィエト連邦を実効支配を最後にナチ党、ひいてはヒトラーの『東方生存圏』達成により穏やかに瓦解、ナチ党解散の後、1947年9月1日、丁度あの地獄が始まった同じ日にアドルフ・ヒトラー、病死。
その後、後任を任されたデーニッツ総統がラインハルト以下数名を粛清したが例外でドイツ国防軍陸軍将軍エルヴィンロンメルは理由は不明だがヒトラー暗殺計画が存在したことが浮上、ベルリンで処刑を国民から求められたが大戦時の功績によりロンドンに左遷ですんだ。
そのままファシストとしての必要もなくなり緩やかに民主化
日本は終戦後、東京会談で朝鮮半島、中国、ソヴィエト連邦の海岸線、太平洋の全ての島々を実行支配、祖国アメリカは灰しか無いという理由で至るところに駐留基地の配備と軍部の司令官を全員処刑という形で終戦。
その時、ドイツ、イタリアとの戦争を恐れてのことか、ドイツに返す予定だった戦艦安土を爆破解体という形で使用不能にし廃棄、艦長菊花 輝政だったろうか、彼は度々ドイツとの密会が示唆されていたらしく山本、南雲以下海軍将校の助命嘆願を退け1946年死刑。
また、その他乗艦していた乗組員は死刑こそ免れたが軍を強制除隊、地方に実質的な幽閉。
そこから今も天皇中心の政治ではあるがその形も少しずつ穏やかになり、今では半分民主化し、体制を維持、年が経つにつれ軍全体も縮小、徴兵制も緩和。
さらに国際条約という形で北極の閉鎖、その一切の侵入を禁止。
そうやって世界は再び歩みだしてはや七十年だろうか。
突如として現代に現れた深海棲艦という謎の存在。
始めこそ劣勢であったが徐々に海域を奪還し後一歩だった。
人類の勝ちは見えた。
だが、誰のせいだろうか。
こんな悪夢を見せるのは。
あぁ、今あの疾風の怪物が全ての艦娘を切り裂き我々、無力な人間を
海が赤く汚染され
血に濡れた服を洗う場所もなくなった。
「はぁ......これが艦娘ねぇ......確かに私たちと似ているけど違うわね」
死体の体を綺麗に切り刻み内蔵や肉を確認する。
色はそこまで違うわけでもなく、形も一緒だった。
「これで、人類は後、何割ですか?総旗艦」
雑に死骸を積み重ね椅子にして座った後通信を繋げる。
「お疲れ様ヴィント、残りはまだ内陸に数百万はいるけどまぁ、ソユーズとスレイプニルに吹っ飛ばして貰うから良いわ」
「流石にこれ以上は近江......いえ、大東亜艦隊と全面戦争になるのでは」
正直公約破りもいいところだ。
半分が自分の意思でもここまでは許せる
「そうね、あれが本当の意味で真っ当ならね......」
「真っ当?」
「したっぱは知らなくていいのよ、にしても厄介ね艦娘というのは、軽い資材で無限に生える、そしてその性能はデュアルの量産艦や私たちの護衛艦を軽く沈めるなんてね、やっぱり播磨に新型ねだろうかしら」
「えぇ......貴女昔は『護衛艦?邪魔』って言ってたじゃないですか」
「いやぁ、あの時は流石にもう人類も物質尽きて要らないと思っていたのよ」
「まぁえぇ、月間万単位で沈んでましたもんね、あの世界」
「そういうわけだからさっさとあなたじゃ絶対に勝てない面子から逃げて帰ってきなさい」
空を見上げるとそこにはオーロラが覆い尽くすように輝き海上からは無数の艦影が観測できた。
「そうですね、それではまた」
そう告げ通信を切った瞬間、脳天に数初弾丸がめり込みそのまま貫通する。
「......レールガンか......なるほどなるほど、これは実に厄介、でも悲しいわね、それでも人類は勝てなかったのよ」
海底に沈めておいた船体を浮上させ艦橋に転移する。
中ではよくわからないけど可愛い小人たちがバタバタと弾薬や燃料を運びあの無人の艦内よりはどこか騒がしく、居心地がよかった。
さぁ、戦争の時間だ
始末するつもりが切りが良くなったよまぁいいか
次回A-E 旋風止むべし