IS【小さな少年は盾を構える】   作:屍モドキ

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 書いちゃった。
 

 追記:誤字修正ありがとうございます。

    


五話 少年と特訓

 昼食が終わり、結に会う時間の話をしていないことに気がついた一夏は結を探しに学園内を歩いていた。

 

「結のやつ、何処にいるんだ? ん、あれは……」

 

 見掛けたのは副担任の山田先生。出席簿やら教材やらを抱えて曲がり角から歩いて出てきた。

 

 一夏は手を振って駆け寄り結の居場所が分からないかと訊ねてみる。

 

「はぁ、結ちゃ、結君ですか……ごめんなさい、私にも分からないんです。この時間はよくあちこち歩き回ってるので見つけるのは一苦労ですよ」

「そうなんですか……じゃあ結の部屋は分かりますか? 生徒寮に行かなかったので場所が分かんなくって」

「あの子の部屋はアリーナの裏口から入って奥の所にありますよ」

 

 垂れ下がった眉をいつもの山なりに戻した山田先生はそう答えた。

 その答えに今度は一夏が首を傾げる。

 

「なんでそんな所に?」

「あの子についてはまだ分からない事が多すぎて教えようにも教えられないんです」

「なるほど……ありがとうごさいます、山田先生」

 

 話を聞いて去ろうとする二人を真耶は呼び止める。

 

「用事があるなら伝えておきますよ」

「それでは放課後、道場に来るよう伝えてもらえますか?」

「なんで道場なんだよ箒」

「お前の力量を視るためだ」

「わかりました。そう伝えておきますね」

「それではお願いします。一夏、もうすぐ昼休みも終わる。急ぐぞ」

「あ、おい! じゃあ、お願いしますね山田先生!」

 

 時間的に諦めたのか教室に戻る二人を見送りながら山田先生は手を振り、彼らが見えなくなったころに愛想笑いを曇らせる。

 

「本当に、なんであんなにも小さな子にあんなことをしたのか。分からないです……」

 

 山田先生は別教室に向かうと、既に着席していた結を見て朗らかな笑顔を浮かべる。扉が開いた音に気付いて伏せていた顔を上げた結は瞳に微かな光を戻して真耶を見た。

 

「結ちゃんこんにちは」

「こんにちは」

「早速午後の授業に入りましょうね」

「ん、はい」

 

 

 ◇

 

 

 授業終わり、真耶は結に一夏と箒が道場に来るように言っていたと伝えると、結は思い出したようにあっと口を開き、了承して教室を出る。

 

「ありがとうございます、山田先生。ちょっと行ってきます」

「はい、気を付けてくださいね」

 

 背負えるように改造された手提げ鞄を背負い、道場に向かって軽く走る少年を見送る。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 道場。

 

 板張りの室内で、竹刀の弾けるような音が響く。

 中にいるのは二人、雪崩れるような攻めの連打を打つのが箒で、それを捌くもいなしきれず、されるがままになり、肩で息をするのが一夏。

 

 やがて一夏はしりもちをついて倒れ、箒は面を取って一夏に詰め寄る。

 

「何故だ一夏! 何故そんなにも弱くなった!」

「なんでって、そりゃまぁ中学三年間帰宅部だったしな」

 

 箒は拳を震わせ再度激昂する。

 

「私が鍛え直してやる! IS以前の問題だぞ一夏!」

「いや、ISは乗らないと駄目なんじゃないのか?」

 

「何やってるの?」

 

「うわぁ!?」

「なっ、なんだ、上代か」

 

 いつの間にか道場に来ていた少年は二人の横で様子を見守っていた。

 

「いやなに、一夏が昔より弱くなっていたのでな。鍛え直してやろうと」

「だからっていきなり本気でやることもないだろうに……」

「うるさい」

 

 結は真反対な状態の二人と、彼らの手に握られている竹刀に目を向けたあと、一夏に近付いて竹刀をねだる。

 

「お兄ちゃん。それ貸して」

「いいけど、結にはちょっと重いと思うけど」

「ちょっとだけ、ね?」

 

 一夏は訝しげに少年に竹刀を渡し、壁に寄る。

 結は一夏から受け取った竹刀を握ったり振ったりしてその勝手を探り、箒の前に向かって竹刀を構える。

 

 しかしその持ち方は独特で、柄と鶴を持ち、剣先を上に向けて構える。彼の背丈と変わらないくらいの竹刀は、剣と言うよりも盾のように見えた。

 

「一応聞いておくが、手加減はいるか?」

「いらない」

「そうか……なら全力で往くぞ!」

「おい箒、それは」

 

 一夏が何か言いかけたが、箒は不完全燃焼も相まっておののく速度で結に向かって打つ。

 しなった竹の破裂音が響く。

 箒の一撃を、結は一歩も動かず、手に持った竹刀を上に掲げて防いだ。

 

「ほう。反応は速いな」

「まだはやくない」

「言ったな!」

 

 それからも箒からの連撃が結に向かって放たれるが、結は目を見開き、全てを捉えて捌ききる。

 一発一発が重く、響くような衝撃があの小さな体に走ると考えると、一体どうやっていなしているのかが気になる。

 

 そうしていると、箒の上段を結は竹刀を斜めにずらし、軌道を逸らしてそのまま弾く。

 

「何っ!?」

 

 逸れて畳に着いた剣先を、結はすかさず踏みつけて自分の持っている竹刀の物打ちを箒の胴体に当てる。

 

 勢いこそあったがやはり身の丈にあっていなかったのか半ば得物に振り回されていたようで、威力は蚊に刺された程度だったのか、箒は痛がりもしなかった。

 

「う、これで良かった?」

「すげぇ、どうなってんだよ結!」

 

 ポカンと呆ける箒を余所に、一夏は結を抱えてはしゃぐ。結は気恥ずかしそうに顔を赤らめてされるがまま胴上げを受けるが浮かれた二人を箒が止めに入り、話し合いになる。

 

「上代、お前は何か武術の稽古をしていたのか?」

「……まぁ、たぶん」

 

 何処か端切れの悪い回答をする少年を不思議そうに見るが、昨日の事もありあまり触れなかった。

 

「けど、これとISに何か関係あるのか?」

「ある、と思うよ」

 

 結は竹刀を置いて一夏の前に座る。

 

「ISていっぱいわかんない事があるし、人の体に付いてないものだってあるけど、どうやって動かしてるかって言うのは腕を動かすのと変わらないんだよ」

「つまり?」

「お兄ちゃんは自分の体がどういうふうに作られてて、何がどうして自由に動かせてるか全部わかってて動かしてる?」

「そんなことを考えたことないな……」

 

 小さな口から垂れ流される哲学的な話にギャップと頭痛を覚えだした一夏は話に食らい付くので手一杯だった。

 

「だよね。それでいいんだよ」

「は?」

 

 まさかの肯定に間抜けな返事をしてしまった。

 それでいいとはどういうことなのか、言葉を探して質問しようとしたらその前に結が説明しだす。

 

「ISは人の体の動きに合わせて動くようになってるの。だから機械が動くのを意識しなくても腕を動かしたらISの腕も動くし、足を上げたらISの足も上がる」

 

 結の説明に一夏だけでなく、いつの間にか一夏の隣に座って結の話を聞いていた箒も関心を持って聞いていた。

 

「でも、それじゃあスラスターはどうなるんだ?」

 

 一夏の質問に結が少し顔をしかめて答える。

 

「そこが問題、なんだけど、人はもともと飛べないから別のイメージを持たないといけないの」

「例えば?」

「飛行機。あとは魚みたいな泳ぐ生き物とか、かな」

 

 腕を組み、上を見上げて想像してみる。

 翼を持ち、タービンを回し動力を得た巨大な鉄で出来た鳥のような塊が空を飛ぶ光景。

 それと魚類が海の中を自由に泳ぎ回る姿。

 

「うぅ~ん……なんとなく、わからんでもない……」

「結局動くのは自分だからね。色々やってみるのがいいと思う」

「そっか、分かった。ありがとな結!」

 

 そう言うと一夏は竹刀を掴んで立ち上がり、箒に頭を下げて稽古の続きを乞う。

 

「イメージが大事なら剣の感覚を取り戻さないとな。箒、頼む!」

「元よりそのつもりだ。覚悟しておけ一夏!」

「おう!」

 

 互いに構え、また打ち合う。

 その後も、一夏は剣道の稽古に加え結からISの操作について教わりながら決闘に向けて猛特訓を重ねた。

 

 

 

 

 

 そして、遂に迎えたセシリアとの決闘当日。

 

「なんだかんだ言いながらずっと竹刀振ってただけなんだけどさ、大丈夫だと思うか?」

「……」

「こっちを見ろよ」

 

 アリーナ待機室の壁に背を預けて並ぶ二人。

 

 なんと声をかけたらいいのか分からなくなった箒は逃げの一択だった。

 剣呑な空気の二人に結は少し離れたところでおろおろしていたが、真耶が慌てながら部屋に入ってきた。

 

「織斑君~! 届きました! 織斑君のISが届きましたよ~!」

 

 ようやく到着した一夏専用のIS。

 皆ついて行き、IS用ハンガーにかけられた、くすんだ白色をした機体を見上げる。

 

「これが……」

「織斑君の専用機、『白式』です!」

 

 シャープなボディには蒼いラインが入り、メインカラーの白さをより際立てている。ISは待機形態をとっており、乗り込めば直ぐにでも動き出しそうだが、まだ初期設定のままだ。

 

「織斑。今すぐ搭乗してフィッティングに入れ。これより予定を変更してセシリア対上代の試合を行う。上代、カタパルトに向かえ」

「「はい」!」

 

 織斑先生の指示に従い、それぞれ行動に移る。

 一夏は専用機の『白式』に乗り込み、結はハッチに向かい、制服とパーカーを脱いでISスーツだけの状態になる。

 フードで隠していた項の機械部品。背骨のように突出した部分に引っ掛かる様につるした盾の形をしたペンダントを握り、目を閉じて祈る様にペンダントに呼びかける。

 

 

 

 守って。

 

 先生、ガーディアン。

 

 

 

 




 ネーミングセンスはクソですが、許してください。
 魚より脳みそ詰まって無いので思いつかない。
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