ありふれない時の王者と錬成の魔王は世界最強   作:イニシエヲタクモドキ

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連続投稿。
すぐに書いたので、変なところがあるかもしれませんが、その場合は感想で教えてください。
あ、ただの悪口はやめてくださいね。返信に困るので。



復讐の一歩、魔王達の反逆

ハジメside

錬成の練度を上げ続け、狼の群れ相手に正面切って戦闘できるくらいには強くなったある日、俺の錬成に派生技能が出現した。

鉱物系鑑定。国のお抱えの錬成師でも、ほんのわずかな者しか持っていないような技能だ。

鉱物系鑑定を繰り返し、周辺の鉱物を鑑定していた時に、ある鉱物を発見した。

燃焼石。俺はこの鉱物を発見し、その概要を見たときに、あることを思いついた。

これを火薬にしたら、銃弾ができるんじゃないか?と。

それを実行するには、かなりの時間と試行錯誤が必要だろうが、錬成を繰り返せば、いつか出来上がるはずだ、とも思った。

そして、ついに完成したのだ。

俺の相棒となる兵器、大型のリボルバー式拳銃。

名づけるとしたら…ドンナーだろう。

ドイツ語で落雷を意味するその名は、この銃の最大の特徴を表している。

俺の技能、纏雷を使うことにより、弾丸の射出時に電磁加速することによって、小型のレールガンとして、ただの拳銃を軽く凌駕する火力を誇る。

銃身にここら周辺では最高の硬度を誇るタウル鉱石をふんだんに利用したことによって、簡単な事では破壊されない仕様になっている。

「…これなら、あの熊もウサギも…いやそれだけじゃねぇ!!檜山とか、天之河とか…アイツらに復讐することも出来る!!最高じゃねぇか!ドンナー!!」

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時王side

「しかし…ハジメは本当にどこに行ったんだ…?」

逢魔時王の力の扱いが自由自在(笑)になってから、俺は周囲の探索を始めた。

逢魔時王の力は本当にすごくて、攻撃的なモノだけでなく、望んだものを作り出したり、別の位相から呼び寄せたり、時間を戻したり進めたり止めたりとやりたい放題。

中でも気に入っているのは、右腕で新たな空間を作ることにより、異世界系小説ではよくある、アイテムボックスを作り出すことができる力だ。

今その中には、神結晶と神水を入れてある。

神結晶の時間の流れの進みを操作して、永遠に神水を生み出すようにもしている。

それくらい逢魔の力の扱いが自由になってきたのだ。

「ハジメー!いないのかー!」

いくら大声を出しても、ハジメからの返事はない。

もしやまだ洞窟の中に…と思ったが、ハジメと別れたところをいくら探索(壁を壊したりして、錬成されたところの穴も探した)しても、まったく痕跡が見当たらなかった。

「…もしやもう覚醒イベントが終了して、俺を置いて先に下の階層へ向かったとか…?」

その可能性は十分にあり得る、と頭の片隅に置いておく。

ある程度考えをまとめ終わったら、前の曲がり角のところからいきなり魔物が飛び出してきた。

「…ッ!?テメェは…!」

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ハジメside

「…はっ、はは…最高だ…最高じゃねぇか!オイ!俺をあれだけ見下しておいてこのザマじゃねぇかよオイ!!」

高笑いしながら、あの時コイツが俺にあぁやった様に、地面で突っ伏しているウサギの死体を踏みつける。

脳天を綺麗に打ち抜いてやったから、いくら踏んでも反応は無い。

だが…

「あああああ!気持ッちいい!!俺をいじめてきた奴等はこんな気持ちだったのかぁ!教えてくれよ檜山達ぃ!!ギャハハ!まぁ本当にあったら問答無用で話す間もなく撃ち殺すけどよ」

楽しい、自分の下にいるものを踏みつけ、嘲笑うことが。

気持ちがいい。何かの上にいることが。

最高だ。復讐を成功させることは。

昔の自分が持っていた、何かを傷つけるのは、誰かを嘲笑うのは、蹴落とすのいけないという考えはもう消えていた。

寧ろ自分から消していった。

何故か?不要だから。

前までの甘ったれた考えは、俺にとって邪魔でしかないから。

時王が肯定してくれた強さは、今の強さの障害物でしかないから。

でも気にしない。

前までは、時王の言う事を聞かずに自分を捨てたら、時王にすら捨てられると思っていた。

でもそんなことは無いだろうと思うようになった。

だって、弱かった俺の隣で笑って、笑わせてくれて、励ましてくれた優しい時王が、俺の行動を頭ごなしに否定して、拒絶するようなことは無いだろうから。

寧ろ、こういう考えの方が正しいだろう。

今までの俺は、勝手に時王の人格を決めつけ、値踏みしていただけ。

どれだけ自分の中で神格化しようとも、時王の心を見くびっていたのだ。

だから、そんなことはやめた。

俺の親友が、この程度で俺を捨てるわけがねぇ。俺を親友じゃないと手の平を返すなんてねぇ。

確信をもって言える。

だからこそ俺であれる!

「…さて、ウサギと狼はある程度殺したし…メインディッシュと行くかぁ!」

弾倉から薬きょうを排出し、新しい弾丸を装填する。

「一匹は時王にとって置きたいし…じゃあ俺は白い方の熊を殺るか。能力は未知数だが、今の俺は負ける気がしねぇ」

武器の状態が万全であることを確認し、お目当ての魔物を探す。

もしアイツらが二匹でしか行動しないなら、時王のためにとっておくことが難しくなるが…まぁ、その時はその時だ。

「さーて、何処にいるかな…お、早速発見…それも単独行動中じゃねぇか…殺そう」

それだけ言うと、俺に背を向けている白い熊の背中に、計三発銃弾を撃ち込んだ。

「グルァアアアアア!?」

「ハハッ、いいねいいねその表情、痛みに苦しむその顔がぁ…たまらなく愉快だぜ!」

さらに三発撃つが、不可視の斬撃により落とされた。

「チッ…めんどくせぇな…」

すぐさま薬莢を排出、弾丸の再装填を終え、熊の脳天に向けて二発、足止め用に両手両足に四発早撃ちする。

だが、熊はその巨体に似合わぬ高速で全弾回避し、息を荒げながらも俺の方を睨みつけてきた。

「グルゥウウウ…」

「なんだよ?卑怯者ってか?やめろよやめろよ…お前だっていきなり攻撃すんだろ?なのに、相手にはセオリー通り待ってほしいとか…何様だよ。大人しく死ねって」

銃弾を再装填しながら話しかける。

熊の方は言葉がわかっているのかいないのか、怒りで声を荒げる。

そのまま俺の方に飛び掛かって来たので、ギリギリまで引きつけ回避し、すれ違いざまに銃弾を撃ち込む。

腹部を撃たれたせいでうまく着地できずに地面に飛び込み、その場で呻きながらのそのそと動く熊。

「はっ、まったく…俺はコイツに恐怖してたってのかよ。笑えるなぁ…」

「ぐるぅ!!」

「…あん?」

熊をいたぶるように弾丸を撃ち、前の自分を嘲笑する。

すると、いきなり岩陰から何かが俺の足元に飛び掛かってきて、爪で引っ掻いてきた。

ダメージは無いが鬱陶しい。目線を下に向けると、小さい熊が敵対心を露わにしながら攻撃していた。

「うぜぇんだよ!」

「ぐらぁッ!?」

力任せに蹴り飛ばすと、血まみれで寝転がっていた熊の体にぶつかった。

「グ、グガァッ!?」

「ぐ、ぐぅ…」

ぶつかってきた熊の方を見た瞬間、いきなり心配するような表情をしながら、小さい熊を抱き上げる熊。

「…まさか…親子なのか、お前ら…」

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時王side

「熊野郎じゃねぇか!!あえて嬉しいぜ!」

「グルア…?」

おかしい、何故目の前の生き物は自分を見て恐怖しない?という表情をしている黒い熊のすぐそばまで、まるで旧友に再会したかのように駆け寄ると、右目と右腕に逢魔の力を宿す。

「会いたくて会いたくて仕方なかったぜ…?殺したくてなぁ!!」

すぐそばまで寄られてようやく何かがマズイと気づいたのか、素早くその場を離れる熊。

そのせいで、熊を的確に狙っていた俺の拳が、先程まで熊のいた地面に叩きつけられた。

その地面が、まるで爆撃を受けたかのように大きな音を上げて粉々になったのを見て、熊がその瞳に恐怖を纏わせた。

「そうだよ…その目だ!あの日俺の心を折った目が、今は逆に恐怖に染まってるじゃねぇか!いいぞ、もっと恐怖しろ!あの日俺を見下した分、いーやそれ以上に!絶望の淵へ…堕ちて行け」

サムズアップした手をひっくり返し、親指を下に向ける。

熊は、それが挑発だとわかったのか、恐怖を無視して飛び掛かって来た。

だが、あの日俺に攻撃してきたほどの速度は無く、とても弱々し気だった。

「はっ、戦う気かよ!ならせいぜい無駄にあがいてから死ねや!」

オーマジオウの拳を構え、未来を見る。

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飛び掛かって来た熊は、俺の拳が来ることを予期していたのか、いきなり進行方向を変え、壁に当たってバウンドしてから俺の背後を襲う。

回避できなかった俺は背骨が折れる音を聞いてから意識を朦朧とさせ、壁にぶつかってから動きを止めた。

まだ生きているにも関わらず、熊は俺の体を爪で引き裂き、貪り始める。

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「その浅い考えも…見えてるんだよ!全部なぁ!」

熊が進行方向を変えた瞬間、俺はその場で振り返り、バウンドして飛び掛かって来た熊の体を強く殴りつける。

強い衝撃波と共に熊の体が爆発し、その場には肉片のみがばら撒かれた。

「…死んで、俺の糧になれ。熊」

肉片を拾いながら、殺した熊に話しかけるように呟く。

戦闘中にあんなことを言ったが、心の奥底では、俺を恐怖させ、王になるための覇道を選ばせたあの熊を少しばかり尊敬していたのだ。

だから、弔う。

残っていた毛皮を、俺が殴り殺した地点に埋め、合掌する。

「じゃあな。…ありがとよ」

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ハジメside

「親子なのか…お前ら…」

俺の言葉に答えるでも反応をしますでもなんでもなく、抱きしめ合う熊の親子。

それを見て、地球にいたころの自分を思い出す。

親からは、かなり愛情を注いでもらっていた。そんな自分を。

その明るい感情を久しぶりに思い出し、手の中の銃のグリップを握る強さを弱める。

その瞬間、俺の背後から、邪悪な声が聞こえてきた。

『何してるんだよ。早く殺せ。お前を絶望させたアイツにも、絶望を教えてやるんだよ』

「な、何を…」

『簡単だ、わかっているんだろ?どうすればあの熊が悲しむのか、苦しむのか…絶望するのか』

重く、粘ついていて…そのくせ、甘いその声に、俺の体が勝手に動き出す。

「お、おい…やめろよ、それは…それだけは…」

最初は考えたそれを、躊躇なく行おうとする体に対して、制止の言葉をかける。

だって、それをしたら、自分の中に現れてきた温かい思い出も記憶も、壊してしまう気がしたから。

過去の自分のように見てしまっていた熊を傷つけたら、自分の大事なモノすら傷つけてしまいそうだったから。

「やめろ…やめろよ…」

『本当にそう思っているのか?お前はそんなにいい奴なのか?』

「な、何を…」

『お前は自分が変わったと思ってるだろうが、それは違う。お前はお前のままだ。昔から、お前の心は綺麗じゃなかった。口では綺麗ごとをいくら言っていようが、心は真っ黒、いつでも悪意にまみれていた。現に、今もこうやって、命を奪おうとしている。体だけが動いている?違う。お前の口が、思ってもいないことを勝手に言っているだけだ』

「ち、違う!俺はそんな奴じゃない!」

『ならその引き金をひこうとしている指の動きは一体何なんだ?すぐにでもやってしまいたいと言わんばかりじゃないか。いい加減に諦めろ、そして認めろ。お前の心に光なんてない。黒一色だ』

「…そんな…事…」

甘く俺を口車に乗せようとしてくる声に対して言い返す声が、次第に小さくなる。

確かにそうだ。口では否定している。でも、心の中からは、早くやれという声がずっと聞こえてきている。

引き金が引きたくて仕方ない。今すぐにでも熊の顔を、瞳を、あの時の俺のように恐怖に染め上げたい。

「…わかった。認めるよ。俺は、最低最悪の…クズさ。殺したくて、絶望させたくて、悲しませたくて…堪らねぇ」

それだけ言うと、俺は子熊の方に弾丸を撃つ。

ドパンッ!という音が響きながら、子熊の頭が弾け飛ぶ。

子熊の血が花びらのように舞い、我が子をあやしていた大きい熊の顔や体を赤く染める。

「…は、はは…ははははははははははははははは!!最高だ!最高だよ!その顔、その目…お前の今の全てが最高だ!!」

いきなり何も言わぬ肉塊と化した子熊を見て、信じられないような顔をした熊を見て、腹を抱えて笑う。

罪悪感も、心に痛みも、何も、何も感じない。

後味の悪さ?そんなものがあると思うのか?

そうだ、俺は最低だ。

そうだ、俺は最悪だ。

それがどうした、それが俺だぞ。

そう言うように高笑いし、いまだ現実から戻ってこれていない熊の脳天を打ち抜く。

「…いいな…これ。そうだ。アイツらに復讐するときも、しっかり絶望させてからにしよう。すぐに殺すのはもったいねぇ。限界まで突き落としてから…殺そう」

鼻歌でも歌ってしまいそうなくらい気分が良くなった俺は、熊の肉を纏雷で焼いて食べた。

ある程度食べてから、神水を飲み、興奮冷めやらぬままに下に下りる階段を探す。

上には上がらない。もっと強くなって、アイツらにより強い絶望を与えられるようになりたいから。

強くなるためには強い魔物を喰うことが一番だ。

だから、下に行く。

俺を恐怖させた奴らは殺した。

もう、満足した。

時王の居場所は気になるが、時王を探すのは迷宮を攻略してからでいいと思う。

書き置き代わりにその場で錬成を使い、「俺は生きている、俺は下に行く」とだけ書いておく。

「じゃあ…会えたら会おうぜ。時王」

誰も聞いていないだろうに、その場で俺は呟いた。

もしかしたら返事があるかもしれないと…淡い期待を持ちながら。




ハジメがヤバイ(語彙力疾走)。
でもこれからの展開のために、ハジメにはこれくらいの破綻者になってもらわなければなりませんでした。
ハジメが好きという人は、申し訳ありませんでした。
後半からは丸くなる予定なので。

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