結の盾はガンダムのストライクシールドに十字刻んでるようなイメージで。
多分それでいいと思う(適当)
控室、一夏は自分のISとなった白式の待機形態である右腕に巻かれたガントレットを撫でながら、姉の千冬に先ほどの減少について尋ねた。
「なぁ千冬姉。さっきの試合、なんで俺が負けたんだ?」
「学校では先生と⋯⋯まぁいい。それはな、『雪片弐型』、と言うか単一能力の『零落白夜』が欠陥品だからだ」
「欠陥?」
千冬の答えに首を傾げる。
「ISには絶対防御を発動させるシールドエネルギーがあるが、『零落白夜』は自身のシールドエネルギーを変換して単一仕様能力を発動させ、相手のシールドエネルギーを無効化し、直接ダメージを与える。つまり諸刃の剣だ」
「だから俺は負けたのか……」
千冬の説明を聞いて納得し、そんな仕様の能力で覇者になったのかと思うと改めて感心した。
「使いどころを間違えれば最悪相手は死ぬかもしれん。使うときは状況を見極めろ」
「……あぁ」
その後、白式のシールドエネルギーを充填した後、一夏と結の試合が始まった。
カタパルト。
「ISの勝手もわかってきただろう。油断はするなよ一夏」
「あぁ、行ってくる!」
姉の声を受けて気を引き締めた一夏は勢いよく飛び立つ。
反対側のピットで、結は小さな体を丸めて踞っていた。俯いて表情は見えないが、先程からずっと小声で何か呟いている。
「⋯⋯うるさい。君はでなくていい。ぼくが行くから⋯⋯」
セシリアは自身の試合が全て終了したので着替えに席を外しているが、今の結の光景を見れば恐らく訝しげに思うかも知れない。
しばらくそのような調子で呟いていたが、すぐに立ち上がり、堅牢な兵士のISを展開してカタパルトに立つ。
「『ガーディアン』、発進」
縋るような声でその名前を呼ぶ。踏み台が前方へスライドし、そのままアリーナへと飛び出す。スラスターを吹かして既に待機していた白式の前まで飛び、空中で停止する。
「なぁ結。なんで俺達も試合しないといけないんだよ。なぁ?」
一夏の素朴な質問に仮面のしたからくぐもった声で答える。
「多分、ぼくたちのデータがいるんじゃない?」
「あぁーなるほどな」
結の考えに納得した一夏はそれじゃあ、と雪片を構える。
それにならい、結も大盾を展開して前に向ける。
「今度は勝つぜ、結!」
「負けないよ、お兄ちゃん」
その言葉を発した結の顔は仮面で見えることはなかったが、嫌じゃない空気を一夏は感じた。
ブザーが鳴り、試合が始まる。
一夏の大太刀と結の大盾がぶつかり、つんざくような金属音が響き渡る。
初発で弾き、一度離れた二人。先に動いたのは一夏だった。下からの勢いをつけた斬り上げを結は斜めに添えた盾でいなす。
刀身が盾の上辺まで滑ったところで結は全身のスラスターを吹かし、真横に回転して盾の下側にある凸部分で殴るように動く。
「相変わらずすごい動きするな!」
「自分のISのせいのうを知っておくのは大事だよ」
結の初めての攻撃を雪片の柄頭で受け止め、そのまま押し込んで弾き、蹴りを入れてみるが、結は瞬時に距離を開けて避けてしまう。
「今度はこっちから行くよ」
そう言った結は背部ユニットと脚部のスラスターも加えた瞬時加速で、寝かせた大盾で大きく横に薙いだ。
一夏は対応しきれず雪片で受けるが、質量の違いからあっさりと押し負けて吹き飛ばされてしまう。
そこへ追撃とばかりに接近し、大盾を左右から上下から振り回し、範囲の広い攻撃の連打から一夏は逃れられなくなった。
結の攻撃自体は単純だ。獲物も大柄で抜け出すのも簡単だろう。だが結は離れようとする一夏に張り付いている。
「後ろに引けば前に進み、横に逸れようとすればすかさずずれて立ちはだかる。随分厄介じゃないか」
その様子を見ていた千冬は苦しい笑みを浮かべて二人の戦いを眺める。
太刀を振るう間合いを潰される。
延々と目の前で壁を相手しているような感覚がしてくるほど、結の攻撃と接近は執拗だった。
じわじわと削られてくるシールドエネルギー。盾だけだと侮っていたわけではないが、まさかここまでだとは思いもしなかった。もしかしたら見た目の幼さから無意識に弱いと思い込んでいたのかも知れない。
対戦して初めてわかった結の力量に、一夏は申し訳なさと悔しさで苦虫を噛み潰す。
けど、まだ終わってない!
雪片を握り直した一夏は目の前まで近付いた結に体当たりを決める。
「うッ!?」
「おぉぉッ!!」
いい具合の距離感。
一夏はすかさず袈裟斬りを打ち出した。
結は虚を突かれた体当たりで姿勢を崩していて、一夏の攻撃を受けようにも間に合わず、諸に斬撃を受けてしまい、アリーナの地面に転げる。
「しまった、やり過ぎたか……? おーい結ー、無事かー!?」
◇
「う、うぅ、いった……」
結はすぐに起き上がって飛び上がろうとしたら、突然項からぴり、と電流のような疼きを感じ、同時に頭に響く声に顔をしかめる。
変われ、俺もやりたい。
「うるさい、君は出てきちゃだめ……!」
知るか。勝手にやるぜ。
「ま、待って、だめだっ……あ」
突如項の機械部品が小さく唸り、点灯していた緑色のライトが赤く染まる。全身がびりりと痺れたかと思えば次の瞬間、体の感覚が途切れて自由に動かせなくなり、視界も暗転してきた。
『俺も遊んでもらうか』
仮面の下で誰かが嗤う。
◆
アリーナの地面に転がった結を見て、しまった、と冷や汗を流す一夏は一度安否を確かめた方が良いかと思い、寝転がる結に向かって降りようとしたら、少年が巨躯なISをのそりと起き上がらせた。
「よかった、結、無事か!?」
「…………」
「結?」
辺りを見回した少年は声をかけた一夏の方を向くと、手元にあった大盾をハンマー投げか何かの要領でいきなり放り投げた。
「うぉお!?」
突然の奇襲に驚いた一夏はすかさず雪片を振るい、重たい盾をなんとか弾いた。
しかし、弾いた盾の裏に拳を振り絞った結の姿が見えた束の間、一夏は結のでたらめな拳を真正面から受けて、今度は自分が吹き飛ばされる。
並みのISに比べて二回りほど太い腕から繰り出される拳は、構えがなっていなかろうがそれだけで恐ろしいものだった。
一夏は背部ユニットを展開して飛ばされた勢いを殺し、急に動きが変わった目の前の少年に質問する。
「どうしたんだ結? なんだか急に動きが変わったみたいだが」
「……」
何も答えない。
一夏の一太刀で弾かれた盾を空中で掴んだ結。またスラスターを吹かして攻撃に入るが、今度は先程に比べてまだ遅い。
一夏は迎え撃とうと袈裟斬りを出すが、一夏の斬撃とは反対側の下に潜り込み、そのまま直線的な軌道を描いて結は一夏の背部に回り込み、逆さ向きで全身を回転させながら盾で一夏を殴る。
「うぐッ!」
振り向き様に攻撃をくらい体勢を崩す、そして更に結は斜めに回りながら踵落としを一夏の頭上から振り落とした。
絶対防御が発動し、バリアーの放電と共に一夏のシールドエネルギーが、がくんと減る。
「ゆ、結!?」
結の猛攻が終わらない。
さっきまで盾であり得物でもある大盾を使った攻撃が主だった少年が、今は盾も捨てて徒手空拳ともステゴロともとれるような攻撃の連打を打ち出している。
連打の隙を突いても姿勢制御用のスラスターを駆使して急角度に逸れて避けられる。
被弾覚悟で飛び込んでも為す統べなく拳や蹴りを叩き込まれる。
やがてガードに徹していた一夏の腕がはね除けられ、胴ががら空きになる。ガーディアンの、通常のそれよりも何倍も太い脚部の蹴り、まともに当たれば一溜りもないその一撃が一夏に直撃するかと誰もが思ったが、その挙動がずれて空を蹴る。
「え?」
蹴りを振り抜いた姿勢のまま、結は硬直していたが、少しして糸が切れた人形の用に、空中から落下した。
「え、おい、結!?」
そのまままた地面に直撃するかと焦る一夏だったが、結は地上から数メートルの位置で停止して、辺りを見回して一夏を捉える。
「あ、ああ……うん。何でもないよ、お兄ちゃん」
起き上がった結はあくまでシラフだと言い張って譲らなかった。
側にあった大盾を掴み上げ、左に添えて飛び上がる。
「これからが、本番だから」
「ぉ、おう」
今一釈然としない一夏だったが、結は何事もないように振る舞うので気にしないよう努める。
一夏は結の様子を気にしていたが、当の本人は旋回しながら勢いをつけ、最初と同じように盾で殴る。
さっきのラッシュを捌ききれなかったとはいえその速度に食らい付いていた一夏にとって、今の結の攻撃はまだ目で追えるようにはなっていた。
しかしたださえ巨大な盾を然も平然と振り回しているが、一撃当たるだけでも響く重さが厄介だった。
一夏は雪片で弾いたり、既の所で避けたりするので手一杯だった。
「ぼくが勝つ!」
「負けねぇ!」
互角の打ち合い。お互い近距離特化だというのもあって交戦は激しい。
「えやぁっ!」
「ッ!」
結の下からのかち上げが一夏の胴に刺さる
ことはなく、一夏は逆に結の振り上げを踏みつけて蹴落とし、結の頭上に飛び上がり、スラスターを上に向け、出せる限りの出力で噴射し、零落白夜を発動して真っ向に雪片を振るう。
助走を付け、直上からの攻撃。
当たれば一瞬で負ける。
しかし避ける暇も余裕も盾もない。
どうする。
結は瞬間、それでも受け止めると一夏に迫り、零落白夜発動中の雪片の刀身をISのマニピュレータで受け止め、真剣白羽取りを成功させた。
これには観戦室の面子も含め、アリーナの観戦席にいた一組の皆も歓声を上げていた。
「お前、やっぱりすげぇよ、結」
「一夏お兄ちゃんこそ、よくここまで動けるね」
緊迫した状況の中、二人は互いを讃え、称賛していた。
お互いにシールドエネルギーが瞬く間に減少していく。一夏は単一仕様能力で、結は白羽取りで掴んだ刃から、ぐんぐん削られていく。
このまま硬直状態が続けばどちらかが負ける。
だが、一夏は抜け出そうにも結は受け止めた雪片を離そうとしない。
結か、一夏か。
どっちが先にジリ貧になるのか。
あと数秒で決着がつく。
固唾を呑む。
手が汗ばんでくる。
瞬きも忘れ、皆が見入るアリーナの中央。
やがて、長い瞬間を終えて試合終了のブザーが皆の耳を貫いた。
観戦していた者のみならず、結と一夏もアリーナ中央のモニターに目を向ける。
モニターの、対戦氏名の間に表示される『draw』の文字。
「引き、分け……?」
誰かが呟いたその言葉に、皆が何と言えば良いのか、鳩が豆鉄砲を食らったような顔がずらりと並んでいた。
結と一夏も目の前に表示された窓に目を通すと、お互いシールドエネルギーを全損していて、まさか同時に無くなるとは、と妙な感心を抱きつつ、脱力する。
「なんだよぉ~……結局俺の負け越しかよ……」
「ぼくも一回も勝ってないから、あの金髪のお姉ちゃんの勝ち、かな」
「げぇ……マジか……」
あからさまに嫌そうな顔をする一夏をみてクスクスと小さく笑う結。
これにて決闘は終了して解散、それぞれ寮に戻ったり何かの準備に取りかかったりと、忙しなく動き回っている中で、結はシャワーと着替えを済ませたあと、更衣室の片隅で小声で話をしていた。
「出てこないでって言ったよね?」
『あの臭いがするやつはみんな俺が相手してたじゃねぇか』
「だからって出てこないでよ」
『ちょっと遊んだだけじゃねぇかよ』
「ダメなのはダメ」
何処を見ているのかわからない瞳は一言二言会話を続けた後、会話は途切れ結の意識が戻ってくる。
一夏に先に戻ってていいと伝えていたため、一人で使うには余りある更衣室の一角で少年がもぞもぞと着替えを済ませて部屋を出ると、息を荒くしている一夏が結の前まで走ってきた。
「あ、結。見つけた!」
「どうしたのお兄ちゃん?」
何処からかは分からないが人工島の全ての土地を使用しているこのIS学園に於いて、移動というのが些かつらい。それを分かっているため、結はまだ呼吸が乱れている一夏の背中を擦ってやりつつ何の用か聞き出す。
「クラスの女子達が打ち上げやるって言っててさ。良かったら結も来ないか?」
その言葉に、結は瞬間フリーズして動かなくなった。
次回、おねショタ。
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