ありふれない時の王者と錬成の魔王は世界最強 作:イニシエヲタクモドキ
時王side
途中信号の多いところを通ってくれたおかげで、小学生スペックでも全然追跡できた。
後は撲滅。誘拐犯に慈悲は無い。今夜の夕食は栄養豊富な人肉ハンバーグだぞ喜べ
五円玉がお前を救ってくれるはずだ。
「…いくら敵の本拠地らしきところの入り口にいるからって、少し気が動転しすぎだろ俺…まったく、さっさと終わらせて、帰るとするか」
手に持っているのは、ここに来る前に遭遇してしまった黒服の男から奪ってきた銃2丁に変えの弾丸。
子供なのに何持ってるんだ、とかそう言った言葉は受け付けない。今回は非常に緊急事態だからな。
声を出さないようにしながらドアノブを捻る。
不用心にも鍵はかかっていなかったため、難なく入ることが出来た。
馬鹿どもが。ちゃんと家の鍵を閉めた事すらないのかアイツらは。
音をたてないようにしながら扉の中に入る…なんてことはせず、扉をわざと蹴りつけ音をたてた。
「っ!?て、テメェ何者だ!?」
「人に名前を聞く時は自分から名乗れ低能」
ドパンッ!
入り口で待機していた恐らく下っ端であろう黒服の男をヘッドショット。
殺してすぐにソイツの所持品を漁り、銃2丁にナイフ。変えの弾丸も手に入れた。
「…見張りが一人しかいねぇってことは…小規模なんだろうな。きっと」
前世の経験(訳あってこういった奴等の抗争には何度か巻き込まれた事がある)から、今回の奴等がこの先面倒になってこないだろう事を察する。
いやぁ、一人殺っておいてこの発言。人としてどうかと思うよ我ながら。
銃声を聞きつけてか、人が駆け寄ってくる音が聞こえてきた。
さて、片っ端から潰していくか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
時王side
「…死屍累々って、こういう状況を言うのか」
死体の山の上で、返り血を浴びながら平然と告げる。
黒服の男達から、銃とかナイフとかいろいろ強奪して、本格的に少女探しに出る。
弾丸は余りあるので、無駄に壁に撃ちながら、大声を出す。
「おーい!他に誰かいないのかぁー!もうお仲間さんは死んじまってんぞぉー!」
ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!
銃を乱射しながら歩いていると、不意に下の方から声のような物が聞こえてきた。
声の正体を悟った瞬間、俺は下の階への階段を降りた。
下の階は、廊下が長く、部屋も沢山あったが、電気がついている部屋が一つしかなく、どこにあの少女がいるかどうかは直ぐに察することが出来た。
唯一電気がついている部屋の、半開きになっている扉を蹴り飛ばし、銃を構える。
しかし、銃は必要なかったらしい。
「じ、じおうくん…ッ!」
「…あ?他の奴等はもういないのか?」
「ぜ、全員出ていったよ…?」
「そっか、じゃお前を解放して…あ、鍵がねぇな」
「か、鍵ならさっき出ていった人が…そこのテーブルに置いて行ったよ?」
「お、んじゃあそいつをもらって…」
ドパンッ!
テーブルの上にあるカギを取ろうとした瞬間、俺の腹部にいきなり焼けるような痛みが襲い掛かってきた。
「…い、生き残りが居たってのか…やられた」
「…トイレに行ってるうちにガキが侵入してくるなんてなぁ…お友達が心配だったのか?」
軽薄そうな笑みを浮かべながら、俺の頭を掴み持ち上げ、軽口を叩いた男の顔に唾を吐きつけ、中指をたてる。
「なっ、テメェ何しやがr」
「うるせぇバーカ!なぁに調子乗ったこと言ってんだタコ!能無し種無しの●●●野郎がかっこつけようとしてんじゃねぇよ!」
「…調子乗ってるのはお前だろ」
俺の煽りに、表情をスッと消して銃口を俺の額に押し当ててきた男。
そんな俺を見て、ひっ、と恐怖したような声をだした少女。
本来なら、少女を安心させてやりたいが、そんな余裕はないので…
「残念、俺のこれは平常運転だ」
ドパンッ!
銃を撃たれる前に、男の腹部に銃を押し付け撃った。
「っがぁ!?なっ、何でガキが…?」
「うるせ、人の事見下してんじゃねぇよ」
ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!
腹部を抑え、俺を落とした男の額に銃を当て、三発撃つ。
動かなくなったかどうかを確認するためにさらに数発。
弾を入れ替えて、さらに数発撃つ。
そこまでやって満足して、鍵で少女の入っている牢の扉を開ける。
「…時王くん!」
泣きながら抱き着いて来ようとした少女を受け入れようと手を広げたが…耐え切れずに倒れる。
しゅっ、出血多量か…ちくせう。
「じ、時王くん!?」
「…あー、まって、ゆすらないで?余裕そうに見えて俺すっごく死にそう」
「えぇっ!?」
「…くそっ、撃たれるなんて…普段の俺なら避けれたのによぉ…」
言い訳である。さらに言うなら普段の俺、ではなく前世の俺、である。
そんな俺の言葉を真に受けたのか、私のせい…?とか言いながら再び泣き出しそうになる少女。
「…おいおい、泣くなよ…助けた甲斐がないだろ?」
冗談交じりに無理して笑う。
だが、少女の顔は晴れなかった。
寧ろ、涙が零れてきて、俺の方が泣きそうになった(目に涙が入って痛いとかそういう意味で)。
「…やべぇ、俺もう無理だわ…寝る」
「ね、寝るって…死なないでよ!ねぇ!」
「だいじょぶだいじょぶ…ちょーっと寝るだけだから…」
それだけ言うと、俺の意識は暗転した。
意識が消える前に、少女が俺に何かしてきたような気がしたが…それは一体何だったのだろうか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
雫side
眠っている(眠っているだけ…だよね?)時王くんを、ゆっくり私の膝の上から降ろし、立ち上がる。
「…お父さんとお母さんに、電話しなきゃ…」
連れて来られるときに盗られていた携帯電話を手に取り、家に電話をかける。
3コール目で、ゆったりとした声でお母さんが電話に出た。
「どうしたの雫?中々帰ってこないから心配して…」
「助けてお母さん!私誘拐されてっ、時王くんが助けてくれてっ、でも時王くんが銃で撃たれちゃって死にそうで…助けて!」
「…………と、とにかく救急車を呼んでおきなさい。私が電話しても、雫が何処にいるかわからないから。雫が今いる場所に救急車を呼ばなきゃいけないわ。それと、警察も呼びなさい。私たちも今から向かうわ」
「うん!」
電話を切り、学校で教えられた119と110に電話をかける。
しっかり外がどんなところか確認してから電話をかけた。
その時、足元に沢山人が倒れていたから、その事もちゃんと連絡しておいた。
「…待っててね時王くん、もうすぐ救急車が来るはずだから…」
もちろん返事はなかった。
ただ、息をしているのはわかったし、さっき救急箱にあるものを使って止血(お父さんに剣道と一緒に教えられているもしもの時のための技術。これがなかったら時王くんは…考えたくない)しておいたから、いくらか安心だとは思うけど…
やっぱり心配。
もう一度時王くんの顔を見る。
私の家の道場にいる光輝くんとは、また少し違った格好良さがある顔。
「…好きだよ、時王くん…助けてくれて、ありがとう」
理想の王子様が来る、なんて昔持っていた妄想だった。
だけど…彼は、私の理想みたいな人だった。
困ったら助けてくれて、優しく笑いかけてくれて、格好良くて、背も高くて…あげていたらキリがないくらい。
でも、同時に不安になる。
こんないい人、皆が放っておくわけ…ない。
時王が皆に認められるくらいすごい人だっていうのはわかるけど…他の人には盗られたくない…
渡すわけには行かない。
だって、時王くんは…一生私の王子様だから。
結局この後やってきた救急車に乗せられて時王くんが連れていかれて、私は警察の人に事情聴取された。
私は、時王くんが困らないように、私を連れ去っていった人たちがいきなり喧嘩を始めて、殺し合い始めたって言っておいた。
時王くんって、こうやって誤魔化しそうだと思ったし。
因みに、時王くんもそうやって答えて誤魔化したらしい。
ふふ、やっぱり時王くんをわかっているのは私だ。
今も昔もこれから先も、私。
私だけで…十分。
そんな私は今小学六年生。時王くんは隣の町に引っ越しちゃったけど…私の記憶の中には、時王くんがしっかりと色鮮やかに残っている。
時王くんの言葉は一言一句覚えている。
時王くんの服も、引っ越しするって聞いて、少しだけもらっちゃった。
時王くんのお父さんとお母さんに頼んだら、古着をいっぱいもらえっちゃった。
「はぁ…はぁ…時王くん…好きぃ♡」
一心不乱に下半身をまさぐりながら、時王くんの服の匂いを嗅ぐ。
感じるようになってから、毎日シている。
時王くんに、いつかシてもらえるのを期待しながら。
行為を終えると、ティッシュで汚れたところを吹き、服を着直して、時王くんの写真の方を見る。
部屋には、可愛いぬいぐるみと、時王くんの服、そして時王くんの写真がいたるところにある。
その写真の一枚を手に取り、ベッドに寝転がる。
写真をじっとみながら、にへら、と表情を崩す。
「…格好いいなぁ時王くん…早く会いたい」
もう家庭設計も出来ている。
子供は…時王くんが好きなだけ。
私は専業主婦で、いつも甲斐甲斐しく仕事から帰ってくる時王くんを迎えて、そして…
「はっ、いけないいけない…このままじゃもう一回シちゃうところだったわ…」
伸ばすな、と言われていた髪も、必死に頼み込んだら伸ばしていいと言われた。
今は頑張ってポニーテールを目指している。
前に、時王くんがポニーテールが好きって言っていたから。
だから、時王くんの理想の女目指して、髪を伸ばす。
家事とかもできるようになったら、時王くんの家を特定して、会いに行こう。
…あ、もう特定してた。
忘れてたわ…ついこの間時王くんの部屋に監視カメラ仕掛けてきたばっかりなのに。
後でしっかり映像を確認しなくちゃ。
この後も、映像の過激さに自然と手が下の方に伸びてしまい、ティッシュ箱を二つも消費してしまったのは言うまでもあるまい。
今回の作者の感想。
結局、時王も雫もサイコパスやなって。お似合いなんやなって。
作者的に、雫が一番好きなキャラなので、一番壊れた感じにしました。
ティッシュ箱2つ…一晩中シ続けたんでしょう。出がいいんですよ。きっとね。
あ、何がとか言いませんから。ナニがとか。