IS【小さな少年は盾を構える】   作:屍モドキ

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 お仕事つらいです。

 感想や評価が本当に沁みる日々です。




二学期編編
六十六話 新学期と生徒会長


 二学期が始まり、実技の戦闘訓練にて剣を、銃を交わす専用機待ちの面々は、血気迫る勢いで己の技量を振るっていた。

 

「ラァァッ!!」

「えいやっ!」

 

 一夏の雪片弐型が繰り出す鋭い斬撃を、シャルロットはシールドで受け止め、押し上げながらがら空きの胴に銃口を向ける。

 だが引き金を引くより前に一夏は左腕の小手からエネルギーシールドを展開して銃撃を阻止、距離を開けながらビーム弾で牽制する。

 

 まばらに飛んでくる光弾を避けながらシャルロットはグレネードを投げ、それに慌てて回避しようとした一夏をガルムで抑止。得意の瞬間換装ですぐさまライフルに持ち替えたシャルロットは容赦なく一夏を撃ち抜いたのだった。

 

「くそ、ゴリ押しじゃあやっぱり勝てねぇや……」

「シールドエネルギーの使い過ぎだね。そんな装備じゃどうしょうもないだろうけど」

 

 二次移行を果たした一夏のIS白式あらため『雪羅』は、それまで備えていた『雪片弐型』に加えて新たな武装『雪羅』は、単体で射撃、格闘、防御をこなせる多機能武装腕となっており、機能的には優れているもののどれもシールドエネルギーを消費するため単純に燃費は悪化。

 

 二次移行に伴いスラスターユニットも二機から四機に増え、多少の燃費改善はあったものの結果的に今までよりも乗りこなすのが困難な機体へと変貌を遂げてしまった。

 

「本当に熟練のパイロットでもなければそんな機体、乗るのも怖いよ」

「初心者向けじゃねえよ、ホント……」

 

 シャルロットの手を借りながら立ち上がる一夏は、まだ模擬戦を繰り広げているクラスメイト達を見上げる。

 

 その中には紅のISと盾持ちのISが、激しい格闘を繰り広げていた。

 

「ゼァッ!!」

「ふんっ!」

 

 爪先から展開装甲を開いてエネルギー刃を出力した箒の蹴り上げを、結は足の裏に小型盾を履いて逆に踏み抜く。

 どちらとも弾かれて間合いが開き、すかさず箒が中距離から刀を突き出すと先端から刺突の延長のようなビームが結へ目掛けて飛ばされる。

 

「シールドビットっ!」

 

 結が左腕を振るうと付近にて待機していたシールドビットのうちの二機が結の前へ飛び出し、列なって箒のビームを防ぐ。

 更に結は右手を振るい、箒へ向けてシールドビットを三機、お返しとばかりに飛来させた。

 

「これならどうだ!」

 

 二振りの刀と蹴りで三枚の盾を弾き、背部ユニットを両機切り離して接近戦ユニットに切り替えた箒は、自身の二振りとブレードユニット二機による四つの刃での猛攻を結にぶつける。

 

 左右と前方から迫る四本同時の斬撃を、結は構えた大盾と左右に浮かべる小型盾で受け止める。

 だがそれが仇となり、結はその場に押し留められてしまう。

 

「捕まえた!」

「ところがぎっちょん」

 

 刀を盾にめり込ませる勢いで押してくる箒の重圧を結は、あろうことか自分が下に落ちる事で前方と左右からの攻撃を回避し、箒の背後に回り込む。

 

「なぬっ!?」

 

 箒を背後からしっかりとホールドしたまま結は後ろへ向かって体を反らし、地上へ頭を向けてそのまま自由落下、否。加速しながら急降下を始める。

 そして着地寸前で結は抱えていた箒を手放して彼女だけをアリーナの地面に投下、そして八枚全ての小型盾を一斉に箒目掛けて飛来させた。

 

「うぐっ!?」

「ぼくの勝ち」

 

 四方八方、それぞれの角度から盾の側面を添えられ、力を加えればテコの原理で体をへし折ると言われているような威圧を仮面越しに感じた箒は唇を噛み締めて武器を手放し、降参したと手を上げる。

 

「そこまで! 降りてこい貴様ら」

 

 織斑先生の号令で戦っていた代表候補性達は戦闘を止め、整列していた団体の前に降り立ってIS展開を解除する。

 

 その後、山田先生と他生徒による模範的な解説が行われ、授業は終わった。

 

 

 ◇

 

 

 新学期となり九月初頭、名目上は秋になったがまだまだ暑い日は続き、照りつける太陽から手で顔を隠すこともしばしば。

 

 そんな日々の中、二学期最初の全校集会で体育館の中に全校生徒が集まれば、いくら冷暖房完備の館内といえどうら若き十代の体温が篭もるのは当たり前で、換気のそよ風に当たる教員らがうらめしく思ったりする。

 

「あち〜……」

「こらこら織斑君。しゃきっとしなきゃ織斑先生に怒られちゃうぞ?」

「とは言ってもなぁ」

 

 混ざった香水の臭いも相まって気分を悪くしそうになるが、これも女子校の性だと諦めて一夏は頭を壇上に向ける。

 

 スピーチ台の上にマイクがポツンと置かれ、スポットライトで一際照らされたセンター位置に一人の女子生徒が脇から気丈な歩みで出てきた。

 

 その腕には生徒会長と書かれた腕章が。

 

「諸君、おはよう! 生徒会長の更識 楯無です。一学期は挨拶が出来なかったけど、改めてよろしく!」

 

 更識と名乗った少女は紅の瞳で壇上から生徒たちへ向けて見渡し、フフンと不敵に笑ってみせた。その中で一夏と目が合ったその少女は一夏へ向けてあざとくウインクをしてみせた。

 

「あっ」

 

 意味のない声が漏れたが慌てて口を閉じる一夏は、いつぞや結の部屋で見た、不法侵入を働いた謎の女子生徒がこの学園の生徒会長なのだと知り、なんとも微妙な感情が喉元でわだかまりをつくっていた。

 

「それで、織斑 一夏君の入部に関する決議ですが、これは今年の学園祭で総合人気一位を獲得した部へ入れる事にしました!」

 

 どよどよとざわめきだす生徒達。

 

「部活で緊急会議よ! アンケート取るから!」

「今年の催しは全力を尽くすわよ!」

「秋季大会? ほっとけあんなもん!」

 

 秋季大会をあんなもん呼ばわりするな。

 

「上代 結くんの処遇は如何するのでしょうか!」

「彼はそもそも特別学級扱いなので部への入部強制はできません」

 

 生徒会長の回答に露骨に肩を落とす亡者たち。

 

「しかし、要望があればそれなりの措置を取ることも考えます」

 

 あまりに抽象的な回答だが、僅かでも希望をもたせるような言葉に活気を取り戻す女子生徒達。

 

「やったぁーっ! それでこそ生徒会長様!」

「気合入れていくわよ!」

「一生ついていきます会長!」

 

 傍から見ればただの危ない人だが、渇望するものは案外多いらしい。

 拍手喝采の沸き起こる体育館で頭を抑える教師陣をものともせず、更識生徒会長はひらひらと手を振りながら舞台袖に引っ込んで集会は終わった。

 

「聞いてない……」

「まあ、これも社会ってやつだ……」

 

 あからさまにご機嫌斜めの結と手をつなぎ、この後の放課後をどう過ごすか考える。

 普段ならアリーナで特訓に次ぐ特訓をしているが、今日は皆用事が……十中八九さっきの生徒会長が言った学園祭の催し物の会議だが……に専念するということで、部活動に所属していない自分と結はこうして暇を持て余していた。

 

 二人だけでも特訓しようか、と思ったところで何者かに背後から声をかけられる。

 

「そこのお兄さ〜ん、お待ちになってぇ〜」

 

 随分な猫撫で声にやるせない気持ちで振り向くと、先程ぶりに見た生徒会長さまが乙女チックな走り方でこちらにやってきた。

 

 と思ったら突然その場でしゃがみ、その後ろから竹刀を握りしめて全身防具に身を包んだ何者かが渾身の胴突きを放ってきた。

 

「やァァーーッッ!!」

「うぉっお!?」

 

 寸のところで仰け反り、顎先を掠めた突きはその勢いのまま一夏を巻き込んでぺしゃりと墜落し、一夏は剣道少女の下敷きになって潰されてしまう。

 

「きゃっ! ごめんね織斑君!」

「退いてのいで退いてくださいっ!」

 

 先程の殺気は何処へやら、当然のように恥じらう顔の見えない女子生徒を横へずらして状況説明を求めるため更識生徒会長の方を見やると、何処からともなく飛んできた矢を躱し、近くにあったロッカーの中から飛び出したボクサーのラッシュをいなしていた。

 

 訳が分からん。

 

「何してるんですかこれ!?」

「あら、知らないの?」

 

 掌底でボクサーの顎を掠めて脳を揺らし、矢が飛んできた方向へ扇子を飛ばしてそれぞれの強襲を仕掛けてきた生徒全員を無力化してしまった。

 

「この学園における生徒会長とはその名の通り全ての生徒たちの長、つまり最強の称号なのよ」

 

 生徒会長は毅然とした立ち振る舞いでにこやかに微笑み、度肝を抜かれて座り込んだままだった一夏に手を差し伸べる。

 

「織斑 一夏君。ちょっとお時間いただけるかしらん?」

「は、はぁ」

 

 あまりの出来事に頭が追いつかない一夏だったが、袖を引く結に意識を引き戻されて立ち上がる。

 そして快活な足取りで進む奇っ怪な女性の後に付いていくのだった。

 

 

 




 なんとまぁ微妙な回で申し訳無いです。
 作者です。

 楯無先輩と戯れてから学園祭の流れでいいんですよね……?
 今絶賛読み直しておりますが、どうにもページが進まない。

 ではでは。
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