IS【小さな少年は盾を構える】   作:屍モドキ

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詰めたらなごうなったでござる。



クラス対抗戦編
十話 少年と彼らの仲


 何もなく翌日。

 昨日の気分の悪さもすっかり解消した結は、いつも通り早い時間に起きて既に一組の自分の机に座していた。

 

 ちらほら人数が増えていく教室の中で、数人と挨拶を交わし、また数人は机に伏して暇そうにしている結の頭を撫でていた。

 

「ゆいゆいおはよ~」

「おはよ、ございます」

 

 間延びした声で声をかけてきたのは黄色いキャラクターの髪飾りをつけ、手元も隠れるだぼだぼの袖を振ってくるのほほんとしたクラスメイト。

 

 誰だっけと思うがそもそも自己紹介はされていないので知らないのも無理のない結は、素直に名前を訊ねた。

 

「あの、誰でしたっけ……?」

「あれー言ってなかったっけ?」

 

 ほんわかした雰囲気で小首を傾げる女子に無言で頷いた結。その女子生徒はなら教えとくねと名乗った。

 

「わたしは布仏 本音だよ~。あらためてよろしく~ゆいゆい~」 

「のほ、とけ、ほんね……うん。よろしくおねがいします」

 

 口の中で噛み砕くように反芻させ、覚えた名前を呼んでみる。

 

「本音お姉ちゃん、て呼んでいい?」

「なんでもいいよ~」

 

 ぽんぽんと結の頭を撫でていった本音は結を連れてクラスメイトの会話に混ざる。中には一夏や箒、セシリアも入っていた。

 

「聞いた? 隣の二組に転校生が来るって噂」

「しかも代表候補生らしいよ~」

 

 一般生徒は好奇心からの興味が湧く中、専用機持ちのセシリアと一夏は真剣な面持ちで話を聞いていると、突然教室の入り口から声がした。

 

「その情報、古いよ」

 

 皆振り向くと、そこには噂の転校生が教室の扉にもたれ掛かっていた。

 

「お前は、鈴!」

「久しぶり、一夏」

「昨日のお姉ちゃん」

「おはよ、結。あんたここのクラスだったんだ」

 

 二人の反応にクラスの大半が目を丸くして目線をそれぞれに振る。

 一夏と結は鈴と呼ばれた少女に駆け寄り、結と手を繋ぎ、鈴は一夏と昔話に花を咲かせていた。

 

「久しぶりだな、中学二年以来か」

「ほんと、相変わらずアンタは厄介事に巻き込まれるわね」

 

「鈴お姉ちゃん、あのあと大丈夫だった?」

「あんたこそ大丈夫だったの? あんなに気分悪そうにしてたけど」

「大丈夫ー」

「そう、なら良かった」

 

 一夏とは何処と無く弾んだ声音で言葉を交わし、結には年上らしい振る舞いで昨日何かあったらしいのかその事を話していた。

 

「しかし、何でまた急に転校なんかしてきたんだ?」

「それは、その」

 

 一夏の質問に歯切れの悪い言葉で濁していると、鈴の背後から無言で出席簿が彼女の頭頂部に落下した。

 

「あいたっ!?」

 

 激痛の走る頭頂部を押さえて文句の一つでも言おうと振り向いた鈴は、その相手を見て怒りは消え失せ青ざめる。

 

「いきなり何すんのよ……て、千冬さん!?」

「学校では織斑先生と呼べ。そして凰、お前は自分の教室に帰れ」

「う……あとでまた来るから、逃げんじゃ無いわよ一夏!」

「お、おう」

 

 妙な捨て台詞を残して隣の教室に去っていく鈴。

 残された二人も千冬の一喝で席に戻り、授業が始まる。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 午前の授業も終わり、昼休みに入った。

 一夏、箒、セシリアは教室を出て食堂に向かうと、そこには先に来ていたのか入口の前で腕組をした鈴が待っていた。

 

「遅いわよ一夏!」

「別に待たなくても良かったのに」

「うるさいわね! 早くしなさいよ!」

 

 それぞれ食券を購入してカウンターに並び、一夏は日替わり定食、箒は焼魚定食、鈴は醤油ラーメンでセシリアはサンドイッチを頼み、四人がテーブル席に着いてから鈴は違和感を感じて口に出す。

 

「あれ、結は?」

 

 一夏と自分、専用機持ちの英国女と何故か一夏に付いて親しそうにしているこの女ともう一人、昨日助けてくれたあの少年の姿が見えず、鈴はキョロキョロと見回して見るがあの小さな背丈の姿は微塵も見当たらない。

 

「結のやつ、いつもここには来ないんだよ」

「ふーん、お弁当かしら」

 

 それならそれでもいいのかなと料理に手をつけようとしたら、視界の端に今朝見たきりの少年の姿が映った。

 

 首を向けると両手で大事そうに弁当の包みを持ち、パーカーのフードを揺らしながら小走りで此方に向かって一直線に走ってくる少年の姿がそこにあった。

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃん。ご飯……ごふっ」

「結!?」

 

 ズボンの裾に足を引っ掻けて勢いよく前のめりにずっこけた。

 回りは冷や汗をかき、一夏をはじめ食堂に居た一組の者と鈴が駆け寄り、外野がなんだなんだと輪を作る。

 

「大丈夫か結!」

「らいじょうふ」

「血は出てないか! 歯は折れてないか!?」

「おれへない」

「お怪我はされてませんの!?」

「ひてないよ」

 

 少し過保護な気もするが、あれだけ思い切り倒れたら年上として心配するのも当然だろうか。

 

 

「お弁当守れた」

「「「(ご)自分の心配をしろ(なさい)!」」」

「はい」

 

 なんだろう。この、なんだろう。

 

 得も言えない感情に苛まれる鈴だった。

 

 

 ◇

 

 

「それで、そこの者と一夏はどういう関係なのだ。随分と親しそうだったが」

 

 テーブルを挟んで箒が一夏に問いただす。

 一夏は箸を置いて鈴の紹介をする。

 

「コイツは鈴、小5の時中国から引っ越してきた幼馴染みみたいなもんで、箒とはちょうど入れ違いだったな」

「よろしく!」

「あぁ、よろしく頼む」

 

 そう言って箒と鈴が笑顔で握手を交わすが、お互い作り笑いか目が笑っていない。一夏は二人の後ろに火花が散ったような錯覚を見て疲れているのかと眉間を揉み、結は極力関わらないように口に弁当の中身を運んでいた。

 

「そうだ鈴、親父さんとお袋さんは元気にしてるか?」

「あぁ、うん、まぁ……」

 

 一夏の問いに歯切れの悪い言葉で濁す鈴。

 

「実は、わたしのママとパパ、離婚しちゃったの」

 

 それから鈴はぽつぽつと身の上話を語りはじめた。

 

「昔はホントに仲が良かったんだけどね、中学の時ぐらいかな、だんだん二人とも話さなくなってさ、国に帰ってからもっと仲が悪くなってって、結局離婚しちゃった。その後はママに引き取られて。ほら、今の時代女の方が強いから」

 

 だんだん語調が弱くなり、釣られて視線が下がっていく。ついに押し黙ってしまった鈴。周りも何も言えず、一夏はやってしまった、とかける言葉がなかった。

 

 そんな中、結は何も言わず自分の弁当の中からミートボールをずいと鈴のラーメンの中にいれる。

 

「結?」

「あげる」

「あ、ありがとう」

 

 呆けていた鈴だったが、勝手に渡されたその肉団子を口に運ぶ。何とも言い難いぬるさと甘口なソースの味がしたが、何処か優しさを感じる味だった。

 

「元気出して、お姉ちゃん」

「うん、ありがとね、結」

 

 鈴は目頭を擦り、結の頭を撫でる。

 結も目を細めてされるがままに撫でられる。

 

 お陰で鉛のように重かった空気は何処かへ流れ、皆食事に戻った。

 

 

 

 ◇

 

 

 放課後、アリーナ地下の結の部屋。

 微かに揺れる部屋の隅で結は制服からISスーツに着替えていた。特注のスーツから生える機械の項は、今日も特に変わることなく不規則な緑の点滅を続けている。

 

 それを隠すようにパーカーを羽織り、部屋を出て少し歩き、横にある扉から階段を登るとアリーナの関係者入口と同じ通路に出るのでそこから一般通路に移り、アリーナの解放されているカタパルトに到着する。

 

「……」

 

 外は様々な人間や機械が不規則に動き、皆何かをしているのが見える。

 その内で数名、見知った人物を見つけた。一夏と箒、セシリアだった。

 

 結はカタパルトから飛び上がり、一先ず上からそれぞれの様子をハイパーセンサーで拡大し、観察していた。

 

 口元から何となく何を言っているかを見ていると、セシリアはつらつらと専門用語と教科書のような知識を羅列していて、箒は端的も越えた擬音での大雑把な説明をしている。

 

 それを聞かされている一夏はげんなりしていて、見ていて若干いたたまれない。

 

 いって混ざってみようか。そう思っていると一夏はまた練習に戻ったようで、飛行をはじめた。

 

 結は少し驚かしてみようとゆっくり飛びながら一夏からは死角の位地に入る。

 

 そして唐突に一夏の目の前に飛び出して、彼の気を引く。

 

「なぁっ!?」

 

 一夏はすぐに姿勢を起こして急ブレーキを掛け、空中で止まる。

 静止して見上げると、そこには十字のマスクが特徴的な結のIS、ガーディアンが浮かんでいた。

 

「どうしたんだよ結、危ないな」

「邪魔してごめんねお兄ちゃん。なんかしてるから付き合おうと思って」

「あぁ、そういうことなら頼む」

 

 何からしようか、と二人はタワーの前で話し始め、とんとんと話は進み、一先ず飛行の練習をすることになった。

 

「ぼくの機体は重たいから、お兄ちゃんの機体の方が、そのぶん速く飛べると思うよ」

「そうなのか、けどなんか感覚掴めないんだよなぁ……」

「それは慣れなきゃダメだね。取り敢えず、飛ぼう。付いてきて」

「あぁ!」

 

 結は旋回して一夏に背を向け、アリーナの空に向かって飛び上がる。

 その後ろを一夏が追い掛け、二人は一定の間隔と速度を保って飛行する。

 

 その様子を地上で眺める箒とセシリア。

 

「あれは、上代か」

「相変わらず何を考えているのかわかりませんわ……」

 

 そして外野の女子生徒たち。

 

「世界に二人だけの男性操縦者があそこに……」

「カッコイイの織斑くん、そして可愛いの結たん」

「カッコ可愛いよ結くんはぁはぁ……」

「呑気なこと言ってないで練習したら……可愛いな」

 

 世にも珍しい男性操縦者の二人だけあって、その二人が一緒にいると言うのはそれほどに貴重な瞬間だった。

 

「……」

「どうした、結?」

「なんでもない」

 

 全方位を見渡せるハイパーセンサーで女子たちの様子を見ていた結は、なんとも言えない感情が沸き上がってくすぐったい思いだった。

 

「お兄ちゃん、少しずつ速く飛ぶからね」

「おぉ、頼む!」

 

 結は背部スラスターの出力を高めていき、徐々に速度を上げていく。アリーナ内をぐるぐると回り、速くなっていく結の後ろをなんとか食らい付いている一夏だが、その表情はだんだんと険しく余裕の無いものになっていった。

 

 ハイパーセンサーで一夏の様子を後頭部から眺める結。

 ここで更にスラスターの出力を上げ、ユニットを展開させる。追加で脚部にも備えられているユニットも使って一気に加速してみせる。

 

「結!?」

 

 ドォン、と空気の壁を抜ける音がして結のISは急加速をして旋回し、そのままタワーの頂上まで一息で飛翔した。

 

「お兄ちゃーん、同じことできる?」

「やったことないんだが!?」

「やってみよう」

「マジかよ!」

 

 プライベートチャットで耳元に聞こえてくる少年の声はあくまで呑気なもので、さらっと言われたことは中々にハードだった。

 

 同じようにやってはみるが、巧く加速させられない一夏。

 足踏みをしているような焦りにやがて操作もぎこちなくなっていく。

 

「なぁ結、あの加速ってどうやるんだ?」

 

 ついに諦めたのか、一夏は上空で見ていた少年に聞いた。

 結は糸を切った人形のように自由落下で一夏のもとまで落ち、彼の真横でピタリと止まる。

 

 端から見れば気絶したのかと危うくなったが、当の本人は何ともないように説明を始める。

 

「ぼくとお兄ちゃんの背部スラスターて、いろいろ違うから何とも言えないけど、エネルギーを多く使うのは変わらないかな、多分」

「エネルギーを多くねぇ」

 

 漠然とした説明に要領を得ない。

 燃料を多く使う。それはなんとなく分かるが、ではそれを実践してみるとなるといまいち巧くいかない。

 

「セシリアお姉ちゃんと戦った時に一回出来てたし、出来るとは思うんだけどね」

「あれは、あのときは無我夢中だったし、今じゃわかんねぇよ」

 

 あのとき、速く飛ぶイメージがあったからなんとなく出来ていたらしいが、一夏としてはそれどころではなかったのでいまいち実感がなかった。

 

「結はどんなイメージで瞬時加速をやってるんだ?」

「ぼく?」

 

 分からないなら聞け、と思考を一度手放した一夏は結のやり方を参考にしてみようと思い至った。

 

「ぼくは、風船かな」

「風船」

「ふーっ、て息を吐くのが普通の飛ぶとき、風船に空気を入れて飛ばすのが瞬時加速で飛ぶとき、て思ってる」

「あー、うん、なるほど」

 

 何となくイメージが沸いてくる。

 つまり溜めダッシュと一緒だろう。

 

「結ー、ちょっとやってみるから見ててくれー!」

「はーい」

 

 ものは試し、一夏は結に教わったイメージから自分なりに解釈し、背部スラスターに意識を集中させる。

 

 徐行程で飛びながら、背部スラスターに送るエネルギーの量を少しずつ増やしつつ、意図的に溜め込んでユニット内に貯蓄させ、ある程度溜めたところで一気に放出させる。

 

 ドンッ、と爆音が響き、一夏はスラスターに押され、空気の膜とスラスターに挟まれ圧迫感を覚えながら飛び上がる。

 

「うぉおおおお!?」

 

 間抜けな声を上げて結のところまで飛び、慣性が途切れて突然の浮遊感が体を通り抜けていった。

 

「やったねお兄ちゃん。ちゃんと出来てたよ」

「そ、そうなの、か?」

 

 仮面の下でクスクスと笑っている結に褒められつつ、冷や汗を拭う。

 

 それから結と一夏は使用時間ギリギリまで訓練を続け、ほったらかしにされていた箒とセシリアは拗ねて膨れていた。

 

「何故私が説明したときより上代が来たときの方が上手くいく?」

「それはあんな大雑把な説明ではわかりづらいと思いましてよ」

「いやセシリアも大概分かりづらい……」

「わたくしの説明の何処がわかりづらいと?」

「いや堅苦しい理論はあんまり得意じゃなくてさ……」

 

 練習でくたくたになった一夏を問い質す大和撫子と英国淑女。端から見れば両手に花とでも言うのだろうが、それはあくまで他人の感想であり、とうの一夏は一刻も早く抜け出したい一心だった。

 

 そうしていること十数分、やっと解放された一夏に結も付いていき、更衣室を抜けて休憩ルームで汗を拭っていると背後から鈴がドリンクを持ってやって来た。

 

「お疲れ一夏、温めのスポーツドリンクよ。結もいる?」

「お、ありがとな。鈴」

「いるー」

 

 一夏にお礼を言われて頬を染めながら結にも一夏に手渡したものと同じボトルを渡す鈴。

 ボトルを受け取った二人、集中していたため一夏は勢いよく呷り、結は然程疲労の気も見せていなかったか、チビチビと喉に流し込んでいく。

 

「あぁ~、体に染みる……」

「本当。昔からおじいちゃんみたいね、一夏って」

「健康は大事だぞ」

「ぬるい」

 

 一夏にドリンクを渡し、感想を貰った鈴の表情にどことなく嬉しい感情を見つけた結は、二人から少しだけ距離を置いて眺める。

 

「ねぇ、一夏。あのときの約束覚えてる?」

「約束って、鈴が転校するときのか?」

「うん」

 

 気恥ずかしそうにしながらも、甘酸っぱい感情を乗せた言葉には確かに色恋の香りを漂わせる鈴は、昔、学校を転校することになった際に一夏と交わした約束のことを切り出した。

 

「もしまた会えたら、毎日……」

「毎日、酢豚を奢ってくれるってやつ!」

「は?」

 

 さっきまでの浮かれた様子は何処へやら、鈴は、素っ頓狂な声を漏らして否定する。

 

「そんなんじゃないわよ! まさか覚えてないの!?」

「覚えてるだろ! 確かに酢豚奢ってくれるやつだろ?」

「だから、奢るんじゃないのよ!」

 

 そのまま二人は合っている、いや違う、と平行線で言い合いになり、互いに譲らず謝らずでどんどん熱くなっている。

 

 その騒ぎを聞き付けて外野が集まり、そのなかには箒やセシリアもいたので結は二人に泣きついた。

 

「なんだ、どうしたんだ上代。どういう状況だこれは」

「何か言い合っているご様子ですが、一夏さんはあの方と何があったのですか?」

「わかんないよぉ!」

 

 珍しく声を上げる少年を慰めながら箒も打って入ろうと試みるが、それどころではなく言い合いはヒートアップしていく。

 

「女の子との約束を忘れるなんて最低よ!」

「なんだとこの貧乳!」

 

 その台詞を吐いた直後、一夏はしまった、と口を閉じたがもう遅い。

 貧乳は鈴の一番のコンプレックスであり、昔その事をふざけて口にした中学時代の友人は、鈴の逆鱗に触れて半殺しになるまで血祭りにされていた。

 

 拳が飛んでくるかと身構えたが、鈴は片腕だけISを展開して、それを床に思い切り叩きつけた。

 

 衝撃と金属の凹む音。

 見れば床は大きく凹み、クレーターを作っていた。

 強化金属フレームで出来たアリーナの通路は、生半可な衝撃では傷一つつかないのだが、それがここまでの凹みを作るとなると鈴のISのパワーが如何程か窺える。

 

「言ったわね。言ってはいけない事を言ったわね……」

「待て、鈴、それは誤解で……」

 

 溢れ出す涙も気にせず、鈴は捲し立てて激昂する。

 

「アンタなんか、馬に蹴られて死ね!」

 

 そう吐き捨てて、鈴は振り返り走り去っていった。

 取り残された一夏は後を追うことも出来ず、呆然と立ち尽くしていたがそこに箒がやって来て追い討ちをかける。

 

「一夏、お前は犬に噛まれて死ね」

「箒、お前まで⋯⋯」

 

 それだけを言い残して箒も去っていく。

 セシリアは会話に取り残されていたが、聞いている限り一夏が悪いのだと判断して、飛び火を食う前に結も連れてこの場を去ろうとしたら、少年の姿が見えなかった。

 

「あら、結さん?」

 

 忽然と姿を消した少年を名前を呼んでみるが返事はない。少し見渡すと、鈴が走っていった方向に向かって行っている結の後ろ姿が見えた。 

 

 

 




 分岐しない……。
 次回、結くんの生い立ちを本当にチラッと触れるかも。
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