IS【小さな少年は盾を構える】   作:屍モドキ

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 なんかまた突拍子もなくランキングに載っていたのは多分評価が入ったからだと信じたい。

 本当にありがとうございます。
 これからも頑張りますので、どうか結をよろしくお願いします。



二十五話 少年と軍人少女

 結、一夏、セシリア、鈴の四人が帰ってきたところで再度号令がかかり、織斑先生の指示で訓練機が数機、グラウンドの中に運び込まれる。

 

「これよりグループに別れてIS搭乗と歩行の訓練を行う!」

 

 織斑先生の号令で、女子生徒の大半が一夏、結、シャルルの三人に寄って集って班に入ろうとせがんできた。

 

「織斑くん一緒にやろう!」

「結くんお願~い!」

「デュノアくん教えて!」

 

 

「「「「よろしくお願いします!!」」」」

 

 

 一斉に集まってきた女子生徒の群れに囲まれた男子それぞれは困った顔を浮かべたり、苦笑いをしたり、不安そうに周りを見たりしていた。

 

「貴様ら、出席番号順で専用機持ちに着け⋯⋯」

 

 青筋を立てながら織斑先生が指示を飛ばしていた。

 

 

 

 今日のIS訓練は搭乗して歩行、降りるまでを一サイクルでローテーションする内容だった。

 

「そうそう、初めはゆっくり歩いてみてくれ」

「こ、こうかな」

 

 訓練機の打鉄に乗った女子は一夏の補助を受けながら、少し覚束ない足取りで数メートルをゆっくりと進み、停止。すぐさま飛び降りる。

 

「次は、箒か」

「あぁ。だがこれでは⋯⋯」

 

 立ち上がったままの打鉄を見上げた箒は困った表情を浮かべて立ち尽くす。

 

 専用機ならばそもそも操縦者が乗っている事が前提なので、このような事故はまず起こらないが、訓練機は基本的に展開状態で運用されるので、こう言った立ち上がったまま停止させてしまう事故がよくある。

 

「こりゃいけね、箒。ちょっと我慢してくれ」

「な、何をする一夏ぁあ!?」

 

 一夏は箒を優しく抱きかかえ、そのまま打鉄の操縦席に運ぶ。

 所謂お姫様抱っこの体勢に箒は耳まで顔を赤くして金魚のように口をぱくぱくして声も発せられない状態だったが、やがて諦めて大人しく一夏の腕の中で縮こまってしまう。

 

「ほら、着いたぞ箒。足元に気を付けて乗れよ」

「へ!? はっ、あ、あぁ⋯⋯」

 

 実に名残惜しいが、後がつっかえてしまうので離れなければならない。

 仕方なく箒は打鉄に乗り移り、卒なく歩行をこなして降りようとしたところで、同じ班の女子達から並々ならぬ視線を感じて立ち止まった。

 

 箒さんだけ良い思いをして終わりだなんて、そんなことないよね?

 

 目で語られる無言の圧に箒は根負けしてしまい、何ともわざとらしい芝居をうって、自分も打鉄を立たせたまま飛び降りる。

 

「おい! お前もそのままにしちゃ駄目だろ!」

「これはその、事故だ、事故⋯⋯」

 

 苦し紛れの言い訳を並べる箒を他所に班の女子達は嬉しそうにお姫様抱っこをせがみ、浮かれた空気で授業は進んだ。

 

「ゆいゆい~あれやって~」

「だっこ?」

「うん~」

 

 何かじゃれあっている、という気持ちで一夏の班を見ていた結は足元で飛び跳ねている本音の姿を視界情報に映す。

 ともすればスクール水着の様なISスーツなどで大人しくなるような恵体でもなく、飛び跳ねるごとに揺れる乳房に何人もの生徒が羨ましそうに眺めていた。

 

「別にISに乗れないわけじゃないでしょ」

「ぶー。お姫様抱っこは女の子の夢なんだよ~!」

 

 謎の主張に首を捻りながらも結は本音の脇に手を通し、飼い猫でも掴んだような持ち方で持ち上げる。

 

 

「だめ~!」

「えー」

 

 仕方なく一夏がやっていたようにお姫様だっこをしてやる。

 大層ご満悦なようで、本音はむふー、と鼻息を立てて大人しくなった。

 

「こんなのがいいの?」

「こんなのがいいの!」

 

 そんなものを見せつけられて、欲張らない人間などいない。

 我先に手を伸ばし、次は私いいや私が、とこちらも滞りなく授業が進んでいった。

 

 織斑先生は更に頭を痛めていた。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 授業が終わり、三人は更衣室に戻って着替えていると、シャルが慌てた様子でアリーナに続く通路に走っていた。

 

「ご、ごめん、僕、忘れ物したみたいだから、二人とも先に戻ってて!?」

「お、おう」

 

 取り残された二人はぽかんと呆けていたが、まぁ向こうにも事情があるんだろうということで話が区切られた。

 

「あ、結。今日いっしょに昼飯食わないか?」

「いいよ」

 

 一緒にご飯を食べることになった。

 真耶先生に言っておかないと。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 午前の授業は全て終わり、別教室から集合場所である屋上へと向かっている途中、結は目の前を歩いていた銀髪の少女、ラウラ・ボーデヴィッヒに呼び止められた。

 

「む、貴様。上代とかいったな。丁度いい。お前に聞きたいことがある」

 

 何だろう。誰か分からないし用もないはず。

 ていうか誰だっけ。

 早く屋上に行きたいのに。

 ほんのりと焦る気持ちを抑えながら、結はラウラに向き直る。

 

「貴様、何処の国の所属だ」

「⋯⋯? お姉ちゃん誰?」

 

 授業を一緒にすることが少ないため、人間関係が疎かになりやすい結は同級生でも名前を覚えていない生徒が数人いるくらいなので、今日あったばかりの目の前の少女のことなど殆ど覚えていなかった。

 

 ただ、一夏をぶったことは印象的だったので、それだけは覚えている。

 

「今朝言っただろう。同じことを繰り返すのは好かん」

「銀髪のお姉ちゃん」

「……まぁいい。それで、貴様は何処の国の所属だ。日本か?」

 

 ラウラは溜め息を吐いて自分の本題をなんとか持ちかける。

 対して問われた当人はなんと答えようかと頭を捻る。

 

「ぼく、そういうのじゃないよ」

「嘘を言うな。代表候補生でもない人間が専用機など持てるはずがないだろう。それともお前の国の人間が過保護なだけか?」

 

 捲し立てるような物言いに逃げてしまいたくなるが、結はフードを掴んで踏み留まる。

 

「ちがう。そんなものじゃないよ」

「なんだと?」

 

 その言葉にラウラは眉を潜め、声音を強めて結に言い寄る。

 

「この学園に来るにあたって生徒と国家代表、代表候補生とその専用機について調べてきた。その中にお前もいた。だがお前だけ所属国家がなく、出生についてもISについても不明だった。お前は一体何者だ?」

 

「⋯⋯⋯⋯」

 

 長い銀髪を靡かせた少女は結との距離を詰めて壁に着ける。逃がすまいと壁を叩き、髪を垂らして結を上から睨み付ける。

 

 言い逃れをさせてくれる相手ではないと感じた結は、フードの奥から銀髪の少女を見つめ、臆する事もなく一つ質問を問いかける。

 

「ねぇ銀髪のお姉ちゃん。ぼくの専用機てなんだと思う?」

 

 結の問いかけにラウラはからかわれているのかと鼻についたが、子供相手に腹を立てるのも大人気ないかと身を引いておき、質問に答える。

 

「資料には無かったが、首にぶら下がっているその、今日実習で見せたあのでかいやつだろう」

「違うよ」

 

 嘲るような形だけの笑みを浮かべて息を吐き、結はフードを脱いで制服の胸元を開いて鎖骨辺りまではだけさせ、背中に埋まってあるそれをラウラにだけ見えるように見せしめ、質問の答えを示す。

 

「こっちがぼくの専用機。ガーディアンはこれの鎧だよ」

「⋯⋯それがお前のISだと言うのか?」

「そうだよ」

 

 怒ることなく、悲観するわけでもなく、ただ笑っているだけの結はまたフードをかぶり直して襟元を糺す。

 

「どこで生まれたかなんて分からない。ISなんて生まれたときからここにあった。だから専用機だと思うけど、所属とか多分無いよ」

 

 淡々と話す様子に嘘偽りなく、どこか自分を試すような言い方に、もしやこの眼帯の事を聞かれているのかと思い込む。

 

 だが話してやることはしなかった。

 

 興味も尽きたラウラは壁から手を離し、結を解放してやる。

 

「同情などしないぞ」

「別にいらないよ。もう痛くないもん」

 

 何事もなかったかのように結は踵を返して小さな足で走って行った。

 その姿が階段を登って見えなくなり、足音が聞こえなくなったところでラウラも人気のない場所を探して歩き出す。

 

「私に似て難儀なやつだ⋯⋯いや、私の方がまだ良いほうか」

 

 人間としての扱いを受けていたのだから。

 

 眼帯を指で撫で、地獄のような日々を思い出す。

 

 失敗作の烙印を押され、人として何もかもを失った。

 そんな私を教官が鍛え上げ、今の自分を作ってくれた。

 

 厳しく、凛々しく、何より美しい教官。

 

 そんな彼女を、誰よりも強い彼女を、己の非力さで汚したあの存在が許せない。

 

 覚悟していろ織斑一夏。

 必ずその首を討ち取り、教官の汚名を晴らしてくれる。

 




 ラウラに壁ドンされるって相当に役得だと思うんですよね。

 口で普通に説明するより生で見せる方が良さそうと思ったけど、なっかちょっとえっちな感じになっちゃった。
 まぁ、無意識ってことで。

 ではでは。


 
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