ありふれない時の王者と錬成の魔王は世界最強 作:イニシエヲタクモドキ
ユエのイメージになったキャラがゆかりん(じゅうはっさい)だったことに驚き。
いやまぁありふれについていろいろネットサーフィンしていた(それもたった数分)ときに見つけただけなんですがね。
はい、研修旅行から帰ってきた当日に投稿せず、内容を一回ほとんど消去したりして残念な出来のまま出した男ひま次郎です。
今回は、タイトルからわかる通り、少しだけ終盤の方で食人描写があるのでお気をつけてください。
ついでに、鷹山仁信者の方も見るのを勧めません。
僕も鷹山仁信者なので、この話を見返すことはできません。
三人称視点
「ウェイッ!ヴェイ!!ウェェェェェェイッッ!!ですぅ!!」
オンドゥルな叫びをあげながら戦槌を振り回すウサミミ少女、シア。
その攻撃を回避しながら、七色の極光を様々な方向、場所から撃ちだす金髪の吸血姫、ユエ。
二人の攻防は、周囲の地形を変えながら行われていた。
特訓九日目…帝国兵が攻め込んでくる当日だ。
「ウェイ!ウェイ!ウェイッ!!ですぅ!!」
「…その最後につけるですぅは、私の集中力を切らせる作戦?」
「なっ、違いますぅ!私の口癖ですぅ!!」
仲良さげに会話をしているが、お互いの殺意が具現化したような猛攻は互いに止めていないばかりか、その勢いを強めてすらいた。
「…“風神”、“雷神”」
ユエが、数百年前の大魔導士が開発した魔法を発動する。
その瞬間、右に暴風、左に雷の雨が現れ、シアを襲った。
だが、シアは裂帛の気合と共に戦槌を振るい、その両方を消し飛ばした。
「オラオラオラオラオラァ!ですぅ!」
「
不敵に笑った後、水の弾丸を一分間に七千発の勢いで連射し始めたユエ。
もはや何でもありである。
因みにだが、この水の弾丸、音速レベルの勢いで放たれているため、喰らったら体に風穴があく。
だが、音速
目に魔力を移動させて攻撃を見切り、その全てを戦槌で散らしていった。
「なら…“風刃”、“石礫”、“極光”、“恐慌化”」
四つの魔法を同時に発動したユエ。
風刃と極光は言わずもがな。石礫はそのままの意味。
ただ、恐慌化は名前と違う能力が一つある。
この魔法は、相手を恐慌させる能力を持っている…だが、それだけではない。
恐慌させた相手のステータスを異常に減少させることが出来るのだ。
「どりゃどりゃどりゃぁああああああ!!!ですぅ!!」
頑なに語尾を固定しながら戦槌を振るい、魔法の全てを打ち消していくシア。
乱雑に振るっているかのように見える戦槌だが、その軌道は極めて合理的なものであり、たった十日だけでここまでできるようになったシアの才能は、師を担当しているユエですら舌を巻くものだった。
「そろそろ…私の奥の手ッ!見てもらいますよぉ!!」
「奥の手…?」
連続かつ同時に最上級魔法を乱発しながら、訝し気な顔をしたユエ。
これは時王が思っていることだが、ユエは時の王者であり本来のオーマジオウすらも越えるスペックを持つ自分の血を飲み続けたから、魔力の量が原作よりも異常になったのだろう。
そのせいで、最上級魔法を使っても魔力切れを起こさないばかりか、最上級魔法以外なら二十四時間年中無休で撃ち続けても微動だにしないレベルになっていた。
閑話休題。
シアは、戦槌を振るうのをやめ、ギチギチと音が聞こえてくるくらいに体をねじり、構えた。
その瞬間、魔力が爆発的なまでに戦槌に集中し、攻撃に転じていないにも関わらず、ユエに物理的な圧を与えていた。
これはマズイと感じたユエは、マスタースパークの魔法陣(本来なら不要だが、これから使う技を発動するには必要)を複数展開し、時王から手渡された
「全属性複合…
ユエの手の構えた先に浮かぶもの…八卦路がエネルギー満タンだと言うように振動し始めた。
それと同時に、シアの方も攻撃のためを終え、戦槌を勢いよく振るった。
「ウェェェェェェェェェイッッッ!!ですぅッッ!!」
「ファイナルマスタースパーク…!!」
シアの戦槌から衝撃波が放たれ、それを向かい撃たんとばかりに八卦路から極光が放たれた。
八卦路の周りからは、赤や青などの星が円を描くように発射されていった。
シアは、再度衝撃波を喰らわせようということで構えを取り、ユエはもう一度攻撃される前に殺すという風に流す魔力の量を増やした。
星を消し飛ばし、一瞬はファイナルマスタースパークすら押し返しかけた衝撃波だったが、すぐに消滅してしまった。
だが、その隙間を埋めるように、再び先程レベルの衝撃波が、今度は二回ユエの方に向かって行った。
一撃目がファイナルマスタースパークと拮抗し、二撃目がファイナルマスタースパークを押し戻した。
押し戻されたファイナルマスタースパークと、八卦路から再び放たれたファイナルマスタースパークが衝突し、その時のエネルギーで、ユエの八卦路が粉々に砕け散った。
砕け散った瞬間、ファイナルマスタースパークが消滅し、それを好機と見たシアがユエに突撃した。
戦槌を使わず、身体強化のみでタックルしたシアの攻撃は、ユエに血を吐かせるまであった。
「…ま、負けた…?」
「…………………やったぁあああああああああああああああああああ!!!!ですぅ!ユエさんに!!勝ちましたぁ!!!」
呆然と呟いたユエを見て、感極まって叫んだシア。
ぴょんぴょんと跳ねながら自分の勝利を讃えているシアに、ユエの堪忍袋の緒が切れた。
「うざい、“凍柩”」
キレたユエの魔法に、氷漬けにされたシア。
その表情は笑顔のまま固まっており、見る人が見れば、一種の芸術品にすら見えた。
しばらく凍結しているシアを見て留飲を下げたユエは、シアを解凍し、温風を当ててやった。
九日間も一緒に戦い、極め合ってきた仲だ、ほんのすこーしくらいは優しさを見せる。
…時王の事に関してなら、容赦しないだろうが。
「ぴくちっ…う~、なんで凍らせてきたんですかぁ~…まぁ、それはもういいです。それよりもユエさん!」
「………なに?」
「もぉ~、『なに』じゃないですよぉ~!私を旅に連れて行くように、一緒に頼んでくれるんですよね?」
「……………なんの事?」
「あっ!誤魔化した!誤魔化しましたよ今!!わざとらしく間まで開けて!!」
スヒュー…スヒュー…と、お世辞にも上手とは言えない口笛までセットで誤魔化そうとしたユエに、シアは誰もいないところを見ながら、まるで訴えるかのように声を張り上げた。
無理矢理誤魔化そうとしていたユエだが、すぐに観念し、ものすごく嫌そうな顔をしながらも了承の意を告げる。
「………………わかった、ちゃんと一緒に頼む」
何故愛しの時王と一緒に行動することを許可したのか。それはユエのプライドが関係していた。
ユエが異常なまでに依存している時王は、どんな小さな約束であろうとも守っていた。
どんな小さなものでも、である。
その姿を見てユエは、時王の
実際、こんな口約束は直ぐになかったものにしても良かった。
だが、この約束の内容を決定したのはユエ本人だし、態々反論をシャットアウトして賭けを成立させたのもユエだ。
そんな約束をなかったものにする?そんなことをしたら、ユエのプライドは一瞬で亡き者になるだろう。
それをユエ自身が許すはずもなく。
「ぃやったぁあああああああああああああああああああ!!!!!!ですぅ!やりました!やりましたよぉ!!母様見てましたか!?私やりましたよぉ!!」
豊かな双丘をブルンブルン揺らしながら、まるでどこかの宇宙が来たと叫んでいる高校生のようなポーズをとって、亡き母に涙を流しながら報告しているシアを、殺意をありったけ込めた瞳で睥睨するユエ。
その目線がシアの胸元に固定されているのは、触れてはいけない事実である。
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時王side
「ジオウさーん!」
ハジメと一緒に玉座に腰掛けていると、遠くからシアが駆け寄ってきた。
その表情は喜色満面で、見ているこっちも笑顔になりそうなレベルだった。
だが、その隣を歩くユエはすごく不機嫌そうだ。
「…どうかしたのか?」
何かいいことでもあったのか、何か嫌な事でもあったのか、その二つの意味を込めて質問する。
すると、シアの方がすっごくいい笑顔で俺に自慢してきた。
「ふふふ…なんと!私は…ユエさんに勝ったんです!!」
「そうか、おめでとう」
「あ、あれっ?すごく反応が薄い…?」
何故か残念そうなシアを尻目に、もはやあるのかどうかすらわからない原作知識からいろいろ絞りだす。
確か原作でもシアが勝つことになっていた…はず。
だから別に何もおかしいところは無い。大方ユエが油断したとかそこら辺だろう。
「…で?どうだったんだ?」
未だに「あれぇ~?」なんていっているシアを無視して、ユエに質問する。
すると、少しの間考え込むような素振りを見せた後、すぐに俺の方に向き直り、端的に述べた。
「…前話した通りの身体強化特攻だった」
「ほぉー…俺達みたいに、他の魔法は使えないってこと?」
「ん…でも、驚くべきはその才能の方…」
「お前が言うか天才吸血姫…」
俺とかハジメみたいに、生まれつきの才能が有るわけでもない奴等の前でそんな才能を持っておきながら「自分よりもすごい奴がいる、悔しい…」みたいなことを言うのをやめていただきたい。
「んで?才能がすごいってどういうこったよ?」
「…私が言ったことを1とすると、シアは…一瞬で、大体100くらいの結果で返してきて、次に300を欲しがる」
「は?」
「体内での魔力の循環も、無意識レベルで最も最適なものを選んでた」
「…は?」
「そして一番なのは、魔力の成長力」
「…どういうことだ?」
なんかシアが物凄い奴だってことが分かったが、魔力の成長力がすごいっていうのは流石によくわからなかった。
「…シアは、一度魔力を使い切ったら、回復するときには魔力の最大値が元の二倍になってる」
「なんだよそれ…」
「でも、後半からは成長力が弱まってきていたから…多分、今まで魔力を使い切ったことがなかったから子の才能に気づけなかっただけ」
「…参考までに聞くけど、身体強化するときの魔力消費って、普通に魔法使うのと比べて…」
「圧倒的に少ない。そのくせシアは私の九割くらい魔力を持ってる」
それだけ聞くと、俺は無性に何かに当たり散らしたくなった。
まず、シアは原作ではそんなに強くなかった…はずだ。
そんな魔力なんて持ってなかっただろうし、そんな成長力もなかったはず…
いや、カム達が
考え込んでいると、シアが俺の服の裾を掴んできた。
それでシアの方を見ると、決意を固めているのが容易に看破できるような瞳で俺の目を覗き込んできた。
「…ジオウさん!私を…旅に連れて行ってください!!」
「いや普通にダメだけど」
「そ、即答!?」
なんかショックを受けているシアを放置し、すぐにハジメの元まで戻ろうとしたところで、再びシアに服の裾を掴まれた。
「…ダメだって言ったんだが…」
「ま、まだです!この時のために私は…!ユエさん!お願いします!!」
「チッ」
「え、ユエどうした?」
苦虫をくさやとかドリアンとかその類の物と一緒にミキサーにかけ、ドロッドロの液体にしたものを飲んだような顔をしながら舌打ちしたユエに、普通に質問する。
何があったんだ?
「…………………………時王」
「お、おう?」
「…………………………つ、連れて行こう…?」
「お前に一体何があったって言うんだ?」
今すぐにでも死にたい、と言っているような表情のまま、可愛らしく小首をかしげながら言ったユエに、結構恐怖を感じながら質問する。
いやもう本当に何があったんですかねぇ?
いやまぁ大体察してるけどさ?
「…あぁ、勝負の時に賭けでもしたのか?」
「…そう…目先の欲に気を取られて…不覚をとった」
過去に戻る事さえできればッ!というような目で苦々し気に告げたユエから目をそらし、シアの方を見る。
「…そこまでしてついてきたいのか?」
「は、はいっ!」
「……どうしてだ?」
「え?」
「だから、どうして俺達にそこまでしてついてきたいのか聞いているんだが」
「そ、それはぁ…そのぉ…」
煮え切らない態度をとるシアに、本格的に首をかしげる。
今回のはマジでわからない。
ていうかわかったらとんでもないことが起こるような…そんな気がする。
どうしようかと考えているところで、俺達のところまでハウリア達がやってきた。
「お、帰ったか」
「と、父様!?みんなも…」
「あぁ、指示通り狩ってきた」
「あ、れ?と、父様…?」
久々に再会した父親の雰囲気が違うことに、首を傾げたシア。
…こいつ等に何が起こったのかを知ったら、シアはどんな反応をするだろうか。
「…?あぁ、シアか」
「えっ、ちょっ、本当にどうしたんですか?一体何が…?」
混乱した様子で、自分を視界にすら入れない父親をいぶかしむシアに、少しばかり罪悪感を持つ。
すまんな。本当に。
「あ、あのなシア、その…」
「失礼します」
シアに謝ろうと思って話しかけようとしたが、横から現れたパル少年に妨害された。
本人は意図していないんだろうが…タイミング良すぎだろ。
「ど、どうした?」
「いや…ちょっと不吉なもんが見えたんで」
「不吉なもの?」
「と、父様!?な、なにをしてるんですかぁ!!?」
パルから話を聞こうとしたら、今度はシアに妨害された。
一体何が起こったってんだよ…
「どうしたんだシア?」
「と、父様が、父様が…魔物の肉を…?」
信じられないものを見るような目で言葉を漏らしたシアに、生のまま魔物の肉を貪っていたカムが、さも当然かのように告げた。
「殺したもん食って何が悪い?」
「なんか父様が野生的ですぅ!?」
驚愕して声を荒げたシアを無視して、カムは生肉を貪りながら、魔物の有精卵を俺が渡したあるものを使って器用に叩き割り、殻を片手で割ってから飲み干した。
「え、今のは…?」
「?ハイベリアの卵だが?さっき巣を荒らしてきたばかりでな…いいものが手に入った」
「す、巣を荒らして来たぁ…?どういうことですか…?」
冷や汗を流しながら質問したシアに、まるで幼い子供に当たり前を説くかのように答えるカム。
「俺達はもう、あの程度の魔物にやられるようなことは無いんだ。ただの…飯でしかない」
「あの程度!?ただの飯!?本当に何が起こって…」
「なぁシア。お前に言わなきゃいけないことがあるんだ」
もはや涙目にすらなっているシアに、本当に申し訳なく思いながら声をかける。
ようやく反応してくれたシアに、落ち着くように言ってから話始める。
「…こいつ等を強くするために、俺とハジメでかなり追い込んだんだ。その結果…」
「魔物の肉を食って上昇したステータスだけじゃ満足いかなくなって、時王に力を与えてくれって頼み込んだわけだ。そしたら…」
俺とハジメの言葉に、喉をごくりと鳴らしてから続きを促したシア。
かなり戦々恐々と言った感じだったが、大丈夫だろうか。
「…俺はこのライドウォッチに関係する力を渡したんだよ」
『アマゾンアルファ』
「な、なんですかこれ…?」
俺が亜空間から取り出したライドウォッチ、それは本来なら存在しないはずの(バンダイが作っていない的な意味で)ものだった。
「アマゾンアルファ…特殊能力とかはあまりないが、喰うか喰われるかの世界を生き抜いてきた力だからな。こいつ等にちょうどいいと思ってな」
アマゾンオメガとアマゾンネオ、ついでにネオアルファは渡さなかった。
カムにアマゾンアルファを渡した後、残り二つを誰に渡すかって聞かれても、別に他の奴等に渡す理由(族長とかリーダー的な何かをしているとか、他の奴等と違う何かを持っているわけでもないという意味)が無いからな…
「…で、このライドウォッチにある力の本当の所持者…鷹山仁が作成に携わったもの…アマゾン細胞をこいつ等全員に与えて、その上でアマゾンアルファのアマゾンズドライバーをカムに渡したんだ」
「そ、そのアマゾン細胞って…?」
「…ま、端的に言えば…アマゾンってやつになる細胞なんだが…その、な?元々この細胞のせいでアマゾンに覚醒すると…タンパク質って言ってもわかんねぇよなぁ…ま、人の…生き物の体を作ってる物質なんだけどよ?それを異常に欲しがるようになる」
「そ、それってつまり…」
色々察してしまったような顔をしているシアに、もうどうにでもなれと思いながら話す。
「…今のアイツら、人間の肉が大好物なんだよ。ついでに魔物の肉」
「…うぷっ」
俺の言葉を聞くと、色々想像してしまったのか、その場で嘔吐し始めたシア。
それを見たカムは、シアの方まで行き、吐瀉物を手に持ち、俺達が作った拠点にある畑まで行った。
「え、と、父様?いったいなにを…?」
「吐く時は畑で吐け…肥料になる」
吐瀉物そのものは肥料になりえないような気がするのは果たして俺だけだろうか。
本編の内容をあまり覚えていない俺はそう思うしかなかった。
「…そういやパル、お前なんか見えたって言ってたな。何が見えたんだ?」
「帝国兵の一団の物と思われる馬車…前を歩いていたやつが帝国兵の鎧を着ていたんで間違いないです」
「もう、か…?いや、あの時の侵略は、この攻め込んできた奴等が集落の場所を伝えたってのが理由だったのか…?だとしたら…」
だとしたら、ここで帝国兵達を抹殺しておけば、集落に攻め込まれることもないってことか。
「お前ら、話は聞いていたな?」
「帝国兵がいるってことだろう?わかってるさ…お前ら、殺ることはわかるな?」
俺の声かけに、ニヒルな笑みを浮かべながら答え、後ろに控えていたハウリア族達に勝鬨を上げさせたカム。
兎人たちの勝鬨は、とてもおどろおどろしいものだった。
「ハジメ、ついて行った方がよさそうじゃねぇか?」
「ん?アイツらなら負けることもないだろ?」
「いやそうじゃなくてさぁ…あんな調子じゃ、無駄に樹海から外にでて囲まれて殺されたりしそうだろ?」
「あー、残党がいるかもしれないってか。やりかねないな…カム以外は同じ魔物の肉ばっか食ってて、ステータスの上昇も悪いだろうし…カムはあれがあるし、奈落の魔物の肉も食ってるからともかく、他の奴等は…魔法への耐性がどんなもんかわからねぇからなぁ…ついて行くか」
ひそひそと小声で相談し合って、気配遮断を使って追いかけようとすると、シアに掴まれた。
えっ!?気配遮断してるんですけど!?
「ま、待ってください!!まだ説明が足りません!!なんであんな…あんな…あんな狂気を感じる感じになったんですかぁ!?」
「……アイツら…特に男衆な?アイツら中々殺すことになれなかったからよぉ…俺達が殺して復活させて、飯も与えず魔物を殺すことだけ強要し続けたら…な?自分強くなりたいとか言って野性的になったんだよ」
「なぁにしてくれてんですかぁ!?人の親に何してくれてんですかぁ!!」
「…いや、それに関しては本当に申し訳なかったと思っている。だがな?ハジメに任せたりしたら…バーサーカーになってたぞ?それよかマシだろ?」
「どっちもどっちですぅ!!」
「…あ、そうだ。シア。お前の母親って…モナって名前か?」
「え?そうですけど…どうして知ってるんですか?」
「いや、カムが言ってたんだよ。奈落産の魔物の肉食わせてやった後、悶えてから」
あの時の光景は今でも覚えている。
いっそ狂気すら感じるくらい笑いながら、大の字になってこういっていたのだ。
『俺はまだそっちに行っちゃだめとか…厳しいのは変わらないなぁ…モーナーさーーん!』
なんかもうアマゾンズシーズン2最終回の仁さんみたいだったカム(衣服も仁さんそっくり)に、実を言うと少し感動した。
なんでかはわからない。ただなんだろう…リアルで見ると、感動したのだ。
「そ、そんなことが…?」
「ま、あまり気にしないでやれ…ただまぁ、カムだけ劣化版ハジメって感じだな。本当に強い」
「ほ、他の人達も…?」
「まさか。カムが一際力を欲したからなぁ…俺達がここまで強くなれた理由でもある、奈落の魔物を食わせてやっただけだ」
それを聞くと、眉間を揉みながら若干諦観を込めて溜息をしたシア。
「…もういいです。父様達が自分から望んだなら仕方ないでしょう…どっかの誰かさんが殺そうとしたのは目をつぶることにします!!」
「どこの誰だろうな、そいつは」
ハジメがどこ吹く風、という感じに目をそらしながら呟くと、魔力を全身に滾らせながら睨みつけたシア。
し、シアの方も闘争心が強くなってる…?
「…は、早くアイツらを追いかけようぜ?な?」
「…わかりました。行きましょう」
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三人称視点
帝国兵の一団のリーダーは、まるでそこにいてはいけない何者かを見てしまったかのような顔をして座り込んでいた。
帝国兵達の置かれている状況を実際にトータスの住民に説明したら、一体どんな違法薬物をキメたんだ?というような顔をされること間違いなしだろう。
だが、実際にそれは起こっていた。
「い、一体なんなんだ…何の冗談だこれは!?」
これは悪い夢だと呟きながら震えている部下を一瞥し、再び自分の前で幽鬼の如く俯きながらもあり得ないくらいの威圧を放っている兎人を見る。
その兎人の周囲にいる兎人も、男兎人は歴戦の戦士を思わせるような圧を放っている者や、狂気を感じる笑みを浮かべている者が、女兎人はみな一様に光を失った瞳を瞬きもすることなくこちらに向けているといった風に、帝国兵達の知るような兎人はそこに一人としていなかった。
「冗談…?そんなわけないだろ?これが現実だよ」
それだけ言うと、帝国兵の前で一際威圧を放っていた兎人…カムは、時王から渡されていたアマゾンズドライバーを腰に巻きつけ、アクセラーグリップと呼ばれる部分を回し、帝国兵を睨みつけながら…されど口角を上げながらつぶやいた。
「…アマゾン」
『ALPHA』
『BLOOD・AND・WILD!!W・W・W・WILD!!』
その言葉に呼応するかのように、ベルトの目のような部分が緑色に発光し、カムの立っていた場所から赤色の波動が吹き出た。
その衝撃波と熱気に吹き飛ばされた帝国兵達。
彼らが体勢を整え、カムの方を見た時には…
カムの姿は、真紅の鎧に身を包まれ、緑色の目をしている…アマゾンアルファの姿に変わっていた。
「う、うわぁぁぁぁぁあああああああ!?」
いきなり姿が変わったカムに、恐怖を抑えきれなくなったのか逃げ出した帝国兵。
その帝国兵の元まで一瞬で駆け寄ったカムは、貫手で帝国兵の腹部に風穴を開け、手が刺さった状態で思い切り腕を横に振るい、裂傷を作って殺した。
殺された仲間を見て、他の帝国兵達も逃げ出そうとしたが…
「「「「「「「「「「アマゾンッ!」」」」」」」」」」
自分たちを囲んでいた兎人たちが一斉に姿を変え、自分たちの方に歩み寄ってきたせいで動きを止めた。
「く、来るなっ…来るんじゃない…!」
帝国兵のリーダーが恐怖に慄きながらも、剣先を近寄ってくる
だが、それを無駄な抵抗だというように、剣を掴み、そのままへし折った。
「そ、そんな…」
終始無言のまま襲い来る
そして、
バズンッッッ!!
という轟音と共に、その場にいた全員が
帝国兵はもちろんの事、
「全く…何してるんですか皆さん。趣味悪すぎです」
「…シア?どうしてここに…」
「どうして?わかりませんか?父様達が下手に暴走しないように止めに来たんですよ」
「止めに来た?シア、お前はこいつ等を殺さないで生かしておけと言いたいのか?」
「いえ別に?この人たちが死んだところで関係ないですし…いやむしろ死んだ方がマシ?ですけど」
「「「「「し、辛辣!?」」」」」
何を言ってるんだこの帝国兵達は。自分たちは兎人をどれだけ虐げても構わないくせに、自分たちがそうやって少しでも暴言を吐かれたらすぐに被害者面か。というような目で帝国兵達を軽蔑するように一瞥したシアは、再びカム達の方を向き、私怒ってます、という風に言葉を続けた。
「私が止めに来たのは、父様達が本格的に道を踏み外すのを防ぐためですよ」
「道を踏み外す…?」
ちょっと何言ってるかわからない、という風に変身解除までして首を傾げたカム。
その陰からコソコソと逃げ出そうとしている帝国兵達。
だが、その動きは一瞬で止められた。
ドパンッ!
『Blaster Mode』
ズガァンッ!
「なぁーに逃げようとしてんだお前ら。しっかりそこで正座してろ」
ドンナーとフォトンバスターの威嚇射撃に脅され、動きを止めざるを得なくなった帝国兵。
因みに、一番攻撃の近くにいた帝国兵の股間辺りが濡れているのは触れてはいけないことである。
「本ッ当にわからないんですか!?」
「あぁ…俺の目的は人間を一匹残らず潰すことだからな。望み通り生きて何が悪いって言うんだ?」
「そこからすでに道踏み外してんでしょうが!なに殺意の波動に飲み込まれちゃってるんですかぁ!?」
帝国兵達の方に殺気を向けながら告げたカムに、憤慨しながら言ったシア。
だが、それでもカムは考えを変えようとしなかった。
「…あのですね?やり方は違えど、殺すことに執着するなんて…もはや帝国兵と同レベルですよ?向こうは殺さずに残しておくことを考えるだけいくばくかマシかもしれませんが…いや、帝国兵の方は殺さずに犯すし…どっちもどっちですね」
「俺達が…アレと一緒?」
「そうです。逆にそれ以外の何で例えればいいんですか?」
シアの辛辣な一言に、俯き方を震わせたカム。
言い過ぎた?と少し不安そうになったシア。
だが、その心配は杞憂だったらしい。
「…本当、モナさんそっくりだなぁ…シアは」
「か、母様そっくりって…ていうかさん付け?」
「ん?あぁ、なんだろうな。敬意…か?そんなもんだ」
それだけ言って先程殺した帝国兵の死体を手に持ち、その場で食い始めたカム。
それを見て、帝国兵とシアが情けない声を出す。
「…どうしたシア?意外とうまいぞ?」
「ひっ…な、何でいきなり食べ始めたんですかぁ…?」
「?ジオウから何も言われてないのか?変身するためには、人とか魔物とか…そいつらの肉を食べるか、卵をそのまま食うかしないとダメなんだ」
「えぇ…」
若干、いやかなりドン引いているシアを無視して、帝国兵の死体を貪り続けるカム。
喰い終わると、口元に付着した血を拭いシアの方を見たカム。
その表情はとても優し気な笑みだった。
対するシアは、引き攣ったような笑みだったが。
帰って来て早々書いたせいか(言い訳)、長くて薄っぺらい物しか書けませんでしたね。
三連休中は毎日投稿したかったのですが…早速無理でした。
次回…今日か明日には出したい…
追記:ありふれ原作の小説の方に、シアの母親の名前が出ていたのを最近になって発見したので修正しました。
なろうに投稿されているほうで出ていなかったから、他のところでも明かされないんだろうと勝手に名前を決めてしまった僕を許してください。