IS【小さな少年は盾を構える】   作:屍モドキ

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 最近、鈴と結のおねショタ(R-18まで)を妄想しては「これ書けるかな?」なんて一人でもやもやしてます作者です。

 別枠で書こうかな。





三十一話 少年と休日の特訓

 土曜日は午後からアリーナが解放され、各生徒は訓練機で操縦練習していたり、専用機持ちならデータ採集や戦闘訓練だったりと賑やかな時間帯である。

 

 この曜日はアリーナの地下に住む結が決まって顔を出す日でもあり、本人曰く「音が響いてうるさいから」だそう。

 

 なので結はIS展開状態でカタパルトの天井に腰掛け、何かするわけでもなく足を泳がせながら地上の生徒たちを眺めるのがこの曜日のよくある形に収まっている。

 

 

 ときおり女子生徒から手を振られて気が付けば振り返すくらいの大人しさだが、ほば確実に『噂の二人目の男子生徒に会える』という事で、ただでさえ使用者の数が多いアリーナの中で、第一アリーナは屈指の人気を誇る。

 

 結からすればいい迷惑ではあるが本人は特段気にする様子もなく、仕方ないと納得して人間観察と日向ぼっこに勤しんでいた。

 

「結ー。ちょっといいかー?」

 

 結のプライベートチャットから呼び出しベルの音が鳴り、通話を開くと一夏の顔が映る。

 

 男三つ巴の状況に同じアリーナにいる他の女子生徒は熱い思いを滾らせていた。

 

 

 因みに箒、セシリア、鈴は急遽開かれたセシリアの料理矯正教室もとい、地獄のお料理教室に参加しており、この場にいる知っている人物は一夏とシャルルしかいない。

 

「いきなり強火以上目指して火をかけるのやめろ」

 

「フィーリングで料理をするな! お前は分量を守れ!」

 

「調味料をいれるぞ! 面白くなってきた!」

 

「え、刺していい?」

 

「もう諦めては……?」

 

 随分な言われように流石の英国淑女も青菜に塩だったようだ。しゅんと縮こまっている様に同級の箒も同情していた。

 

 

 閑話休題。一夏の呼び掛けに応じた結はスクリーンの向こうにいる彼に声を返す。

 

「なぁに?」

「シャルルと模擬戦するからちょっと見ててくれないか?」

「いいよ」

 

 

 

 一夏の申し出に短く承諾し、立ち上がってカタパルトの上から頭を下に向け、真っ逆さま飛び降りる。

 

 端から見ていた生徒はぎょっと肝を冷し、結をよく知っている一組の生徒はハラハラしつつもいつものことだと気にしないように努めていた。

 

 そのまま振り子のように放物線を画いて落下し、一夏達のところまで最短距離で到着した結は何事もなかったかのような振る舞いで地に足をつけて着地して見せる。

 

 

 毎度こうして呼ばれてはあんな飛びかたをするもので、しかもフルフェイス型ヘッドギアのおかげで顔が見えないのも合間って気絶しているのかそれとも素なのか分からないから、見ている側からすれば物凄く怖い。

 

 まだ通話をしてからくるので一夏は無事だとわかってはいるが、それでも不安があることは否めない。

 

「結っていつもあんななの?」

「まぁな。大丈夫だと思うが、ちょっと怖いって思うこともあるな」

 

 横から青い顔をしたシャルルが耳打ちしてくる。

 苦笑いで一夏はもう慣れたと自分に言い聞かせてはいるが、ひやひやして落ち着かない。

 

「この前の射撃訓練も踏まえてちょっと模擬戦したいんだ。シャルルとやってみるから、なにか思うところがあったら言ってくれないか?」

「いいよ。ぼくでよかったら」

 

 そう言って一夏はシャルルからライフルを借りて距離を開き、対面する。

 

 結たちも壁際まで移動して二人の様子を見守る。

 

「いつでもいいよ、一夏!」

「いくぞ、シャルル!」

 

 ライフルを手にした一夏の先制攻撃。

 先日からシャルルに習った通りの撃ち方をできる限り再現し、目測による軸合わせに手間取りながらも飛び回るオレンジの飛翔物を狙って狙撃する。

 

 だがシャルルも黙って撃たれるだけではなく、ガルムを展開して一夏に銃口を向け、上へ飛びながら連射する。

 

「ッ!」

 

 射撃体勢を解いて横に飛び、狙いきれないながらもトリガーを引く一夏。ライフルが弾切れをしてしまい、やむなくライフルから雪片へ武器を持ち直した。

 

 そして刀剣の切っ先をシャルルに向けて身体を弓矢のようにしならせ、突きの構えで飛び込む。

 

「ゼァッ!」

「なっ!?」

 

 まだ零落白夜は発動しておらず、実体のある一撃はリーチこそ短いが、一夏はそれを持ち前の加速性能で補い、振り向いたシャルルが銃口を定めるよりも速くシャルルのガルムを叩き落とした。

 

 振り抜いた刀身は下に傾き、その勢いを殺すまいと一夏は逆袈裟斬りを放とうと左手を柄に添え、振り上げる。

 シャルルもやられるだけには終わらず、左腕のシールドを引き寄せ尖端を振り下ろす。

 

 短く大きな衝撃音がアリーナ内に響き渡り、二人は空中で弾き飛んだ。

 

「凄いじゃないか、一夏!」

「あ、危なかった……」

 

 緊張の解けた二人は互いに武器を下ろして格納し、地上に降りて反省会に洒落混む。

 

「どうだった、結?」

「うるさかった」

「いやそうじゃなくて」

 

 ヘッドギアの耳の辺りを押さえながら結が俯きがちに答える。

 

「もっとこうした方がいいとか、ないか?」

「んー……」

 

 マスクの下でぶつぶつ呟く結はやがて顔をあげ、片手で指を立てた銃のハンドサインを作って宙に指先を向ける。

 

「銃の弾はだいたい真っ直ぐ飛ぶ。それで撃つにも準備がいる。だから当てるなら先に考えないといけない、と思う」

「つまり、予測して当たるところに目掛けて撃てってことか?」

「うん、うん」

 

 ブレ幅があったとしても着弾範囲と言うものは限られてくる。その上で対象物を撃つには相手の行動予測と事前準備が必要になってくる。

 

 そう解釈してみたりはするが、頭でわかっていてもまだ行動が追い付かない。

 悩んでいても仕方ないと一度話し合いを切り上げ訓練を再開しようとしたところで、三人に絡む人物が一人。

 

「私と戦え、織斑一夏」

 

 真っ黒いISを身に纏うドイツから来た一組の転校生、ラウラ・ボーデヴィッヒその人だった。

 

 厳しい表情で対面する一夏は依然として律した態度でその誘いを断る。

 

「嫌だ。理由がねぇよ」

「貴様に無くとも私にある。断る権利はない!」

 

 有無を言わせずラウラはレールカノンを展開し、近距離から一夏へ向けて撃鉄を降ろす。

 

 瞬間の出来事に飛び退こうとしたが、一夏の前にシャルルが盾を持ってそれを後方に弾き、跳弾したそれを追いかけた結が、弾が落ちるよりも速く着弾点に到着して二次被害を抑える。

 

 反撃とばかりにガルムを構えたシャルルが容赦なくラウラへ向けて発砲したが、発射された弾丸は全て彼女の目の前で減速し、停止した後に重力に従う。

 

 余裕の笑みを浮かべたラウラは冷たい眼差しでシャルルとその後ろの一夏を睨む。

 

「邪魔をするな」

「いきなり仕掛けてくるなんて、ドイツの人は沸点が低いのかな?」

第二世代(アンティーク)風情が意気がるなよ」

「未だに量産の目処が立たない新人(ルーキー)よりはましかと思うけど?」

 

 剣呑な空気が一人と二人の間を漂うが、そこに監視していたらしい教師がマイク越しに呼び掛けてくる。

 

『そこの生徒、何をしている! 学年とクラスを言いなさい!』

 

 警告も無視して私闘に持ち込むほど分別を弁えていないわけではないようで、一つ舌打ちをしてラウラは振り向き去っていった。

 

「覚えておけ」

「……」

 

 カタパルトに戻る黒い影を見つめていた一夏とシャルル。

 自分達も戻ろうと振り向いたときには、既に結の姿はアリーナから消えており、抜けた声を上げるシャルルをからからと笑う一夏だった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 LEDの目映い照明が照らすアリーナ内部の通路を早足に進むラウラの後ろを、ラウラよりも低い背丈の少年が小走りに追いかける。

 

「何故ついてくる」

「お姉ちゃんから怖い感じがしたから、かな」

 

 流石に気になって足を止めたラウラが苛立ち混じりに結に問いかけると、結は疑問系の答えを返すのでラウラは更にフラストレーションを募らせる。

 

「銀髪のお姉ちゃんは、どうして一夏お兄ちゃんを嫌うの?」

「単純だ。奴が弱いせいで、教官の顔に泥を塗ったからだ」

 

 ラウラの答えに首を傾ける結。

 

「泥?」

「そこからか……えぇとだな、つまりその、織斑教官の面子を潰したというか……ええいまどろっこしい! 何故私がこんなことを話しているのだ!?」

 

 意味が通じないとはここまで面倒なのか、と頭を抱えるラウラ。

 

「奴が弱く、教官の手を煩わせたせいで織斑教官はモンドグロッソの棄権を余儀無くされたのだ。わかったか!」

「んー」

「こやつめ……」

 

 理解しきっていないのか間の抜けた返事をする結に対して拳を震わせるラウラだが、息を整えて言葉を紡ぐ。

 

「私は弱いものが許せない。それで他人の足を引っ張るのであればなおのこと。そして織斑一夏は自身の弱さで教官の足枷になっている、だから奴が許せない」

 

 やっと言葉に出来たことに少し満足したラウラは胸のうちで小さくうなずく。

 対照に結はずっと首を傾げたままだった。

 

「ねぇ銀髪のお姉ちゃん。もしお姉ちゃんが一夏お兄ちゃんを倒したら、昔の事が変わるの?」

「どういうことだ」

 

 意味を捉えきれないラウラ。それでもその言葉に説教を垂れるような意を感じとり、眉間に皺を寄せる。

 

「今のお兄ちゃんを殺せば、千冬先生はその大会に勝てた?」

 

 ラウラはナイフを抜き取り、結の足元に投擲する。

 

「……私を怒らせるなよ」

 

 だが結は怯える様子もなくそれを床から引っこ抜いてラウラにグリップを向けて返す。

 

「銀髪のお姉ちゃん。人を殺しても昔のことは変わらないよ」

 

 下唇を噛みきってしまいしそうになるほど噛み締め、結が持っていたナイフを奪い取って切っ先を向ける。

 

「そんなこと知っている、私が許せないのは奴の弱さだ、教官を弱くさせる奴の軟弱さだッ!」

 

 ラウラの怒りは止まらない。

 煮えたぎる感情の渦は尚も沸き上がり、ラウラを歪んだ怒りに染めていく。

 

「あの男だけならまだいい。だが、その周囲を堕落させる奴の弱さが気に入らない。許されない……!」

 

 修羅のような覇気を纏う彼女はナイフを納め、結に背を向ける。

 

「もう私に関わるな」

「……」

 

 焦燥感に駆られた彼女を結は哀れむ目で見ていた。

 

 いつだったか、手にかけた彼等を嘆き、凶器を己の体に突き刺したときの自分を見ているようだった。

 そんな客観的な思考に苛まれて、少年は服の裾を掴む。

 

 

 感傷に浸る暇も与えてくれないまま、結のプライベートチャットにまた一夏からコールが鳴る。

 

「なに、一夏お兄ちゃん」

『よかった、繋がった。今からボーデヴィッヒの対策を練りたいんだ、少しでいいから部屋に来てくれないか?』

「わかった」

 

 了承して通話を切り、結は一度自室に戻って汗を落とし、私服に着替えて生徒寮に向かう。

 

「わっ!」

「う゛」

 

 しかし道中、結はアリーナの出口でシャルルとぶつかった。

 

「ご、ごめん結! ちょっと今急いでるからあとでね!」

 

 転けた結を手早く起こし、手に持った着替えを抱えたシャルルは早足に寮へ向けて走っていった。

 

 あまりに慌てた様子になんと声かけすればよかったのかわからず、その場で呆けていた結だが、目の前にシャルルが落としていったのであろう白い布を見つけた。

 

 

 取り敢えず拾い上げて見ると、それは三角形の形をした布で、広げてみればそれが下着であることがわかった。

 

 

 女物の。

 

 

 

 趣味だろうか。

 頭のなかに宇宙が広がった結は考えることを一先ず放棄して、それをポケットにしまう。

 

『(女物ノ下着、股間ノ痛ミ、妙ナ詮索)』

「(怪しいのは前からでしょ)」

『(マァナ)』

 

 一夏お兄ちゃんの部屋に行こう。シャルルさんもいるはず。そのときに聞こう。

 

 




 使用楽曲の使い方がよく分からない。
 曲が流れるのか、それとも歌詞を載せたら使用元として記載するのか。

 教えてエロい人。
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