機動戦士ガンダム外伝 オペレーション・スカイダイバー 作:抜殻
宇宙世紀0079.03.11
北米 デビスモンサン空軍基地
地球連邦太平洋方面軍第19戦闘飛行隊 ダグラス・ミリアウッド大尉
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その日、我々は日も昇らぬ早朝に叩き起こされた。基地内には緊急事態を知らせるアラームが鳴り響き、我々は緊急出撃を命じられてコーヒーもブレイクファストも抜きにコックピットに飛び込んだ。命令はただ「未確認飛行物体を迎撃せよ」という一言のみで、ブリーフィングもなく基地に存在した全ての機体が飛び立っていく。この異常事態に、ほとんどの連邦将兵たちは自分たちの身に何が降りかかっているのか理解した。遂に、ジオン軍が北米に降下してきたのだと。
空中で編隊を組み、即席で取り付けられたレーザー通信機で編隊間の通信網を形成する。無線通信も試みたものの、雑音しか流さないそれはミノフスキー粒子の濃さを表してより現実を鮮明にするだけだった。
空は未だ暗闇に包まれていたが、高い視点の我らに並ぶように太陽が遠く世界を照らしていた。上空は東側の空からほんのりと色を取り戻していくようだった。その中に、まだ暗い世界の中に尾を引いて走る光が見えた。初め、それはここ最近観測される宇宙戦艦やコロニーの残骸が大気圏に突入して燃え尽きていく光だと思った。だが、それらの光に向かって飛んでいた我々はやがてその光がいつまでも燃え尽きることなく段々と輪郭を得ていくうちに、それが残骸ではなく巨大な卵のような形をしたジオンの大気圏突入カプセル「HLV」であることが分かった。そして我々が迎撃する予定の未確認飛行物体が何を指すのかも。
宇宙戦艦の残骸が美しい流れ星となって燃え尽きるのを、連邦広報部員が地球に帰りたがっている連邦将兵の無念と言っていた。ならばこのHLVの流星群は、宇宙に捨てられたスペースノイドの七十年にも及ぶ憎悪の炎で彩られているのだろう。孵化を待つ宇宙から産み落とされた卵が、まるで地球を押し潰そうとするように空を埋め尽くしていた。
ミノフスキー粒子の影響は甚大で、電子戦能力の奪われた我々は翼を折られたように無力だった。レーザー通信では戦闘速度での交信は満足に行えず、レーダーが封じられて目視で照準を付けなければならないため速度も落とさねばならない。何をするにしても機体の性能と人間の性能が合わず、降下してくるHLVに対してろくな成果を出すどころかろくな戦闘行動すら行えなかった。端的に言えば、ぶつからないようにするので精一杯だった。
こうしてHLVへの迎撃に完全に失敗した我々は、ジオン軍地上部隊の展開を許してしまい、西岸部の要衝キャリフォルニアベースを早々に失ってしまう。東岸部では大規模な南下撤退命令を下り、防衛線はヒューストンの辺りまで下がっていた。そんな状況の中で、我々デビスモンサン空軍基地にはいつまでも待機命令が下っていた。ジオン軍がどこに降下してどの程度浸透しているのか、その情報を掌握するまで部隊を動かすことが出来なかったのだ。ジオン軍は内陸部にも東西沿岸ほどではないが部隊を降下させ、これが電撃戦に揺れる連邦軍の情報網に更に混乱をもたらしていた。やがてキャリフォルニアベース陥落の報が我々の耳にも伝わる頃、ある程度の敵戦力を掴んだ方面軍司令部から新たな命令が共に伝えられた。太平洋方面軍第19戦闘飛行隊は、ロサンゼルスへ移動し同都市を防衛せよと。