ありふれない時の王者と錬成の魔王は世界最強 作:イニシエヲタクモドキ
それでもいい人だけ読んでください。
そうでない人は、次回の投稿まで待ち、二話連続して読んでください。
時王視点
ハジメがソーナと付き合う様になってから数日。
俺達は、世話になった(地図や宿の件以外にも何度か頼らせてもらった)キャサリンに感謝と別れを告げるために冒険者ギルドを訪れていた。
「おや、今日は四人一緒かい?」
「ああ、そろそろこの町を離れようと思ってるし、何度か世話になったアンタには挨拶くらいしておこうと思ってな」
「ついでに、目的地周辺の依頼がありゃ受けようかと」
ハジメの言葉に付け足すように、ユエとシアを両手に張り付かせた(張り付いてきているだけである。暑苦しい)状態の俺が声を出す。
冒険者ギルドに来るたびにこの状態だったので、キャサリンは特に驚くこともなく苦笑いしながら質問する。
「はは、寂しくなるねぇ色々と……それで、次は何処に向かうんだい?」
「フューレンだ」
フューレン。中立商業都市と呼ばれるその都市は、俺達の次の目的地である『グリューエン大火山』への道中にあるとのことで、どうせなら大陸一と言われる商業都市を観光したいとなったのだ。
…もしかしたら今よりさらに効力のある胃薬が売ってたりするかもしれないし。
「フューレンかい、ちょっと待ってな………お、ちょうどいいのがあるよ。商隊の護衛任務だね。空きが一つ分あるよ」
「連れはいいのか?」
「ああ、大丈夫だよ。あんまり大人数だと苦情が来るけど、四人くらいならなんも問題ないだろうさね」
「……時王、どうする?」
ハジメは、一度俺の方を見て確認を取ってくる。
それもそうか。俺達だけならハジメの車とか俺の玉座とかですぐに到着できるけど、他の冒険者たちが一緒となると話は違ってくる。
そういうところにすぐ気づき、こうして確認を取ってくれるところがハジメのいいところだと思う。
「全然問題ねぇよ。ユエもシアも、それでいいだろ?」
「ん。時王がいるならなんでも」
「はい!時王さんと一緒なら!」
「あいよ。先方には伝えておくから、明日の朝一に正門前に行っとくれ」
「了解」
ハジメがキャサリンから依頼書を受け取るのを見て、ギルドを立ち去ろうとすると、背後から声をかけられた。
「あんた等、これを持っていきな」
「…?それは一体?」
「なに、ただの手紙さね。まぁ、アンタたちは絶対何かやらかすだろうから…そうなった時は、ギルドの偉い人にそれを見せると良いさ。少しくらいは、役に立つと思うよ?」
ウィンクしながら俺に手紙を手渡してきたキャサリンに感謝の言葉を言いつつ、内心『本当にこの人は何者なんだろう』と思う。
ただまぁ、この人の事だ。聞いたところで笑ってはぐらかしてくるだろう。
「それじゃあ、またいつか」
手を振り、今度こそギルドを出る。
…ちなみに、この日はもう特に話すようなことは無かった。
まぁ、街の連中がバーサー化してユエとシアに特攻したところを俺が薙ぎ払うといういつもの光景があったが。
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時王視点
翌朝。
ユエがシアの行動を縛り、見せつけるように俺と行為(意味深)をしたのもあってか、シアの表情は最悪だ。
心なしか、すごくどす黒いオーラが出ているようにすら見える。
逆にユエはすごく満たされているようだった。
俺?見られながらは趣味じゃないんだ。察してくれ。
「お、おい最後の四人組って…」
「あぁ、間違いねぇ……『ヤン・ラヴ』だ…『ヤン・ラヴ』だぁあ!!」
ヤン・ラヴとは、俺とユエの事を差す言葉らしい。
俺も詳しくは知らないが、どうせユエが俺の知らないところでなんかしたんだろう。
…まぁ俺も、奇行に走る連中を薙ぎ払ったりしてたから一概にユエだけが悪いとは言えないのだが。
「君たちが最後の護衛かな?」
「あぁ、そうだ」
恐れ慄く他の冒険者たちを無視して、商隊のリーダーらしき人物が俺達の前に歩いてきた。
言葉だけでは信じてもらえないだろうと思い、懐から依頼書を取り出し、見せる。
それを確認したリーダーらしき男は、一度頷き、自己紹介を始めた。
「私の名前はモットー・ユンケル。この商隊のリーダーを務めさせてもらっている。君たちはまだ青の冒険者らしいが、キャサリンさんからは相当優秀だと聞いていてね……期待、しているよ」
あー、そうだ。
確か、商隊のリーダーの人ってユンケルって名前だったっけか。
もっとユンケル……うん、相当辛い仕事なんだろうなぁ…
「まぁ、期待は裏切らないだろうよ。俺は時王。こいつ等が順に、ハジメ、ユエ、シアだ」
「それは頼もしいな……ところで、その兎人族、売る気はないかね?もちろん、それなりの値は出させてもらうが」
モットーは、視線をシアに向け、若干声を低めにして商談を始めた。
まぁ、シアには首輪をつけてたわけだし、奴隷と勘違いされても仕方ないか。
……ただまぁ、
「モットー・ユンケル、だっけか」
「ひっ……な、なんでしょう…」
「次そんなふざけた事言ってみろ、その時は…」
「そ、その時は…」
威圧を全開にしつつ、行き過ぎた発言をした憐れな商人に言い聞かせる。
シアだって、どれだけ胃にダメージを与えてきたとしても仲間なのだ。
それに手を出そうとしたというのは、万死に値すると言ってもいい。
「人
「あ、あっ……す、すみません…でした…」
ガクガクと震えながらその場に座り込んだモットーから視線を外し、同伴になるその他の冒険者にも無言で分からせる。
『俺の仲間に、手を出すなよ?』と。
それだけでわかってくれたのか、冒険者たちは全員真っ青になりながら首がもげるのでは?と思うくらいの速度で頷き始めた。
「……ジオウさぁん…」
「な、なんだシア急にそんなおどろおどろしい声なんか出しやがって」
「ぐふふ、ぐぇっへっへっへっへ……やっぱり両想い、ですね…」
「それは聞き捨てならない」
気持ちの悪い笑みを浮かべるシアと、シアの発言に対し表情が通常の五割増しで無表情になったユエに、俺とハジメはあることを察する。
『あ、これは胃が痛くなるヤツだ』と。
「なんですかぁ?今回は、ユエさん何にも言われてないですよねぇ?大切、とか恋人とか」
「待ってシアさん、それ言ってない」
「は?脳にまでウサミミが侵食されてるの?そんな事、万に一つもあり得ないから」
「あっはっはー、それも所詮は負け吸血鬼の遠吠えですけどねぇ~?」
「いい度胸、私の奥義その2を喰らって死に絶えろ駄肉ウサギ」
「どこからその自信が出てくるんですかぁ?……余り調子に乗っているようでしたら、文字通り体に教え込んであげますよ」
おい時王何とかしろ、という目を向けてくるハジメに、俺は先程の冒険者たちを彷彿とさせる首振りを見せる。
力ずくでどうにか出来るならどうにかするが、これは多分精神的なアレだ。
俺のどうにか出来る範囲ではない。
…二人のこの争いは、恐怖のせいで馬車に籠っていたモットーが復活するまで続いた。
何故今回こんなに短いのか、ですが、理由はただ一つです。
『原作よりも書く内容が少なくなっていたから』。
内容を増やすのがお前の見せ所だろ、と思う方も多いでしょうが、これ以上伸ばすと、ユエとシアの喧嘩だけで数千字を超えることになるのでやめました。
……原作みたいに仲良くしてほしいのになぁ…