IS【小さな少年は盾を構える】   作:屍モドキ

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六十七話 少年と生徒会

 迫り来る生徒会長を狙う刺客達を羽虫でもあしらうかのようにいなしながら、更識会長は軽い足取りである教室まで進む。

 

「ただいま〜。戻ったわよ」

「おかえりなさい、会長」

「んぐぐ〜……むにゃ」

 

 そこにはファイルの整理をしていたらしい眼鏡の先輩と、よく見知ったのほほんとした女子生徒が机に突っ伏して堂々と昼寝をしていた。

 

 そして眼鏡の先輩は居眠りしている女子生徒の頭に、手に持っていた分厚いファイルをごんと振り下ろした。

 

「いだぁ〜い!」

「起きなさい本音。お客様の前よ」

 

 後頭部を抑えながら飛び起きた本音はあからさまに目に涙を浮かべているが、間髪入れずそのままへろへろと机に倒れ付す。

 

「ぶっ続けのウエハースカード収集で眠いのだ〜……」

「あら、本音はグーのほうが好きなのかしら」

「お茶淹れてきま〜す!」

 

 虚の一言で席を立った本音は、そのまま風に靡くポリ袋のような足取りでお茶を淹れにいった。

 落ち着かない気持ちで椅子に座って待っていると、やがてお盆に2つの湯呑みを乗せてやってくるのほほんさん。

 

「粗茶で〜す」

「本音。しっかりしなさい」

 

 プルプルと震える手でお盆を運んできた本音が一夏と結の前にお茶の注がれた湯呑みを並べる。

 

「いただきま……あぢっ」

「おいおい、まだ熱いぞ」

 

 早速飲もうとして舌を火傷した結を宥めながら一夏は目の前にいる似ても似つかない姉妹を見比べていた。

「生徒会副会長、布仏 (うつほ)です。よろしくね」

「書記のね〜本音だよ〜」

 

 普段あんなにも気の抜けた生活態度で生徒会など務まるのだろうか。

 

「私がいてもお仕事が増えるだけだからね〜。何もしないのだ〜」

 

 それでいいのか生徒会。

 真面目、傍若無人ときてのほほんさんとなればある程度均衡が保たれるのか? 傍から見れば虚さんの負担が大きいように見えるが、それはさておき。

 

「どうして俺達をここに呼んだんですか?」

「んー、諸々の説明とかしていこうかしらね」

 

 まず、先の全校集会で自分が学園祭での景品にされた経緯について。未だ入部届すら出していない事に対して各部が生徒会へ苦情を出しているそうで、そこでかなり強引な措置が取られたらしい。

 

「入るといっても、女子だけの部活じゃあ俺にできる事ないじゃないですか!」

「マネージャーなりすればいいじゃない。人のお世話とか得意なんでしょう?」

 

 それはそうだが……。

 

「ちなみに上代くんは何もかも特例なのでこの校則は適用されません」

「まぁ、そうですよね」

 

 もしも女子高生の部活に小学生の結が入ればとんでもないことになりかねない。最悪イロイロ歪む。

 複雑な気持ちで腰にひっついている結に目線を送ると、よくわかってないように首を傾げる結がそこにいた。

 

「それと言ってはなんだけど、放課後の特訓私が見てあげるわよ」

「ご遠慮します」

 

 まぁまぁと言いながら更識生徒会長は虚さんに目配せし、やがて俺と結の前に飲み干した湯呑みの代わりにティーカップに注がれた紅茶を出してくれた。

 

「虚ちゃんのお茶は格別よ」

「いただきます……」

 

 飲めば言葉通り、市販の紅茶など比べ物にならないほどうまい紅茶に思わず素直な感想がこぼれた。

 

「美味しいですね」

「でしょう? ケーキもあるのよ」

 

 ホイップたっぷりのケーキは甘すぎず、紅茶と合わせて食べるとまた違う味わいに変化して飽きない。

 隣に座る結はその小さな口に大きな一切れを頬張り、口の周りにクリームをつけながらモヌモヌと目を輝かせて咀嚼していた。

 

「結、クリームついてるぞ」

「んう」

 

 結の口周りのクリームを拭ってやり、紅茶を飲むように促しながら生徒会長との話を再開する。

 

「特訓は他の面子に見てもらってるので間に合ってます」

「そうだろうけど私、強いわよ。それに」

 

 更識生徒会長は見透かすような目で見つめながら扇子で口元を隠す。

 

「鍛えてはいるみたいだけど君はまだまだ弱いのよねぇ」

 

 その言葉にむっと顔をしかめる一夏は言わなかっただけでずっと思っていたことを、ついポロッと口にしてしまう。

 

「自分がまだ未熟なのは認めますけど、他人の部屋でノしてたような見ず知らずの人に言われたけないです」

「止めてよ! 私だって気にしてるんだからッ!」

 

 本気の悲鳴だった。

 

 初対面ではないし目の前の生徒会長殿が強いということは先の暴力の雨あられを掻い潜る姿をもってしっかりと確認しているもののそれはそれ。

 

 以前、結の部屋で気絶していてゴタゴタ騒いでいたことに関して一夏は楯無の事を『残念な変質者』と認識していた。

 

「それなら、今から実践で勝負して決めましょう?」

「いいですよ。受けて立ちます」

 

 安い挑発だと一夏自身思っていたが、おどけるように貶されてはいそうですかと頷くほど人間が出来ていなかった。

 

 勝てないことは百も承知、ならば今の自分が学園最強を謳うこの人に何処まで通用するのかやってやろうじゃないか。

 

「ゆいゆい、ケーキおいしい?」

「おいひい!」

 

 その隣では机の縁から顔を覗かせる本音がにへらと結にケーキの感想を聞き、その後ろで虚が呆れたように頭を抑えていた。

 

 

 

 

 

 





 またなんとも期間が空いてしまい申し訳ないです。なんならちょっと開き直ってます。
 軽いスランプ気味で何が面白いのかわからなくなってきて今ずっとゲームしてます。

 あまり今回のようの話の進展がゆるい回はある程度統合しようかと思ってます。

 ではでは、また次回で。
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