ありふれない時の王者と錬成の魔王は世界最強 作:イニシエヲタクモドキ
今回は長いかも知れないので、辛抱強く読んでください。
時王side
先程の帝国兵たちの所持していた大型の馬車を強奪したので、俺達は玉座(キングサイズベッドレベル)に乗って移動し、馬車の方にハウリア族の連中をのせて移動していた。
「…なぁ時王」
「どうしたハジメ?」
俺の横でドンナーの整備をしていたハジメが、いきなり俺に話かけてきた。
「…さっき、どうだった?」
「どうって…わかんねぇんだけど」
「だからさ…人殺してみて、どう思った?」
「あぁ…」
ハジメに言われて、先程の自分について考える。
怒りに身を任せてとは言え、見知らぬ男達を惨殺したのだ、少しくらいは心に揺らぎがあったような気が…
あれ?全くない。
寧ろ…楽しかった?
「…別に何とも思わなかったな」
「…無理してるんじゃねぇよな?」
「いや…別にそう言う意味じゃなくてさ…」
一瞬、言うべきか否か逡巡するも、ハジメならいいかと言う事で伝える。
「…何とも思わなかったって言うよりも俺は…殺すのが、楽しかったんだ」
「…時王、お前」
「あぁ…そう言う事だな。俺はどうやら、お前の事をどうこう言えるような人間じゃなかったってことらしい」
自虐的に笑う。
ハジメに言えないことだが、殺しに快楽を覚えていたハジメを、俺は実は心の中で若干、ほんの少しだけだが…否定的に思っていた。
人としての道を踏み外した、とまで思った。
同時に、それは仕方ないと思っていた。
だって、ハジメは原作で外道になるかならないかのところでユエと出会い、人としての最低限のラインを確立できたのだから。
それを、アイツは自分の手で撥ね退けた。
だからこそ、ハジメに原作のような心は無いのだろう。
「俺はさ、時王。多分、人でも躊躇なく殺せる。ていうかムカついただけで銃を撃つことはできる。いや…撃ちたくなる」
「…お前らしいな」
「まぁな…だから、その…なんだろうな、お前が気に病む必要は…」
「…ありがとな、ハジメ。やっぱ、お前は最高の親友だよ」
なんとか俺を励まそうとしてくれているハジメに、笑いかける。
ハジメは、俺に言わんとしていることが通じたと一安心していた。
脱力しながらため息をつき、再び作業に戻ったハジメから視線をそらし、もう一度寝転がろうとしたとき、今度はシアが俺に話かけてきた。
「あの、ジオウさん」
「シアか、どうした?」
シアの方を向いて尋ねると、言うべきか言わざるべきかと迷った様子を見せつつ、すぐに俺の方を真っすぐに見つめてこう聞いてきた。
「あ、あのっ!教えていただけませんか?ジオウさんの事や…ユエさん、ハジメさんの事を」
「…俺達の事は粗話しただろ?別にもうほとんど隠してることなんてないと思うが…」
「い、いえ…そうじゃなくて、その…何で三人は奈落?というところに居たのか…とか、色々」
「…どうして?」
今度はユエが質問する。
まぁそうだろうな。大体察しはつくけど。
「その…あなた達は、初めて出会えた同類なんです。固有魔法も使えて、魔力の直接操作もできて…だからこそ、知りたいんです。別に知ってどうする…とかじゃなくて、純粋に知りたくて…」
「…構わねぇか、ハジメ?ユエ?」
「…ま、お前が話すなら俺も話すか。こういう時に言葉にしておいて、恨みを薄れさせねぇようにしときてぇし」
「私も問題ない。…悪い虫予備軍に、しっかり現実を教える必要もある」
二人の了承も得れたので話すことにする。
未来を見たところ、まだまだ時間もかかりそうだから大丈夫だろう。
「…俺とハジメは、個々とは違う異世界から召喚されたんだ」
「エヒトとか言うクズのせいで、な。王国の奴等は、俺達の迷惑とかそう言うところは何も考えねぇで召喚するだけして、今まで武器なんて握ったことのない俺達に戦いを強いてきたんだ」
俺の言葉に、若干食い気味にハジメが続ける。
エヒトとか言うクズ、の発言に、シアは神をも恐れない豪胆な人なのかと驚愕に目を見開いていた。
「異世界から召喚された俺達は、みんな等しくレベル一の状態からこの世界のトップクラス…のはずだったんだが、俺とハジメだけ、平均とほとんど一緒だったんだ」
「その結果、前々から俺達を目の敵にしてたやつらがこぞって調子に乗って、俺達をいじめて嘲笑ってきた。ツイタあだ名が…無能だった」
「え…?お二人が、無能?嘘でしょう?」
「…残念ながら嘘じゃない。俺達だって最初は嘘だろと思ったさ。でも…な?」
「現実は非常だった。それだけだ」
怒りのオーラを滲み出しながら、腕を組んで告げたハジメに、槌苦笑いを浮かべてしまう。
こいつ、いじめられたとこの屈辱を鮮明に思い出してるんだろうなぁ。
俺はもうアイツらには興味なんてないが。何とも思わない。
ていうかクラスメイトの名前を全部忘れたくらいだからな。
まぁさすがに原作主要キャラと、サブ主人公のコウスケ・E・アビスゲートだけは覚えてるが。
え?檜山?ダレダロウボクソンナヒトシラナイ…
「んで、ある日…俺達はオルクス大迷宮に挑むことになったんだ。その時、二十…何階層だっけか?その辺で、ひや…ひ…ひ…まぁそんな奴がふざけたせいで、いきなりトラップが発動して、俺達は六十五階層まで飛ばされたんだ」
「そうそう…そして時王、檜山だ」
「あー!檜山か!何で覚えてんだ?」
「あ?決まってんだろ…最優先抹殺対象だからだろ」
名前が中々出てこなかったので言わずに進めたら、ハジメが態々教えてくれた。
ただ、その目は光を失っていたが。
「その六十五階層で飛ばされたところが、ちょうど橋だったんだ。全員を統率させて、団長が俺達を脱出させようとしたんだが…そこで、いきなり橋の両端に魔法陣が展開されたんだ」
「その魔法陣からは、方や大量のトラウムソルジャー。もう片方は…ベヒモスが現れた」
「ベヒモス?ベヒモスって、あの…」
「あぁ、過去にいたとされる勇者ですら敗走した相手だ」
それを聞き、再び驚愕するシア。
仕方ないことだろう。無能と呼ばれていた時期に、いきなり最強クラスの敵に遭遇したというのだから。
「ベヒモス相手に、流石にチート勇者共も歯が立たなかった。だが…」
「そこで時王が、ベヒモス相手にとんでもねぇ攻撃ぶちかまして、ベヒモスを一撃で殺しやがったんだ」
「じ、ジオウさんが?」
「あぁ」
『ジオウ』
無能時代のはずなのに、という風にこちらを見てきたシアに返事をしながら、ジオウライドウォッチを生成し、上のボタンを押す。
すると、俺のもう片方の手に、ジカンギレードが召喚された。
『ジカンギレード!!』
「うわっ!?喋ったっ!?」
ジカンギレードの音声にウサミミをビクッとさせて後ずさったシアを軽く笑いながら、ライドウォッチとジカンギレードを別空間にストックする。
別に消滅させて、もう一度創り出しても問題は無いのだが、別空間から取り出した方が圧倒的に楽だからだ。
「さっきの剣と、もう一つの剣を組み合わせて放った必殺技が、チート勇者の攻撃を無傷で受けきったベヒモスをワンパンしたんだ」
「す、すっごいですね…」
ウサミミをわさわさと動かしながら俺の方を見てくるシア。
その続きを話そうとしたところで、ハジメが先に言葉を続けた。
「…その後、避難しようとしていた勇者共の方に俺達が向かった時だった。いきなり俺達の方に魔法が放たれて、俺達は橋から突き落とされたんだ」
「…え?」
「別に俺達の後ろに何かがいたわけじゃない。本当に何もなかったのに…アイツは俺達を狙って、ただ魔法を撃ちやがった。落ちてく俺達を見て、あの野郎どんな顔してたと思う?…嗤ってたよ。愉快そうにな」
威圧を放ちながら教えたハジメに、同調するように頷く。
名前はもう覚えていないが、奴の顔は一生忘れない。
本当にムカついた。
「そ、そんな事が…」
「それで、奈落に落ちて目が覚めたところで、神結晶を発見して、神水片手に探索を始めたんだが…」
「ハジメが魔物に遭遇、その絶叫を聞いて俺が助けに入るも時すでに遅し。ウサギに肩を修復不可能なくらいバキバキにされて壁に埋め付けられていやがった」
「その殴り飛ばされたウサギの方は、すぐに復帰して時王の喉仏を蹴り上げやがった。そのまま俺の方を向いて、顎を吹っ飛ばそうと足をゆっくりと構えた瞬間だった」
「…あの熊が現れた」
「う、ウサギ?熊?それってそんなに恐ろしい魔物だったんですか?」
ベヒモスなんて言う強そうな魔物の名前から一転、そこら辺に居そうな人畜無害の可愛らしいウサギと、狂暴ではあるがあまり脅威を感じない熊が話に出てきたのだ。
その上そいつらに死ぬ間際まで追い詰められた、なんて聞いても信じられないだろう。
疑うようなシアの声に若干苛立った様子を見せつつも、宝物庫からある二つのプレートを取り出したハジメ。
「これは、俺が迷宮を探索しながら出会った魔物についてまとめたものだ」
「…こ、これが…ウサギと熊?なんかこう…全然思ってたのと違いますぅ…」
禍々しい見た目に慄いたシアに、ようやくわかったかという風にフンと鼻から息を吐いたハジメ。
「熊は二匹居てな…どっちも固有魔法の構成は一緒だったが、攻撃方法がまるで違った」
爪攻撃の固有魔法を持ちながら、途轍もない速度で飛んできたあの熊を俺は今でも忘れない。
「その熊に心を折られた俺は、時王が囮になってくれたおかげで何とか逃げることができた。…錬成を続けてたどり着いたところには、もう一つ神結晶があったんだ。そこから流れていた神水で体力を回復させた俺は、神結晶のある場所でひたすら苦悩した」
一度言葉を切り、深呼吸してから話を続ける。
「最初は、なんだろうな…復讐に生きろって、なんか俺の中の俺?みたいなやつが語りかけてきたんだけどさ…時王の言葉を思い出して、何とか踏みとどまったんだ」
「…俺の、言葉?」
「そ、『辛いときは泣けばいい。苦しいときは叫べばいい。でも…自分を捨てることだけは駄目だ。周りからは弱いって言われても、お前にしかない強さがある。その強さを捨てて全てを諦めても、それに意味なんてない。それだけは覚えておいてくれ』…俺がこの世界に来てからのいじめに耐え切れなくなって、自殺しようとしたときにお前が言った言葉だ」
「そうだったな…そんなこともあった」
「あの時のお前の言葉とか、態度とかにさ…すごく、救われたんだ。だから、だから俺は俺を捨てるわけにはいかないって、何とか復讐心を抑え込んでたんだが…」
「な、何があったんですか…?」
瞑目して俺の腕の中からピクリとも動かずに聞いているユエと対照的に、ウサミミを興味津々…だけど怖いっ、と言っているかのようにみょんみょん動かしながら質問したシア。
そのシアに、すごくどす黒い笑みを浮かべてハジメは舌なめずりしながら答えた。
「飢餓感に負けたんだよ、俺は。なんだかんだ、欲望は抑えられなかったんだ…だから、俺はあるものを食って自分を捨てた」
「…えっ、えっと…それってもしかして…」
最初は意味がわからなかったのか小首をかしげたシアだったが、すぐに意味を理解したのか顔面を蒼白にした。
「そうだよ…もうそこにあるだけで、治ることもなかったからな…左腕を自分で切り落として、自分で食ったんだよ」
「うっ…」
笑みを浮かべたまま、自分で自分を食べたと告げたハジメに、口元を抑えて俯いたシア。
ユエも、気分を悪そうにしていた。
俺?原作よりも酷い堕ち方したなぁとしか。
カニバリズム系のアニメなんて、ネットにゴロゴロ転がってんだから、今更ねぇ…?
まぁ最初はハジメに戦々恐々としていたけど。
その後も、ハジメの不幸話が続き、ユエのところの話になった。
「最初、私のところに来たのはハジメだった」
思い出したせいか、恐怖に身を震わせているユエを優しく抱きしめる。
すると、緊張がほぐれたのか力を抜き、俺にしな垂れかかってきた。
「…ハジメに、最初私は助けてといった。シアみたいに」
「私みたいに…ですか」
「うん…私は、家族に、国に裏切られて…奈落の底に封印されてたの」
家族に裏切られた、と聞いたときに、シアは目を見開いた。
大方、自分と共通点が多いユエを、自分と同じ境遇だったのだろうと勝手に思い込んでいたらしい。
だが、それは違った。ユエとシアには大きな相違点がある。
…家族から愛されていたかどうかだ。
まぁ原作を知っている俺からすれば、ユエもしっかり家族から愛されていたのだが…それはまた別のお話。
異質な存在でしかない自分を家族だと言って守ってくれるような人も、ユエはシアと違っていなかったのだ。
それどころか、その家族のせいで、孤独なところに一人封印されていたのである。
どちらが恵まれていたか、と聞かれれば、俺は迷わずシアの名を答えるだろう。
「ずっとずっと…三百年くらい封印されていた時に、ハジメが私のいるところまで来たの」
「それで、ハジメさんが助けたんですか?」
「違う」
信じられない、という風に質問したシアに、食い気味に返事をしたユエ。
そんなに?
「ハジメはむしろ、私の心に深い傷を残した…」
「チッ…アレはお前がムカついたから」
「ムカついたってそんな万能な言葉じゃねぇからな?」
流石に恋人…いや、いっそ嫁?に、ムカついたという理由でトラウマを植え付けてくれた親友に冷たくツッコむ。
まぁハジメが原作とまったく違うことをしたせいで、なんかユエが病んじゃってるからね、仕方ないね。
…たまに、愛が重いと感じることもある。
「私が傷ついて、絶望しきったところに現れたのが…時王」
「そ、そんなタイミングよかったっけ?」
「よかったの」
「いや、でもお前ハジメが出てってからかなり後にって」
「よ か っ た の」
「アッ、ハイ」
やっぱり吸血姫には敵わなかったよ…
「封印を解いて、私を安全なところに優しく置いて…襲い掛かってきたサソリの魔物を、圧倒的な力でねじ伏せた」
「サソリの魔物?」
ハジメが訝し気に俺に質問してくる。
あ、そう言えば説明してなかったような気がする。
「あぁ、どうやらユエが何らかの理由で封印から逃れた場合に、ユエを捕まえるか…もしくは殺すかするための魔物が用意されてたんだよ」
「ん?もしかしてそれって前に俺にくれた素材の元になった魔物か?」
「…やっぱ説明したよなぁ…?」
なんか話がつながっていない気がするが、その辺は別に気にするほどの事ではないだろう。
「魔物を倒した後、何も着てなかった私に服を着せてくれて…名前も付けてくれた。血も吸わせてくれた…すごく、優しくしてくれた」
頬を緩めながら言ったユエを、
その後も、俺達が交互に語り部を担当し、俺達の現在に至るまでの話を伝えた。
すると…
「うぇ、ぐすっ……ひどい、ひどすぎまずぅ~、ジオウさんもハジメさんもユエさんもがわいぞうですぅ~。そ、それ比べたら、私はなんでめぐまれて……うぅ~、自分がなざけないですぅ~」
「…まぁ話をまとめたら一番俺が苦労していない気もするがな…」
力の使い過ぎで寝込んでいただけの俺は、とてもじゃないが苦労したとは言えなかった。
だが、シアはそんなことないと言って、涙をぬぐい、高らかに言った。
「ジオウさん!ハジメさん! ユエさん! 私、決めました! 三人の旅に着いていきます! これからは、このシア・ハウリアが陰に日向に三人を助けて差し上げます! 遠慮なんて必要ありませんよ。私達はたった四人の仲間。共に苦難を乗り越え、望みを果たしましょう!」
「図々しいぞウザウサギ」
「調子に乗るな、そして何より…時王に唾つけようとしないで」
「…多分そう言う意図はないだろうよユエさん…まぁ、お前が打算まみれだってことはわかるが」
俺達三人に冷たく言い放たれたせいで、ダメージを受けたように倒れるシア。
ここが玉座じゃなかったら痛そうだなぁと思っていると、シアが俺達を涙目で見てきた。
「そ、そんな酷い言い草ないでしょう!?私はただ旅について行って、三人の手助けをしようと」
「別にその助けは無用だ」
「…だから私の時王の気を引こうとしないで。どうせ旅の途中に何処とは言わないけど無駄に育ったそのソレで時王を誘惑する気でしょ」
「…シア、お前はただ旅の仲間が欲しいだけだろ」
取り付く島もなくあしらったハジメと、なんかズレたことを言っているユエに苦笑いしながら、俺は原作のハジメが言っていたことを言った。
すると、ギクッ、ギクッ、と何故か二回図星をつかれたかのような反応を見せたシア。
え?俺以外に正解無いじゃん。なのになぜ?
「…ま、お前が好き勝手言うのは別に止める気はないが…さすがに連れていくつもりはないぞ?脆弱なお前を守りながら戦うのも問題はないが、面倒臭いからな。…ついでに、お前に利用されてるみたいで気に食わねぇ。俺は王だぞ?」
ものっさ傲慢なことを言うと、シアから視線を外す。
俺の方に何も言ってこないことから、もう何かを言うつもりは無いのだろうと判断したからだ。
「なぁハジメ、ここの大樹が仮に本当の迷宮じゃなかったら…どこだと思う?」
「…そんな未来が見えたのか?」
「いやそうじゃなくてさ…可能性さ可能性。お前なら大樹以外のどこに迷宮を設置する?」
「俺なら…」
それだけ言うと、考え込んでその場から動かなくなってしまったハジメ。
…あれ?まさかここまで真剣になるとは…暇つぶし程度の軽い質問だったのに。
「別にそんな悩まなくていいぞ?軽い暇つぶしみてぇなもんだし」
「…もし迷宮を設置するなら…俺はここの地下にするな」
「…その心は?」
俺の制止を無視して、自分の考えを伝えてきたハジメに、その意図を尋ねる。
どうして地下?
「いや、地下って言っても、そう簡単に地面に穴を開けて入れるようにはしない。亜人族の集落のどこかに地下に通じる穴があって、亜人族の奴等からその地下に入るまでの信頼を手に入れるのが最初の困難にすれば…この世界の連中からすれば、かなりの難問になるだろうよ」
「…お前、ジグ●ウになれるぞ」
S●Wシリーズの中に、協力すれば簡単な内容だが、協力できないような奴等にやらせることで難易度を以上にあげるやつがあった気がする。
「で、迷宮内にも亜人と協力しないといけない仕掛けを用意しておくんだ。魔物の強さは奈落クラスでな?」
「お前悪魔かよ」
ハジメ作、ぼくのかんがえたさいきょうのめいきゅうに若干引き気味になるも、実に合理的だと感嘆する。
差別意識の高い人間にそれをやらせるのは中々の難題だろう。
その上、単純に戦うだけでも死を覚悟するような奈落の魔物クラスを設置とか、とても人道的とは思えない。
俺もそういう事考えたけど。
それから数時間後、ようやく樹海が見えてきた。
「それでは、ジオウ殿、ハジメ殿、ユエ殿。中に入ったら決して我らから離れないで下さい。皆様を中心にして進みますが、万一はぐれると厄介ですからな。それと、行き先は森の深部、大樹の下で宜しいのですな?」
「あぁ。やっぱり、大樹が一番怪しいからな」
一応確認のためにハジメを見る。
無言で肯定された。
カムたちは、周囲の兎人と確認し合いながら、森の入り口まで迫って行った。
「…ジオウ殿、その…その玉座?は目立ってしまうので、その…」
「あぁ、わかった」
そう言うと、全員を玉座から降ろし、俺も降りた後で、消滅させる。
確かにこんなものが浮遊してたら目立つよな。
「それと、気配も出来る限り消していただきたい。立ち入りは禁じられて無いのですが…如何せん我々はお尋ね者、さらに言うなればあなた方もここでは本来なら招かれざる客…フェアベルゲンの者に見つかったりしたら…」
「そっちも大丈夫だ。俺達は隠密もできる」
それだけ言うと、ハジメと俺は気配遮断を発動し、ユエは周囲の魔力と自分の気配をできる限り同一化させることにより極限まで気配を薄めた。
「これは、また…流石ですな…ただ、その…ジオウ殿とハジメ殿、できればユエ殿くらいにしていただきたい…」
「ん?…これでいいか?」
「…えぇ…にしてもすごいですなぁ…一応我々は、隠密と索敵に秀でている種族なのですが…こうもあっさりと凌駕されてしまうとは!」
…そう言えばこんな会話原作でもあったなぁ…
そんなどうでもいいことを考えながら、ユエの方を見る。
先程からずっと俺を見ていたらしく、ようやく気付いてくれたという風な反応をしていた。
その表情は、褒めて、と雄弁に語っていた。
それも仕方ないか。先ほどのユエの気配の消し方…実は俺達も今知ったばかり。
どうやら、長い間練習したらしい。
よくやった、という代わりに頭を撫でてやると、嬉しそうに破顔した。
「では、行きましょうか」
カムが俺達の前に立ち、先導するように歩き始める。
その間どうでもいいことを考えてしまった。
…もしここで気配を殺すのをやめたら…いや、むしろ威圧とかで気配を強くしたらどうなるんだろう、と。
流石にそんなことをするような気はないが、結構気になる。
俺の威圧とハジメの威圧は、結構違うらしい。
「…魔物か」
ある程度歩くと、魔物の気配を感じた。
その数、およそ三匹。
ナイフを手に取り、警戒するカムたちを片手で制しながら、その辺の石ころを拾い上げる。
そして、気配を感じるところに向けて石を投擲する。
その時に、いつもの攻撃するときに出る金色のオーラを出しておくのも忘れない。
ビュゴッと空を切る音が聞こえたかと思えば、断末魔を上げることなく木から魔物が落ちてきた。
「…オールクリーンヒット、それにヘッドショット…我ながら上々の出来と言える」
「さすが」
死体を見ながら、俺を笑って賞賛したハジメに、ハンドシグナルで返事をした。
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ハジメside
森に入ってからは、現れる魔物はすべて時王が殺していった。
まぁ俺の義手のギミックを使っても構わなかったが…まぁ俺のは一々時王の創造って能力で作ったりしないと量産できないからな。
そうして歩いている事数時間。
突然今までとは比べ物にならない(俺達からすれば鼻で笑えるレベル)の殺気が俺達を囲んだ。
カム達はその殺気を放ってきた相手を察してか、顔色を悪くさせた。
俺もユエも面倒くさそうな顔をしている。
時王は、まるで分っていたという風に平然としていた。
「お前たち…何故人間と一緒に居る!種族と族名を名乗れ!」
トラの耳と尾を付けた、筋骨隆々の亜人が、俺達の前に現れ、武器を向けてきた。
一つ言っておかねばならないことですが、時王はよく原作では原作知識ではとか言っていますが、実はもう原作をあまり覚えていません。
これも全て、檜山大介(仮名)ってやつの仕業なんだ(作者の首の折れる音)。