IS【小さな少年は盾を構える】   作:屍モドキ

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【挿絵表示】

 私事で申し訳ないのですが、ありがたいこと読者の方からファンアートなるものをいただきました。
 ご本人様からは掲載許可をいただいております。

 ダーク・リベリオン様ありがとうございます!

https://syosetu.org/user/3864/
ダーク・リベリオン様のページも載せておきます。






五十五話 少年達と福音

 海上を飛行しながら結は仮面の下の涙を自覚する。

 

『何泣イテンダ』

「……うるさい」

 

 ファントムが嬉しそうに問いかけてくるが結は冷たく一蹴して再び前を向く。

 真耶の制止を張り切って飛び出したことに対する罪悪感を噛み殺し、重くなる足取りを紛らわす為に速度を上げる。

 

 帰ったら怒られるかな。怒られるだろうな。

 そもそも帰れるかな。

 

 また暴走したらどうしよう……。

 

 今はファントムが大人しいけど、暴れなくなったわけじゃないし、ガーディアンも起動するかわからない。

 

 もしものときは首輪があるし……。

 

 黒い感情が焦げるように燻りだしたところで頭の中にファントムの声が響いた。

 

『ケドナ単ニコイツヲ絆グダケジャア意味ネェダロ』

「わかってるよ」

 

 ガーディアンは封印装置であり修復装置でもある。

 ISが極度のダメージを追っていなければ封印棺は現れない、どころかただ鎧を着せて終わりなので余計に面倒になる。

 

 つまり福音を討伐する寸前まで追い詰めなければガーディアンをもたせる意味が無く、今の自分にはそこまで攻撃を出せる手段がなかった。

 

 

 なんとか決め手となる攻撃手段を模索していると突然鳴り響いたオープンチャットの呼び出し鈴に足止めを食らってその場で停止し、渋々チャットに出る。

 

『結か、少し待て』

「ラウラお姉ちゃん?」

 

 電話主はラウラだった。

 何事かと思いはしたが、すぐに目的は同じだろうと予想して話に耳を傾ける。

 

『我々も手を貸す。もうすぐ合流するからその場からあまり離れるな』

「どうしてここにいるってわかったの?」

 

 既に排他的経済水域まで来ているのだが、ラウラの予想は正しく自分の居場所とまではいかないが目的が露見している事に少なからず驚く結。

 そんな少年にため息を付きながらラウラは専用機持ちを引き連れて結のいる地点まで移動する。

 

『それを言うならお前だって、作戦会議に参加していないのに何故福音の居場所がわかっているのだ』

「だって声が聞こえるから……」

 

 ISとのディープリンクが織り成す特殊能力とでも言うべきもので探索しているという結にラウラは言葉を失う。

 

 やがて周辺探索マップに数機のISが確認したところでチャットを切り、一分と待たずにラウラ達が到着した。

 一夏を除いた一組の専用機持ちの面々や鈴、簪までもがそこにおり、あまりの戦力に結は嬉しいやら呆れるやらで肩をすくめる。

 

「みんなまで……千冬先生に怒られるよ?」

「今から国際問題に介入しようとする非公認の男性操縦者が何を言うか」

 

 結という存在が不透明な箇所が多すぎて各国の情報機関が挙って結の情報を探るが無いものはない。結果、世間では『存在しない男性操縦者』とまで言われていた。

 

 つい先日の外出でその姿が世間の目に晒されたが、そもそも顔写真すら無いのでそれすら半信半疑の情報に留まっている。

 

 伴って結は世界各国から幻の二人目だとか、存在しない男だとか言われたい放題だった。

 

「ともかく、編成を確認する」

 

 ラウラの指揮の下、現在の人員での編成が組まれる。

 

 近距離戦闘は箒、鈴が担当し、後方支援にラウラ、セシリアが配置。中距離支援はシャルロットが担い、簪は隙をみて砲撃支援、全体の防御支援に結が付くことになった。

 

「皆準備はいいか?」

 

 ラウラの言葉に皆無言で見合わせて頷く。

 

「作戦開始だ」

 

 

 ◆

 

 

『…………』

 

 海上でバリアーに包まれていた福音、そこへ一発の砲弾が飛来し、認識したと同時に福音へ着弾した。

 

 攻撃に気が付いた福音は防御壁を解除して戦闘態勢に移行する。

 続け様に光弾が数発、上体と右翼部を狙って狙撃され、考える間もなく避けた途端にミサイルの雨に晒された。

 

『ッ!』

 

 反撃として鋼鉄の双翼から光の弾を振るい出した福音は自分へ目掛けて迫りくるミサイル群へ光弾を迎撃させて相殺する。

 

 それでも受け切れなかったミサイルに撃たれて多少のダメージを負うが、致命傷には至らず臨戦態勢に移行する福音を確認したラウラは次の指示を出す。

 

「箒、鈴、左右から攻撃。デュノアは上空から射撃支援。オルコットは次のポイントに誘導しろ」

「「「「了解!」」」」

 

 間を開けずに斬りかかった箒と鈴を避けて福音が上空に飛び上がるがそこをシャルロットがグレネードランチャーで撃ち落とす。すかさずラピットスイッチでガルムに持ち替えダメ押しとばかりに足止めをしているところを近接組の二人が背面から攻撃を入れる。

 

「貰ったぁ!!」

「墜とす!!」

 

 二刀から飛翔する斬撃と四連装に増設された龍砲のダブルパンチはそこへ追い打ちをかけて福音のシールドエネルギーを消耗させる。

 

「狙い撃ちですわ!」

 

 間髪入れずにセシリアの射撃が福音の羽を穿つ。

 堪らずに逃げる福音だがそれすらラウラの目論見通りに動かされていた。

 

「更識、撃て!」

「はい!」

 

 逃げた先で簪が放った多弾頭ロケットミサイル群が逃げ場を塞ぎ、福音は押しつぶされそうな物量をもつ爆発の下敷きになる。

 

『Ꮮa    ………♪』

 

 だがそれでも止まらない福音。 

 爆風から飛び抜けて煙幕を払うように旋回し、鉄の羽からおびただしい量の光弾をばら撒き周囲へ無差別に発射させる。

 

「行くよ結!」

「ッ……わかった!」

 

 それぞれシールドを展開して構える二人。

 全方位、上も下もなく飛ばされた眩い爆弾の波をシャルロットは両手側面に内蔵された防御パッケージでラウラと簪を守り、結はその他の面々にシールドビットをそれぞれ二枚と三枚ずつ配置させ自らも大盾で光弾の波を凌ぐ。

 

「あれだけの爆発で無傷とは、流石だな」

 

 爆風が止み小型シールドから福音の様子を伺うラウラは改めて束特製の装備性能に感服する。

 

 加えて手にして間もない無線操作の盾を複数枚、ISのアシストがあるとはいえ八枚全てを的確に使いこなす結の操縦技術も相まっての事となると、改めて彼の存在の大きさに思い知らされる。

 

「仕掛ける!」

 

 煙幕が晴れる寸前に飛び出した箒が背部ユニットを一対切り離し、展開装甲を発動して福音に目掛けて飛翔させる。

 

 エネルギー刃を出現させた展開装甲は大型のソードビットとでも言うべき機動性を有して福音に飛びかかり、そこへ二振りの刀から繰り出される斬撃が更に福音を窮地に追い立てる。

 

「はぁぁぁあああッッ!!!」

『ッ…!!』

 

 箒の猛攻に翼を削がれ、新たに光弾を生成する余地も与えられずに次から次へ一撃でも致命傷を与えるような斬撃が福音のシールドエネルギーを削っていき、一振りを止めてももう片方が首を刎ねる勢いで放たれる。

 それでも決定打がなかなか決まらない箒は事を急いて大振りな上段構えを取った。

 

 その瞬間を狙いすましたかのように福音が身を捩って抜け出そうとしたが、下方側面から飛来した小型シールドが福音の横腹に突き刺さる。

 

『ッ、〜〜〜〜〜〜ッッ!!!』

 

 堪えきれずに嗚咽を散らして脱出し損ねた福音を逃さない箒の一太刀。

 

「獲った!!」

 

 エネルギー刃を纏った上段斬りは福音のシールドエネルギーを削ぎ落とし、福音は重力に囚われて海に呑まれた。

 

「今なら……!」

 

 小型シールドを回収した結は福音に続いて海に急降下気味に入水し、碧の視界の中銀翼の天使を見つけて一目散に接近する。

 力無く海の底へ誘われる彼女に装備解除したガーディアンのペンダントを握って近付き、花を添えるように優しく押し当てるがガーディアンは棺にはならず、なんの変化も見せずに無反応を貫いていた。

 

 おかしい、あれだけのダメージを負ってなおガーディアンは反応しない。装備登録などは切っているはずなのに強制修復機能が発動しないとなれば、IS自身が回復しているということになる。

 

「まさか……二次移行(セカンドシフト)!?」

 

 異変に気が付いたのもつかの間、福音は覚醒と同時に光の繭に包まれる。

 弾かれた盾のペンダントをひったくり、福音から飛び退いたものの海中で膨れるエネルギーの塊に押し出された結は剥き身のファントムのまま海上へ押し出された。

 

「大丈夫か上代!?」

「うぐ……平気」

 

 眩い繭を日差し代わりに差した腕の隙間から覗きながら再び鎧を着込む結は、小型シールドを展開して散開させ、後悔の念を一入に大盾を握り締めて福音に向かい直る。

 

 頼みの綱であったガーディアンが無効化され、福音は万全の体勢に行き着いてしまった。

 

 苦戦しなかったとはいえ半ば消耗している状態で戦える相手ではない。

 

 結も、他の者も、固唾を呑んで光の繭に視線を注ぐ。

 

 

 繭は霧を払うように散開し、中から翼の無い福音が姿を現す。

 失った鋼鉄の羽の代わりに、眩い光を放つ光の翼が三対、福音の背面から放射状に伸び、雄々しく靡いて羽を広げる。

 

「まさか、こんな時に……」

「第二ラウンドってところかな……」

「もうやだ……」

 

 泣き言を言っても止まってはくれない。

 三対の羽にそれまでの三倍の光弾を纏わせ、旋回すると当時に全弾が全方向に発射される。各々回避行動をとったり防御態勢で凌いでみるが圧倒的な物量に押し負ける。

 

 そして攻撃に移った福音は近くにいた箒を仕返しとばかりに飛ばして掴み、結へ目掛けて放り投げる。

 

「箒お姉ちゃん!」

「ぐぅっ、すまない上代……!」

 

 箒から視線を外した福音は機械が人を模したような動きで夜の海上を駆け回り、鈴を狙って光弾を発射する。

 

「危ない鈴!」

 

 すぐ様シャルロットがエネルギーシールドを張って鈴の前に立ち塞がり光弾を防ぐものの、間隔を空けて撃たれる爆発に押されてシールドを剥がされる。

 その瞬間を狙って接近していた福音はシャルロットを叩き落とし、背後に回っていた鈴の青龍刀も裏拳で食い止め回し蹴りで墜とす。

 

「そんな、これほどまでだなんて……!」

 

 次にセシリアを狙う福音の光弾による追撃をBT兵装で撃ち落とすセシリア。一発の威力ならばセシリアのBT兵装の方が上だが、あまりの数に圧されて後退を余儀なくされていた。

 

「オルコットさん!」

 

 セシリアを追う光弾にミサイルを放つ簪。

 殆どの光弾を誘爆させて残ったものをセシリア自身がライフルで撃ち落とすが、これを良しと思わなかったのか福音は頭上に一際大きなエネルギーの凝縮体を生み出してそこから極太のレーザービームをセシリアへ向けて放った。

 

「いって、シールドビット!!」

 

 それを察知した結がシールドビットを四枚、セシリアにビームが被弾する寸前で滑り込ませ、盾が円を描いて互い同士重なるように連結させてビームの威力を抑える。

 

 だがレーザービームはシールドを押し退けてセシリアを焼き払い、暗い海に墜とす。

 

「そんな、オルコットさんも……」

「っ、逃げろ更識!」

 

 次の標的を簪とラウラに向けた福音。

 すぐさま簪の前に立つラウラはワイヤーブレードを射出して福音を拘束するが、福音は光弾でワイヤーを切り離し、瞬時加速で急接近し勢いのままラウラを殴り飛ばす。

 それに留まらず伸ばしたままのワイヤーを掴んで振り回し、逃げ惑う簪に命中させてセシリアに撃ったレーザービームよりも更に巨大なビームを放った。

 

「く、そッ……ガーディアンッッ!!!」

「行くぞ紅椿!!」

 

 瞬時加速で二人との間に割って入った結と箒はそれぞれ大盾と展開装甲を構えてビームを真正面から防ぐ。

 大盾と小型シールド全てを重ねても威力を抑えるには至らず、紅椿の展開装甲の力も借りてようやく全てのビームを受け止めきれた程だった。

 

「か、はッ……」

「結!」

 

 撃てる限りの光弾全てを収束させて放ったレーザービームを食らって全てのシールドビットは大破、大盾も砕けてしまっている。全身も半壊しかけており内に眠るファントムの姿がところどころ確認できるまで鎧は砕けていた。

 

 

 このままじゃ、負ける……。

 

 こうなったらファントムの力で無理矢理にでも……!!

 

「箒お姉ちゃん、もしぼくがまた暴れたら、その時は殺してくれていいから」

「いきなり何を言っている結……?」

 

 箒の了承を聞くよりも前に結は盾をしまい、砕けた鎧の一部を引き剥がしてファントムの掌を剥き出しにする。

 

「手伝ってよ、ファントム!!」

『ショォーガネェーナァア!!』

 

 鎧を着た亡霊は紅い双眸で無慈悲な天使を睨みつける。

 

「『行くぞ』」

 




 大変長らくお待たせしてしまい申し訳ありません。

 これのᎡ-18版の三次創作やモンハンの二次創作完結に時間と情熱を割いてました。

 何かありましたらご報告お願いします。
 ではでは。
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