ありふれない時の王者と錬成の魔王は世界最強 作:イニシエヲタクモドキ
パソコンが起動しなかったんで全く弄れませんでしたね。
これでまた投稿できると思うので、気長に待っててください。
ハジメside
指定された噴水の前で佇む。
時刻指定されていないのでいつ来るのか分からなかったから、日が昇りかけたところから待ってみた。
別に楽しみ過ぎて寝れなかったとかそういうのは無い。断じてない。
空気もひんやりしている明朝の町を歩いている人は誰一人としていなかった。
…は、早すぎたかもな…
「あ、あれ?ハジメさん?」
「そ、ソーナか…早いな」
早いのは俺もだが、それを認めるのはなんか恥ずかしかったので誤魔化した。
「……まだ、どこも店空いてませんね…」
「だな…少し、ここでのんびりしてくか」
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時王side
……おうおう。
いい雰囲気じゃないの。
なんかハジメの様子が変だなぁと思ってストーキングしてみたら…
朝からデートですか、やるねぇ…
「初々しさがいいですねぇ、あの二人」
「ん……お互い距離感がつかめていないのがなおグッド」
俺の隣でハジメとソーナを評価している二人。
…いつの間に?俺無言で部屋出ていったはずなんだけど?
「それは気にすることじゃない」
「そうですよ。細かいことを気にしてたら生きていけないですよ」
「心を読むな」
さも当然のように俺のモノローグと会話をする二人が末恐ろしい。
いや、末じゃなくて今か。
「お、見てくださいよ時王さん、二人共歩き始めましたよ」
「…ソーナがハジメの手を握ろうかどうか悩んでる」
「しっかしハジメの方は全く気付いてないな…どうする?」
「時王さんの能力でなんとかできませんかね?」
「……二人の恋が成就する世界線に切り替えれば」
「「それはダメ(ですぅ)」」
「…さいですか」
二人の熱い反対を受け、おとなしくハジメがしっかりと手を取るように念じるだけに集中する。
もし幸運値などと言うものがあれば恐らくカンストしているだろう俺だ、念じればきっと…
そして、その時は来た。
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ハジメside
頬が熱い。
心なしか魔物に初めて襲われたときよりも緊張しているような気がする。
いや、ソーナが魔物と言うわけではないのだが……なんとも、まぁ……
横目でソーナを見てみる。
視線をあちらこちらに移し、頬をうっすらと赤く染め、時折手をこちらに伸ばしては引っ込めている。
………まさか、手を取れと?
いやいやいや。そんなまさか。
しかしこれはデート、ソーナからそう言ってきたのだ。
だとしたら手を繋いでエスコート…は、まだ土地勘が無いから無理か。だが手を繋ぐくらいは…
いや駄目だ!うまく言い出せねぇ!!
「な、なぁ!!」
「ひゃっ、ひゃい!?」
…しまったぁあああああ…すっごい声裏返ったぁあああ……
ソーナもソーナで声が裏返っていたからまぁお互いに聞かなかったことになっているだろうが、やはり恥ずかしい。
ここまで心を乱されたのは初めてだろう。胸を張って言える。
…そうじゃなくて。
「あー、いや。そのー…デート、なん、だよな?」
「あ、え、は、はい……そう、です。よ?」
「……なんで疑問文なんだよ」
「あ、あははー…つい」
立ち止まって、お互いに顔を見つめ合う。
ほんの数瞬か、あるいは数秒か。
それすらわからないくらい混乱していたが、ソーナの反応が面白くて、異常なまでに緊張していた自分が可笑しくて、笑い出した。
照れ隠し程度の苦笑いのまま硬直していたソーナも、突然笑い出した俺に驚いた表情をしてすぐ、笑い出した。
笑い終わったところでふと気づく。
自分の肩から力が抜けていることに。
「……もしよければ、さ」
「はい」
「…手、繋がないか?」
「…こちらこそ」
あくまで自然に差し出した俺の
暖かく、そして柔らかいその手を少しばかり力を入れて握り返すと、一瞬ビクッと痙攣したかと思えば、負けじとこちらの手を握り返してきた。
「…まるで、恋人同士みたいだな」
「はい……ぇえッ!?」
特に考える事なく発した言葉が、とんでもないものだったという事に気づいて慌てる。
確かに恋人同士みたいだと思ったのは事実だが、別にソーナは俺の事を意識しているわけでもなんでもな、く…?
だが意識していないなら、態々デートなんて言わないだろうし…
駄目だ駄目だ!これ以上考えたらまた緊張してどうしようもなくなっちまう!!
「あ、あー…すまん。なんかその、思ったことを言っちまっただけっつーか……」
「い、いえいえ…気にしてないですから…そ、それに、本当に恋人同士になれたら嬉しいな、なーんて…」
「そ、ソーナ?」
「ああっ!?いえいえ何でもないでしゅッ!!…痛ひ……」
「ったく…ほら、これでも飲め」
「…これは?」
「あー……傷薬だ。飲むタイプのな」
「そ、それってポーションじゃ」
そんな高いものもらえません、と言おうとしているソーナの口に無理矢理神水入りの瓶を突っ込む。
別にこれはプライスレスだし、時王に頼めばいくらでも量産してくれるから問題ない。
事実先程までのソーナの舌からは血が出ていたし、それはまぁすごく強く舌を噛んでしまったのだろう。
ならばいくらでも手に入る神水くらい使ってやってもいいだろう。
……ん?
いくらでも量産できるからとはいえ、貴重品であることは確かだ。
それを知り合って日も浅いコイツに、躊躇なく、無理矢理使った…のか、俺は。
わぁあ…飲んじゃったぁ…と言っているソーナを尻目に、自分の異変に困惑する。
これは、ソーナだからやったのだろうか。それとも、誰だろうと同じ事をしたのだろうか。
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時王side
「見ましたか、今の」
「ハジメ、神水飲ませてた」
「いくらでも量産できるが…それでもおいそれと他人に飲ませて良い代物ではないからな……これはこれは、面白くなって来たな」
表情には出していないが、自分の行動が自分でわかっていない様子のハジメを少しばかりヤキモキしながら見る。
くそっ…じれってーな 俺ちょっとやらしい雰囲気にして来ます!!
そう言ってやりたいくらいアイツらこじれてやがる。
いや、アイツらというよりハジメ一人だが。
変心の影響出過ぎだろ。
もしこれが変心前のハジメだとしたら、もうすでに告白しててもおかしくはないぞ?
それがどうだよ、今のアイツ…自分の気持ちの整理すらついてないぜ?
うーん、強さと引き換えに大事な物を失ったなアイツ。
「…どうします?あのままじゃ今日一日私たちがニマニマして終わりますよ?」
「……時王が覆面つけて悪人のフリしてソーナを襲って、ハジメに助けさせる?」
「それはソーナがハジメを好きになっていない場合の方法だし、何よりそんな事を勝手にやろうものなら俺達まとめて銃殺されるぞ」
「ではでは、ハジメさんを覆面を付けた時王さんが襲って、それをソーナさんに助けさせるというのは!」
「何でお前ら俺に覆面つけさせたがるんだよ」
…しかし、第三者の乱入か。
状況の進展にはバッチリなイベントだ、が…
それは少し無粋ではなかろうか。
あの二人はあの二人のペースでやった方がいいと、本当は思っているのだ。
さっきはやらしい雰囲気にしようとしていたから、言葉に信憑性がないだろうが。
「……おっと、これはどうやら俺が覆面を被る必要は無くなったみたいだな」
「えー…マスクド時王さんも見てみたかったんですが…」
「残念」
「お前ら最初っからそれが狙いだったのか…じゃなくてな、後もう少しで第三者がちょうどよく来るぞ」
「え、本当…………ですね、感じます感じます」
「…時王、私は索敵が苦手なだけで…」
「はいはい、ユエはすごいなー」
別にシアと俺が気づいたからユエも気づかなきゃダメだってわけじゃないのにな、と思いながら、ハジメとソーナの方を見る。
そして、その奥の方では、昨日の不審な男がゆっくりと二人の方へ近づいているのが見えた。
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ハジメside
「そうだ!すっごく料理がおいしいお店があるんですよ!行ってみませんか?」
「…まぁそろそろ腹も減ってきた頃だし、な。でも空いてるのか?」
「…?もう昼ですよ?」
「…時間経つの早いなぁ…」
こういうのを相対性理論と言うのだったっけか。
楽しいときは時間がたつのが早いが、つまらないときは遅いというやつ(まぁ感じ方の話だが)
…つまり、俺は楽しいと感じていたわけか。
それもとっても。
…いや、楽しいか。楽しいな。
俺はソーナと二人でいるこの時間を、心の底から楽しんでいる。
「じゃ、早速案内してもらおうか」
「はい!こっちです!」
笑顔で俺を引っ張って行くソーナの暖かさを感じて頬を緩ませた直後。
俺はホルスターからドンナーを取り出し、こちらに殺気を向けてきているヤツに銃口を向けた。
「お見事お見事。どこの誰かは知らんがすっごいねぇ……気づくなんて、思いもしなかったよ」
「誰だお前」
「俺?うーん……ま、名乗るほどの者じゃねぇな…実際俺はその辺の奴等と大差ない弱小冒険者だったからな…」
「……ソーナ、下がってろ」
「え、はい」
不審な男を警戒しつつ、俺の背後にゆっくりと下がっていったソーナ。
それを庇う様にしつつ、シュラークの方も構える。
「それで?一体何の用だ」
「……ある男によぉ、いい話を聞かせてもらったんだわ。指定の奴等を殺せば、この力をこれから先自由に使っていいってな」
「……力?」
「そうそう、知ってるか?この力…仮面ライダーの力ってのをよぉ!!」
『ギャレン…』
男が黒い何かを体に押し当てた瞬間、黒く澱んだ半透明の板状の何かが男の体を通過し、禍々しい波動を放って姿を変えさせた。
全身にとげの生えた重厚感のある姿に変貌した男は、手に持った銃のような何かをこちらに向け、乱射し始めた。
弾丸は実弾と言うよりもエネルギー弾に近く、薬莢が排出されている様子もなかった。
ドンナーとシュラークの銃撃で何とかいなしてはいるが、向こうには恐らく弾切れがない。
だとしたら、このままではダメージを受けてしまうのは確実…
「ソーナ、出来るだけ安全で、俺から離れたところに居ろ」
「は、はい!」
『逃がすかよぉ!』
「させるかっての」
駆け出したソーナに男が発砲したが、俺が宝物庫からただ鉄塊を出し、攻撃を妨害した。
一応俺の持ってる中でも一際硬くてでっかい奴を選んだが、どうやら正解だったらしい。
それでも半分くらいまで削られているところから、敵の攻撃の威力が窺える。
「……これでも喰らいやがれ」
全身を覆うような…まるで時王のアレを彷彿とさせるような装甲に通じるかは不安だったが、閃光手榴弾を投げて目くらまし。
その隙に気配遮断を発動しながら敵の背後まで迫ってドンナーを乱射。
それと同時にシュラークの方の再装填をしっかりと行う。
『後ろか!!』
「残念、正面だ」
視界が回復したのか、勢いよく振り返って乱射したが、もうそこには俺はいない。
ドンナーを撃ち切った所で正面まで移動していたのだ。
『しまっ』
「遅ぇよ」
今度はドンナーとシュラークの両方で攻撃する。
全弾撃ち尽くした後は、義手に仕込んである煙幕(新ギミック)を発動し、相手の視界を奪って移動する。
こういう時くらいしか使えないが、実際使ってみたら便利なもんだ。
気配遮断についてこれるやつなんてそうそういないし、俺の探知を欺くことが出来る奴だってそうそういないだろうからな。
しばらくランダムな位置からドンナーとシュラークによる銃撃を行っていると、ある異変に気が付く。
何故か、全く同じ人間の反応が二つあるのだ。
義手の機能を使って煙幕を回収し、視界を戻す。
そこには、まるでドッペルゲンガーのように分身している敵の姿と、その敵の片方に掴まれているソーナの姿があった。
「…お前」
『ジェミニ……分身能力さ。他にも色々あるんだぜぇ?望んだ能力が勝手に反応して、魔法みてぇに発動してくれる…最ッ高だなぁコイツぁ…』
「ソーナから、離れろ」
『あん?こいつかぁ?随分とコイツにご執心のようだが…もしかして、恋人?あっはははは!!いいねぇ、解放してほしかったらこっちの言う事を聞けってやつ?あれが出来るじゃんか!』
「………離れろって言ってんだ」
『やだねぇ!!離れろって言われて離れるほどいい子じゃないし?むしろこの子先に殺すのが楽しそうだと思ってきちゃったゾ?』
そう言って、ソーナの眉間に銃口を押し当てる男。
…恐らく、アイツは俺の武器がドンナーとシュラークだけだと思っている。
だとしたら、これから手を離せば隙が作れるかもしれねぇな……
「……これで満足か?さっさとソーナを…」
『ダメダメ、だってさっき、何か光る物を投げてたよね?それも捨てな』
「………」
ゆっくりと手榴弾全種をその場に置く。
そのまま動くことなく男の方を見ると、男は満足そうにうなずいた。
『それでよし。待てよ?先にお前が取れないような位置に移動させるからなぁ』
そう言って、俺の武器一式を蹴り飛ばして道の端の方へと移動させた男は、ソーナのすぐ近くにまで行って、俺の方を見てこういった。
『よしよしよし……これで、安心して殺せるなぁ!!』
ドンッ…と、低い銃声がやけに遠くに聞こえた。
俺の警戒心を解くためだろうか一旦下ろされたソーナに、男はノーモーションで攻撃した。
心臓部が空洞になり、口元から血を流して倒れたソーナ。
俺は、最初は本当に何も分からなかった。
そしてすぐに我に返り、ソーナのすぐそばに駆け寄って、宝物庫から取り出した神水を飲ませようとした。
だが、飲み込まない。
それに、欠損した部分は神水では治らない。
どれだけ足搔こうが、ソーナはもう手遅れだった。
「あ、あぁ……嘘、だろ…」
「…ハジメ、さん……ごめん、なさい…」
「いや、違う。謝るのは俺の方で…」
「……ハジメさん、私……」
言葉を切り、俺を抱き寄せるようにして、ソーナは俺の唇を奪った。
ほんの数秒程度だったが、ソーナの熱を確かに感じられた。
「ハジメさんの事が、好き…で……」
「…………」
途中まで言って、そこでソーナは力尽きた。
僅かな力すらなく、全体重が俺に委ねられている。
今感じる全ての感覚が、ソーナの死を俺に感じさせてきた。
『あっはははははは!!死んじまったなぁ!!可哀そうによぉ!お前がその子に関わってなけりゃぁその子は死ななかったってのによぉ!!』
「……ったく、返事も聞かずに死にやがって」
『……おいおい、無視してんじゃねぇよ。俺が、そいつを、殺したんだぞ?俺に対して逆上するとか、ねぇのかよ』
「…ま、俺がもっと最初に気づけてりゃあ良かったのかもな。やっぱり俺の方が謝るべきだったんじゃねぇか」
『無視してんじゃねぇって言ってんだろうが!!もっと俺に!絶望した顔とか!キレて殴り掛かってくるような顔とかを見せろよぉ!!』
「うるせぇなぁ……どうせもう、まともに生きていけなくなるってのによ」
緩慢な動作で立ち上がる。
男は俺の方を訝しむ様に見ているが、そんなのはどうでもいい。
だって、結局死ねば同じだろう?
「…限界突破」
赤黒い魔力が俺を覆う。
全身から力が沸き立つのが解る。
俺の錬成が、本質から変化したのを理解する。
実際に戦闘で使うのは初めてだが、それはもうどうだっていい。
だって、失敗しようがしまいが、アイツが死ぬことに変わりはないからな。
『な、なんだお前…なんでそんな、歩いて…』
無言で歩み寄っていく俺に、何とも言えない恐怖を感じているかのような声音で話しかけてくる。
だが、答えない。
男の目の前まで行って立ち止まり、男の装甲に手を当てる。
本当に何をしようとしているのかわからないらしく、困惑するだけで攻撃すらしない男。
それが失敗だと、何故わからないのか。
そして、告げる。
男にとって死刑宣告となる、一言を。
「……“錬成”」
『…は?ぁ、あ、あぁああぁぁああああああ!?』
限界突破と、俺の変化しきった魔力によってできるようになった、禁忌ともいえるこの技。
すなわち、『肉体の錬成』である。
相手の体に触れ、錬成することで、自分の望む通りに肉体を変化させることが出来る。
ただ動脈や静脈を滅茶苦茶に切って繋げても死ぬ。
脳みそを液状化させても死ぬ。
なんなら生きるのに必要な分の臓器を奪い取る事すらも出来る。
だが、今回はそんな生温い終わらせ方をするつもりは無かった。
まず、装甲を引き剥がし、人体のみにする。
その後、地面に押し付け、そのまま錬成を発動。
肉体を地面と同化させ、生命体として活動できるように調整。
まわりからはただの地面の見紛うレベルにし、人が歩く面……すなわち一番ダメージを受ける面に全身の神経を集中させ、誰かが通るたびに地獄のような激痛を味わう様にさせる。
そして、完成。
「………ざっとこんなもんだろ」
地面に落ちている黒い何かを回収し、俺が男を埋めた地面に唾を吐き捨て、ソーナを抱えて時王の下へ向かう。
もしかしたら、もしかしたら時王なら………
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時王side
「それで、その子を元に戻してほしいと」
「あぁ、出来るよな?」
「……いや、いいけど…死ぬ直前までの記憶はあるから、トラウマとか…」
「大丈夫だ。そこは……俺が何とかする」
だから、頼む。
そう言って土下座をしているハジメに、内心ホロリと涙を流す。
まさか……俺と自分の事しか考えられないようになっていたハジメが、まさか誰かのためにプライドを投げ捨てられる様になっただなんて!!
別にそこまでされなくても全然蘇生してあげて良かったので、指を鳴らしてソーナの肉体の時間だけ巻き戻し、死ななかった世界線の物と取り換える。
もしそのまま放置していたら、何もしなくても突然死んじゃうからね。
「……あ、れ?ここって…」
「…ソーナ」
「…ハジメさん」
見つめ合う二人を残して、俺は無言で部屋の外へ出る。
逢魔時王はクールに去るぜ。
…この後、部屋の外で待機していたユエとシアに根掘り葉掘り聞かれるのだが、それは関係ない話である。
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ハジメside
「わ、私は確か…あの時」
「あぁ、死んでた」
包み隠さず、ストレートに告げる。
ソーナは一瞬驚いたようだが、それでもあまり表情を変えることなく、俺に問いかけてきた。
「どうして、まだ生きてるんですか?」
「…時王には、人を蘇らせることのできる能力があるんだ」
「あの人に?……一体、どうやって…」
「それは企業秘密だ」
「企業…?まぁ、わかりました…」
よくわからなかったようだが、それでも納得はしてくれたのか、特に何も言うことなく俯いた。
俺もうまく話を切りだせなかったため、しばらくの間無言が続いてしまう。
だが、このままでは駄目だと自分に言い聞かせ、意を決して口を開く。
「あの、だな」
「…?はい」
「………ソーナが、その…死ぬ直前に、さ」
「………ッ」
ほんの数秒首をかしげていたが、思い出したのか、途端に顔を真っ赤にして俺から顔を逸らすソーナ。
それすら、今の俺には愛おしく思えてしまう。
あぁ、そうだ。
いつからかなんてわからない。覚えちゃいない。
それでも、今の俺のこの感情は。
ソーナに対するこの気持ちは、現実だ。
だから…
「ソーナ」
「ひゃ、ひゃい…」
「……俺も、好きだ」
真っすぐに、ソーナの顔を手で固定して、目と目が合う様にして、真剣に伝える。
ソーナは、何を言われたのか全くわかっておらず、その場で硬直していたが、次第に処理が追い付いてきたのか顔がどんどん真紅に染まっていき、そして……
「…うぇえ…」
感極まって、泣き始めた。
「え、ちょ…な、泣くなって」
「だ、だっでぇ……嬉じぐでぇ……」
泣き顔は見られたくない、というかのように腕で顔を覆い、全身を俺から背けた。
こういう時はどうすればいいのかなんて、ついさっきまでキスすらしたことの無かった俺にはわからなかった。
困惑し続けている俺に、ある程度泣き終わったのかソーナがおずおずと話かけてきた。
「……その、ハジメさん」
「…ハジメでいい。いや、ハジメって呼んでくれ」
「…は、ハジメ…」
「どうした?ソーナ」
「………わ、私で、いいんですか?だって、私なんかよりもきれいな人なんてそれこそ沢山いるんですよ?」
「俺にとってはソーナが一番だからな」
顔が熱い。
それでも、事実だし、ソーナを不安にはさせたくなかったから、しっかりと答えた。
ソーナはそれでも満足出来ていないのか、先程よりか幾分か小さい声で尋ねてきた。
「わ、私はその、全然戦えないので……旅に、ついていくことが出来ません。宿の仕事もあるし……それでも、愛に来てくれますか?」
「あぁ。もちろんだ」
「道中にどんな人がいても、浮気しませんか?」
「当たり前だろ」
「…私、その…面倒くさい女ですよ?それでも…」
「ソーナがどんな奴でも、俺にはソーナしかないんだ。だから…その、もう…大丈夫、だから」
言ってて恥ずかしくなってきて、最後の方はほとんど言っていないようになってしまったが、それでも、その言葉が俺の本心だった。
分かってくれたのか、ソーナは俺の方をジッと見つめて、そして、
「ん」
キスを要求するように、唇を突き出してきた。
…確かに、俺からは一度もしていない。
深呼吸して、ゆっくりとソーナの唇に自分の唇を押し当てる。
柔らかさと暖かさ、そして若干の湿気を感じる。
一度離れ、ソーナと見つめ合った後、今度はただ唇を合わせるだけではなく、舌を絡め合う。
水っぽい音が静まり返った部屋によく響いて、抱き合っていたことによる物理的な近さ等も相まって、何かいけない事をしているように錯覚してしまった。
名残惜しむ様にお互いに顔を離し、再び見つめ合う。
言葉なんて無くても、心が通じ合っているかのようだった。
夕日が差し込む部屋の中、俺達はただ無言で、手を握りしめ合った。
今回は本当に大変でしたよ。
だって作者、恋愛なんてしたことないんですもん。
最後の方とかどうすりゃいいのかわかんなくてそれっぽい事書いて終わっただけになっちゃいましたからねぇ……
それに、いつものギャグキャラ、時王くんが殆ど空気でしたし。
あ、時王くんはあの不審な男のくだりで、いつハジメがこちらを頼ってもいい様にと宿に帰っていました。
なので、最後の方でハジメとソーナがいちゃついていたのは時王の部屋という事になります。