ありふれない時の王者と錬成の魔王は世界最強   作:イニシエヲタクモドキ

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遅れました(気軽な挨拶)
前回みたいな前置きはしないので、どうぞ。
今回の内容については、後書きで。


事件/恋する宿娘

時王side

昨日はすごかった(遠い目)

俺の両隣ですやすやと眠っている二人を見て、辟易する。

別に好かれることは悪いこととは思わない。

複数人からの好意だろうと、難なく受け止めてやろうとすら思っていた。

だが現状はどうだろうか。

相手の気持ちを碌にわかってやることが出来ず、挙句俺の事を好いてくれている二人を無駄に争わせてすらいる。

昨日なんて、俺の取り合いをしながら事を致したのだ。

シアは結局氷漬けにされて何もしてこなかった…これなかった?のだが。

「おーい時王。入るぞ」

「ハジメか。いいぞ」

ユエとシアに服を着せ(時間操作で触れずに服を着させた。自分で着せたりしたら、もっと時間かかっちゃうからな)ハジメを部屋に入れる。

ハジメは部屋に入った瞬間に眉を顰め、ゴミ箱に入っているものを見て何かに気づいたかのような顔をした後、呆れが混じった表情でこちらを見てきた。

「…まさか二人相手にしたのか?」

「馬鹿か。ユエとしかしてねぇ。シアは凍らされてたからな」

「…昨日感じたあの魔力、やっぱりこいつ等だったのか…」

「ま、まぁ他の宿泊客は気づいてなかったみたいだし…」

「こっちの事も考えてくれよ…結局義手に追加ギミック二つしか入んなかっただろうが」

「だからそんなごっつくなったのか…バランス大丈夫なのか?」

「問題ないな。むしろ前までの奴だと右腕の方が重くて傾いていたくらいだった」

「…軽量化重視だったもんな…」

ハジメの義手を最初に作った時の事を思い出す。

あの時は、戦闘に支障をきたさないように、軽いものを作ろうと必死だった。

なんだかんだ言って作ることに成功したのだが、どうしてもハジメは軽さに違和感を感じていたらしい。

「でも今でバランスいいんだったら、これ以上弄ったら…」

「大丈夫だって。その辺もちゃんと考えてある…それより、言わなきゃいけないことがあってな」

「?」

ハジメが態々俺の部屋にまで足を運んで言わないといけないくらい深刻な事ってなんだ?

兵器を弄り過ぎて材料が無くなったから、別の世界線から素材を集めてこいって事か?

それくらい念話で十分だと思うが…

「この宿、あと数日泊まりたいんだが…」

「…?兵器の改造に時間がかかりそうなのか?それなら時間を停めときゃ…」

「いやそうじゃなくてだな…なんつーか…もう少しここに泊まりてぇんだ。駄目か?」

「別にいいぞ?俺の方がお前によく我が儘きいてもらってるからな」

「…ありがとよ。早速延長伝えてくるわ」

「それくらい俺が…ってもう行っちまった。一体なんだって言うn」

「あれは…」

「どう考えても…」

「「恋(ですねぇ)」」

「起きてたのかお前ら」

俺の言葉を遮って、二人で息ピッタリに考えを伝えてきたユエとシア。

こいつ等やっぱり仲いいよなぁ…俺がいるからあんなに殺伐としてるのかなぁ…申し訳ないなぁ…

「あの顔は恋をしてる…のに気づいていない顔」

「えぇ。きっと初恋ですね。今のところ気になるヤツ、程度の認識なんでしょうが…甘いですね。そのままなら、相手によっては他人にとられちゃいます」

「…アイツが恋、ねぇ…」

復讐心と殺意(あとはロマン)で出来ているような人間(?)になってしまった親友の恋路は、是が非でも応援したい…だが、出歯亀は駄目だろう。

ふーむ…相手がわからない以上、俺ができることなんてほとんどないし…

「適当に用事作って、ハジメとハジメの初恋相手だけの環境を作るとするか」

「それが一番。もしかしたら相手からも気になられている…かも?」

「性格がかなりあれですけど、ジオウさんと並んでいなかったらハジメさんって普通にイケメンですからね。…あ、私はジオウさん一筋ですよ?」

「別に時王は貴方の想いなんていらない…」

「あ”ぁ”?何言ってんですかぁ?」

「何言ってる、はこっちのセリフ…」

「落ち着けお前ら。取り敢えずハジメの様子見に行くぞ」

「「ん/はーい」」

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ハジメside

時王から了承を得て、一階のカウンターまで来た。

俺がついた時はまだソーナは居なかった。

…いや待て、何で俺はソーナ目当てみたいなことを考えたんだ?

別に宿の延長を伝える相手がソーナじゃないとダメってわけでもねぇのに…

モヤモヤとした感情を抱えながら、手に持っている硬貨を握りしめる。

少し待つと、カウンターの奥から駆け足で誰かが近寄ってくる音が聞こえた。

「すいませーん!少し準備に手間取っちゃって…って、昨日の」

「約束通り、宿の延長を伝えにな…」

「じゃあ、昨日みたいな珍しいものも…?」

「あぁ、もちろん。作ってるところも見せてやるよ」

「やったぁ!!」

俺の言葉に、嬉しそうに飛び上がったソーナ。

現代兵器が好きな女子…ミリタリー系か。

いつかこいつ、CQCとか使いだしそうだな。

昨日なんて木箱に隠れて行動してたくらいだし。

…あ、スネー●知らねぇのか。

「取り敢えず延長は一日だけでいい」

「あ、わかりました。料金は宿を出る時でいいですよ」

そういうとソーナは、カウンターの上に記録用紙のような物を置き、羽ペンを走らせ始めた。

鼻歌を歌いながら字を書いているソーナは、窓から差し込んできている朝日も相まってとても綺麗に…

今何考えてたんだ俺!?俺らしくなさすぎないか!?

昨日少し意識してしまったのがまだ影響しているのか、変なことを考えてしまっている。

このままでは戦闘にも支障をきたすかも知れないな…しょうがない。兵器開発の前に、久しぶりに復讐心を研ぎ澄ましておくか。

「終わりました!早速朝食にしますか?」

笑顔で俺に質問してきたソーナに、ありがたく朝食を受け取る旨を伝えて飯を食うスペースに移動する。

朝食が少し時間はかかるができたての物が出せると伝えられたので、少し待つことにした。

やっぱり出来たてが一番。

飯を待っている間に、俺の不調…ていうか異常について考える。

…やっぱりおかしいよなぁ…話の合う奴だからって、態々あんなに気にかけることなんてねぇのにな…

それに、さっきまでもすっごく変な事考えてたし…何で俺はアイツを見て綺麗だ、って思ったんだ?

もうそんな感性は残ってねぇはずなのに…ソーナの何が俺の何に引っ掛かってるんだ…?

はっきり言えばまだ初対面と言っても過言ではないレベル。

それなのに、何かあれば時王以外は切り捨てる気満々の俺が、ソーナの心配をしたり、あろうことかソーナの悲しむ顔を見て自分の予定を変更させるまでしたのだ。

まるでソーナに何か特別な感情を抱いているような…

「おーいハジメ?寝てんのか?」

「ぅおっ!?時王!?」

「おう、俺だ。それでどうしたんだ?目を閉じながら呻き続けやがって」

「……実は……いや、なんでもねぇ」

明るく挨拶してきた時王に、一瞬自分の不思議な感情について話すべきか否か迷ったが、話さないことにした。

どうせ時王に話したところでお前がやりたいようにやれって言って終わりだろうから。

アイツのそういうところは普段ならありがたいが、こうして第三者の意見を求めている時には非常に困るのだ。

「……ま、取り敢えず飯にしようぜ?腹が減ってはなんとやら。今日は事実上休日だからな。この町をウロチョロしてみるよ」

「そうか。なんか美味そうなもので持ち帰りが出来るようなやつがあったら土産にしてくれねぇか?」

「わかってるって。お前は装備の調整とかで忙しいんだろ?」

「まぁ、な」

話を深堀することなく話題を変えてくれた時王に感謝しつつ、土産を頼む。

王宮では高級料理しか食べれなかったのだ。せっかくなら庶民的な飯も食いたい。

もし出店的なものがあれば頼む、という意味で言ったのだが…恐らく時王は、普通の飯屋で注文したものを亜空間に仕舞って持ってくるんだろうなぁ…

時王はそういうことを平然とするような奴だからな。日本にいた時だって…

「おまたせしましたー!宿屋の気まぐれモーニングセット、一人前でーす!…あ、おはようございます。追加で三人前…でしょうか?」

「あぁ、ハジメと…コイツと同じものを頼むよ…いいよな?」

「ん。それでいい」

「うわぁ…!おいしそうですね!」

「かしこまりました!」

食事を持ってきたソーナに、時王が注文する。

ユエは感情の起伏が無い瞳で時王の方を凝視しつつ言葉を発し、シアは目を輝かせながら俺の飯を見つめていた。

出来たて、という言葉が放つ魔力は、どうやら日本もトータスも関係ないらしい。

まぁこいつ等がこれが出来たてだってことを知ってるわけがないのだが。

見た目でわかるか?

そんなことを考えながら、時王に断っておいてから先に飯を食う。

うん、おいしい。

やはり値が張る宿屋の飯はおいしいな。これが後三回は食べられると思うと心が躍る。

食べ終わると、俺は素早く作業を終えるために、時王たちが食べている最中だったが席を立ち、部屋に戻ることにした。

去り際に見た時王達が、なぜか目を輝かせながらサムズアップしていたのだが…どういう意味だったんだろうか。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ハジメside

「んで、これが義手のギミック…そうだな、無難にサバイバルと呼んでおこう」

「さばいばる?」

「そう。このギミックは、もし仮に無人島に何も持たずにつれていかれたとしても生き抜けるような物で出来ている。例えばろ過機能…飲めないくらい汚い水を、綺麗にする機能とかな」

「でも、義手のギミックとしてつけるなら…取り出したりするのに時間がかかるんじゃ」

「その辺も問題ない。魔力を流せばこいつは思い通りに動く」

「魔力を流す…?そんなことが実際にできるんですか?」

「そりゃ魔力の直接そうs…」

ソーナに義手のギミックを見せているところで、使いづらくないかみたいなことを聞かれたので、本能の赴くままに説明してやろうと思ったら、危うく自分の秘密をばらしてしまうところだった。

いや、ほとんどバラしていた。

「そ、それよりも…この銃、コイツは俺じゃなくて時王の装備として頼まれてて作ったものなんだが…この黒い方がシックサル。白い方がミトスだ」

「?どういう意味なんですか?」

「シックサルが運命で、ミトスが神話って意味…だったはずだ」

あまり深くは覚えていない。ドイツ語は時王と一緒に中二病していた時にネットで調べただけだからな…

まぁドイツ語を知ってるやつなんてこの世界にいるわけじゃねぇし、人の目を気にする必要もないだろ。

意味を聞いて感心しているソーナから目を離し、違う兵器を開発し始める。

今作っている物は時王のではなく、俺の物で、盾を作ろうと思っている。

ヒュドラとの戦いの時から、防御面を考慮した装備が必要だと考えていたのだが…如何せん攻撃力の方ばかりに目を向け、自分が受けるダメージの方を意識していなかったので、そう言った防御系の兵器がなかったのだ。

サイズはどうしようか、最初から大きいものだと、宝物庫に入れておく必要があるし…宝物庫から取り出すのにはタイムラグがあるからな…攻撃速度が速い敵がいたら面倒だ。

やはり小型化、軽量化は必須…?

いや、あまりに小さいと、範囲攻撃を受け止めきれない…なら、状況に応じて展開するタイプのものを作ろう。

防御面を次第に増やしていき、最終的には球状に変形…いい感じだ。

ついでに、球状の時は魔力を通すことで銃口が幾つか出てくるように設計しよう。防御しながら攻撃…何というか、そそるものがある。

「ソーナ!」

「はーい!…すいません、お母さんに呼ばれたんで…」

「あぁ、勝手に進めるがいいか?」

「はい、出来上がったものを見るだけでも満足ですから!」

そういうや否や部屋を出ていったソーナ。

少しばかり表情が名残惜し気だったな…よし。この装備は後で作り始めよう。

今は時王の装備の調整に時間を割くとしよう。

まずはシックサルの方。

こっちのギミックを何度か使ってみて、不具合が無いかを確認、不具合を発見次第すぐに調整…だな。

シックサルは、ドンナーやシュラークと同じ形状にしているが…弾丸装填方法が違う。

弾を撃ち終えた状態でトリガーを引くと、シリンダー部分自動で移動し、空薬莢を排出する。

この時ただトリガーを引いただけでは空薬莢を排出するだけだが、魔力を通しながらトリガーを引けば、宝物庫に自動接続し、弾丸が直接シリンダーに送られる。

シリンダーが元の場所に戻った時には、生成魔法によってシリンダーに付与されている俺の錬成が、シリンダーと銃身を固定させる…耐久も使いやすさもドンナーと段違いだ。

ミトスの方も同じ作りにしてある。色の違いは使用した鉱石の違い。魔力伝導率がこちらの方が上だ。

因みに、シックサルの方が耐久値と火力(サイズが一回り大きいため、炸薬量が増えている)が高い。ただ、魔力伝導率が劣るから…一番の理想的な動きは、ミトスで先制、敵を威嚇し、行動を制限したところで本命のシックサルによる攻撃…なのだが、この戦法は迷宮の最下層付近じゃなきゃ使わないだろうな。

ミトスの方が炸薬量が少ないとはいえ、地上の魔物相手なら一撃必殺…態々策を練るまでもない。

最悪時王の場合は素手で殴った方が威力もあるのだ。もしそのまま殴ってもだめなら、オーマジオウになるだろうし。

ただまぁ、かなり自慢の出来だ。ドンナーにもこの装填方式を採用したいくらいだが…せっかく練習に練習を重ねてできるようになった高速装填、あまり使うことなくお役御免はちょっとあれだろう。

それに、俺が今こうして日の光を浴びて居られているのも、ドンナーの力あってこそ。思い入れが半端ではないのだ。

よく日本にも使いにくい旧式を重んじる人が良くいたが、その気持ちがわかる気がする。

…というより下が騒がしいな。迷惑な客でも来たのか?

迷宮で復讐を誓った時を思い出し、少しばかり殺気が強まっていた俺は、感傷に浸っているところを邪魔してきた(一方的にそう思った)一階の迷惑客を、少しばかり威圧しておこうと思ったのだ。

何があっても大丈夫、という確固たる自信を持ちながら一階に向かう。

するとそこでは、数人の男たちがソーナやソーナの両親、そして一般の利用客に刃を向け、金を奪い取ろうとしていた。

「…何だお前?」

「それはこっちのセリフなんだが…何してんだ?」

緊迫した雰囲気をあえて無視して問いかける。

すると、最初に俺に声をかけてきた肌が黒い(日焼けだろう)男が舌打ちをしてから黒いプレートを見せつけてきた。

冒険者か?

「随分余裕そうだなぁ!これを見てその態度を貫けるか?俺達は黒の冒険者だぞ!!」

「…それがどうした」

別に冒険者としての実力があろうがあるまいが、奈落を這い上がってきた俺達と比べ物にはならないだろう。

事実俺が少し威圧をにじませただけで冷や汗を流しながら全員後ずさっていた。

「…な、舐めやがって…殺してやる!」

「…それは敵ってことで構わねぇな?」

一応確認をとる。

ここが宿屋の中じゃなく森の中だとかならば敵かどうか確認する前に威嚇代わりに数人殺すが、ここは市街地。もしここでなにも聞かずに攻撃して、本当はアイツらに殺意はなかったとかだったとしたら面倒くさいことになる。

警備兵達の戦闘力はそれほどでもないだろうが、数が多い。大人数を敵に回すのはまだ早いのだ。

ましてや時王がいないこの状況で俺が事を荒立てたりなんかして時王に被害をもたらしたりなんかしたら大変だ。殺されちまう。

…ユエとシアに。

「あ”ぁ”!?ふざけやがって…所詮雑魚なのによぉ!」

ドパンッ!!

声を荒げてこちらに近づいてきたので、言い終わると同時に発砲した。

今回撃ったのはミトス。時王に渡す前の威力確認だ。

まぁ人体なんて脆いものじゃ確認も何もないんだが。

取り敢えず、人一人は簡単に殺せた。

着弾の衝撃で弾けた冒険者の脳みそが周囲にまき散らされた。

弾丸は冒険者の脳天を撃ち抜くだけでは飽き足らず、店内の壁をぶち破って外に出ていった。

なるほど。壁を貫通するレベルの威力はある、か。

「…な、なにしやがt」

ドパンッ!!

一般客の首元に刃を突きつけていた男が声を荒げようとしたので、言い切る前に発砲。

今度はシックサルである。

ミトスと違って威力が高かったためか、頭だけではなく鎖骨のあたりまで吹き飛ばした。

崩れ落ちてビクビク痙攣している死体を踏みつけ、威圧する。

「…次にこいつ等と一緒になりたいやつは誰だ?」

「黒を馬鹿にすんじゃねぇぞ!“雷撃”!」

俺に向かって魔法を向けてきた冒険者の方を見ないまま魔法の核を撃ち抜く。

シックサルから放たれた弾丸はドンナーやシュラークと違い、魔法の核を撃ち抜いても止まることなく冒険者の頭を吹き飛ばした。

「…やっぱ炸薬量を上げただけでも違うな。魔力伝導率もミトスほどではないがドンナーとかシュラークとかよりは高いし」

手に握った二丁の銃を見ながら、時王に胸を張って渡せるものが出来たと笑顔になる。

「…大丈夫だったか?」

宝物庫にシックサルもミトスも収納し、床に座り込んでしまっていたソーナの手を取り立ち上がらせ、一応安否を確認する。

…やっぱどうかしてんな俺。他の奴なら時王以外は絶対心配しねぇのに。

「…ぁっ、はい…」

「…人が殺されることろは初めて見たか?」

「………はい…」

そりゃそうか、と思いながら他の客の方を見る。

俺のやったことがただの虐殺ではなく、襲われている(と思われた)一般人たちを救った正当な行為だったことを主張する為である。

ひとしきり大丈夫そうなことを確認し、この宿の店長…ソーナの父に質問する。

「…さっきの奴等、何だったんだ?」

「わ、わかっていなかったのに攻撃したのか…彼らは最近新聞に取り上げられている元冒険者の強盗団でね…この宿みたいに、少しばかり盛況していて、警備兵がいないような店を狙って金品を強奪していく…そんな連中だよ。彼らはその中の一団…黒猫のメンバーだったようだね。装備に猫の目が描かれている」

「…なんか面倒くさくなりそうな気がしてならねぇんだが…」

「?あぁ、他のメンバーに狙われるんじゃないかって?大丈夫さ。彼らは一応一団になっているだけで、元々一緒に冒険者グループとして活動していた人意外とは基本的に会話が出来ない…コミュニケーション能力の低さが原因で、誰かがやられたところで関係ないってスタンスをとっているからね」

…コミュ障なのか、冒険者って。

まぁ俺も人の事を言えた義理ではないな。時王と初めて会った時…初めて会話した時、俺はどもり過ぎてて…“それ”が見えたせいで終わってしまった黄色いレインコートのジョージィの兄の日本語吹き替え版みたいな喋り方になってたからな…時王も「結局、あの時なんて言ってたんだ?」って言ってきたし…

いや今は関係ないな。うん。

「動くなぁ!」

「っ…離してください…!」

「…まだいたのか」

ソーナを羽交い絞めにして、剣でいつでも首を斬り落とせるようにしている男を見て、宝物庫からシックサルとミトスを取り出そうとしたが…

「動くなって言ってるだろ…!殺されてもいいのか!?あぁ!?」

「…チッ」

舌打ちをして、宝物庫から取り出すのをやめる。

これが他の客なら何のためらいもなく撃てるってのに…どうしてアイツの時は躊躇しちまうんだ…?

「てめぇか?アイツらを殺したのは」

「それがどうした」

「…一体どんな手を使った?アイツらはそんな簡単にやられるような奴等じゃなかったはずだが」

「さぁな、俺が何をしたのか知りたいってんだったら…自分の体ででも試してみればいいじゃねぇか」

「チッ…ふざけやがって…どんな技を使ったか知らねぇが、人質がいる状態じゃ何もできねぇだろ?」

「…」

「はっ…おい!そこのお前!眼帯野郎の隣にいるお前だ!店主だろ?さっさと金目の物を持ってこい!」

「も、持ってくればソーナを…その子を解放していただけるんですか…?」

「うるせぇ!さっさともってこい!」

「は、はい!」

「その必要はない」

「し、しかし…」

「何ふざけたこと言ってんだ眼帯野郎…こいつがどうなっても…」

「どうなることもねぇよ」

ドパンッ!!ドパンッ!!

男が顔を真っ赤にしながらソーナの首筋に傷をつけたところで、右大腿部のホルスターにあるドンナーを抜き、一瞬のすきもなく発砲。

一発目で顔を消し飛ばせ、崩れ落ちていく体にダメ押すようにもう一発。

ビチャッと何かが潰れたような音をたてて地面に倒れた瞬間、硬直していたソーナが気絶して倒れこんだ。

崩れ落ちる前に賭けより、抱き留める。

…いや待て、なんで抱き留めた!?

咄嗟の行動に、腕の中のソーナを優しく抱き留めながら内心狂乱する。

咄嗟に抱き留めるくらい、俺の中でソーナという存在は大きくなっているってことか?

しかし何故?コイツに感じたものと言えば親近感くらい…いやいや、変心した今、親近感を得ることすらおかしいことなのでは?

混乱している俺を知ってか知らずか、ソーナの父親が俺の元まで来て、ソーナの顔を覗き込んだ。

「…け、怪我はしてないな…」

「首元は軽く斬りつけられた程度みたいだしな…よかったじゃねぇか、一生モノの傷が無くて」

「…重ね重ね、ありがとうございました」

「いや、いいんだ…とにかく、この子をベッドにでも連れて行ってやれ…このまま床で寝かせるつもりか?」

「そ、そうでしたね…」

俺からソーナを受け取り、急いでカウンターの奥に連れて行った。

仮眠室でもあるのだろうか。

「…間に合ってよかった、か?でもな…」

「かっこよかったじゃねぇかハジメ」

「うっひゃぁ!?…じ、時王か…驚かすんじゃねぇよ…」

「いやー、男でしたねぇ」

「ん…ハジメ、男前」

「でもまぁジオウさんの方が男前ですがね!」

「…駄肉ウサギのくせに、私よりも先に時王のポイントを稼ごうなんて…いい度胸」

「ねぇ人が知らないところで勝手にポイント制度始めないでくれる?」

…いきなり話しかけられたかと思えば、隣の二人がいきなり喧嘩を始めた。

なんなんだこいつ等。

「…まぁ、頑張れ」

「いやハジメ見てないで助けようぜ」

「…痴話喧嘩は苦手分野だ」

「そう言わず何とかぁ!!」

「…時王」

「…どうしたユエ」

「私の事、好き?」

「いやもちろんすk」

「ジオウさん、今なんて言おうとしてました?」

「………」

「今、態々中断させる必要あった?また氷漬けにされたい?」

「はっ、同じ手で勝てるとでも?知ってますか?兎闘士(トジント)に同じ技は二度通用しないんですよ?」

「いい度胸、魔法も弾幕もパワーだって…教えてあげる」

「「表出ろ」」

「やめて!?そんなキャラをかなぐり捨ててまで喧嘩しないで!?」

「時王、強く生きろよ」

「ハジメ…!?」

親友の悲痛な声を背に受け、無言で上の階へ向かった。

後ろから時王の心が折れる音が聞こえたが、それは無かったことにしておこう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ソーナside

「ん、んぅ…」

「ソーナ!」

「…お父さん?お母さんも…どうして…?」

「覚えてないのか?気絶してたんだよ」

「気絶…そう言えば、私…うっ」

「「ソーナ!?」」

気絶する前に見た光景を思い出し、吐き気を催した。

私のすぐ隣で辺りに散らばった肉塊、脳漿…崩れ落ちた体からは悪臭を放つ液体が流れ出て、死体はびくびくと痙攣していた。

「…はぁ、はぁ…大丈夫。ちょっと思い出しちゃって…」

「…ソーナには少し刺激が強かったかもね…他に何か変なところはある?」

「………んーん、大丈夫」

心配そうに尋ねてきたお母さんに、弱々しくが笑顔で返す。

大丈夫と言ったが、お父さんもお母さんも表情は明るくならなかった。

寧ろ無理しているんじゃないかという風に、余計に暗い表情になった。

「大丈夫、本当に大丈夫だから!ちょっと刺激的過ぎただけ!だから安心して!ね?」

「……ソーナがそういうなら、そういう事にしておきましょうか」

溜息をつきながら立ち上がったお母さん。

「ソーナはもう少し休んでおきなさい。仕事の手伝いも、しばらく休んでいいわ」

「…ありがと」

「いいの。さ、行くわよ」

「いや、ソーナがまだ心p」

「い、く、わ、よ」

「…はい」

お母さんに首元を掴まれて引きずられていったお父さん。

静かに扉が閉められ、部屋には私一人だけになった。

「…あの時…気絶しかけてる時…私、誰かに受け止められたような…」

余り思い出したくないが、あの時の光景を思い出す。

あの時は…ハジメさんがドンナーを取り出して…引き金を引いたら一瞬で私を掴んでた男の人が死んで…それを見て崩れ落ちた私を…優しく抱き留めて…

「…あの時の温かい、包まれるような優しい感じ…ハジメさんだったんだぁ…///」

頬が熱くなるのを感じる。

それもそうだろう。命の危機を颯爽と救われ、挙句崩れ落ちそうなところを抱きかかえられ、その上あのビジュアル…私の理想そのものだった。

あんな風に助けられたら、意識せざるを得ない…

「あぅぅ…カウンターでどんな顔すればいいの…?」

枕に顔をうずめて足をジタバタさせる。

脳裏に焼き付いたハジメさんの顔が、私の心を乱し続ける。

「ぅぅぅぅ…///最初に見た時からかっこいい人だとは思ってたけどぉ…まさかあんな…あんな私の夢見てた助け方するなんてぇ…///ず、ずるい…」

…今日は、しばらく寝れなさそうだ。

悶々としている心を鎮めようと音をあまりたてないように暴れながら、私はなんとなくそう思うのだった。




今回の内容の一番頭を悩ませたところは、やはりハジメがソーナを人質にしていた男を射殺するシーンですね。
原作通り「え、いいのか?助かるわ」ってさせるのは、この作品のかなり変貌しているハジメに合ってないと思ったのは言わずもがな。
しかし、いいのか?なしに銃を撃つだけではソーナがハジメに惚れるようなことが無くなってしまう…
そういう事で、なぜかハジメがソーナを気にしているようなことを何度か書いておいて、撃つときにすぐに撃たず躊躇してもあまり違和感が無いようにしました。
あの違和感はこれだったんですね~(目を逸らす)

現在のハジメからソーナへの好感度:なぜか異常に気にしてしまう奴。頭からアイツが離れない。
現在のソーナからハジメへの好感度:理想を体現している、初恋の人。頭からあの人を離れさせたくない。
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