ありふれない時の王者と錬成の魔王は世界最強   作:イニシエヲタクモドキ

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さらに連続投稿。
休みだからね、仕方ないね。
文章は少なめだね。しょうがないね。



姫の絶望/遅れてきた希望

ハジメside。

俺が目を覚ましたところから数えて大体五十階層目。

ここに来るまでにいろいろな事があった。

毒を使うカエルとか、麻痺させてくる餓とか。

他にもたくさんの殺意強めな魔物が俺を襲い、行く手を阻んできた。

まぁ途中のトレントみたいなやつには、旨いものを食わせてもらったが。

あの木の実はちゃんと時王のためにとって置いてある。

「と、感傷に浸っている場合じゃねぇな…」

目の前の巨大な扉を見上げながら、愛銃のドンナーを構える。

両隣に巨人の像がある荘厳な扉からは、今までとは違った異様な雰囲気が醸し出されていた。

「…さながらパンドラの箱、だな…」

焼夷手榴弾を大量に持ち、扉に投げつける。

錬成を使って無理矢理扉を開けても良かったが、明らかに隣の巨人が動き出しそうな気配があったのでやめておいた。

爆炎を上げながら、扉が融解していく。

心なしか隣の巨人が泣いているような感じがした。

「さてさて…どんな希望が入ってるんだ…ん?」

ぐちゃぐちゃに融けた扉を通り抜け、部屋に入ると、謎のエフェクトと共に奥にある四角い何かが回転し始めた。

「…長いな。コイツも手榴弾で消し飛ばすか?」

俺はゲームでも長いエフェクトが嫌いなタイプなんだ。

こういった無駄なエフェクトはいらないんだが…

イライラしたので手榴弾を投げつけようと構えた瞬間、正方形の何かは回転を止め、こちらに一つの面を見せてきた。

その一面から金色の線がなくなり、中心に金髪の少女が現れ…

たのを確認した瞬間、俺は踵を返して扉の外へ向かった。

「え…?ま、待って…!」

「うるせぇ、怪しい奴にはついていくなって俺の親友に言われたんだよ」

嘘である。

ただただ面倒臭そうだった。

見た目は美少女のようだが、いつ姿が変貌して襲い掛かってくるかわからない。

別に人型の生き物を殺すことに抵抗があるわけじゃない。

寧ろ人型をしたクラスメイト達を殺したくて仕方ない。

「お願い…ゲホッ、ゲホッ…待って…私を助けて…!!」

「怪しすぎるわドアホ。絶対お前魔物だろ」

「違っ…私はここに封印されただけっ…」

「ふーん、封印された、とか…封印されるような危険人物じゃねぇか。余計に助ける気無くすぞ」

「違うの!私…私…裏切られただけ!」

少女のその言葉を聞いたときに、俺は足を止めてしまった。

足を止めた俺に、少女はチャンスと思ってか話を始めた。

「私、吸血鬼なの!すごい力持ってて、それで力を恐れられたせいで裏切られて、でも力のせいで死なないから、封印することにされて…」

「…そうかよ」

再び足を動かして部屋から出ようとした俺に、少女は話を必死に続けた。

「ま、待って!私は本当に裏切られただけなのっ、すごい力も持ってるのっ…だから、ここから脱出するのも手伝えると思うし、それに…」

「うるせぇんだよさっきから!!!」

ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!!

銃声を三発響かせ、吸血鬼の方を睨みつける。

「え…」

呆然としている吸血鬼の方にズカズカと肩をいからせながら近寄り、その脳天にドンナーの銃口を押し当てる。

吸血鬼が呆然としていたのは、俺が吸血鬼の頬をかすめるように弾丸を撃ったからだろう。

「…調子のってんじゃねぇよ。裏切られた?それは確かに残念だったな。でもそれは俺に関係することじゃねぇんだ。わかるだろ?俺も裏切られて落とされたんだ。親友と一緒にな。だからお前が裏切られて辛いって気持ち、わかるさ」

「な、なr」

「でもなぁ!!俺は!お前と違って昔から虐げられてきたんだ!昔は力なんてなかったんだ!!お前と違って、何か理由があって裏切られたわけじゃねぇんだよ!!!それになぁ!お前は今どうしようとしていた?いきなり現れた俺に頼って、楽してこの状況から抜け出そうとしただろ!?それが一番ムカつくんだよ!どうして同じ裏切られたヤツが!俺と違って苦しまねぇで!心も折らねぇで!腕を自分で食う事もなくて!そのくせ助かろうとしやがって!!なぁ、魔物に襲われたか?親友を失いそうになったか?なぁ、答えろよ…答えろよ!!!」

「…わ、私は…」

俺の剣幕に気圧されてか、何も言えなくなった吸血鬼。

「チッ…もっと言ってやろうと思ったが…まぁいいか。じゃあな、本当に助かりたかったら、自分でそこから抜け出せるだろ。せいぜいがんばれ」

ドンナーを右太腿のホルダーにしまい、部屋を後にする。

背後から吸血鬼が何かを言っていた気がするが、それはもうどうでもいい。

下に降りよう。そして、最後の階まで行ったら、時王を探しに行こう。

俺が助けようと思うのは、俺を助けてくれた親友だけだ。

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時王side。

ステータスの上昇に伴い、俺は左腕と左目にも逢魔の力を宿すことができるようになった。

そのおかげである程度迷宮攻略が楽になり、つい先ほど四十九階層(俺がいた場所から数えて)をクリアした。

「よし、この下がユエがいるはずの階層なのだが…どうせいないだろうな。ハジメが助け出してるだろうし」

あぁー、せめてサソリとサイクロプスの肉は食っておきたかった(ステータス上昇的な意味で)と思いながら、五十階層に入る。

「…本当に何もないのな」

周囲を見渡しながら…ついでに未来も見ながら探索をする。

ユエの封印部屋はどこかな…あ、あった。

「…ん?扉が融けてる…?隣の巨人もまだ石像のままだし…」

扉跡地に手を当てると、いきなり巨人が動きだした。

「あ?うぜぇな…まぁステータスの足しになってくれるし良いんだがよ…」

雄叫びを上げながらポーズをとろうとしたサイクロプスを殴りつけ、下半身を消し飛ばす。

もう一匹の方が俺の方を見て、信じられない…みたいな目をしているが無視。

そのままもう一匹も殴りつける。

若干抵抗があった気がするが、すんなり拳は入った。

「確か目が弱点だったはず…よし」

それだけ言うと、二匹の巨人の目に右腕と左腕でそれぞれ殴りつけ、巨人を殺害。

肉を貪ると、すぐに扉跡地に目を向ける。

「…もしかしてハジメお手製の焼夷手榴弾?まじかー…だからハジメは巨人に攻撃しなかったのか。もったいねぇ」

後頭部を掻きながら奥へ進む。

何故かアニメで出てきたエフェクトが始まったが、そこには目を向けず先へ進む。

すると、回転していた立方体が動きを止め、そこからユエが顔をのぞかせて…

「は?」

「…っ、あなたは…だれ…?」

信じられない光景につい声を出してしまった俺に、おびえたように声をかけてきたのは…

原作のメインヒロイン、アレーティアことユエだった。




ハジメとユエが原作通りになるなんて一言も言ってません。
許せない、と思った方はすいません。
ハジメのヒロインは時王のヒロイン決定なので…
因みに、この作品のハジメが今まで酷い奴だったのは、全てここで裏切りというワードに反応してユエを救出する展開を粉々にするためです。
そのために、吸血鬼のお姫様には少し絶望してもらいました。
批判は覚悟してますが、できるだけ控えていただければなぁ…と。

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