何度か眠って、何度か目覚めた。
その間に食事の時間はなかったので、ルリアが出て行ってからそれほど経っていないのかもしれない。
朝なのか夜なのかもわからないので、日を数えることもできない。体の中のリズムが崩れていくのがわかった。太陽の光を浴びたい。
「みんなどうしてるかな……」
わざと声に出して呟く。
何も考えないように体を動かすと、少し気が晴れたが、喉がひどく乾いた。飲み物が欲しい。それから、お風呂に入りたい。
服はずっとこのままなのだろうか。色々なことが気になってくる。
また、気分が落ち込んできた。
精神修行のように我慢していると、やがてまたあの若い兵士が一人で現れた。手には食事を持っている。
「ねえ、今は朝なの? 夜なの?」
返事はない。
「水だけでもいつでも飲めるようにして。お風呂って入れるの? 少しくらい女の子扱いしてよ」
兵士は窓から食事を置いて背を向ける。
「食事は1日何回なの? 私、それで日を数えることにする。何か答えて。聞こえてるんでしょ? 言葉もわからない阿呆なの?」
わざと挑発するようにそう言ったが、兵士はそれには乗って来ず、そのまま帰って行ってしまった。
ジータはため息をついてパンを取る。メニューは前回と同じだが、シチューの中身が違った。味は悪くない。
次にあの兵士が来るまで何をしよう。食事が1日2回なら、12時間ほど、またこの何もない部屋で独りぼっちで過ごさなくてはいけない。
無理だ。壊れてしまう。
ルリアは、一体どうしていたのだろう。何度もそればかり考える。
今だって、きっとどこかで一人でいるに違いない。それとも、研究は寝ている時間以外、ずっと行われるのだろうか。研究とは何をするのだろう。何をされているのだろう。
一緒の部屋にしてほしい。それこそ、他の囚人と一緒でもいい。誰か、他の人と触れ合いたい。話したい。男でもいい。老人でもいい。殺人犯でも、気が狂った人でもいい。
一人は嫌だ。
「ルリア、ルリア……」
これを繰り返すのか。ずっとこれを繰り返すのか。
いっそ死んでしまいたいと思って、首を横に振る。そして自虐的に笑う。
一人で死ぬことはできない。それこそが自分につけられた枷であり、ルリアを縛り付ける鎖なのだ。
そうこう考えている内に、一体どれくらいの時間が過ぎたのだろう。1時間だろうか。それとも10分だろうか。
もう嫌だ。
「助けて! 誰か、ここから出して! お願い! ルリア! ルリア!」
叫んでみる。自分の声に少し元気が出たが、返事はない。
何度も何度も押し寄せてくる絶望。気を抜くと壊れそうだ。
考える以外にすることがなく、ジータは考え続けた。その内考え疲れて気持ち悪くなり、ベッドに横になる。
少し眠って、目覚める。もう一度眠って、また目覚める。
何も変わらない部屋。空気も時間も淀んだまま止まっている。
「もう嫌だ……」
部屋の隅でふさぎ込んでいると、奥から足音が聞こえてきた。ゆっくり顔を上げると、ルリアを先頭に昨日(たぶん)の3人が歩いてくる。
「ルリア!」
牢の扉に駆け寄ろうとして、ジータは足を止めた。
ルリアは、昨日とは打って変わって暗い眼差しで俯いていた。ジータの声に顔を上げて、力なく微笑む。
「ルリア……」
昨日と同じように、ルリアは食事と一緒に牢の中に入れられた。