夕飯の時にパパに「これっておかしいよね?」と幼稚園での話をしたら、顔を両手で覆うと「うちの子は地上に舞い降りた天使か」と呻いた。
こんなに感動されてしまうとどんな顔をすれば良いか分からない。そんなに感動することとは私には全く思えないし、そんなに感動するほどこの世界の常識が二性に厳しいということが分かってしまうからだ。
世界平均で二性の人口は6から7%。日本は先進国では少なめの4%が二性だといい、つまり日本の人口をキリ良く一億人とすれば四百万人がオメガかアルファに当たる。
日本国内における風俗犯罪――賭博と猥褻――の認知件数は、平成二十六年の一年間で約一万二千件。風俗犯に限ってもこの数の事件が起きている。
これに対し、二性の性的衝動を原因とする「殺人」「脅迫」「暴行」「強制性交(強姦)」「猥褻」の年間の認知犯罪件数は多い年で五百件、例年は三百から四百程度。幼稚園で見たビデオはああだこうだと騒いでいたが、実際のところかなり少ない。いや、数の多少で軽く見て良いわけではないのだけれど、これほど批判される理由とするには疑問がある。
だというのにテレビではニュースが「またも二性犯罪が起きました」とか報道するし、コメンテーターは「二性は本能が強すぎる」とか真面目腐った顔で言う。
――MCもコメンテーターも呼ばれた専門学者もみんな二性で、二性本人なのに自虐する。いや、自分が二性だから擁護できないのかもしれない。きっと、二性犯罪は他と比べて少ないと主張しても「身内を庇っているだけ」「自分が犯罪者だということを忘れた発言」と大多数であるベータから非難されてしまうから。
アルファとオメガはたった4%。ベータに睨まれたら逃げ場はない。
人種、身分という貴賤、男女の方の性別……それらの差別をよりいっそう酷くしたもの、それが二性差別に見える。
気持ち悪い限りだ。
「花ちゃんはそのまま、優しい子でいてね」
「うん」
パパの言葉の重さが少しばかりとはいえ分かる。こっくりと頷いた私にパパが顔を綻ばせた。
何かしてあげたいと思うが私は幼女、それもたった三歳の女の子なのだ。発信力も何もな……あるわ。
パパからオモチャとして貰ったiP○d(課金できない規制あり)、これがあれば私にもできることがある。
身バレしたらバラエティでネタにされそうだけど、バレなければ良いのだバレなければ。
えいえい、Twitt○rダウンロードえいえい。怒った?
パパ「怒ってないよ」
よし!
――私のアカウントは炎上した。二性をキーワード検索したら自覚あるのかないのか知らないけど差別発言ばっかりで、ムカッ腹が立ったから過去の人種差別に絡めて反論したら集中砲火を食らったのだ。
性差別のタグで問題提起したら怒鳴り散らすような通知がかなり来て、通知を切って「レス多過ぎて個別に返すの面倒だからしない。そんだけギャーギャー騒ぐのはつまり身に覚えがあるし差別してる自覚もあるってことでOK?性別がどうとか第二性がどうとかそれ以前に人として恥ずかしいわー。同じベータとしてホント恥ずかしいわー」って投稿して放置を決めた。
数時間後にはバズりランキングに載り、ネットニュースになり、更に批判コメントが増え果てには通報もされまくったらしくアカウントが凍結。
凍結解除の申請をしたけど、さてはてどうなることやら。
はっきり言ってこの世界の人はタチが悪い。ベータは被害者面した差別主義者の集まりにしか見えないし、アルファとオメガはそれを許して甘やかしてるダメ親に見えてならない。
お互いにお互いを洗脳しているというか……むろん圧倒的に人数の多いベータにかなりの問題があるとは思うけど、アルファとオメガはベータに甘すぎる。ベータは肉体的力の差で劣る自分達は二性を傷つけていいと思い込んでいるし、二性は自分達が肉体的に頭脳的に勝るからとそれを甘受し続けている。
それでいいのか。いくら力で劣る相手だとしても怒るべき時は怒るべきじゃないのか。
それはお互いを不幸にしてるんじゃないのか。
なお、言論の自由の範疇で差別発言もしていなかったことで、私のアカウントの凍結は一週間で解除された。思ったより早く解除されてほっとした。
「ユーチュー○ーもやってるんだから私がやっても問題なかろうなのだ」
――毎日がキャンプファイアー、批判コメントが付かない日がないアカウント「大爆炎覇王」はこうして始まったのだ。