IS【小さな少年は盾を構える】   作:屍モドキ

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 うろ覚えなので箇所は詰め気味。
 原作が手元に無いので修正しようがない。


九話 少年と打ち上げ

 女子用シャワールーム。

 

 そこでたった一人、セシリアが瑞々しい柔肌を晒し、降り注ぐ適温の雨に身を濡らし、先の試合のことを振り返っていた。

 

 織斑 一夏。初めて目にしたときはそこら辺の男共と変わらないのだと思っていた。しかしいざ面と向かって言葉を交わし、決闘をしてみれば、他の奴等とは何も似ていない、芯のある人物だった。

 

 彼との試合は自分の勝ちではあったが、もしあの時、あの攻撃が当たっていれば負けていたのは自分だっただろう。

 

 

 そうしてもう一人、上代 結。

 

 終始何がしたいのかわからない。

 

 最初は自分の父親とその印象を重ねたが、そうでもないようだった。

 

 掴み所が無いと言えばいいのか、自分がしたいことを示すことがなかった。あれだけの技量を持ち合わせておきながら、何もしようとしない。

 

 自分との試合では最後以外何もせず、ただひたすら逃げるだけだった。かと思えば一夏との試合ではずっと打ち合いをしていたりと、その戦闘スタイルにブレがあり、何故そんなにも回りくどいことをしているのかが謎だった。

 

「遊んでいた……?」

 

 少年との試合の最後、此方に向かって飛び込んで頭を掴もうとしていた。

 

 結局、触れる前に試合は終わったが、あの時の眼前に広がったマニピュレータには無邪気な子供心ではなく、何かを奪おうとする意思をセシリアは見た。

 

「なんにせよ、わたくしの完敗ですわ……」

 

 敗北を認めた少女は、何故か晴れた気持ちが胸の内に広がっていた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「それでは、これより『試合の打ち上げと織斑君一組のクラス代表就任おめでとうパーティー』を始めたいと思いま~~~~す!!」

「「「イェーイ!」」」

 

 食堂で一年一組の面子が集い、何かやたらと長い名目のパーティーが始まった。

 皆ジュースを注いだカップを片手に浮かれた空気を漂わせて楽しそうにしている。

 

 そのなか、一夏だけは何が起こっていてみんな何を楽しそうにしているのか分からなかった。

 

 見回してみると隅っこの席で結が両手でカップを握りしめ、炭酸飲料を口に含んでは体を震わせて、を繰り返していた。

 

「なぁ、俺負けたんだよな? なんで俺がクラス代表になってんだ?」

「それは」

「それは私が辞退したからですわ!」

 

 突然セシリアが立ち上がり、腰に手をあてがい高らかにそう言った。それでも一夏は腑に落ちず、何故、と理解が及んでいなかった。

 

「そもそもわたくしも大人気なかったところもありますし、ここは辞退してクラス代表には一夏さんに担ってもらいますわ!」

「いや、そもそも俺もあんまり強くないし、順位的に結になるんじゃ……」

「ぼくもじたいしました」

 

 隅っこでぷるぷるしていた結がいつの間にか一夏の横に立っていた。

 

「でも、俺全然強くないし」

「ならば私が鍛えてあげますわ」

「ぼくもがんばる」

 

「ほら、こういう仕事て馴染みなくて」

「人間誰しも初めての事は慣れないことがありますわ。私もできる限り協力します」

「あ、あはは……」

 

 あの手この手で拒む一夏だったが、対してセシリアは全てをブロックして何がなんでも一夏を推奨してきたので、一夏は折れる他なかった。

 

 なんとか一夏がクラス代表になることを認めたところで、セシリアは全員を見回して姿勢を正す。

 

「そして一夏さん、上代さん、クラスの皆様。先日は無礼なもの言い、大変申し訳ありませんでした」

 

 深くお辞儀をし、自身を非を詫びるセシリアに、一同は暖かい笑みを浮かべた。

 

「気にしなくていいよオルコットさん。謝ってくれたのが一番嬉しい」

「これからもよろしくねオルコットさん!」

「気にしないでセッシー~」

「みなさん……」

 

 無用な歪み合いが解消され、皆が笑いあっているこの空間に居心地のよさを感じる。

 

「さて、大事な話も済んだしここからは楽しくいこう、かんぱーい!」

 

 その合図と共に全員がカップを掲げ、談笑し、広げたお菓子に手を伸ばし、飲み物を煽っていた。結はまた炭酸飲料と格闘し、一夏と箒が宥めつつ自分達も菓子を口に運んでいた。

 そこにセシリアがやって来た。

 

「あ、オルコット、さん」

「セシリアで構いませんわ。是非そう呼んでくだしいませ」

「じゃあ、セシリア。どうかしたか?」

 

 セシリアは自分が女尊男卑思想に陥った経緯と、その経緯について語った。

 

「私の父は気弱な人でして、いつも人の機嫌を気にしているような人でした。それで一夏さんや上代さんもそのような方だと勝手に思い込み、あのような態度を取ってしまいました……」

 

 再度頭を下げるセシリアに一夏は戸惑い頭を上げてくれと頼み、結はセシリアの頭を何も言わず撫でていた。

 

「気にしなくていいさセシリア。お前が認めてくれたならそれでいいよ」

「ぼくも気にしてないよ、セシリアお姉ちゃん」

「一夏さん、上代さん……」

 

 改めて許しを貰い、セシリアは目頭を熱くさせた。

 

 

「どーもー、新聞部でーす。噂の男性操縦者ってどの子かな。君たちかな?」

 

 突然現れた謎の人物に目を向ける。

 カメラを首から下げてメモとペンを両手に握り、メガネを光らせ結と一夏を見つけるや否やすぐさま近づいてきたので、結は一夏の陰に隠れる。

 

「君が織斑君で、そっちの子が上代君だね?」

「はい、そうですけど。貴女は?」

「私は新聞部部長の(まゆずみ) 薫子(かおるこ)。世界に二人の男性操縦者である織斑くんと上代くんにインタビューしにきたよー」

 

 そういって彼女は名刺を手渡してくる。

 結と一夏はそれぞれ受け取ってまじまじと名刺と彼女の顔を交互に見つめる。

 

「それじゃ、まず織斑君。クラス代表になった感想をどうぞ!」

 

 ボイスレコーダーをずいと一夏に向けて早速インタビューを始める先輩。

 

「え、えっと。頑張ります」

「うーん、イマイチインパクトに欠けるなー。もう一声お願い!」

「え、えぇ? じゃあ、俺に触れると火傷するぜ?」

 

 

 まさかのダメ出しにしばし考えた後に、一夏は適当な決め台詞を吐いた。

 しかもかなりのキメ顔で。

 

「わぁー! 前時代的~! まぁこれはあとで捏造しておくことにして。次は上代君! どうぞ!」

 

 落ち込む一夏の後ろで一夏の背中を擦っていた結は、ふむと口を手で隠して考え込み、ふと顔をあげて薫子の目を見ながら澄んだ声で答える。

 

「何言えばいいのかわかんない」

「な、なんでもいいよー!」

 

 うんうん唸る結を眺めて可愛いと思う反面、進まないと感じた薫子は直ぐ様メモ帳に文章を書き、それを読むように結に言った。

 

「よしじゃあ、これ読んでみて!」

「うん? 『一夏お兄ちゃんに負けないようがんばります』、でいいの?」

「あ、下の方も」

「薫子お姉ちゃん大好き」

「「「おい!!」」」

「てへぺろッ!」

 

 結に読ませたその台詞をしっかりと録音していった薫子は一目散に逃げていき、一夏、箒、セシリアの三人にを中心に数名のクラスメイトが結を囲むように庇った。

 

「むぐー、くるしぃー」

 

 その後、結はセシリアも混ぜた三人の抑止を振り切ってまた炭酸に挑むものの、慣れない感覚に酔ってしまって早めの退場を果たす。

 

 

 

 ◇

 

 

 学園の入り口で、一人の少女が疲弊しきった顔を提げて歩いてきた。

 明るい茶髪を伸ばして黄色のリボンでツインテールにし、格好はIS学園の制服を着ているがかなり改造が施してあり、肩が出ており袖は末広がり、かなり短めのミニスカートからは健康的なおみ足が覗いていて、履き慣れたスニーカーを着用。

 

 肩からボストンバッグを提げ、片手に握られているくしゃくしゃになったメモは、彼女の性格が現れている。

 

「ったく、もう少しマトモな情報寄越しなさいよ……」

 

 少女は愚痴りながらもメモに記された微々たる情報を頼りに学園にたどり着き、中を右往左往していた。

 

 すると目の前に一人の男の子を見つける。

 

「うぷ、しゅわしゅわ気持ち悪い……」

 

 その少年は廊下の枦に踞って口許を押さえていた。

 見るからに絶不調の少年に少女は致し方無く歩みより、屈んで目線を出来るだけ合わして話しかけた。

 

「君、大丈夫? なんか見るからに気分悪そうだけど」

「うぶ、お姉ちゃん、だれ……?」

 

 はて、どうしてこんなところに男の子が居るのかと考えながら少女は少年の具合を看ていたら、思い出したのはつい先日のニュースだった。

 

 そう言えば、IS学園の入学式の当日に二人目の男性操縦者が出たって騒いでいたような。

 

 情報規制がされていたのか、それとも当日に見つかったのか、理由は定かでは無いが何の前触れもなく現れ、しかも出生も名前も年齢も何もかも不明の男性操縦者と言うことで世間はまたも大騒ぎになった。

 

 いろんな所のテレビ局やら出版社やらが情報をかき集めていたそうだが、何一つとしてその男性操縦者の情報が出てこなかったらしい。

 

「あなた、お名前は?」

「上代、結。お姉ちゃんはだぁれ?」

「アタシは(ファン) 鈴音(リンイン)。よろしくね!」

「りんりん?」

「リンイン、ややこしいなら鈴でもいいわよ」

「ん、うん。鈴お姉ちゃん」

 

 鈴は立ち上がり、結に手を差し伸ばす。

 結は出された少女の手をじ、と見たあと、恐る恐る手をとり立ち上がる。

 

「ところで、職員室ってどっちに行けばいいの?」

「あっちだよ。連れていった方がいい?」

「お願いするわ!」

 

 かれこれ公共交通機関を乗り継いできた末の目的地で彷徨っていた鈴にとって、今は年端もいかないような少年の提案にもすがる思いだった。

 

 ほの暗い廊下を、結と鈴は手を繋いだまま歩いていく。

 それにいち早く気がついたのは鈴だったが、子供特有の柔らかい握力で握られた手を離すのもなんだか忍びないと思った彼女はしばらく繋いだままでいた。

 

「ここだよ」

「ん、ありがと、えーと、上代くん?」

「結でいい」

「じゃあそう呼ばせてもらうわね。結」

「うん、おやすみ。鈴お姉ちゃん」

「おやすみなさい、結!」

 

 目的地に着いてやっと手を離す。

 別段特別な感情も無く、変に気を使うわけでも無かったが、無意識に結の頭に手が伸びてくしゃ、と髪を撫でていた。

 

 それじゃあ、と別れを告げて結は右の通路に消えていった。

 

 

 程なくして鈴は職員室にて手続きを済ませ、職員によって生徒寮に案内される。

 

「あれ、右じゃないんですか?」

「生徒寮はここからは左側よ」

「でもさっき男の子が右に行きましたけど」

「あぁ、あの子はいいの」

「?」

 

 あの子はいい?

 結は生徒寮には住んでいないのだろうか。

 まだ幼いからだろうか。

 

 まぁいいか。

 もう眠いし。

 

  




 鈴ちゃん登場。
 次はワンサマーと再開&仲違い。

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