r-18版書きたいですね!
では本編
一夏は森の中に佇む扉を潜ると、中は真っ暗な道が続いていた。
振り向けば扉はいつの間にか消えており、簪との通信も途絶えてあっという間に孤立無援の状態に陥っていたのだ。
恐怖心が腕を震わせる。だが一夏はその手をぐっと握りしめ、先へ先へと歩みを進める。一歩ずつ見えない地面を踏み締めながら、先に見えた小さな光へ向かって徐々に走り出す。
「っ!」
どんどんと大きくなる光に飛び込み、目を焼くような光量に思わず瞼をぎゅっと瞑る。
瞼の裏で目が光に馴染むのを感じ、恐る恐る視界を開くと、そこには昔に見慣れた地元の町並みが広がっていた。
「ここは……俺の居た町か……?」
夕焼けが空を朱色に染め、疎らな町の喧騒や人影が各々の家へ向かって足を進めていた。
生活臭がそこかしこから漂い、思わず気が抜けそうになるのを自分の格好が真っ白なIS学園の制服を着ている事を思い出して襟を正す。
「ここが鈴の精神世界か……。日本の町並みっぽいが、早いところ見つけて連れ出したほうが良さそうだ」
彼女は中国の生まれの中国育ちで小学校の途中から日本へ渡ってきた過去がある。中学でまた祖国に帰ってしまったため、滞在期間で言えばおそらく半々だろうか。それでも日本での夢を見るのは思い入れか、それとも祖国での暮らしに難があったのか。
「ん? あれは……」
雑踏の群れの中に一人、ポツンと背の小さい影が目の前を横切った。
白い制服に身を包み、目深にフードを被った少年程の背丈の影。
途端にぶわりと全身に脂汗が噴き出し、一目散にその背中を追いかける。
「結、お前、結か!?」
思わぬ会合にいても立っても居られず途端に駆け出す一夏。
だが声をかけられて振り向いた少年は、顔に髑髏のような模様の仮面を着けていた。
ぎょっと驚いた一夏。追い掛ける足を止めてしまい、掛ける言葉を見失う。
そんな一夏を一瞥し、仮面の少年はすぐにその場から駆け足に立ち去った。
「ま、待ってくれ!」
◇
夕立に降られた鈴達は急いで彼女の家に飛び込む。
二人とも頭からつま先までずぶ濡れになり、ぐっしょり濡れた制服が肌に張り付いて全身を冷やす。
「アタシ拭く物持ってくる!」
「頼んだ!」
一夏を玄関に待たし、自分は濡れた靴下を放り投げながら脱衣所のタオルを二人分抱えて駆け足に戻る。
体を拭くのもそこそこに、鈴は一夏を自分の部屋に通し、エアコンをつけて着衣物の乾燥を促す。
「もう最悪っ! 下着まで濡れちゃったわよ!」
「どうやら通り雨みたいだな、もう止んでるぜ」
一夏が指した窓の向こうには茜色の空が映り、さっきまで土砂降りだった雨模様は嘘のように通り過ぎていた。弄ばれるような夕立にカッと頭に血が登るが、ふと今の自分の状況を思い出して鈴は思いとどまる。
今、家に居るのはアタシた一夏の二人だけ。
パパもママも店で夜まで帰ってこない。
つまりベストコンディション!?
いったい何がとは言わないが、彼女の脳内にはアダルトなイメージが蔓延しつつあった。
両手で頬を隠し、あわあわとたじろぐ彼女の背後に、ゆらりと現れた一夏が鈴の肩に手を当てる。
「鈴」
「ひゃぁっ!?」
気配に気づかず突然背後から触れられた鈴は素っ頓狂な声を上げて振り向くと、そこには今にも密着してしまいそうなくらいの距離まで近くにいた一夏が迫ってきていた。
少し見上げる身長差。
壁に追いやられて彼の影が自分を覆い被す。
切れ長の凛々しい目つきが少女を熱い眼差しで見下ろし、ごつい腕が少女の肩に回される。
「濡れたままじゃ風引くぞ。部屋で暖まろうぜ」
「う、うん」
肩に回された腕に連れられるまま、借りてきた猫のような従順さで鈴は自分の部屋へと誘われる。
無言のまま部屋に入るなり、一夏は鈴をベッドに座らせて自分もその隣に腰掛ける。二人の距離はピタリと密着し、依然として腕が背中に回されたままだ。
いつもの威勢はすっかり鳴りを潜めた鈴は生娘のように大人しくなっており、首筋まで真っ赤に染まった彼女の横顔を男は冷たくギラついた眼差しで見つめていた。
「っ……」
そんな熱い視線に気付かない程鈍くない乙女は、これみよがしに髪を掬って耳に掛け、横から覗かせるように目配せして魅せる。
それを受け取った男は何も言わないままに少女をベッドに押し倒し、髪を漉き、華奢な細い腕に勇ましい手を力強く重ねる。
「い、一夏ぁ……」
「な。いいだろ、鈴……」
ベッドに押し倒された鈴の太腿に一夏の手が伸びる。
無骨な男の手は少女の柔肌を舐めるように撫で、紺のスカートの裾をゆっくりと持ち上げ、隠された花園を顕にさせる。
きゅっと唇を閉ざし、華奢な身体を震わせる鈴の顎をくい、と待ちあげた一夏は押し倒した姿勢から更に体を寄せ、その濡れた唇を奪わんと顔を近づける……。
だがそこに邪魔が入った。
「結、ここかッ……なんだこの状況!?」
「は、え、一夏!? 二人!!?」
扉を蹴破る勢いで飛び込んてきたのは、白いIS学園の制服に身を包んだ一夏だった。
乱入してきた一夏は鈴に覆い被さる偽物を見るなり鬼の形相で飛び掛り、なんの躊躇いもない飛び蹴りをお見舞いする。
「プラズマキィィ───ック!!」
「ぐふゥッ!?」
「きゃぁっ!!?」
推定60kg以上の体重からなる成人男性並みの身体能力から発せられる飛び蹴りを食らい、偽物の一夏は少女の部屋を跳ね周りながら吹き飛んだ。
家具や寝具の角に全身を強く打ちながら飛んでいった一夏を前に思わず駆け出しそうになった鈴を、本物の一夏が腕で遮り制止する。
「一夏ぁ!!」
「鈴、よく見てみろ」
明らかに重症の怪我を負った偽物は非ぬ方向に関節を曲げ、痙攣している。誰もが無事ではないと思える重症だが、当の怪我人はうめき声すら上げずにうつ伏せのまま。だがまたたく間に関節を元の方向に戻し、何事も無かったかのように立ち上がった。
「侵入者アリ、侵入者アリ。排除開始。排除開始。」
偽物の一夏はさっきまでの煽情的な顔から一変、まるで作り物のように生気を感じない虚ろな表情に変わり、目の色はドス黒く真っ黒に染まり、その瞳孔は煌々と輝く金色へと変貌した。
「くぅッ……!?」
「鈴!」
偽物の変身が解けると同時に、この隔離世界に掛かっていた催眠が解かれて鈴の頭に激痛が走る。
あああああ!!!!
痛い!! 痛い!!! 痛い!!!! 痛い!!!!!!
そうだ、アタシはIS学園に通う中国代表候補生……。
専用機を任された、代表候補……。
「アタシは、凰 鈴音よ!!!」
酷い頭痛を払い除け、世界の殻を吹き飛ばす思いで鈴は自分の専用機の名を叫ぶ。
「来なさい、甲龍ッッ!!!」
雷鳴の如く光が部屋を包み、大きな衝撃とともに彼女の自室を吹き飛ばし、その中央にあずき色の機体に身を包んだ鈴が不敵な笑みで佇んでいた。
「えぇいッ!!」
「───ッ!」
悪寒を感じ取った偽物が逃げるより先に飛び出した鈴がISによる力任せのアッパーカットを偽物の鳩尾に御見舞し、偽物ははるか彼方へ吹き飛ばされ、消滅した。
「任務中断、撤退……」
偽物が消えた事を確認した一夏が一刻も早く脱出しようと鈴の方へ振り返ると、何やら地上へ向けて肩の砲門を向ける鈴の姿があった。
「おま───」
「こんな世界、吹き飛ばしてやるんだから!!」
特大の『龍砲』が辺り一帯を吹き飛ばし、閉ざされた世界は壊滅させられた。
崩壊する世界の中で暗転する虚無へ向けて落下する二人。今にも死にそうな顔で情けない雄叫びを上げる一夏をよそに、さぞ気持ちよさそうに笑う鈴は腕を伸ばして一夏の手を取った。
「どわぁぁああ!! 落ちるぅぅぅ!!!」
「あははははははは!!!」
涙を浮かべながら絶叫する一夏とは対照的に、鈴は清々しいほどの大声で笑いながら身体をめいっぱい広げて落ちる。吹っ切れたと言わんばかりに。
落下の最中、一夏は追ってきた少年の影を探して周囲を見回す。
ふと見上げると、遥か後方にて崩壊する建物の扉に手を掛け、扉縁を境に消えていく途中だった。
一度だけこちらに視線を向けてきたが、やはりその顔に張り付いた仮面のせいでその表情はわからなかった。
「どほぉっ!?」
「きゃんっ!」
投げ出されるようにして一夏と鈴は扉の外へと投げ出され、内部が崩壊した扉はその場で砕けるように消滅していった。
「しかし、お前なんて夢見てたんだ……」
「なっ、バっ……見てんじゃないわよっっ!!!!!」
当の本人に指摘された鈴は今更ながらに恥ずかしさが限界突破を迎え、加減もなく一夏の肩を張り倒す。
「あぁもうムカつく! 他の奴らの偽物ぶっ飛ばさなきゃ治まんないわ!」
「駄目です」
「「わぁっ!!?」」
怒り肩で別の扉に入ろうとした鈴の言葉を遮るように、簪が端の茂みからのそっと出てきた。
思わず飛び退くように驚く二人を他所に、簪は淡々と鈴に説明を促す。
「鈴音さんと他四名は敵からの精神攻撃を受けています。これ以上の電脳ダイヴは精神汚染の危険がある為、鈴音さんの同行は認められません」
「なぁ……ッ!」
わなわなと震えて言葉を失った鈴は苦虫を噛み潰したような顔を浮かべる。しかしふぅ、と一つ息を吐き、あくまで冷静な態度を取り戻して一夏に向き直る。
「他の奴らも必ず連れ戻しなさいよ」
「任せろ」
そんな真剣な面持ちの彼らを他所に、何者かが横に並んでいた別の扉に手を掛けたらしい。
「ししし」
ガチャリとドアノブを回す音に皆が振り向くと、髑髏の仮面をつけた少年がいたずらっぽく笑いながら扉の奥へと消えていく最中だった。
「「ああぁぁぁ────────っっ!!!!」」
思わず追いかける一夏と鈴。だが鈴の方は簪に軽快なボディタックルで止められ、女子たちの姦しい喧騒を背に男一人、また夢の世界へと飛び込んでいった。
「ここは、洋館? 結の奴は何処だ」
見回してもよくわからない間取りの廊下に放り出された一夏。突き当りの角に少年の背中を見つけ、一目散に追いかける。
角を曲がると、少年はある一室の扉を開いており、こちらを挑発するようにその中へと消えていく。
その後一夏は。
「彗星キック───ッ!!」
各世界の自分と結の偽物たちを。
「───ハイパー、キック」
複雑な心境で屠っていった。
「フレイム、ストーム!!」
各々色んな心境の面持ちで退場してきた女達。彼女たちは口々に「あの夢は決して自分の願望ではない」と宣うのだが、別に詮索もしていないので墓穴を掘っているだけなのだが、そこには誰も突っ込まない。
「さて残ったのは……」
篠ノ之箒。彼女の精神世界の扉のみ。
正直今までの内容が随分俗っぽくイロモノ過ぎたので、ここも例外ではないのかと思うと若干足取りが重たいのだが、それはさておき救出しなければ危ういのは確かなようだ。
ついさっきまで見かけていたはずの少年の姿は今回ばかりは見ることが無く、何故か箒の中には入らなかったようだ。
意を決し、一夏は扉に手を掛ける。
待ってろ、箒。
面倒なので他3名はカットします。
次回箒ともう一人。
では。