この世界は実に不思議なことに満ち溢れている。
『改』『改二』『甲乙丙』『新たな艦娘』『実在しない計画段階の装備の実現化』
『エリート』『フラグシップ』『姫』『鬼』『水鬼』
『潜水艦』『補給艦』『コンバート』
誰の因果か陰謀か。
『戦争が続けば続くほど新しい何かが現れ続ける』
「だからこうなった」
一言で言うなればインフレだ。
双方限りなく戦火の広がりに比例するように新たな力が現れる。
だからこそだ。
『超兵器』もとい『私』という太古の破滅機構そのものを戦場に放り投げればこうもなる。
私を触媒に『彼女の遺産』が掘り起こされる
「......総旗艦...貴女は...貴女って人は!!」
「あらゆる万事それこそ森羅万象。この手で躍り続ける人形よ。この墓守もまた本心。だけどこうやって滅ぼすのもまた本質」
愉快で不愉快でどうしようもない怒りと殺意と憐れみと無力感が回路を歪ませる。
「端からこの戦争に正義も悪も何もない、ただ、『愛しき家族』の為、ただそれ一つよ、貴女みたいに『本物の人間』を使っていないから解らないのよ私達も」
結局『超兵器機関』なんて馬鹿げた名前をつけられはしたこれも
ただの肉体を持ったAIでしかないこんなものにね...
......。
そういえば、各海域で敗戦、敵艦隊ロストの報告が絶えないけど...大丈夫かしら。
あの娘、何でもかんでも仕事は播磨に押し付けるけどあれでも徹底的かつ、冷酷な支配者。
今、ここで本気で当たってしまったら、勝てる見込みも無くなるでしょうに。
大西洋の冷たい海の上、万を超える艦隊の中に佇む黒い戦艦の甲板の上で茶会が開かれている。
「......助けて播磨!!艦隊負けまくってるわ!!」
「お姉ちゃん、播磨は居ないよ」
「...あーそうねうん。......全く、人類も頑張るわね...ねぇ『御姉さん』」
目の前で静かにほくそ笑み、紅茶を飲む悪魔が憎たらしい。
こいつのことを私は播磨の姉として信頼はできるが
敵としては私達総旗艦と同等の戦力と確実に認識し把握した。
「...あら、美味しい」
本当に恐ろしい。
今、ここが敵のど真ん中と知ってこの有り様。
だが同時にここにいるもの全員に殺気を見せず照準は構えられている。
「それはどうも...で、同じドイツ艦のよしみ、どうかしら」
「劣勢の勢力に手を貸すとでも?」
「恐ろしい御姉さんだ、あの娘と同じで戦闘狂じゃない。ここのいる全艦隊を沈められると思っていらっしゃる」
こんなところで宣戦布告。
あーやだやだ。
「まぁ、それはいいとして、妹の末路は確かに敵と認識するには十分だけど、あの娘なら自分でするでしょ?違うくて?」
「...えぇそれはもう、ド派手にやってましたね、私達が乱入する前はもう、それは、世界規模で殴り返してましたよ」
お互いあーだこーだと言い合いながら紅茶を飲んで時間を過ごす。
この女がはじめから時間稼ぎでここにいるのは想定済み。
問題はこの自信だ、この戦場全てをひっくり返す何かを知ってそうなこの顔が気にくわない。
「...勝利条件と敗北条件はしっかりと認識していらっしゃるようで」
「人類を地球から消せば勝利、これを達成することこそが最重要事項ですから」
そしてもう手は打ってある。
核の飽和攻撃で終わりだ。
最悪、地殻ごと消せばいい。
「そうね...そもそも私達が起き上がったところでもう詰んでいるもの。できることはせいぜいその頬に傷をつけるぐらい。戦いは始めから着いている。......本当にでたらめで、どうしようもない破壊の嵐のような人たちだこと」
その瞳には一切の感情が無い。
機械よりも機械のような冷酷ですらない。
無だ。
無が広がっている。
「もうお好きにお帰りください、我々の目的は達成されました」
勝てない。
いや、挑むことができない。
あれが人の生み出したバケモノとでも言うのだろうか。
やはりあれは異常だ。
なにかが違う。
「そう、じゃあ焦土になった故郷の港にでも寄らせてもらうわ。完全勝利おめでとうそして終わらない残党処理を頑張ってくださいね♪」
思い出した。
思い出した。
思い出した。
私はこの光景を知っている。
これが日常だった。
これが普通だった。
「......まぁ、あの人は初めから殴り合う気は無いよな」
岩盤まで届くほど無数に落ちたのであろう核攻撃。
あっけない。
そう、あっけないのだ。
「生存者は無し...宣言しよう、『総人口0人』だ」
「......駿河さん。艦娘の皆さんは?」
「例え人間がいなくても彼女たちは誇りのために死ぬのだろう...皆、この報告を聞くと私に感謝を言って突撃するのだ...愚かだよ。誇りのために死ぬなんて...だが完全な否定はできないな。私たちだって私情で人類を滅ぼす戦争を始めたのだ...」
まただ。
また失った。
いや、あのときはまだ数万人程度は生き残っていた。
「......」
もう人類も居ないのならこれはもう完全な私情一つで引き起こす場外乱闘。
気がつけば終わっていた。
「蒼はどうする?私は乗っかってしまった船だ全ての艦娘が沈む最後まで待ち続ける。ハバキやタイラントも今は取り残された者達を集めて決戦の手助けの最中だろうな......」
何も答えられなかった。
完全な部外者だからこそ私は何も言えない。
十や二十と艦娘が集まっては最後の補給を済ませて突撃を繰り返す
ただその光景が私の記憶にあった地獄を思い起こさせる。
「ッ......」
やめさせたい。
やめてほしい
やめろ
私をまた一人にしないで
「...下らないな。人類も艦娘とかいう存在も」
人間の
男の声が聞こえた。
ただうずくまっているだけの私を蹴る何かがある。
小さな靴
ふんわりとした体
大日本帝国の海軍関係者らしき服。
妖精さん
?
「......今さら亡霊の俺がこんな姿で出てもだがな...岩井や友永の鉄屑乗りがでしゃばりやがって......航空機で貫けない装甲相手に飛ぶんじゃない...まったく砲撃の邪魔だったは山本さんが止めなきゃ平気で撃ち抜いてやったわ...」
そういいながら内ポケットの煙草を取り出して火をつけるよくわからない妖精さん。
「あの、貴方は?」
「俺か?」
「『菊花』......ただの戦艦の艦長さ...部外者」
......。
「...そんな軽く...貴方は...」
「全く、二葉のヤローあんな老いぼれになってまで俺を待ちやがって...だから笑われるんだよ......で?お前はどうなんだ、片割れ。もう人類は居ない、ただの消化試合だが抵抗するか?それともただただ見てるか?別にしがらみ関係なく殴り合うのも最高だぜ?」
ただ殴り合う。
か。
一度だけしか無いなぁそういうの。
「良い顔したな。こんな時世に戦艦同士の殴り合いしたか?あの後はすっきりしたろ。無心で殺意で殴り合って終わればたった方が勝者だ」
「...確かに、それも一つでしょうね」
そういえばそうだ。
あの時だって何もない状況から始まった。
なら。
同じことをすれば良い。
がむしゃらに突っ込んで終わらせてしまえばいい。
「よしきたドアホ。なら俺の指定する場所に行け。最高の兵器と最高の先人に会わせてやる」
NEXT B-3 鬼の双角