IS【小さな少年は盾を構える】   作:屍モドキ

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 明けましておめでとうございます。
 今年初投稿はこちらになりました。

 何書いてたか若干忘れてましたが何となく思い出してきたので大丈夫です。

 ではどうぞ。

 ※一部修正しました。



七話 蒼と白

 お互いに無傷で終わった一回戦を終えて間も無く、一夏対セシリアの試合が始まろうとしていた。

 

 一夏は初期設定を終えて機体性能の確認、エネルギーのチェックを終えるところだった。

 セシリアは消費分のエネルギーや弾丸の補給、上がった呼吸を整えていた。

 

 あの子供、カミシロ ユイ。

 纏っているISの性能からして第二世代と言われても信じてしまいそうな恰好に反して、あの反応速度、異常だった。

 ISのハイパーセンサーならあの距離でも銃弾を撃った後に確認して避けることも可能です。

 しかし、それを不規則に、多方向から撃っているはずのレーザーを一度も振り向きもせず、慌てる様子もなく避けてみせるあの胆力、どんな訓練をすればあの年であんな芸当が出来ると言いますの⋯⋯?

 

 もしかすれば今の私の弱点を、知ったうえであんなことをしていた?

 

 そこまで考えてセシリアは何を馬鹿なことを、と頭を振り、握っていたドリンクを置いて立ち上がり、再度蒼いISを纏う。

 

「あんなもの、所詮は猿真似。今度こそ踏み躙って差し上げますわ⋯⋯!」

 

 男に弄ばれたという事実が、セシリアをより燃え上がらせた。

 

 

 ◇

 

 

「一夏、いけるか?」

「あぁ、大丈夫だ。千冬姉」

 

 またその呼び方で、と叱ろうとした千冬は、自信に満ちた一夏の表情を見てその言葉を飲み込む。

 そして微笑んで見送ってやった。

「いってこい、一夏」

「いってきます!」

 

 何よりも、誰よりも頼りになる姉の声に押され、一夏は勢いよくカタパルトから飛び出していった。

 アリーナ上空まで飛行して少し、蒼い機体に乗ったセシリアも同じように飛び立ち、一夏の目の前で静止した。

 

「一ついいか」

「⋯⋯なんですの」

 

 一夏の言葉にすら棘のある対応を見せるセシリア。どうやら想像以上に結との戦闘が答えたようだった。

 一夏は出来るだけ手短に済ませようと、簡潔に言葉を綴る。

 

「アンタは、なんで男を嫌うんだ?」

「そんなの⋯⋯」

 

 思い浮かんだのは自分の父親。

 誰に対してもよそよそしく、常に人の目を気にしているようだった。

 それは家のメイドはおろか母や自分に対しても、ずっと距離を置いて、視線を気にして、言葉を濁して逃げ出して⋯⋯。何かあれば開口一番に謝罪。

 

 そんな姿しか見た事の無かった父という男性に、セシリアはいつしか男と言うものを毛嫌いするようになった。

 

「権力に縋って媚び諂って、そんな姿に嫌気がさすからですわ!」

「ッ!」

 

 試合開始のブザーが響き、瞬時に展開したライフルを握り締め、BT兵器も併用しての同時射撃。

 先の結との試合の開始時と同じような始まり方もあってか、一夏は肝を冷やしつつもなんとか初発を回避する。

 

「いきなりか!」

「早急に撃ち落として差し上げます!」

 

 空を自在に飛び回るブルーティアーズが一夏に向かってすべての砲門を向けて飛行する。

 

 一夏はすれすれで回避しつつ、白式に搭載されているはずの武器を展開してみると、出てきたのはIS用ブレード一本のみだった。

 

「これだけかよ!」

 

 無いよりはましかもしれないが、遠距離主軸の相手に対して近接武器のみとなると泣けてくる。

 嘆いても仕方ないので一夏はブレードを展開して掴み取り、青いレーザーの嵐を掻い潜ってセシリアに向かって飛翔する。

 

「そうはさせません!」

 

 しかし距離を積めようとすればセシリアの持っているライフルが放たれ、そこで足止めを食らうと流れるようにブルーティアーズが飛んでくる。

 

 いくら近づこうとしても彼女に触れることはおろか近くに行くことすらかなわない。

 

「何か方法は⋯⋯そういや結が何か言ってたな」

 

 あの人は踊らなかったね。

 

 セシリアと結の試合、セシリアは結に踊れと挑発していた。

 ブルーティアーズの飛び交うアリーナで結は全ての攻撃を避けていたのは見ていた通りだったが、その時セシリアはどうしていただろうか?

 

「やってみる価値はありそうだ……」

 

 一夏はブレードを握り直し、セシリアに向かって斬りかかる。

 

「無駄な足掻きは見苦しくてよ!」

「うるせぇ!」

 

 今度は避けられ、同じ様にBT兵器の追撃がくる。寸のところで避けるが、一撃喰らって距離が離れる。一度離れて振り出しに戻るが、一夏は焦る様子もなく、呼吸を整えていた。

 

 あの一瞬、セシリアが動いたとき、回りのビットは止まっていた。もしかすれば……。

 

 攻撃を仕掛けたときの様子を、意識的に開いたハイパーセンサーで一夏は見ていた。

 

「もし貴方が負ければ、私の奴隷にしてあげますわ!」

「やってみろよ!」

 

 四方から砲門を向けるブルーティアーズを確認し、ようやく慣れてきた飛行操作でレーザーを回避していく。

 

 一撃撃てば移動して別の角度から砲撃、そんな軌道を描くビットが四基も相手となると、流石に堪えるものがある。

 

 仕掛けていきたいのに避けるだけでやっとだ。

 なんとかしねぇと⋯⋯!

 

 焦燥感に駆られつつ、隙を窺ってみる。

 アリーナを飛び交うビット、それに対比して()()()()()()

 

 

 瞬間、横からの砲撃を前方へ回避、セシリアへと向かって斬りかかる。

 

 ビットを操作して自分の前に防ぐようにしてブルーティアーズを持ってきたセシリアは、そのままの仰角で一夏を狙い撃つ。

 

 しかし一夏は止まろうとせず、ギリギリまで接近したのち、セシリアの合図で撃たれたレーザーを避け、すり抜け様にブルーティアーズを一基撃墜して見せた。

 

「な、なんですって!?」

「今度はこっちからだ!」

 

 ビットを一基墜とされた隙を突いてもう一基も撃墜する。

 残るビットはあと二基。これならいける。

 

 数を減らされつつもセシリアは残りのブルーティアーズを飛ばすが、一夏は無意識で瞬時加速を行い、残りの二基も片付ける。

 

 四基全てのビットを破壊されたセシリアはライフルを構えるが、セシリアが撃つよりも速く一夏はセシリアに接近し、ブレードを身に引き付ける。

 

 これで終わったか、と誰もが思った矢先、セシリアのブルーティアーズのリアスカートが展開し、その裏に備えられてあった二基のミサイルが噴出した。

 

「何!?」

「ブルーティアーズは六基ありましてよ!」

 

 至近距離。瞬時加速による慣性が働き、止まろうとしても前に進んでしまう。

 煙と火花を上げてミサイルは発射。あっけなく一夏は真正面からミサイルを食らった。

 

 

 

「あ」

「もっと様子見をしてもよかっただろうに⋯⋯あの馬鹿⋯⋯」

 

 観戦室で見ていた各々が声や小言を漏らしていた。

 呆れた空気が満ちるなか、千冬だけは真剣な姿勢を崩さず、ニヤリと笑う。

 

 

「ふ、機体に助けられたな」

 

 煙幕が張れる。

 そこに浮かんでいたものの姿が現れ、皆目を開き、驚愕した。

 

 ISを纏った一夏の姿。彼が纏うISの形状が変化し、色はくすんだ灰色から明度を増した白色へと変化。手にはIS用ブレードから解放された白式唯一にして最大の武器、『雪片弐型』が握られていた。

 

 一夏は目の前に表示される機体情報と初期設定の終了を知らせる(ウィンドウ)を確認してそれらを閉じ、目の前で慄いている英国淑女に目を向けた。

 

「まさか、今まで初期状態で戦っていたというの⋯⋯!?」

 

 ありえない。

 操縦経験たかが二日や三日の人間が第一移行前の状態でISを乗りこなしていたのか?

 

 セシリアの近距離でのミサイルを喰らうも、一夏の白式は一次移行(ファーストシフト)を行い、ステータスを更新。ダメージを無効化し、今の一夏に適したISへと姿を変えた。

 

「つくづく、最高の姉を持ったよ。俺は」

 

 一夏はかつて自分の姉が現役時代、IS大会で猛威を振るっていた頃に愛用されていたブレードを見つめ胸に込み上げる熱意を滾らせる。

 セシリアは目の前で起こる予想外の展開の何もかもに憤り、自棄が回って乱雑にライフルを構える。

 

「あぁぁもう! とっとと墜ちなさい!」

 

 連続して撃たれる光線を、一回り大きくなった背部スラスターを展開させ、高速移動で全てを避ける。

 さっきまでに比べ、一撃だって当たらなくなってしまったことにセシリアは余計に熱くなり、だんだんと攻撃も乱れて行った。

 

 一夏は一度距離を離し、セシリアを見据えて刀を構える。

 

 

 

「あぁ、駄目だな」

 

 観戦室で不敵な笑みを浮かべていた千冬が、少し呆れたように口を開いた。

 その言葉に疑問符を浮かべた真耶は何故と尋ねる。

 

「織斑先生、どうしてですか?」

 

 千冬は画面に映る一夏の姿を指差し、アイツの右手を見てみろ。と指摘した。

 

「ああやって握ったり開いたりしているだろ。ああしている時のアイツは決まって何かミスをする」

「へぇー。やっぱり姉弟だとそういう仕草にも気が付くんですね~」

「山田先生。この後二人でじっくり話しませんか?」

「あれ、なんで!?」

 

 照れ隠しから全く笑っていない笑顔で真耶を恐喝している千冬を極力見ない様にしていた箒は、もうすぐ試合が終わると確信する。

 

「どっちが勝つかな」

「む、上代。無論一夏だろう。オルコットは最早平常心を忘れて熱くなってしまっている。ああなっては当たる攻撃も当たらない。逆に一夏は一次移行が完了して機体の勝手も分かってきている。そして冷静な姿勢が崩れていない。このままいけば勝つかもしれんぞ」

「⋯⋯うん」

 

 どこか嬉しそうに話す箒を横目に、結は画面に映る真っ白なISを見つめる。

 もっと言えば、自信に満ちた一夏の横顔を穴が開くほど見つめる。

 

「おりむら⋯⋯」

 

 

 

 

 アリーナ。

 

 誘導も予測もなくなった、飛び回る一夏の軌道を追いかけるだけのような弾道を描くセシリアの射撃を難なく回避する一夏は、飛び回った末『雪片弐型』を両手で握り、単一使用能力(ワンオフアビリティ)を発動させる。雪片の刀身部分が割れて展開し、そこから粒子の刃が通常時の二回りも長い刃を生成する。

 

 一夏は刀身を横に構え、スラスターを全開まで吹かし、セシリアに向かって一直線に飛び込む。

 

「俺は、俺を支えてくれた人たちのためにアンタを倒す!」

「ッ!」

 

 急接近した一夏。

 振り抜かれた刀身は、セシリアに触れるよりも速くに消滅していた。

 

 そして、それと同時に試合終了のブザーがアリーナ内に響き渡る。

 

 

『試合終了。勝者セシリア・オルコット』

 

 

 アリーナ中央のモニターに映し出されたのは、まさかの内容だった。

 

「は?」

「え?」

 

 その結果に当事者たちは間の抜けた声を漏らし、観戦室にいた面子も何が起こったのか分からないでいる状態だった。

 ただ、千冬は結果を分かっていたのか、ため息を漏らしていた。

 

「あのバカは⋯⋯」 

 

 理解の及ばないまま、試合は終了し双方大人しく戻っていった。

 

 

 

 

 




 原作と殆ど差異は無いので書いててあんまり面白くは無かった⋯⋯。
 次回は一夏と結の戦闘です。
 剣と盾、どっちが勝つのか。まぁ一夏くんの能力じゃあジリ貧でしょうが。

 ではここらへんで。

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 それではまた。
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