ありふれない時の王者と錬成の魔王は世界最強 作:イニシエヲタクモドキ
まぁどうせこの後明かされる設定の予定だったんで、問題はないです。
時王side
「連れてきたぞ…」
「…何でそんなにゲッソリしてるんだ?」
「何も聞くな…」
やけに疲れ切っている俺と、悔しそうに歯噛みしているシア、そして異常にツヤツヤしているユエを見て、ハジメは何かを察したような顔をした。
そのまま何もなかったかのように、入り口らしき場所の仕掛けなどを発見したと話してきた。
「…この壁が動いた瞬間奥の魔法陣が連動して作動して、俺達が向こう側に言った瞬間無音で矢が飛んでくる、か…」
「どうする?陣を破壊しておくか?」
「そうだな。ついでに矢も回収しておこう。魔法陣が再生する仕組みになってたりしたら面倒だ」
俺の言葉に了解、と短く答えて壁に手を当てたハジメ。
次の瞬間には魔力が大量に放出された。
見ているだけでもわかるくらい魔力が分解されていた。
苦悶の表情で魔力を放出し続けていたハジメは、手ごたえを感じたのか手を壁から離し、こちらに向き直った。
「…終わったぞ」
「お疲れさん」
労いの言葉をかけながら神水を手渡す。
手に取るや否や神水を飲みほしたハジメは、口元を拭いながら俺に向かってあることを伝えてきた。
「…ここの壁…拠点のときよりも魔力分解が強かった…そういう意味でも、ここが本当の大迷宮だって可能性は高いな」
「そうか…ユエ」
「?」
「どうやら魔法が本格的に使えないらしい。だから武器を貸しておこうと思ってな」
「どんな武器?」
「うーん…軽い武器の方がいいだろ?」
「遠距離攻撃ができる武器がいい」
「…だったら…」
ユエの要望に照らし合わせてなんのライダーの力を渡すべきか考える。
あまり重たいものだと、ユエが持ち運べないし…かといって軽すぎると弱くなってしまう…
「じゃあ、これはどうだ?」
『ダブル』
「…これなに?」
「スカルマグナム…銃だな」
「銃って…ハジメのドンナーとか、時王のシックサルみたいな?」
「まぁ分類は同じだが…ドンナーとかシックサルとかと違って、こっちはモードチェンジがあったり、ガイアメモリって言う…こういうやつの力を弾丸にしたりも出来る。それに、リロードもいらないんだ」
スカルガイアメモリを取り出しながら説明する。
するとユエは不思議そうにしながら俺に質問してきた。
「ならなんでこっちを使ってないの?」
「あー…スカルマグナムじゃ火力が高すぎてな…精密射撃の練習が出来ねぇんだ。それに、ハジメに武器を作ってもらいたかったしな」
俺の説明で納得してくれたのか、深く追求することなくガンスピンを始めた。
…何でいきなりガンスピンし始めた?
「…取り敢えず行こうぜ。早く行って早く攻略してぇ」
「それもそうだな」
ハジメに返事をして、壁を押す。
すると、何の抵抗もなしに扉が開いた。
一応警戒したが、ハジメに説明されていたトラップは無かった。
「大丈夫そうだ、入っていいぞ」
俺の言葉を聞いて、三人もゆっくり入ってきた。
各々周囲を見渡し、迷宮のつくりを確認する。
「…普通の洞窟だな。見飽きた」
「ん…同感」
「私は新鮮ですけどね…空気があまりいいとは言えませんけど」
「俺達は嫌ってくらい地下にいたからな…日の光を浴びない生活ってのは、中々精神的に来るんだ」
俺とユエの言葉に答えたシアに、ハジメが補足するように答えた。
「…矢を回収しておこうと思ったが…崖になってるのか」
「あぁ…まぁ陣は破壊してあるんだ。それで十分だろ」
「…念には念を入れておきたかったが…仕方ないか。行こうぜ」
「ん」
「はい!」
すぐにその場を移動し始めた俺達。
しばらくの間は魔物と遭遇することなく探索を続けていたが…
「…ハジメ、ユエ、シア。三秒後、上から何かが来る」
「「「了解/ん/了解ですぅ!」」」
俺の予知に反応して一瞬でいた場所から退避した三人。
その二秒後、上から…タライが落ちてきた。
「…何で?」
「ば、バラエティーかよ…」
俺とハジメが呆れたような反応をしながらタライの落ちたところを見ると、タライの底に何かが書かれていた。
【痛かった?ねぇ痛かったでしょ?ぷぷぷ~、当たってやんのぉ~】
「…な、なんだこれ」
「ここの迷宮の創設者…碌な人間じゃない」
「そ、そうみたいですねぇ…」
口元をヒクつかせながら反応したユエとシア。
「…まぁ、俺の予知もあるし、トラップは大丈夫だろ」
「そうだな…で、次は何が来る?」
「………床が傾く」
「は?」
「床が後一分後に傾くな…魔力が分解されるからあまり使いたくないが…玉座でも出すか」
俺の説明がわかっていないらしいハジメを無視して玉座を召喚する。
玉座を維持させているだけでもかなり魔力が持っていかれている感じはあるが、全然余裕だ。
「…早く乗れハジメ。床が傾いた後もトラップ続きだからな」
「……あ、おう…」
よくわかっていない様子だったが、取り敢えずハジメも玉座に乗ってくれた。
ユエとシアは先に乗っていたので、ハジメが乗った瞬間に移動を開始した。
すると、そこでちょうど一分たったのか床が傾いた。
「…ほ、本当に傾きやがった…」
「な?言っただろ?玉座だしといて正解だったな…あ、変なの流れてきた」
「油…ですね。この先に何かあるのでしょうか?」
「落ちた先に虫が沢山いる、とかじゃない?」
「さっきの文章を書くような奴だからな、やりかねないだろ」
そんな会話をしながら先に進んでいると、いきなり床が無いところに出た。
夜目のおかげで底が良く見えたが、それを少しばかり後悔した。
「…ハジメ…は大丈夫か。少なくともユエとシアはあまり見ることをお勧めしない」
「…も、もう見ちゃいましたぁ…」
「これは、中々…」
「さっきの油と見事に合わさってまぁ…最悪だな」
玉座の下に広がっていた光景は、黒いサソリが床一面でギチギチと音をたてながら蠢いているものだった。
油がサソリの体にかかり、その油のついたサソリが他のサソリと体が擦り合わされることによって別のサソリまで油がつき、他のサソリをさらに油っぽくさせていたせいで…
パッと見た感じ、台所のGの大群に見えた。
「…時王、あれ」
「ん?あれって…うわ、性格悪っ」
ユエに言われて天井を見てみると、そこにはやけにキラキラした文字でこう書かれていた。
【彼らに致死性の毒はありません】
【でも麻痺はします】
【存分に可愛いこの子達との添い寝を堪能して下さい、プギャー!!】
プギャーのところがやたらデコレーションされているのが非常に腹立たしかった。
相手にしたら駄目だ、面倒くさいことになる。
その結論に至った俺は、無言で玉座を移動させた。
横穴を抜け、玉座をしまう。
そこにあるだけで魔力を食うのだ。万が一の時のために魔力は取っておきたいので、足元が平坦になっているこの場所では玉座は使わないことにした。
「…さーて、ハジメ。あの奥の部屋に入ったら天井が落ちて来るんだが…錬成できそうか?」
「…魔力分解率が高すぎる。俺と時王が入る程度の穴しかあけれねぇ」
「了解。だったら俺が天井壊した方がいいな」
右手に金色のオーラを纏わせて先に進む。
俺達の会話が聞こえていたのか、ユエもシアも俺の前も隣も歩かなかった。
「さて、ちょっと待ってろ」
三人に制止の言葉をかけ、俺一人で部屋に入る。
「落ちてきたか」
ゆっくりと迫るように落ちてきた天井相手に、拳のオーラをさらに力強くさせて迎え撃つ準備をする。
限界まで溜められたところで、ちょうど俺の眼前に天井が迫ってきていた。
この距離なら、確実に粉々にできる。
「オラァ!!」
右腕を思い切り振り上げると、一瞬鼓膜が破れたかのようにすら錯覚するレベルの爆音とともに天井が粉々になった。
それだけでは収まらず、部屋の壁すらも亀裂がはしり砕け散った。
「…やっべ」
俺が弱々しく呟いたころには、もうすでにハジメたちの姿は見えなくなっていた。
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ハジメside
「時、王…?時王!?時王!じおう!!」
時王のいた部屋が粉塵となって俺達の視界を防ぎ切ったところでユエが半狂乱になって時王のいたところめがけて走って行った。
それに続くようにシアも時王のいたところに走って行った。
別に走るまでもないだろうし、ただ粉が舞っているだけなのだから問題は無いだろう…そう思っていたが…
「…う、そ…どうして?ねぇ、なんで!?どうして!?どうして、どうして時王がいないの!?」
「ジオウさん…?一体、どこに…?どうして…?」
ユエとシアの涙ぐんだ声を聞いて、異常な事態に気づく。
ほんの少し、ほんの少しの間だけ姿が見えなくなっただけで、時王が消えたのだ。
時王が何か企んでいるのか?いやそれは無い。アイツがそんなことをするはずがないし、する理由もない。
じゃあトラップ?だとしたらアイツは未来を見て回避できるはず。
…でも、もしかしたら未来を見るだけでは回避しきれないようなトラップがあった…?
「っ、警戒態勢だ!時王が対処しきれないような何かがあったんだったら…俺達にはどうしようもない!とにかく今は何があっても大丈夫なように警戒するしかない!!」
「「でもっ!!/ですがっ!!」」
「そうやって迷ってる間に俺達まで何かにやられたらどうする!!俺達が万全の状態にならなきゃ時王を探すことも何にもできねぇだろ!!」
俺の言葉を聞いて、悔し気に唇を噛み締めつつもこちらに寄ってきた二人。
二人を魔眼で確認して、何か異常なところが無いか確認する。
この魔力分解が強い迷宮の中で魔力を使用するトラップなんて仕掛けてこないだろうが、念には念を入れるべきだと考えたからだ。
結局異常は見当たらなかった。
なら時王がやられたのは物理的なトラップ…か。
「…取り敢えず通路に戻ろう。そこはトラップが無かったはずだ」
ここの迷宮は跡形もなく現代兵器で崩壊させることを決定しつつ、俺は壁際に寄っていったのだった。
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時王side
…変な感覚だ。
下へ下へと落ちているはずなのに、なぜか上に上っているような…強いて言うならば、重力が逆転しているような感覚。
その感覚に身を任せ、そのまま下へと向かう。
…ん?
どうして俺は寝てるんだ?
「…あぁ、さっきは…」
粉塵でハジメたちと分断されたときの光景を思い出す。
あの後、砕ききれていなかったところがあったらしく、俺の後頭部に瓦礫があたり、当たりどころが悪かったのか気絶してしまったのだ。
…いや待て、何で俺は落ちている?
「…もしかしてさっきのサソリ地獄か?いやだなぁ…油でギットギトじゃねぇか」
まぁもしもの時は化け物じみたステータスに物を言わせて時間と空間を支配すればいいだけだから気にするようなことは無いか。
ある程度流れに身を任せて落下していくと、地面が見えてきた。
どうやらここは先ほどのサソリ地獄とは違うところのようだ。
しっかりと着地して周囲を見渡すと、そこには大量のゴーレムと、中心に鎮座する巨大な鎧(恐らくそれもゴーレム)があった。
「…魔力反応はあのデカブツから、か…大方アイツが母体みたいなもんなんだろうな」
《ご名答~♪見事正解した君にはぁ~…なぁ~んにもあっげませぇ~ん☆》
「…ミレディ・ライセンか」
表情は無いが、動きからニマニマしているところを想像させてきた巨大ゴーレムに、大して反応を見せることなく淡々と名前を確認する。
《おぉっ!またまた正解~!すごいねぇ~》
「…下手にキャラ作りしなくてもいいぞ?それとも、死んだ家庭教師が恋しいのか?」
《っ…ズカズカと人の心に入り込む発言をするなぁ君は》
淡々とした表情を見せておきながら内心かなり苛立っていた俺は、原作知識から絞り出した情報を使ってミレディを逆に傷つけてやろうとしたのだが、どうやら成功したらしい。
「そりゃそうだろ。どうせこれからお前と戦うんだろ?だったら怒らせて冷静さを奪っておくことは定石だと思うな」
《……そんなに死にたいなら、試練とかそんなの関係なしに…本気で行かせてもらうよ?お仲間もいないで大丈夫かなぁ~?》
「これから殺す相手を気遣うのか?とても昔に処刑人をやっていたやつとは思えないな」
《…………死ね》
低い声でミレディが呟いた瞬間、俺の頭上から重力球が落下してきた。
それだけではなく、固まっていたゴーレムが全て動き出し、こちらに投擲攻撃や自爆特攻などをしてきた。
《…さすがにこれだけやれば死んだでしょ。せいぜい自分の発言を後悔することだ…ね…?》
「それはフラグだろ」
粉塵の中立ち上がり、出現させたベルトの前で手を交差させる。
『祝福の時!!』
その声が轟いた瞬間、粉塵が全て吹き飛ばされ、床にはマグマが迸り、俺の周囲を金色のバンドのような物が回転し始めた。
《っ…この力、もしかして…》
『最高!!最善!!』
余りに強大な力に、迷宮そのものが振動し始める。
壁は崩れ有象無象のゴーレムたちは衝撃波に粉々にされていった。
『最大!!最強王!!!』
振動が収まってきたころには、俺の前身は金と黒の鎧に包まれていた。
『オーマジオウゥ!!!』
言い終わったところで、今までで一番大きい衝撃波が、もはや色すら伴って周囲を蹂躙した。
ミレディすらもその衝撃に押されていた。
『行くぞミレディ・ライセン。王を愚弄した罪、その身で贖ってもらおうか』
《…じゃあ私は、さっきまでの言葉全部…謝って、撤回してもらうよ!!》
言い終わるのと、俺の金と黒の魔弾とミレディの重力球が衝突するのはほとんど同時だった。
次回をお楽しみに!
…R18版も、頑張って書いているのでお楽しみに(小声)