ありふれない時の王者と錬成の魔王は世界最強 作:イニシエヲタクモドキ
結構オリジナル要素が増えてきているので、わからないことがあればいくらでも質問ください。
俺とハジメが無能の烙印を押されてから早二週間。
態々檜山と不愉快な仲間たちによる俺とハジメのいじめなんて描写するつもりはないのでカット。
ボロボロになった体を引きずりながら二人で部屋に戻り、紅茶モドキを啜ってハジメと共にお互いの不幸を嘆き合う。
「今日も檜山達がうざかったな」
「全くだよ……何で僕がこんな目に……」
白崎とかがお前の事を好きだからじゃないかな。
俺も白崎とのイベントを行ってしまったことはあるが、どうせハジメはハジメの方でイベント回収してるだろうから、白崎の好意は俺じゃ無くてハジメに向いているはずだ。
「……そういやハジメお前さ。最近面白い本を見つけたとか言ってたけど、どんな本よ?」
「ん?あぁ、これこれ。読んでみなよ」
そう言ってハジメが取り出したのは、『リリアーナの秘密ダイアリー』という本だった。
「……これが図書館に?」
「うん。なんか図書館の机に置いてあったんだ」
ハジメと俺は、戦力外通告を受けているため、訓練だけではみんなの足を引っ張るということで、せめて知識だけでもと図書館に入り浸っている。
俺はそれ以外にも夜中に体を動かすなどしているから、ハジメよりステータスの上昇は高い。
言い忘れていたが、リリアーナとはこの国の王女である。
本の中身を見てみると、日ごろの愚痴とかいろいろ書いてあった。
中々国の重鎮に対しての罵詈雑言を書いていやがる。
女って怖い。
「……絶対王女様の忘れ物だろ。早く帰して来いよ」
「やだよ怖いもん。こんな恐ろしい人だとは思ってなかった」
ハジメが肩を震わせながら返却を拒否する。
確かに、みんなの前で猫被ってる状態と、この日記の中に書いてある内容がかなりギャップがでかく笑えない。
ハジメの恐怖心もわかる気がする。
「ま、この本については追々考えていけばいいさ。今日はもう寝な。明日は迷宮に行くらしいしな」
「そうだね……と、誰か来たみたいだ」
明日はオルクス大迷宮に行く日。
ハジメが魔王になるための一歩を踏み出す日だ。
それで早く寝るように勧めたのだが、いきなり部屋の扉がノックされた。
「俺が開けてくる」
どうせ白崎、と思いながら扉を開けると、案の定白崎がいた。
「……えーっと、何の用?」
「あのね。常盤くんと南雲くんに話があるの」
「あー、取り敢えずあがりな。紅茶……モドキ淹れるから」
「ありがとう」
原作でも明かされていた通りの煽情的な衣装に身を包んだ白崎が、女子特有の甘い香りを漂わせながら部屋に入ってくる。
いきなりの白崎降臨に、流石のハジメもタジタジだ。
……ていうかハジメはわかるけど、俺にも話があるだって?
ベッドに腰掛けながら話を伺うと、少し逡巡した後、白崎は口を開いた。
「常盤くん、南雲くん。……明日の迷宮攻略、二人には行かないで欲しいの」
「……それは僕たちが弱いから?」
白崎の発言に、最初は呆然としていたものの、すぐにその表情を自虐的なものに変えて尋ねるハジメ。
「うぅん。違うの。……その、あのね?夢を見たの」
「夢?」
「そう。二人が背中を向けてて、いくら声をかけても振り返ってくれなくて、それで……それで……」
「それで?」
「……消えてしまうの……」
そこまで聞くと、ハジメは俺の方を困った顔をしながら見てきた。
どう反応すればいいのか分からない、といった顔だ。
まぁここで何も言わないって選択肢は無いから、ハジメの代わりに白崎が安心するような事を言う。
「白崎、夢は夢だ」
「でも……!」
「そんなに不安なら……守ってくれよ。俺達のこと」
「守……る……?」
「あぁ。情けないがお前の方が俺達より全然強い。それに、お前の天職は治癒師だろ?なら俺たちが死にそうになるようなことがあっても、すぐに治してくれればいいだろ」
原作のセリフなんて完全に覚えてるわけじゃないから、それっぽいことを言って誤魔化したが、何とかなっている気がする。
俺の言葉を聞いて、少しの間呆然としていた白崎だったが、すぐに笑顔になってこんな事を言い出した。
「……なんか、常盤くんらしくないような気がするね」
「俺らしくない……?」
白崎の言葉の意味がいまいち理解できなかった俺は、隣にいるハジメに目線でどういう意味か問いかける。
だがハジメもわかっていないらしい。目があった瞬間に首を横に振られた。
「……覚えてない?私たち一回あってるんだよ?」
「いや、忘れてはいないが……」
寧ろ忘れる方がおかしい。
何故か知らないが俺の方にハジメが白崎の好感度を(無意識に)稼ぐイベントが来た、あの日である。
……回想には入らないからな?
「あの時の常盤くんって、俺一人で何でもできるって感じのオーラがすごかったからさ。なんかさっきみたいに守ってくれとか言う人じゃ無いと思ってたんだ」
「……あー?そんな感じだったか?」
「その話、聞かせてよ!」
首をかしげる俺を押しのけ、白崎の方に身を乗り出して質問するハジメ。
何がそこまでハジメに好奇心を持たせたのか。
「えーっと……あの時はね」
そう言って語りだした白崎は、すごく嬉しそうな顔をしていた。
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香織side
「オイオイクソガキ!俺のこの服に何たこ焼きぶつけてくれてんだ、あぁあん!?」
「兄貴のこの服はビンテージ物で、もう生産されていない高価なモノなんだぞ!それをどう責任取るつもりだコラ!」
不良にすごまれて、もう泣くことすらできていない男の子と、その隣で必死に頭を下げているおばあさんがいた。
まわりの人達はただ周りで見ているだけで、特に何もしていない。
私も足が竦みそうになっちゃったけど、何とか不良達のところまで行って、おばあさんたちを庇ってあげることにしたの。
「やめてあげてください!この子だって悪気があったわけじゃないでしょう!?」
私がいきなり乱入してきたことで、最初はとても不機嫌そうにしていた不良達だったけど、私の事をよく見て、いきなりこんなことを言ってきたの。
「あぁあん!?なに言ってんだぁ!?調子乗ってんじゃ……よく見りゃ嬢ちゃん、結構可愛いじゃねぇか……そうだ、このガキとババアは許してやるからよ、嬢ちゃんは俺たちと一緒についてこいよ。別に殴ったりするわけじゃねぇぞ?」
「そうそう、気持ち良いこと教えてやるよ!」
一気に下卑た目をするようになった不良達に、情けない声を出しちゃったの。
そのまま後ずさったら、不良の一人に腕を掴まれちゃって。それで、もうだめ……って思った時に、常盤くんが来たの。
「……おい、あんた等、通行の邪魔だ警察呼ばれてぇのか」
「あぁあん!?ガキが調子乗ってんじゃねぇよ!!正義の味方気取りですかぁ!?」
「うるせ。ていうかお前らの悪行はしっかり録画してるし態々話し合う気もないからいいんだけどね」
いきなり現れた常盤くんは、言い切った瞬間に不良の顔に飛び膝蹴りを入れて思い切り地面に後頭部から叩きつけて、呆然としてた隣にいた他の不良の鳩尾に向かって思い切り殴りつけたの。
「……て、テメェ!!」
激昂して殴り掛かってきた他の不良の攻撃を全部躱して、顎を横から思い切り殴りつけて、倒れこんだところをさらに頭を踏みつけて、周りの他の不良に見せつけるようにしながら、こう言ったの。
「オラ、こいつ等みたいに惨めになりたくないなら、さっさとその女の手を離して、そこの婆さんに財布返してやれ……別に?お前らを相手にするくらいまだ全然余裕だが?」
右の拳をゆっくり握ったり開いたりした常盤くんを見て顔を青ざめさせた不良の人達は、持ってた財布をおばあさんに返して、私を離したら一目散に逃げていったの。
その後の常盤くんもすごくて、気絶してる不良の人を持ち上げると、逃げていった不良の人達の背中めがけて投げて、
「ポイ捨ては厳禁だぞ!しっかりゴミは持ち帰れ!」
って言ったの。
その後、いい仕事をしたなって顔して、すぐに立ち去っちゃって。
普通の人なら見返りとか求めるだろうし、光輝くんみたいな人だとしたらあんな荒々しい戦い方しないだろうから、私は常盤くんに興味を持ったの。
光輝くんとはまた違った強さを持った常盤くんに。
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時王side
「……って、こんな感じかな?」
「……時王そんな事あったの?」
「話すまでもなかった」
……実はあの不良達、まったく喧嘩慣れしていなかったのだ。
恐らく見た目だけ不良らしくして、自分たち強いですオーラ出していただけ。
だってかなりうたれ弱かったし。
それにあの時は、最初ハジメのイベントだから放置しておこうと思ったんだけど、白崎が不良の前に出るとか言う謎イベントまで入ってきたから、これは好感度上昇イベントじゃないなと言う事で子供を庇いつつ、白崎から嫌われるような暴力で解決する方法を選んだんだが……
まさかすべてが裏目に出るとは……
「……私にとって、常盤くんは憧れだったんだ。暴力で解決してるのに、何か違うところがあって」
ないです。
ただただあの時はフラグをたてないようにしたかっただけです。
なんでかって?奈落落ちフラグも自動建設されるからだよ。
「……でも、今日みたいに誰かに助けてくれって、守ってくれって言える、そんな当たり前の……光輝くんにはない弱さもあって……なんていうか……変な言い方になるけど、普通の人って感じ?もあって……」
まぁ人と違うところなんて、転生者であることくらいだし。
「だから、あの日私を守ってくれた、常盤くんを私が守るよ。そして、常盤くんの親友の、南雲くんも守る」
なんか知らんけど、ハジメが何かに納得したかのような顔をしておられる。
訳がわからないよ。
「ごめんね?こんな夜中に……」
「いーや?これから俺も外で鍛錬してこようかと思ってたくらいだしな。ハジメはこれから寝るつもりだったんだろうけど……」
「あー……大丈夫だよ。少し本読んでから寝るつもりだったから、全然迷惑とかじゃないから」
「……ありがとう、二人共」
柔らかい笑みを浮かべて、白崎は部屋の外に出ていこうとした。
「そうだ、白崎」
「?どうしたの常盤くん?」
「……男の部屋にそんな恰好で来るのはお勧めしない。とだけ言っておく」
「え……?あっ!?」
俺の一言に、最初はわからなかったのか呆然としていたが、すぐに頬を赤く染めて前を隠す白崎。
それすら男性を魅了すると何故わからんのか、というツッコミは無しで行こう。
「はぁ……早く帰りな」
「う、うん……」
バツが悪そうに白崎が部屋の外に出ると、ハジメが俺を睨んできた。
「……なんだよ?」
「……態々服装の事話す必要あった?」
「……檜山」
「あっ……」
その一言ですべてを察してくれたのか、あとは何も言わなくなったハジメ。
君のような勘のいいガキは好みだよ。
「……で、本当に鍛錬しに行くの?」
「まぁな。あくまで徒手空拳なんだが」
「そっか。じゃあ行ってらっしゃい」
「おう」
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「さ、実験を始めようか……なんてね」
別に実験を始めるわけではなく、俺の生前好きだった仮面ライダーのセリフが言いたくなっただけだ。
昔は王様になりたいとよく言ってたな……ソウゴくんみたいに。
体をほぐしてから軽くエアボクシングを行う。
俺は剣の心得があるわけではないので、素振りをしてもあまり意味は無い。
元々素手で戦う方が性に合っている。
まぁ魔物と戦うのだとしたら棒とかを相手の口の中にぶち込むとかそう言った戦いをするつもりだが。
「あら?常盤くん?」
「……八重樫か」
しばらく体を動かしていたら、後ろから声をかけられた。
……あ、そうか。八重樫は確か原作でも夜中に特訓していたくらいだから、迷宮前だから何もしないなんてことは無いだろうし、ここにいてもおかしくはないのか。
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雫side
明日の迷宮攻略に備えて特訓しようと外に出たら、先客がいた。
常盤くん。私の
彼は多分私が昔から一緒に居たことをわかってないだろうけど。
「……こんな夜遅くに特訓?」
「お前が言うか?」
「それもそうね」
そっけない返事、彼が私に目を合わせることもない。
それでも、私の心の中には温かい何かがたまっていくような感じがした。
「……ねぇ、組手をしない?」
「あ?」
「せっかく二人なんだし、特訓するにしても相手がいた方がいいでしょう?」
「……はぁ……俺は剣は苦手なんだよ」
「別にあなたが剣じゃないといけないなんてこと無いわよ?」
「……ま、いいか」
手に持っていたタオルで汗をぬぐうと、私の方に向き直ってきた。
上半身はなんと何も着ておらず、彼の引き締まった体が月明かりでよく見えてしまう。
惚れた男の半裸なんて刺激の強いものを見せられたせいで、顔を赤くしてしまう。
丁度私の後ろに月があるおかげで、私の顔が良く見えていないだろうことが幸いして、彼には気づかれていないようだが。
「いつかかってきてもいいぞ?」
「嫌よ、貴方はカウンターが得意でしょう?」
忘れるはずがない。私が彼を意識し始めたときの事件でも、彼が悪漢を仕留めた攻撃はカウンターだった。
私が、身代金目当てで誘拐されたときに、彼一人で助けに来てくれた時の事だ。
その時の私には、彼が白馬に乗った王子様みたいに思えた。
当の本人からすれば、なんてことのないことだったらしいけれど。
「……思えば私を女の子として扱ってくれたのは常盤くんだけだったわよね」
「ん?どうした?」
「……なんでもないわよ」
本当、いつもこれだ。いい加減に私と幼馴染であることを思い出してほしい。
まぁ、私も彼が思いだすまでは、時王じゃなくて常盤くんと呼び続けるつもりだが。
「つーか何でこいつが俺の得意技を……?ま、いいか……まったく、人の得意技を使わせてくれないとか、ステータスですら差があるって言うのによ……」
「昔からあなたの方が強いでしょう?ステータスなんて数字であなたがいきなり弱体化したなんて思うつもりはないわ」
「そうは言ってもステータスは嘘をつかn……待て、昔?」
ついうっかり言ってしまった。……彼は、思いだしてくれるだろうか……
思いだしたら、私もすべてを打ち明けよう。……この、想いも。
「……思い出した?」
「……え、いやー?うぅん?確かに似てるやつにはあったことあるけど……あっ、そういや俺名乗っただけで名前聞いてなかったな……」
……そこまで思い出したならもうひと頑張りしなさいよ!あと少しでわかるところじゃない!!
「うーん……もしかして……」
思い出して……くれた?
「いや、違うわ。アイツショートカットだったし。八重樫と顔はすっげぇ似てるけど、家庭の都合とかで髪は伸ばせないって言ってたし」
そこまで思い出しておいてそれ!?嘘でしょう!?
確かに昔まではお父さんも厳しくて、髪を伸ばすなんて言語道断とか言ってたから、それでやけになって、私は髪を伸ばしちゃダメなの……とか言っちゃったけど!!
「……もういいわ、行くわよ!」
「ちょっ、結局攻めて来るのかよ!?」
太刀筋の美しさとかはどうでもいい、とにかく今はこの馬鹿に一泡食わせt
次の瞬間、私はその場に倒れこんでいた。
「……今、何をしたの?」
「普通に攻撃を避けて背中を叩きつけただけだ。痛みが無いからわかんなかったんだろ……くそっ、これがステータスの差か……」
悔しそうにしている彼を見て、あぁ、やっぱり変わらないなぁ……と思った。
あの時、私を助けに来てくれた時も、銃弾が当たって、痛そうにするんじゃなくて、何で銃弾なんて当たったんだ……なんて言って悔しがってたから。
「常盤くん」
「あん?どうしたよ」
立ち上がって声をかけると、機嫌の悪さ(ステータス差という理不尽さに嘆いているからだろう)が目に見えてわかるくらいの顔をしながらこちらを見てきた。
それが少しだけ面白くて、少し笑いながら……
「何でもないわよ……ちゃんといつかは思い出してね?
彼が後ろで何か言っているようだったけど、聞き取れなかった。
ただ、それを聞きなおすために振り返るなんてことはできない。
……
私を照らす月明かりが優しく笑っているような気がした。
書いてて思ったこと:八重樫さんマジヒロイン。