ありふれない時の王者と錬成の魔王は世界最強   作:イニシエヲタクモドキ

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前の話のあとがきにも書きましたが、時王の目覚めた時間帯を、ハジメと同じタイミングではなく、ハジメの少し後という感じに変更させてもらいました。
より一層わかりにくくなってしまった気もしますが、お許しください。


錬成の魔王/時の王者

 ハジメside

 岩陰から虎視眈々と狼の魔物を狙う。

 錬成の練度は十分高くなっている。

 だから、俺が失敗することなんて、万一にもあり得ない。

「……ふぅ……“錬成”」

 狼に気づかれないように小声で錬成を発動する。

 何度も練習したことにより、錬成の効果範囲はかなり上がっている。

 実際、狼に気づかれないように、狼の内一匹を壁の中に閉じ込めることに成功した。

「……さて、他の狼が異変に気づいてから畳みかけるか……」

 他の数匹が、ようやく一匹いなくなったことに気づく。

 それぞれが、一体何が起こったのか、というような雰囲気を醸し出しながら単独行動し始める狼ども。

「ふっ……間抜け共……“錬成”」

 狼どもを鼻で笑ってから、近づいてきた狼を壁に埋める。

 埋めたところからすぐに目を離し、次の獲物を選ぶ。

 一番近場にいた狼を狙い、先程までと同じように埋める。

 さらにもう一匹いたので埋め、その場をすぐに移動し、最後の一匹を埋める。

「よしっ、捕獲完了……“錬成”」

 錬成を使い、壁の中にいる狼どもを壁ごと移動させ、活動拠点に持っていく。

「さてっと……“錬成”」

 拠点に戻り、錬成を使って壁の中から狼の動体だけを取り出す。

「このまま窒息させるのもやぶさかではねぇが……」

 低い唸り声のような音をたてる腹を右手でこすり、満面の笑みで狼の腹に向かって言い放つ。

「錬成のし過ぎで腹減ってんだよ。待ちきれねぇや」

 それだけ言うと、錬成を使って作っておいた武器を取り出し、狼の腹に突き刺す。

 だが、刃が刺さる前に、ギィンッ!と甲高い音をたててはじかれた。

「……やっぱ、強い魔物は堅いよなぁ……だ、け、ど……」

 武器を床に置き、錬成を始める。

 武器をただのダガーから、ドリルの形状をしたものに変化させる。

 そのドリルを狼の腹にあて、取っ手部分を回転させて突き刺していく。

 断末魔は聞こえないが、痛みに苦しんでいるのはわかった。

 ある程度腹の中身をぐちゃぐちゃにしたところで、狼の動きが完全に停止した。

 そこで俺は、比較的肉の柔らかいところを引きちぎり、焼かずに洗わずに、なんの躊躇もなく食べた。

「グチョッ……ネチャネチャ……ッガァ!マズイなぁ!!食えたもんじゃねぇ……でもまぁ久々の飯だ……ングッ、ングッ……プハッ……あぁ……神水がうまく感じる……どんだけまずいんだよこの肉……俺がこんな酷いモン食ってんのに、アイツらはきっと悠々と王宮でうまい飯食って、命もあまりかけずに迷宮ちょびっと攻略して俺達の絆が以下略とか言ってんだろうなぁムカつk……ガ……ァ……?」

 文句を言いながら狼の肉を食っていると、突然俺の体に違和感が。

 首をかしげたのも束の間、すぐに全身に激痛が走り、俺はのたうち回り始めた。

「ぁああああああアアアアアアアああアアアああああああアアアアアぁあああぁァァ!!!!??」

 すぐさま神水の水たまりに顔を突っ込み、ゴクゴクと神水を飲む。

「はぁ……はぁ……ウッ!?ぁ、ァぁ、あぁああぁぁああぁあぁぁぁぁああぁぁぁあああああああぁぁあアアアアアアアああああああアアアアアああああああアアアアア!!?」

 一瞬痛みは和らいだが、すぐに先程の倍くらいの痛みが襲い掛かる。

 痛みを感じてのたうち回ると、すぐに神水を飲む。

 落ち着く間もなくすぐに体が痛みを発し、またのたうち回る。

 それを何度か繰り返したところで、ようやく痛みがこなくなった。

「はぁ……はぁ……くそっ……忘れてた……魔物の肉には、人間を爆発させて殺す毒素が……」

 やけに説明口調になりながら、神水の水たまりに顔を半分浸しながら悪態をつく。

「……あぁ……最悪だ……って、オイ待て……これって……?」

 神水の水たまりから顔を上げ、一応神水を飲んでおこうかと水たまりに顔を向けたら、そこには()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()

「あー……魔物を喰って生き残ったからか?だとしてもこれは変わり過ぎだろ……結構背も伸びた気がするし……」

 ボリボリと後頭部を掻きながら、ステータスプレートを取り出す。

 もしかしたらステータスも変動している可能性があったからだ。

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 南雲ハジメ 17歳 男 レベル:8

 天職:錬成師

 筋力:100

 体力:300

 耐性:100

 敏捷:200

 魔力:300

 魔耐:300

 技能:錬成・魔力操作・胃酸強化・纏雷・言語理解

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「なんでやねん……」

 エセ関西弁が出てしまうくらいには驚いた。

 一体どういうことだこれは。

「いろいろ言いたいことはあるが……この魔力操作ってのが一番気になるな」

 恐らく、魔物のように魔力をあやつることができるようになるのだろう。

 さっきから感じてるこの変な感覚が魔力か?

「う~ん……こうか?」

 なんとなく香ばしいポーズをとりながら魔力よ動け、と考えてみる。

 すると、自分の思った通りの方向に魔力のような物が動き始めた。

「お、おぉ?なんか変な感じだが……ん、待てよ?」

 ここで俺に電流走る。

「……やってみるか。“錬成”」

 魔力を離れたところにある壁に動かして、錬成を発動する。

 すると、壁が俺の意識したとおりに形を変えた。

「おぉっ!こりゃいい!戦闘の幅が広がるぜ!」

 まずは実践で使えるくらいに魔力操作になれるところから始めよう。と意気込み、俺は神水を入れた容器を片手に、錬成を発動したのだった。

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 時王side

 堂々と迷宮内を歩き回り、ハジメを探す。

 前に俺がウサギや熊に襲われた場所は、ハジメが逃げる時に穴をふさいでしまったらしく、何も見当たらなかったのだ。

「はぁ……ハジメー!いないのかー!!」

 魔物に襲われる、とかそう言う事はまるで気にせずに大声を出す。

 だが、ハジメから返事が来ることは無く、迷宮内に俺の声が木霊するだけだった。

「ハジメ……まさかもう覚醒した後……?魔王ハジメになって、この階層から下に下りたの……?ウソン。俺まだ器を手に入れられてないのに……」

 その場でうずくまると、少し離れたところから何かの足音が聞こえた。

「……ようやくお出ましかよ、ウサギの魔物さん」

「キュ?」

 俺の言葉に、何を言っているのだろうかと首をかしげるウサギ。

 まぁ別に返事が欲しくて言ったわけじゃないから、まったく気にすることは無いのだが。

「おい、力を貸せ。あの目の奴と腕の奴だ!」

『ふん、大分傲岸不遜になって来たな。だがそれでこそ逢魔の継承者!よかろう!存分に戦え!』

 俺の脳裏に声が響くと、俺の腕と目が痛みを発し始めた。

 だが、前のように叫ぶことは無い。

 耐性ができたのだろう。痛みに。

「さーて、始めようか」

「キュ……?」

 突然変化した俺の右腕と右目を見ながら、さらに首をかしげるウサギ。

「来ないのか?ならこっちから行くぞ!」

 俺がウサギの方に向かって走り始めると、ようやく戦闘態勢に入るウサギ。

 ウサギの眼前まで迫り、オーマジオウの右腕を振るうが、縮地で回避される。

「チッ、やっぱ速度じゃかなわねぇか……なら!」

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 その場で動きを止める俺。

 それを好機ととらえてか、俺の背後に縮地や空力を利用して現れ、自慢の足で思い切り蹴りつけてくる。

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「見えたぜ……お前の未来が!」

 先程の映像の通りの時間だけその場で動きを止め、蹴りを喰らわせてくるはずの時間に合わせて後ろを向き、拳を振るう。

「キュウッ!?」

 まさか気づかれているとは思っていなかったのか、足を引っ込めることも出来ずに攻撃を受けてしまうウサギ。

 足にオーマジオウの右腕が触れた瞬間、ドパンッ!と音をたててウサギの両足が爆発四散した。

 ……衝撃波で、触れてない方の足すら消し飛ばしやがったよ……

「ギュッ!?ギュゥウウウウウウ!?」

 痛みに苦しみ、その場で悶えるウサギの脳天めがけて拳を振り下ろす。

 べチャッ!と音をたててウサギの脳が潰れ、脳漿がまき散らされる。

「……ふぅ……ッ、時間切れか……!」

 その場で溜息をつくと、腕と目が再び鈍い痛みを放ち始めた。

「早く戻ろう……神水さえあれば……一応痛みも和らぐ……!」

 ウサギの死体を引きずりながら、拠点に戻っていく。

 道中はなんとか魔物に遭遇せずに帰れたが、いい加減に痛みと空腹に耐えれそうになくなってきた。

「ゴクッ……ゴクッ……さて、さっそく食うか……」

 ウサギの頭のあった所に空いている空洞を、力任せに引き裂き、肉をとる。

 びちゃびちゃと血が滴るが、そんなことは気にしない。

「これを喰えば……俺も強く……!アムッ、ビチョッ、ネチョッ、グチョグチョ……ブチブチ……ゴクン……あー、まずっ……っと、神水神水……」

 危なく魔物の肉を食ったのに神水を飲まずにそのまま終わるところだった。

 痛みはまだ来ていないが、どうせすぐに来るので神水をためてあるところの前で待機する。

「ッ!?気やがっt……ガァアアああああああアアアアア!?」

 痛みにはなれたみたいなこと言ったけど、あれ嘘。こんなん無理だわ。

「ングッ、ゴック、ゴック……はぁ……はぁ……ウッ!?ングッ、ゴクッゴクッ……」

 痛みを和らげては直ぐに痛みが俺を襲い、癒したそばからすぐに痛みが戻ってくる。

 これは確かにストレスで髪真っ白になるわ。

 長いこと神水を飲んでは痛みに苦しんで、というのを繰り返し、ようやく痛みがひいていった。

「はぁ……やっと終わったか……っと、ステータスステータス……」

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 常盤時王 17歳 レベル:1

 天職:■■■■の魔王

 筋力:400

 体力:400

 耐性:400

 敏捷:400

 魔力:400

 魔耐:400

 技能:逢魔時王・言語理解・魔力操作・胃酸強化・天歩[+空力][+縮地]・言語理解

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 うーん。何とも言えない。

 いきなりステータスオール四百か。

 まぁこれはどうでもいいんだが……

 問題はこの天職。何だろうこの■の部分。

 なんの魔王なんだ?

 技能の逢魔時王ってのもよくわからんし。

「……ま、深く考えるなってことか。……つーかこれで右腕と右目が無制限使用可能か……」

 長かったような短かったような。

 まぁこれで俺はしばらくの間無双できるし、安心してハジメ捜索に乗り出せる。

 ……ま、狼と熊の肉は食っておくけど。

 ていうかさり気なくウサギの派生技能手に入れちゃったなぁ……まぁ強いことは良いことだから、全然気にしないんだけど。

「……取り敢えず、右腕の力でできることの確認とか、色々やらなきゃな」

 今一度神水を飲み、心機一転右腕を変化させる。

 強くなる。そして……王になる。本来のオーマジオウの力を持つ男……常盤ソウゴみたいな、最高最善の魔王に。




時王の異常なステータス上昇についても、しっかり裏設定があります。
まぁそのことについてはいずれ語ると思うので、気長にお待ちください。

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