機動戦士ガンダム外伝 オペレーション・スカイダイバー   作:抜殻

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死は闇で待つ 下

宇宙世紀0079.01.10

コロンブス級補給艦「ウーロンゴン」艦内

地球連邦軍第4艦隊第126航宙戦隊 ビルナ・ゲインツ少尉

 

「総員第一種戦闘配備!繰り返す総員第一種戦闘配備!整備員はカタパルトへ。パイロットは別命あるまで機体で待機せよ!」

 艦内は出撃直前で騒然としていた。整備長が檄を飛ばして最終チェックを行っている。俺たちパイロットは自らの愛機のシステム確認を終え、出撃合図を待っていた。

 遂にジオンと戦える。遂に家族の仇を取れる。ほとんどの隊員がそんなことを考えていたと思う。自身も例外ではなく。

 この五日間の待機期間は耐えがたいものだった。艦内の空気は常に極度の緊張状態であったし、誰しもが怒りを蓄えていた。いつまでも現れないジオン軍に対して復讐の機会を待ち続けた。そうしてようやく、この時が来たのだ。

 あれほど長かった時間なのに、何をして過ごしたのかよく覚えていない。ただ繰り返し叩き込んだ作戦内容だけが頭に反芻されている。操縦桿を握る手がうずく。狭いコックピットで体をソワソワと動かす。歯が浮くような思いがして、深く深呼吸をする。

 個別通信の回線ランプに気が付いたのはそんな時だった。まるで周りが見えていなかったらしい。このタイミングで誰が話しかけてくるのかと思いながら呼び出しボタンを押す。応答したのはファルマだった。

「どうしたんだ、こんな時に」

「……ビルナ。少しいいか?」

 ファルマの声は普段とは裏腹に重く小さい。まるで消えかかった炎みたいに不確かで、弱々しかった。

「ビルナは、その、死ぬかもしれないって考えたことあるか?」

「は?」

 あまりに突拍子の無い質問に、何も答えることができなかった。言わんとしていることは分かる。こんな状況で聞いて来る気持ちも分かる。だが自分がこの質問になんと答えればいいのか、何が正解なのか分からずそのまま黙ってしまった。だがファルマは答えが欲しかった訳じゃないのかそのまま喋り続ける。

「だって、戦争なんだぜ!俺、こんなことになるなんて思ってなかったからさ。戦争なんて縁のないことだと思ってた。笑っちまうよな、軍人なのに。俺には死ぬ覚悟なんてない。いくら連邦が強かろうが、誰も死なないわけじゃない。なんだか生き残れる気がしないんだよ。明日を迎えてる予感が無い。この壁一枚隔てた死の空間に投げ出されて、どこかへ行ってしまうイメージが頭から離れないんだ。なぁビルナ……。俺、死にたくないよ……」

 最近のファルマの様子を思い出す。どこか不自然で、元気がなかった。笑顔を浮かべてはいたが、どこか歪んでいた気がする。きっとあの日からずっと思い続けてきたのだろう。誰もが戦意を示すなかで、一人怖がっていたのだろう。無理もない。どうかしてた。俺たちがこれからやろうとしていることは、殺し合いなんだ。理由を付けて正当化して、一方的に行う虐殺とは違う。この時まで俺は、馬鹿馬鹿しいことに自分が死ぬなんて微塵も考えてなかった。

「安心しろ、ファルマ。絶対に死んだりしないさ。約束する。俺が嘘をついたことがあるか?」

「……ありがとう。話してたら楽になったよ。戦争が終わったらさ、一緒に墓参りに行くよ」

「……ああ、きっと家族も喜ぶ」

 通信が切れる。それと入れ替わるように隊長からの通信が伝わる。ハッチが開かれ、機体はカタパルトに押し出されて宇宙へと消えていった。

 

 

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