寝食忘れてプレイするぐらいにハマってるのでマジで困ってます。
織斑先生の指揮で教員らは生徒を各部屋に押し込め大広間に専用機持ち及び代表候補生を召集し、この度発生した事件と殲滅対象の情報を説明する。
隣の部屋では拘束帯と目隠しを施された結が布団の上に転がっており、声になら無いおどろおどろしい呻き声を上げながら脂汗をかいてのたうち回っていた。
気が気でない一夏だったが、今はこの事態が発生した原因の対処に意識を割く。
「アメリカの第三世代軍用IS『シルベリオ・ゴスペル』今後福音と呼称、が稼働実験中に突如暴走し、マッハ二で飛翔中。あと数刻でこの海域を通過する」
一夏と箒は代表候補生ではない故このような非常事態に直面したことなど無く事態の大きさに追い付くためかじりつくように説明に耳を傾けていた。
他のセシリアや鈴等はホログラムに表示された海図予測移動地点と対象ISのスペックを視て渋い顔を浮かべている。
「わたくしのブルー・ティアーズを高速パッケージに換装すれば追い付けないこともありませんが、それでは対応に間に合いません……」
「それなら『紅椿』の出番だよ!」
部屋の天井をガパリと開いて降りてきたのは例の兎こと篠ノ之 束。
身軽な身のこなしで天井から降下して音もなく千冬の前に躍り出る。
「私の作った紅椿なら換装無しで高速機動可能、全身の展開装甲をフルに使うこと前提だけど、今の箒ちゃんなら使えるはずだよ!」
「それは本当か束」
「モチロン! これぞパッケージの交換を不要とした第四世代の真骨頂であり一番の強みだもんね!」
兵器としてのISの完成を目指した第一世代。
後付武装によって戦闘での用途の多様化に主眼が置かれた第二世代。
操縦者のイメージ・インターフェイスを用いた特殊兵器の搭載を目標とした第三世代。
各国が第三世代の実験段階の枠を出ないなか、今現在世界中の機体全てを凌駕する性能を秘めた紅椿。
此度の事件で箒に白羽の矢が立つのは必然だった。
「作戦を伝える。篠ノ之の紅椿で接近、織斑の白式による『零落白夜』で撃破。チャンスは一度きりだと思え」
「「はい!」」
別室。
赤と緑のライトが交互に点滅を繰り返すうなじの部品を布団に押し付けるようにうねる結はガチガチと歯を震わせて唸り声を上げていた。
「だめだ、君は出なくて、いい……!!」
『ウルセェ、アレダケ暴レテヤガルノニ オ預ケナンテ冗談ジャネェ!!』
声が途切れる寸前、頭のなかを引っ掻き回すような金切り声の悲鳴が聞こえた。
それはラウラの暴走事件以降から耳に入ってきたISの声だと言うのはすぐに理解できた。
悲鳴が聞こえた直後に怖気がするほどのヒステリックな敵意に満ちたISの声が聞こえ、それに共鳴してファントムが暴れだした。
それ以降悲鳴を上げたISの声は聞こえていないが、まだ遠くにいるそのISを討とうとファントムが暴れ、ガーディアンが何とか押さえ付けているがどれほど持つかわからない。
夜の暗がりに怯えるように、見知らぬものを怖がるように、往きすぎた疑心暗鬼に満ちた声の主をどうにか宥めなければこの事態は終息しない。
わかっているのに身体は思うように動かず、装甲の崩壊と再構築を繰り返すISに意識が飛びそうになる。
「止めなきゃ、あの子を……!」
◆
昼下がりの海辺に並び立つ一夏と箒。
あれだけ騒がしかった海が今では閑散とした印象を受け、どこか寂しさを感じる。
二人と面向かって織斑先生が憂いた眼差しで二人を見つめる。
「すまない、こんな事に巻き込んでしまって……」
「心配すんなよ千冬姉、必ず生きて帰ってくる」
「あぁ、一夏と私なら問題ありません!」
死ぬかもしれないという緊張と畏怖が入り雑じる感情をひた隠して笑う一夏とは別に、箒はどこか危うい有頂天になった調子のままで胸を張っている。
「こい、白式!」
「往くぞ紅椿!」
ISを展開して浜辺から足を浮かせる。
「生きて帰ってこい」
「あぁ!」
「はい!」
一抹の不安を残したまま作戦は開始され、福音へ向けて二人は飛び立った。
「一夏、振り落とされるなよ」
「頼んだ箒」
飛行可能高度まで飛翔し、一夏は紅椿の背にしがみついて輸送を任せる。
戦闘は極力避け、可能であれば一撃での撃破が望ましいが、戦闘が始まってしまえば一夏と箒に勝ち目はない。
それもあり、白式のエネルギーはできる限り温存しておき紅椿で目標との介入地点まで移動、接触と同時に『零落白夜』で奇襲。一撃離脱での勝利が望まれた。
可能なら撃破、延長が見受けられる時点で作戦失敗とみなし退却する手筈になっている。
けれど、もしも倒せなかったら……。
そんな不安が頭のどこかで引っ掛かり、紅椿に掴まる腕が強ばる。
「距離百kmを切った、もうすぐ当たるぞ!」
「分かったッ!」
気の迷いを振り払った一夏は紅椿の背に低い姿勢で立ち上がり、『零落白夜』を発動させる。
実体剣が割れ、シールドエネルギーを変換して現れた光の刀身を横這いに振り絞り、肉眼で視認出来るまで近づいてきた銀翼のISをただ一点に見据えて構える。
「ゼェァァァーーーーーーーッッ!!」
『ッ!』
一夏の横一文字が放たれた瞬間、攻撃を察知した福音が反転して一撃を躱した。
初撃は失敗、全身を翻して羽根を振り撒くように、福音は鋼鉄の銀翼からエネルギーの光弾をぼろぼろと翼から発生させ、一斉に発射させてくる。
「く……ッ!」
紅椿の背中から飛び退き一夏と箒は反対方向に回避する。
しかし光弾は均等に二分して二人の軌道をなぞるように追い掛け、一夏は海面すれすれを飛んで光弾を海面に着弾させることで捌き、箒は振り抜いた二刀で全ての光弾を撃ち落とす。
「一夏、ここで墜とすぞ!」
「……! ダメだ箒!」
「ッ!? 何故だ一夏!!」
一夏の制止に箒は戸惑いながら昂る感情のまま聞き返す。光弾を避けながら一夏が示した先には一隻の漁船が大きな弧を描いて旋回しているところだった。
とっくに避難勧告がされている、なのに何故まだ船がここにいるのか。
その答えは単純だった。
視界情報が示すのは登録不明の密漁船。
そもそも勧告にも聞く耳をもたなかった犯罪組織の人間だった。
「あんな奴ら放っておけ、今は福音の討伐が優先だろうが!」
「いい加減にしろよ箒ッ!」
叫ぶ箒に一夏はそれ以上の怒気を持って箒に迫る。
「お前どうしたんだよ、ISが手に入ったからって弱い奴らは見放すのかよ……それがお前の求めた強さかよ!」
「それ、は……」
思い出すのは中学時代の剣道全国大会の光景。
姉への憎しみを持って剣を振るい、立ちはだかる者を全て打ち倒していくうちにいつの間にか全国決勝まで進んでいた。
日本一と言う名誉に喜ぶ周囲に目もくれず、ただ憂さ晴らしのために握る竹刀はなんとも心許なかった。
なんの障害もなく圧倒的なまでに相手選手を叩きのめし全国優勝を果たした後、試合場の隅で酷い打撲傷を擦る相手選手が見えた。
私は何のために力を得たのだ。
いもしない姉への怒りだけでこんなことを続け、見ず知らずの相手へ怒りをぶつけてきただけではないか。
大好きだった剣道を汚し、肉親を恨み、私は何がしたかったのか。
そんな自己嫌悪の念に駆られてそれ以降竹刀を持つのが怖くなったのではないか。
両手の刀が掌からこぼれ落ち、上空で消滅する。
空いた掌で顔を抑えて自己嫌悪に押し潰れそうになりながら箒は泣き崩れるしかなかった。
「私は、私は……!」
「……! 危ない箒!」
再度一斉に発射された数多の光弾。
まだ海域を離脱しきれていない密漁船と呆けていた箒を庇って一夏は光弾の雨に己の体を晒し、自らを犠牲にして箒を守った。
「一夏ぁ!!」
髪留めが弛んでほどける。
最愛の人から貰ったリボンが。
◆
作戦は失敗。
密漁船というトラブルに見舞われ福音の討伐は未達成に終わり、要であった一夏は意識不明の重傷を負い、集中治療の末昏睡状態に陥っている。
「……お兄ちゃん」
畳に似つかわしくない医療器具がごろごろと部屋に置かれ、全てが一夏に繋がれている。
いつかの自分もこんな状態だったのだろうかと場違いなことを考えながら結は未だに目を覚まさない一夏の手を握る。
「一夏、そんな……」
隣では静かに涙を流す箒がわなわなと震え、濡れた瞳で一夏の顔を見下ろしていた。
「大丈夫、白式のお姉ちゃんが付いてるから」
「上代……?」
拳を硬く握り締める結はすくと立ち上がり、短い歩幅で部屋の外へ出ていった。
箒からは後ろ姿しか見えなかったが、怒気にも似た何かを感じ取って何も言えなかった。
止めなきゃ、あの子を。
次回ぐらいで福音事件終わったらいいなと思ってます。
何かあればご報告ください。
ではでは。