ありふれない時の王者と錬成の魔王は世界最強 作:イニシエヲタクモドキ
この調子で行けば、主人公もチートの仲間入りができるはず!
能力はもちろんタイトル通りにオーマジオウです。
時王side
迷宮攻略当日。
【オルクス大迷宮】の入り口に来ているが、原作でも言われていた通り、本当に博物館見たいになっている。
受付嬢の営業スマイルをありがたく頂戴し、迷宮内に入る。
外の賑やかさと対照的に、迷宮内は薄暗く、雰囲気もあまりいいものではなかった。
すると、前列のところにラットマンという魔物が現れたらしい。
八重樫は露骨に嫌そうな顔をしている。
まぁ人型のネズミの化け物なんていう気持ちの悪い生物だから仕方ないと思うが。
間合いに入ったラットマンを天之河、八重樫、坂上の三人が迎撃する。その間に、白崎と特に親しい女子二人、天之河の彼女である中村恵里と坂上の未来の嫁の谷口鈴が詠唱を開始。魔法を発動する準備に入る。訓練通りの堅実なフォーメーションだ。
天之河は純白に輝くバスタードソードを視認も難しい(笑)程の速度で振るって数体をまとめて葬っている。
天之河の持つ剣はハイリヒ王国が管理するアーティファクトの一つで、お約束に漏れず名称は〝聖剣〟である。光属性の性質が付与されており、光源に入る敵を弱体化させると同時に自身の身体能力を自動で強化してくれるという“聖なる”というには実に嫌らしい性能を誇っている。
まぁこの世界の奴等が崇める、“聖なる”神エヒトも嫌らしいやつだから仕方ない気もするが。
坂上は、空手部らしく天職が〝拳士〟であることから籠手と脛当てを付けている。これもアーティファクトで衝撃波を出すことができ、また決して壊れないのだという。龍太郎はどっしりと構え、見事な拳撃と脚撃で敵を後ろに通さない。無手でありながら、その姿は盾役の重戦士のようだ。
八重樫は、ジャパニーズサムライガールらしく〝剣士〟の天職持ちで刀とシャムシールの中間のような剣を抜刀術の要領で抜き放ち、一瞬で敵を切り裂いていく。その動きは洗練されていて、騎士団員をして感嘆させるほどであった。
昨日は俺に攻撃を当てることすらできなかったわけだが。
ある程度前衛の攻撃が終わると、後衛が詠唱を始めた。
「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ──〝螺炎〟」」」
三人同時に放った炎の螺旋がラットマン全員を塵のみ残して焼き払い、敵を全滅させる。
「ああ~、うん、よくやったぞ! 次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」
一階層の敵では天之河たちだけで終わってしまったせいで出番がなくなってしまった他の生徒たちに声をかけるメルド団長。
そのお褒めの言葉に、とても嬉しそうな反応をした生徒たち。
「それとな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」
続くメルド団長の言葉に、白崎達後方支援組(先程魔法を放った三人組)は顔を真っ赤に染めて反省した。
そこからは特に問題もなく交代しながら戦闘を繰り返し、順調よく階層を下げて行った。
そして、一流の冒険者か否かを分けると言われている二十階層にたどり着いた。
現在の迷宮最高到達階層は六十五階層らしいのだが、それは百年以上前の冒険者がなした偉業であり、今では超一流で四十階層越え、二十階層を越えれば十分に一流扱いだという。
これは原作知識で知っているのであまり気にすることではないだろう。
俺達は戦闘経験こそ少ないが、ほぼほぼ全員がチート持ちなので割かしあっさりと降りることができた。
もっとも、迷宮で一番恐いのはトラップである。場合によっては致死性のトラップも数多くあるのだ。
この点、トラップ対策として〝フェアスコープ〟というものがある。これは魔力の流れを感知してトラップを発見することができるという優れものだ。迷宮のトラップはほとんどが魔法を用いたものであるから八割以上はフェアスコープで発見できる。ただし、索敵範囲がかなり狭いのでスムーズに進もうと思えば使用者の経験による索敵範囲の選別が必要だ。
トラップの恐ろしさは、原作をよく知る俺だからこそよくわかっている。
誰とは言わないが檜山とか言うやつが格好つけようとしたせいで、誰とは言わないが、ハジメが奈落に落ちることになってしまうのだから。
因みに俺はハジメの落下を如何こうする気はない。
ハジメには覚醒して貰う必要があるしな。
俺がクソ雑魚ナメクジである以上、エヒトとか言う駄神をムッコロスるのはハジメだからな。
「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの二十階層で訓練して終了だ! 気合入れろ!」
俺達の方を向いて、声を張り上げるメルド団長。
さて、問題の時間まであと数分……
因みにだが、俺とハジメは協力プレイでクリアしてきている。
ハジメが錬成で足場を奪い(かなり魔物のそばに寄らないといけないので、毎回顔色を悪くしている)、俺が口の中に手を突っ込んで魔物を口から裂く殺し方が一番効率がいい。
他にも、俺が一人で魔物のそばに近づき、口の中に槍(一応アーティファクト。不壊属性付き)を突っ込んで、喉を貫通させ、そのまま鋭利な部分を口内に戻し、脳天に向かって突き上げる(その時下あごは自分の手で思い切り開いておく)方法がある。
そのどれも残虐すぎると周りの生徒からはかなり不評だが、これでもかなり優しい殺り方である。
「ハジメ、魔力は大丈夫か?」
小休止中にハジメの様子を窺うと、弱々し気な笑みを浮かべながら大丈夫と返事された。
無理すんなよ見たいなことを言って視線を他所に移すと、白崎と目があった。
白崎の方は、目があったと同時に微笑み、手まで振ってきた。
流石に何もしないほど非常識では無いので、しっかり振り返しておく。
するとより一層嬉しそうにされた。
……このイベントもハジメのイベントなんだけどなぁ……
このままじゃ俺に奈落落ちフラグが……と危惧していたら、いきなり俺の方に、粘ついた殺気のような物が……
「……嘘だろ……」
「ね、ねぇ時王……今の……」
「お前もかハジメ……」
どうやら、俺の方にも死亡フラグが建ち始めているらしい。
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休憩から少し後、俺達は問題のニ十階層を探索していた。
このままロックマウントが現れなきゃいいのになぁ……と思ってたら、メルド団長が、
「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」
といい始めた。
……うっそだろオイ。
絶望中の俺を無視し、前衛組の方に飛び込み、その豪腕を振るうロックマウント。
しかし、坂上にガードされ、何度も攻撃を無力化させられてか、今度は大声で威嚇しようとする。
まわりの奴等は何をしようとしているのか分かっていないようなので、すごく遺憾だが俺が動くことにする。
ロックマウントが大きく仰け反って咆哮を上げようとした瞬間、俺は直ぐに耳を塞ぎ、他の生徒の隙間を乗って駆け出し、ロックマウントの元へ向かう。
威嚇が効いていない!?と驚愕しているように見えるロックマウントに軽くファックサインを上げて、勢いよく攻撃を仕掛け……
ようとしたら、隣で擬態していたもう一体のロックマウントに防がれ、投げ飛ばされてしまう。
ステータスの差か……!
だが、相手はバカなのか、俺がまだ宙にいるにも関わらず、先程現れたばかりのロックマウントを投げつけてくる。
迎撃しろと言う事ですね、わかります。
どっかのルパンを彷彿とさせるダイブを繰り広げようとしたロックマウントの顔面(ノーガード)を強く蹴り上げ、天井に叩きつけた。
しっかりロックマウントが天井に逆犬神家したのを確認すると、天之河に攻撃するように指示。
慌ててロックマウントに攻撃をする天之河だが、ここでもう一つの問題が。
先程見方を投げつけてきた方のロックマウントが、自力で飛んできたのである。
もうすでに着地してしまっているので、飛んでくるロックマウントに何もできない。
こちらのロックマウントも、ルパンを彷彿とさせるダイブを繰り広げ、白崎の方へ突っ込んでいく。
ここで、メルド団長がロックマウントの突撃に割り込み、綺麗に一刀両断。
恐怖してしまった白崎達(主に中村)を見て、怒りに燃える天之河。
満を持して立ち上がったロックマウント(三匹目)に、
「よくも恵里達を……!」
と怒りに震えながら、大技を発動。
その結果、迷宮内の壁がかなり破壊された。
天之河の事を潤んだ瞳で見ている中村の手を優しく握り、恵里は俺が守る……と言った直後、メルド団長に殴られた天之河。
「この馬鹿者が。気持ちはわかるがな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが! 崩落でもしたらどうすんだ!」
当たり前の指摘を受け、うっ、と言葉を詰まらせる天之河。
彼女の中村が慰めている最中に、白崎が
「……綺麗……」
「あれはグランツ鉱石だな。普通に発掘されるものより大きいな……珍しい」
グランツ鉱石とは、言わば宝石の原石みたいなものだ。特に何か効能があるわけではないが、その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気であり、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしい。求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ三に入るとか。
求婚、のくだりで白崎と、
「だったら!俺たちで回収しようぜ!」
……よしっ、逃げよう。
流石の俺もアイツは嫌だ。
それに、親友の落下シーンなんて見ても嬉しくない。
「ハジメ、ハジメ」
「ん?何?」
「あれ、トラップだぞ」
「うぇっ!?なんでそれが!?」
「まぁ、話を良く聞け。あのトラップはな、六十五階層までワープさせる極悪非道のトラップなんだ」
「六十五階層って……」
「ついでに最悪のオプション付きだ、なんと……」
「?お前ら何を話してるんだ?」
俺がハジメに種明かしをしていると、メルド団長がこちらまで話を聞きにやってきt
その瞬間、俺達の足元が強く輝きだした。
「……は嫌でち」
「時王!?口調どうしたの!?」
「まて今ジオウお前…!」
俺の嘆きに反応するハジメとメルド団長。
次の瞬間には、もうすでに例のあの場所……巨大なつり橋の上に転移していた。
ほんと檜山控えめに言って死ね。
「……っ、とにかくお前たち!あの階段のところまで行け!早く!」
俺の方を一瞬だけ見て、すぐにみんなに指示を出したメルド団長。
だがもう遅かった。
階段側にも通路側にも魔法陣が展開され、魔物が召喚されたのだ。
メルド団長は、大量の魔物が出てきた階段の方ではなく、一体だけ魔物が出てきた通路側を呆然と見て、俺の方を全く見ずに質問してきた。
「なぁ、何でお前はわかったんだ?」
「えっと……何がです?」
「あれだ……アイツだ。どうしてあいつがいることが分かった!?」
「メルド団長?時王がどうしたって言うんですk」
「お前も聞いていただろう?ジオウがここに転移するときに言っていた言葉を!!……どうしてジオウは……」
遥か先で大きな雄たけびを上げたソイツに、顔を引きつらせながら、メルド団長は叫んだ。
「どうしてジオウは、ベヒモスがここにいることを知っていた!?」
その言葉の直後、ベヒモスがこちら側に突撃してきた。