ありふれない時の王者と錬成の魔王は世界最強 作:イニシエヲタクモドキ
時王side
「いやぁ、シアの料理は美味いな」
「えっへへー…それほどでもありませんよぉ~?」
口では否定しておきながらも、シアのウサミミは忙しなく動いており、褒められた事がとても嬉しいのだろうと簡単にわかった。
対照的に、俺の右横に着席しているユエはすごく不機嫌そうだった。
具体的に言うなら、魔力が溢れて髪の毛が逆立つくらいに。
「…時王、私の料理はあまり褒めてくれなかった」
「いや、ユエさん。焼いて塩のような何かをかけただけの魔物の肉は料理って言わないでっせ」
「…むぅ」
頬を膨らませ、俺の腹部をツンツンと指で突いてくるユエはとても可愛らしいが、如何せん背後に謎の龍が見えるものだから可愛らしいで済ませられない。
「…は、ハジメはどう思う?この料理」
「……普通に美味いな。少なくとも魔物の丸焼きよりかは」
何とかこの状況を打破しようとハジメに話を振るが、何とまぁ、ユエの不機嫌さを倍加させるような事を言ってくれやがった。
結果、ユエの背後の龍がなんか咆哮した。
どうにも俺だけにしか見えていないわけではないらしく、周りの冒険者たちも『ぎゃああ!?』と叫びながら俺達から離れていった。
「ふっふっふー…流石箱入り吸血姫。料理しても料理と呼ばれず、ポッと出のウサミミ美少女に男の胃袋を掴まれてしまうだなんて…ふっ」
「鼻で笑った?今笑った?」
「べっつに~?だってだってぇ、家事力が死滅しているユエさんには笑ってあげる事すら憚られちゃいますからぁ」
「…いい度胸、私の魔法のフルコースを喰らわせてあげる」
「おっといいんですか?魔法で私に勝った所で、家事で私に劣っているという事実は揺るぎませんよぉ?」
にらみ合いを始めた二人を無視して、パンを頬張る。
パンは先程焼いたばかりで、ふっくらとして美味しい。
「…しっかし、せっかく譲ってやったのにこの雰囲気じゃ飯も不味くなっちまうな」
「そうか?戦闘中に魔物を捕食するのとあまり変わらねぇと思うが」
「ハジメ、その理論が通じるのは俺とお前だけなんだ」
俺達は今パンとシチューを食べているのだが、それは俺達だけでなく、周りの冒険者たちも食べているのだ。
本来、冒険者たちは荷物が重たくなることを避けるために不味い携帯食料だけを食べるのだが、俺達は宝物庫というチートアイテムを持っているため、重さを気にせずに食材と調理器具を持ってくる事が出来る。
結果、他の冒険者たちに意図せず飯テロを行ってしまうことになり、向こうの懇願の結果食事をこちらが振る舞うことになったのだ。
シアはやっぱり、将来いい嫁になると思う。
相手は俺以外に見つけた方がいいと思うが(ユエさんが本格的に暴走すると思われるため)
…でも俺、諦めて『プロポ―ズって事で良いよ』みたいな事言ったような気がするんだが…
それは、アイツの中ではどうなっているんだろうか。
もしそうだとしたら、これ以上争いが激化することもなさそうだし、シアくらいは受け入れてやっても…
「時王、本気でそれは止めとけ」
「人の心を読むなよ…」
「胃に穴が開くどころじゃすまねぇだろ」
「ジ、オ、ウ、さ~ん!この【上手に焼けた】串焼き肉もおいしいですよ~!」
ハジメに諫められつつシチューを啜っていると、ユエとの喧嘩が一段落付いたらしいシアが串焼き肉をもってこちらに近づいてきていた。
…そういえば、俺ってモンハンやったこと無かったな。
「はい、あーん」
「…待て、自分で食える」
「あーん」
「いや、シアさん?」
「あーん」
「諦めろ時王、これは強制イベントだ」
「…はぁ」
溜息をつき、シアの持つ【上手に焼けた】串焼き肉を頬張る。
噛んだ瞬間に口の中に肉汁が広がり、余りの美味さに目を細めてしまう。
やはり美少女の『あーん』はうま味を倍増させる効果があったりするのだろうか。
「美味いな、これ。もう一口貰ってもいいか?」
「どうぞどうぞ!はい、あー」
「させない」
「んぬぁ!?ユエさん何を!?」
「はい、時王、あーん」
今度はユエが、シアから盗った串焼き肉を差し出してきた。
ここは何かを言ってはいけないのだろうと察した俺は、無言でユエの差し出してきた肉を頬張った。
冷や汗は流れるがそこはそれ。やはりうまいことに変わりは無い。
うん、『あーん』とかあまり関係なかったな。
俺達の食事は、ユエとシアの喧嘩で周辺の地形が変わる所で終わった。
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時王side
あの地獄絵図のような戦闘が行われた晩飯から二日。
後一日で目的地に到着することになった日の事である。
今の今まで全く現れなかった、平穏な(平穏と言っていいかは怪しい)旅路を邪魔する輩が現れることになった。
それに最初に気づいたのは、もちろん俺とシアだ。
俺は逢魔の力で、シアは未来視で。
「敵襲、か」
「そうみたいだな……んで、どうすんだ?」
「適当に俺が蹂躙してくるさ。威圧しか能のない王と思われるのは嫌なんでね」
横になっていた体を腹筋で起こし、首を鳴らしながら馬車の外に出る。
他の冒険者たちは何事かと俺の方を見てくる。
まぁそれは当然だろう。敵襲に気づいているのは、俺達だけなのだから。
「な、何があったんで?」
「敵襲だ。大体…数百程度の魔物だな。一瞬で終わらせられる」
「は、はい?」
「下がっとけ、来るぞ」
俺に話を聞きに来た冒険者に事実だけを告げ、そのままさらに前にでる。
すると、他の冒険者たちにもわかるくらい露骨に地面が振動を始めた。
…魔物が移動してきている影響だろう。
「さて、流石に投石だけで済むかね……」
溜息をつきつつ、足元にある少し大きめの石を手に取り、砕く。
小さい礫になった石を、思い切り投げる。
金色のオーラを纏わせるのを忘れる事無く。
平原をかなりの速度で飛んでいった礫は、全員が姿を視認できるくらいに近づいてきていた魔物の群れの前衛を一瞬で撃ち殺した。
「…ハァッ!?嘘だろ今何したんだ!?」
「ただ石を投げただけであんなに魔物殺せるのかよ!?」
「ちょっと…何よもぉ~!」
後ろの冒険者たちの驚愕の声を聞きつつ(全員男のはずなのに、何故か女口調が混じっていたのが疑問だが)さらに石を握る。
再び礫にし、振りかぶって投げる。
前衛が全滅した影響で詰まっていた魔物たちが、再び掃討される。
…大体、五十体は今ので殺せただろう。
「やっぱりチマチマ殺すのは性に合わねぇな……変身」
まだまだ数がある様なので、諦めて変身することにした。
ドライバーの前で手を交差させる。
『祝福の時!!最高!最善!最大!最強王!オーマジオウゥ!!』
金色の帯状の物が動き回り、俺の姿を変えさせる。
なんだかんだ久しぶりに変身した気がするな、これ。
『終焉の時!!』
両手をベルトの側面部分にあて、必殺技を発動する。
金と黒、そして紅のオーラが俺を包む。
『逢魔時王必殺撃!!』
禍々しい声を響かせ、ゆっくりと魔物の群れの元まで歩く。
一歩歩くたびに、全身のオーラが揺らぎ、さらに力強さを増す。
『たまには蹴り以外もやってみないとな』
魔物たちのすぐそばに寄った所で、力を解放する。
溜め込まれた力が一気に溢れ、周囲を爆破する。
砂埃が晴れた時には、魔物の姿は無く、地面には大きなクレーターが出来ていた。
…蹴りの方が威力はあるな。
「な、なんだ今の!?」
「姿が変わって…自爆したって思ったら生きてて…?やべぇ、やべぇぞアイツ!!」
俺を指さして好き勝手言っている冒険者たちは放置して、ハジメたちの元へ。
変身は砂埃が待っている間に解除してある。
「お疲れさん。変身して良かったのか?」
「別に隠すほどの物じゃねぇしな。それに、王ってのは力を見せ、その武勇を臣下に語らせるもんだろ?」
「…お前の時々出てくるそういうところ、直した方がいいと思うぞ」
「そう言われてもなぁ…」
ハジメの言葉に、少し自分でも考えてみる。
確かに、この力を手に入れてからは自分を王と呼び、周りの人間を全員臣下と呼ぶようになった。
…あの時、オスカーの居た場所に行った時に頭に刷り込まれた記憶に引っ張られてるんだろうな。
「…な、なぁアンタ!」
「ん?えーっと、アンタは確か…」
「ガリティマだ。聞きたいことがあるんだが…」
「さっきの事か?」
「あ、あぁ…ありゃ一体なんだ?投石だけで魔物を何体も殺すし、急に姿は変わるし溶岩は湧き出るし爆発するし!あんなの人に出来るような…」
「当然だ…なんてったって、俺は王だからな」
「…王?どこかの王なのか?」
俺の発言に眉を顰め、低い声音で、誰にも聞かれないように聞いてくる。
…どうやら、俺をどこかの国の王と勘違いしているらしい。
「違う。俺は小さい物に縛られる王じゃない。
「…なんだそりゃ」
普通の人なら、冗談だと笑うような発言を、ガリティマは笑わなかった。
否、笑えなかったというべきだろうか。
それくらい、俺の先程の戦闘…いや、蹂躙が恐ろしかったのだろう。
…まぁ、力の一端を使ったとも言えないのだが。
「…さっさと進もうぜ?もう後一日でつくんだろ?久しぶりに宿で休みたい気分だ。野宿も悪くはないが、な」
俺が手を一度叩き、全員に聞こえる声を出すと、皆混乱しつつざわめきながらも行動を再開した。
ただ、俺を見るガリティマの目は、先程までは無かった
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時王side
アレ以降特に何かが起きるわけでもなく、何とかフューレンに到着した。
フューレンの東門には六つの受付嬢があり、俺達はその内の一列に並んでいた。
順番が来るまで、まだまだかかりそうだ。
「全く豪胆ですな。周りの目は気にならないのですか?」
ユエを抱きしめながら馬車の上で寝転んでいる俺に、ユンケルが声をかけてくる。
因みにシアは馬車の中で寝ている。
ハジメは銃の整備中である。
「見られる事を気にする王が居てたまるかってんだ……んで、話があるんだろ?何の用だ?」
「…単刀直入に言います。あなた方のアーティファクトを譲ってはもらえないでしょうか。特に宝物庫は我々商人にはかなりのお宝で……もちろんただとは言いません。一生遊んで暮らせるだけの金額を払うこともやぶさかでは…」
「くどい。何度も断っただろ?それとも、その体に教え込んで欲しいのか?」
俺の返答に込められた、『いい加減にしないと殺す』という意味を読み取ったのか、ユンケルは一瞬黙り込んだ。
それでも、やはり商人としては宝物庫だけでも欲しいのか、狂気的な目で再び話を続けた。
「そ、そのアーティファクトは個人が持つには有用すぎる!その価値を他の物に知られればどうなるかわかったものではありませんぞ!!そうなれば、貴方だけではなく、彼女たちの身に」
「わかった、死にたいようだな」
自然な動きで銃を取り出し、ユンケルを射殺する。
銃声に反応してハジメとユエ、シアがこちらに来る。
三人がこの状況を目視する前に、ユンケルの時を戻して
「どうした?」
「そこの馬鹿に分からせてやっただけだ……どうだ、もう一度撃たれてみるか?」
「ひっ、も、もうゆる、ゆるして…わた、私はただ、その」
「もういい、黙れ。話は終わりで良いな?」
「……はい…」
銃…ミトスを仕舞い、再び馬車の上に戻る。
…すごいなユンケル、一回殺されたのに普通に歩いて戻っていきやがった。
「時王、何言われたの?」
「…んー…アイツが、お前らに手を出すみたいな事を言ってきた」
「それって、私に手を出されたくなくて射殺したって事?」
「…すごく意訳すれば、な」
「んふふ、嬉しい…」
嬉しそうにしながら俺に抱き着いてくるユエの頭を撫でつつ、列を眺める。
…どうやら、まだかかりそうだ。
「なんつーか、竜の尻を蹴り飛ばしたな、アイツは」
「…ハジメさんこの世界の文化に毒されてませんかね」
「はっ、まさか…」
「違うぞシア、これはアレだ。初めて知った言葉を何度も使いたがる中学生特有の」
「オイ馬鹿止めろ誤解を生むな時王」
ハジメの言った、『竜の尻を蹴り飛ばす』というのは、この世界の諺のような物だ。
竜とは竜人族と言う種族を露わすらしく、その種族は人にも竜にもなれたのだとか。
竜の姿の間は、全身を硬い鱗で覆われ、絶対的な防御力を誇るらしいが、目と口、そして尻穴付近は鱗が無く、弱点となっている。
竜の眠りは深く長いらしく、一度眠れば余程のことが無い限り起きないらしいが、尻を叩けば一瞬で目を覚まし、それはもう烈火の如く怒り狂うそうだ。
在ろうことかそれを試した馬鹿が一人いたらしく、結果怒りのままに叩き潰されたとのこと。
そこからちなんで、手を出さなければ無害な相手にわざわざ手を出して返り討ちに遭う愚か者という意味で伝わるようになったという。
因みにその竜人族は五百年程前に滅んだらしく、理由は色々な憶測が飛び交っているが、どれもこれも神の怒りに触れたという文章がついて来るため信憑性は低い。
というか滅んだという事自体嘘のような気がする。
「お、そろそろだな」
「意外と早かったな…結構並んでたと思うんだが」
「まぁ早いに越したことは無いじゃないですか!さっさと受付を済ませて、遊びましょう!!」
ウキウキしているシアに少し笑いつつ、馬車から降りる。
『ユンケル以外にも何か手を出そうとする連中は多そうだし、用心程度はしておくか』と考えつつ。
原作のこの辺の知識がすっぽり抜けていたので、確認しながら書いていたのですが…
なんかもう、オーマジオウって規格外すぎて扱いに困りますよね。
魔物蹂躙のくだり、正直ユエのマスタースパークでよかったんですが、久しぶりに変身させないと機会が無いなと気づいたので無理矢理変身させました。
必殺技の演出は、アークワンのパーフェクトコンクルージョン(ラーニング5)をイメージしていただければ結構です。