IS【小さな少年は盾を構える】   作:屍モドキ

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 対抗戦(前座)
 書いてて鈴ちゃん可愛いなって思い始めたこの頃。


十三話 少年と対抗戦

 ついにやって来たクラス対抗戦当日。

 いつにもまして人の多い観客席を覗きながら、一夏はピットの中で息を整えていた。

 先日鈴と喧嘩して、その事を根に持たれて結局話し合いをすることもなくとうとう今日になってしまった。

 

「ちゃんと話さねぇと約束の内容すらわかんねぇよ……」

 

 自分で言ってて情けない奴だな、と思いつつも、今は自分だけじゃなくクラスのためにも戦わなくちゃいけない。一夏は気を引き締めて白式を展開し、カタパルトに足をのせ、飛び出す。

 

 とにかく、今は勝つことを考えるんだ。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 反対側ピット内部。

 

 鈴が機体のチェックをしている横で、何故か一組の人間である結が立っていた。

 

「お姉ちゃん、大丈夫?」

「えぇ、バッチリよ! で、なんで結が居るの?」

 

 聞いて当然だろう。いくら親しくなった間とはいえ一組の人間が対戦相手に当たる二組の元に居てもいいのだろうか。

 

「どうしたのお姉ちゃん?」

「うぅん、なんでもない」

 

 どうでもいいや。

 なんか周りもそんなこと気にしてないみたいだし。なんなら愛でたくてウズウズしている。

 

「それじゃ、行ってくるわね!」

「いってらっしゃい」

 

 見送られ、鈴はカタパルトから景気よく飛び上がった。

 

 鈴が出撃したあと二組の者は観客席に戻ったが、結だけはそのままピット内に残っていた。

 人混みが苦手な結にとって今のアリーナ観客席は地獄絵図に等しい。しかし放送席にも居づらいし、地下にある自分の部屋に戻るくらいならここで待っているのが良いだろうと思い至り、冷たいピットの中で一人、鈴が勝つことを祈っていた。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 アリーナ上空、一夏と鈴は向かい合っていた。

 

「覚悟しなさい一夏。徹底的にぶちのめしてから土下座させてやるんだから」

「やれるもんならやってみろよ」

 

 互いに謝罪するという選択肢は既に存在せず、力ずくでも非を認めさせる事しか考えていなかった。短気な者同士、こうなってしまうのも仕方無いのかもしれないが、ヒートアップして戻るに戻れなくなっていた。

 

 試合開始のブザーがなる。

 騒がしかった観客席は更に喧騒を増して、声援が増える。

 

 始めに仕掛けたのは一夏のほうだった。

 雪片弐型を展開して両手で掴み、加速をつけてから斬りかかる。

 鈴は堂々と構えて居たが、一夏が懐に迫った瞬間、不敵な笑みを浮かべたかと思えば、背部のユニットが展開して一瞬の砲撃の音が響き、一夏は見えない何かによって吹き飛んだ。

 

「ぐうっ!?」

 

「あれはなんだ!?」

「恐らく、圧縮した空気を弾として使っているのかと思われます。ダメージこそ少ないですが、威力は凄まじいものですわ」

 

 砲身は存在せず、それ故どこへ向かって撃ってくるのかが分かりづらい。単純だが恐ろしい武器に固唾を飲む。

 

 ボウリング玉程のサイズの塊で殴られたような感触に度肝を抜かれ、崩された体勢を正して再度飛びかかる。

 

「喰らえ!」

「ッ!」

 

 また衝撃に押され、一夏は鈴に近づくことはおろか攻撃も出来ない。更に鈴は巨大な青龍刀を二振り展開して構え、一夏に向かって攻撃に転じる。

 

 芯を付くような的確なものではなく、どちらかといえば力任せな斬撃の嵐に一夏は必然と苦戦を強いられる。一撃が重たいというのに、鈴は難なく青龍刀を振り回し、一夏が攻撃に入る前に斬りかかり、隙を作ってそこに斬撃を叩き込む。

 

 だが一夏も負けてはいられない。

 鈴の連撃を見定め、二本目の斬撃を半ば無理矢理に避けたあと、悟られないよう溜めたエネルギーを一度に使って瞬時加速を行使する。

 

 狙いは横に入り込む。ないし失敗しても体当たりが出来ればどうにかなると見込んで飛び込んだ瞬時加速は、狙いより少し下、鈴の脇に潜り込み、掛かるGを無視して無理矢理姿勢を起こし、横凪ぎで攻撃を当てる。

 

 やっとまともに入った攻撃を止めることはしないと、一夏は攻撃を続ける。

 

「嘗めんじゃないわよ!」

 

 しかし、又も放たれた衝撃波にぶち当たり、一夏は押し退けられた。その隙に鈴は二振りの青龍刀の柄頭を繋ぎ合わせ、一本の薙刀に合体させる。

 それを軽快に振り回し、先程よりも回転を増した連撃で一夏に迫る。

 

「やぁぁぁあああ!!」 

 

 一夏に一度の好機すら与えず、鈴は怒濤の連打を与えて二門からの龍砲を充填し始める。

 

「これで、終わり!」

 

 

 

 

 勝負が決すると誰もが予感した瞬間、突然轟音が響き渡り、同時にアリーナが揺れ、非常ベルが鳴り響く。

 

 何事か、試合をしていた二人は止まり、辺りを見回す。

 

「あれは……?」

「さぁ、わかんねぇ。けど、いい雰囲気じゃなさそうだ」

 

 アリーナの強固な防御壁を撃ち破って現れたのは、全身装甲に包まれた二機のIS。

 

 赤銅色の曲線的な形状の装甲は、全身を隙間なく包み、右腕は巨大な砲身、左腕は同じくらいのマニピュレータになっており、砲身からはさっきアリーナのエネルギーシールドを破ったためか煙を上げていた。

 顔に当たる箇所は首と胴が一体化していて、全身を向け、大、中、小の三つのカメラアイがこちらを捉える。

 

「織斑先生、応答してくれ! 千冬姉!」

 

 オープンチャットが繋がらず、ただノイズが煩く啼いているのみで役に立たない。

 観客席は人の波が生まれ、出口に向かって雪崩れているようだが、その流れは滞っているようだ。

 

 片方は周囲を見回したあと、鈴が出てきたピットに向かって飛んでいった。

 

「あっちには結が……待ちなさい!」

「行かせるか!」

 

 わかっているかのように謎のISは二人の前に立ち塞がり、足止めしてくる。

 

 偶然にしては明らかに出来上がっている。だが、この状況で何が出来るかなんてたかが知れているのも明白だった。

 

「鈴、試合は中断だ。コイツを倒すぞ」

「そんなこと言ったって、先生が来るのを待ってたほうが良いんじゃ……」

「連絡がつかない、非常口も開かないのか知らねぇけど避難が済んでない。やるしかないんだ……!」

 

 一瞬苦い表情を浮かべて悩んだ鈴は、すぐに引き締めて頷いて上空のISを睨む。

 

「やってやろうじゃない!」

 

 一夏と鈴は二人がかりで謎のISに斬りかかる。

 だが、そのISは二人の攻撃を見るやいなや最小限の動きで避け、距離を置きつつ一夏に拳を放って離れる。

 

「こんのぉ!」

 

 避ける敵に向かってすかさず鈴の龍砲が放たれるが、それすら簡単に避けられてしまい、ついでとばかりにレーザーが飛んでくる。

 

「鈴!」

「わかってるわよ!」

 

 無理な姿勢になりつつもすれすれで極太のレーザーを回避して、一度離れる。

 敵は追撃はしてこず、宙に浮いたまま停止する。

 

 それからも、二人が攻撃をしてはそのISは滅茶苦茶な動きで回避し、一発何らかの攻撃をして距離を置く。その繰り返しで一向に事は進まなかった。

 

「くそ、埒が開かない……」

 

 目の前の不審者は動こうとせず、抜けようとすればそれを拒む。それをくり返していれば怪しいのは明白だが、それを切り抜ける策がまだ生まれなかった。

 

「あの機械的な動き、本当に人が乗ってるのか?」

「何言ってんのよ、ISは人がいなきゃ動かないでしょ」

 

 一夏の疑問に鈴は即座に切り捨てるが、目の前であれだけ不自然な動きをされれば自分の答えに自信が無くなるのも当然のことだ。

 

「もし、何処かの誰かが無人のISを造ったんだとしたら……?」

「そんなこと、出来るわけ?」

「わかんねぇけど、そうなら遠慮はいらないよな……」

 

 苦しい笑みを浮かべる一夏の横顔に、良からぬことを思い付いたのかと溜め息をはく。

 

「何か策でもあるの?」

「あぁ、鈴。龍砲をアイツに向けて撃ってくれ」

「それはいいけど、避けられるわよ」

「それでもいいから!」

 

 やけくそに返事をした鈴は全力の龍砲を目の前のISに向けて放とうとした瞬間、その射線上に一夏が飛び出してくる。

 

「何してんのよ!?」

「いいから、撃て!」

「あぁもう! どうなっても知らないわよ!」

 

 鈴が放った龍砲のエネルギーを一夏は背部スラスターに無理矢理充填させ、瞬時加速のエネルギーに上乗せさせ、その速度を更に上げてISに向かって一直線に飛翔する。

 

「おおおおぉぉぉぉぉッッ!!!」

 

 アイツの行動パターンは、攻撃を避けて一撃反撃するまでが一括り、その行動は殆ど無駄を省いたモーションだ。

 だったら、その動きが始まるより速く攻撃を当ててしまえばいい。

 予想だがあれは人間らしい動きをしていないことから無人機だと思う。ならば全力の零落白夜を当てても問題は無いだろう。

 

 謎のISのカメラ・アイが此方を捉える。そして回避行動に移ろうとするが、一夏はそれより速く敵の懐に入り込み、零落白夜を発動させる。

 

 伸びた刀身は簡単に敵ISの胴体を斬り、シールドエネルギーを根刮ぎ削ぎ落としてみせた。

 

『ギギ、ギ……』

 

 シールドエネルギーを全て消失し、勢い余って胴体も切断されたISの中から機械部品が散らばり、カメラ・アイからは光を失った。

 

「よし!」

「結を早く……!」

 

 勝利の余韻に浸る暇もなく結の方へ向かっていたもう一機との戦闘に加勢しようとカタパルトの方へ二人して向いた刹那、カタパルトのハッチが轟音を響かせて中から二機のISが絡まって飛び出してきた。

 

「「!?」」

 

 出てきたのは先程自分達が倒したものと同じ敵のIS。

 

 そしてもう片方は、呻き声をあげながらその敵ISを嬲り続ける結のガーディアンだった。

 

 

 

 

『殺シテヤル、何モカモ……』

 

 

 

 




 乱入(本番)

 ちょい出しは基本だよね。
 はてさてどうなることやら。
 結ちゃんがんばえ。

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 誤字、脱字等あればご報告願います。

 ではでは。
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