IS【小さな少年は盾を構える】   作:屍モドキ

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 別の先品を書いていてちょっと期間が空きました。
 今回は最近少なくなっていたメカとバトル回です。

 ではどうぞ。





六十二話 結と練習

 アリーナ、グラウンド。

 

 闘技場の中央に一機のISが仁王立ちで盾を構え、その周りには十機の打鉄及びラファール・リヴァイヴが各々の武器を構え、中央に立つ盾の戦士を一瞬の油断もすることなく見下ろしていた。

 

「よろしくお願いします」

「「「「よろしくお願いします!!!」」」」

 

 挨拶とともに試合開始のブザーが鳴り響き、同時に近接ブレードを握った打鉄数機がガーディアンに向かって飛びつき、各々が渾身の一撃とせんばかりにブレードを振るう。

 

 だがそれらは全てガーディアンのシールドビットによって防がれ、ガーディアンはその場から一歩たりとも動かない。

 

 攻撃を防がれたからといって深追いをする者はおらず、すぐさま飛び退いた彼女たちの後ろには射撃兵装『葵』と『ガルム』を構える二種のIS。

 

 結を取り囲んで四方八方からの一斉射撃を繰り出すが、それすらもシールドビットの高速展開と格納を繰り返して全ての弾丸を防いでしまう。

 

「終わり? ならいくよ」

 

 呟いたと同時にその場からガーディアンの姿は消え失せ、金属製の衝撃音が十機分響いたと同時にアリーナにはユイのガーディアン以外立つものは残っていなかった。

 

「おつかれさま」

「「「「あ、ありがとうございました~⋯⋯」」」」

 

 夏期休業中、学園ではアリーナを日中の間開放しており、IS操縦訓練や模擬戦、武装の性能テストなど様々な生徒が時間を当てていた。

 代表候補性や他国から来日している生徒などはもちろん祖国に帰国してそれらの本分に務めていたりするので、普段に比べればアリーナの使用率は低い。

 

 だが学園に残っている生徒もいくら部活動や委員会の業務があるとはいえISに触れる機会が多いわけでもないので、こういった場面で経験を積むべく通いつめていた。

 

 そんな中、帰る場所もなく、学業もなく課題も済んでしまった結は飽和状態の自由をどうにか埋めるべく、こうしてIS操縦の補助や模擬戦の相手をしたりして時間を潰していた。

 

 

 因みに結との訓練にはいくつかパターンがあり、アリーナ内を旋回する結を捕まえる『おいかけっこ』。結に被弾させれば勝ちの『鬼ごっこ』。結と模擬戦をする『組手』の三つが主だった。

 

『おいかけっこ』は基本ISの操縦に慣れていない者が参加し、操作間隔を養う目的で行われる。だが、もしも邪な気持ちで参加すれば痛い目を見るのは明白で、物見遊山の気持ちで参加しようものなら監視している教員に呼び出されてペナルティを喰らう事も。

 

『鬼ごっこ』ではおいかけっことは逆に結から逃げるものであり、結から一撃でも被弾を喰らえば即リタイアとなる。が、結も武装を解禁することによって四方八方から盾の飛来を避けねばならず、決して少年に追いかけてもらえる事は無く夢を見て参加した生徒の大半は開始早々に盾の横薙ぎを喰らって教師に大目玉を喰らっていた。

 

 

『組手』は操縦に慣れた者が参加し、結を含め参加者全てに武装全ての使用が許された模擬戦。武器の使用練度を上げることが目的で、ここでは原則何を使っても許されるが、結以外の参加者同士での被弾はアウト判定として行動不能になり、チーム戦としての側面も強い。

 もちろん結からの攻撃もあるが、少年は基本的に相手に初撃を譲り、ある程度攻撃を避けてから反撃に移るので、メンタルをやられる生徒も少なくないとか。

 

 

 余談だが結のISは変則的な軌道力が秀でており、四方八方からの斬撃銃撃の雨霰をその場で直立した状態から二軸地球儀のように前後左右に回転して回避していたらしい。

 その現場に居合わせた生徒の殆どは心の中で何かが折れる音がしたという。

 

 今日の項目は『組手』であり、しかも一年生相手での一撃必殺が主だったので短時間での戦闘だった。 

 

 これが操縦に慣れてきた三年生等になると更に熾激しさを増す。

 結のISはその特性上AIによるサポートを一切受けない代わりに如何なる使用許諾も必要とせず、例えば他のISが手放したナイフを扱えるし、銃の引き金も引ける。

 

 本来IS間の許諾なく武器は扱えないのだが、それを無効にできるのが結のISの長所であり、厄介な要因の一つである。

 

 これにより結は『組手』では相手の武器をもぎ取ってからアリーナ内を上に下に、縦横無尽に駆け回り、一人残らず文字通り千切っては投げ千切っては投げを繰り返す、鏖殺の獣と化していた。

 

 言葉通りの鉄壁をありありと見せ付けられて結を追い掛ける厄介ファンが減ったとかなんとか。

 

 閑話休題。

 

 そうこうして休日の時間潰しを終えた結は、シャワー後の湿った髪を夏のそよ風に晒しながら食堂に訪れる。

 

 背伸びをしながら買ってきた食券をカウンターのおばちゃんに差し出し、お盆に乗った食器類をカタカタ鳴らしながら覚束ない足取りで席を探す様は誰もが気にかけるほどに危なっかしいものだった。

 

 カウンター席は一人では上手く座れない事を知っている結は申し訳ないと思いつつもテーブル席に近寄り、ソファーにお盆を載せてから自分も横によじ登り、なんとか卓上にお盆を移して手を合わせる。

 

「いただきます」

 

 以前は事務的な通過儀礼のようになっていた食前の挨拶は、今では心からの感謝を送るようになった結は焦る気持ちを抑えきれず大口を開けながら主菜の焼きサバにかぶりつく。

 

 かぶりついた部分からきれいに骨を残して身を小削ぎ、無表情だが輝く目だけは確かにサバを味わっていると主張していた。

 

 そしてそこそこの大きさをしている茶碗に盛られた白米を一口、二口と頬張り口いっぱいに溜め込み、さながらリスのようになりながらもぎゅもぎゅと咀嚼を続け、味噌汁を啜って流し込む。

 

 

 結はほっと一息つく頃と恍惚の表情を浮かべ、また焼きサバをかじり白米を食べ、漬物やサラダなども忌避なくもりもりと食べすすめていた。

 

 蝉の声がけたたましく響き渡るこの酷暑、それでも食欲を衰えさす事なく着々と食事を進める様子に見守っていた者たちも感化され、食べかけていたものは口へ運ぶ手を早め、何を頼むか悩んでいたものは結が食べていた焼きサバ定食を次々に注文しにいった。

 

 

 そして誰もが結とお近づきになろうと焼きサバ定食を両手で持って特攻態勢になって入るが、少年の貴重なお食事を邪魔するのも気が引けると尻込みし膠着状態に陥っている中、たった一人結のいる席に向かう猛者が。

 

「おは、ちが⋯⋯こんにちは、結」

「簪お姉ちゃん。こんにちは」

 

 かき揚げうどんがのったお盆を持ち、おどおどと腰の引けた姿勢で結の座るテーブル席にやってきた簪。

 簪の行動に抜け駆けだと唇を噛むものやしてやられたと舌打ちをするものなどいるが、そのすべてを横目に内心ガッツポーズをする簪は極力周囲の視線を気にしない様にあくまで笑顔を浮かべながら結との会話に拙い華を咲かせる。

 

「あのさ、結。今日、私の部屋でその⋯⋯映画観ない⋯⋯?」

「いいよ」

 

 即答で簪の誘いに快諾する結。

 小さな笑顔を浮かべる簪だが頭の中はけたたましいフィーバー状態だが、周囲は阿鼻叫喚と後悔の嵐に見舞われ世紀末のお通夜のような有様になっていた。

 

 

 かくして結の簪の部屋にお泊り第n回目が開催決定とされた。

 

 

 






 次回、簪ちゃんの部屋にお泊り!
 ついでにのほほんさんもいるのでJK二人に挟まれてうふふするだけだと思います!

 ではではまた次回で!
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