なんとかお見せできる程度になったので投稿した次第であります!
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フォルテに勝ち、二段加速を修得した一夏はその機動性を伸ばしながらフォルテとダリルの二人を相手に対抗出来るだけの能力を身に付けた。
伴って一緒になって特訓に参加していた鈴やラウラも各々のスキルアップを果たし、連携の精度も上げた。
本日は今の一夏の力量を確かめるべく、一夏とダリルの一騎討ちの試合が行われる。
「さァーて、今日お前が勝てば晴れてお前の力が証明されるが、意気込みを聞こうか?」
「絶対に勝ってみせます」
「いいねェ、それじゃあ早速往こうかッ!」
観客など誰もいない静かなアリーナに、けたたましい試合開始のブザーが鳴り響く。
同時に飛び出した両者は互いの得物をぶつけ合い、一度離れた後にスラスターを噴かし、また刃を交える。
「ははァッ! こんなもんじゃモノ足りねェだろ!?」
「当然!」
双刃剣事態の対処法は鈴の甲龍が持っている双天牙月で解っているので理解はしているが、甲龍の物よりも小振りで取り回しやすいヘル・ハウンドの双刃剣は軽量な分手数が多く、一撃弾けば次の一手が既に目の前に来ているような速さに何とか食らいつく。
しかしそれだけではない。
両肩の犬頭が牙を向いて口を開き、明々と燃え滾る火球を飛ばしてくる。
炎の弾を払い除け、揺らめく炎の向こうから爛々とした目を向いたダリルがにまりと笑って双刃剣を振り下ろしてきた。
「ダラァァッッ!!」
「ぐッ!」
反応に遅れた一夏は回転の乗った一撃を受け止めてしまい軋む身体に鞭打って、ダリルの双刃剣を押し退け、彼女目掛けて飛翔する。
二段加速の応用で片側ずつ使って幾何学的な軌道を描きながら旋回し、飛び交う火球の隙を縫うように寸のところで避けては好機を伺う。
だが『零落白夜』だけでもエネルギーを食う燃費の悪さに加え、通常の二倍の燃料を消費する瞬時加速を片側ずつとはいえ連続して使っている一夏は短期決戦を狙いたかった。
「往くぞッ!」
「来なァッ!」
片側のスラスターだけで初動を始め、段階を踏んで両方のスラスターで翔ぶ一夏は『零落白夜』を発動する。それに呼応してダリルも刃に炎を纏わせ両肩部の犬頭に火球を生み出し発射態勢を整え一夏に急接近する。
「これでどうだぁぁぁッッ!!!」
「オォラァァァ!!!」
真っ白い光の流星が、巨大な灼熱の火球に飲み込まれる。
貫かれるような熱気に包まれながら彼女の間合いに入った一夏に照準を合わせて両肩部の火球を放つ。放たれた火球を装甲を焼きながら掻い潜り、一夏はダリルの懐に潜り込むが彼女は双刃を振り回して一夏の一撃を叩き斬るように弾く。
「俺は、負けない!!」
「何っ!?」
打ち落とされた刀を即座に逆袈裟斬りの構えに持ち直して切り上げ、ダリルの双刃剣を弾き除ける。瞬間に出来た隙で唐竹を繰り出し『ヘル・ハウンド』のSEを根こそぎ削り落とした。
火球が晴れ、試合終了のブザーがアリーナに響き渡った。
中央のホログラムには一夏の名前が表示され、彼の勝利が決定した。
「残り、6%⋯⋯やったぁぁぁーーーー!!!」
軽度とは言え火傷を負いながら勝った一夏はひりつく全身に気にも留めず勝利した余韻にたっぷりと浸かっていたが、姿勢を崩して意識が傾き、そのまま地面へ垂直に落下した。
「大丈夫かー」
「いつつ⋯⋯なんとか」
当初の目的から多少遠回りこそしたが、それでも上級生に対して勝利を収めた一夏はこの数日で明らかなスキルアップを果たした。
その方裏で一人の少女がISの製作に勤しんでいた。
「形にはなってきたけど、どうにも稼働データにムラがあってイマイチだなぁ⋯⋯」
現在主流の第三世代型のISでは単一仕様の出力が大きすぎてどのISも燃費が悪く、それに釣られて比較が難しかった。比べて第二世代型は出力自体はどの機体でも安定こそしているもの、やはり旧世代という点から製作中のISに当てはめようとすればスペックの違いからどれも今一つ。
「お困りかしら」
「何しにきたの、お姉ちゃん」
現れたのは変態ショタコン残念美人の実姉である更識 楯無だった。
卑屈からではなく軽蔑から距離を取る簪の露骨な塩対応に内心号泣しながらも楯無は咳払いで誤魔化しながら簪にメモリーカードを手渡す。
「これは?」
「ミステリアス・レイディの稼働データよ。活用して頂戴」
それは楯無の専用機のデータが詰まったデータだった。
それだけ言い残して楯無は整備室を出ようとしたが、扉で立ち止まって簪に語り掛ける。
「簪ちゃん。貴女はそのISで何をしたい?」
いつものおちゃらけた調子ではなく、真剣な声音に気圧されながらも簪はメモリーカードを握り締めてその質問に答える。
「私は、結を守りたい。誰が相手でも、何を言われても」
あの悲しそうな笑顔が忘れられない。
全てを諦めたようなあの横顔から、きっと自分には計り知れない大きな過去があるのだろうと感じた。
「そう、なら強くならなくちゃね」
「うん」
そう言って楯無は今度こそ整備室を出ていき、冷たい室内には静寂が訪れた。
「結は私が守る。そのためにも完成させるんだ、私のISを」
もうすぐ完成させてあげるからね、『打鉄弐式』。
視線の先にある未完成のISが応えるように煌めいた気がした。
上級生との特訓一先ず終了です。
途中結を乱入させるかで悩んだのですが、結局は止めました。