場所は変わり魔法の森、魔理沙の家。
キノコが所々に生えている神秘的な森の中にちょこんと建っているそれほど大きくない一軒家。
中は、魔理沙の魔法の実験道具や本が散乱し、混沌とした雰囲気を放っている。
つまり、お世辞にも綺麗とは言えない。
「で、真言・・・・」
「真言?言音さんじゃないんですか?」
魔理沙が話を始めようとした時、元の大きさに戻った大妖精が横槍を入れた。
真言は大妖精に聞こえないように魔理沙に耳打ちした。
自分は今、仙人の弟子で女装していること、言音と名乗ってるということ。
すると、魔理沙は吹き出して、一通り笑うと
「あはははは、言音ね、言音。
間違えちまったぜ。」
「アハハ、マリサハオッチョコチョイダナー」
笑いながらも真言を言音と認める魔理沙に片言の真言。
2人共演技が苦手なのである。
「で、魔理沙。
どうして人里はあんな場所に変わってしまったの?」
「ぷふっ、えっとな」
魔理沙は真言の女言葉に少し笑う。
真言は恨めしそうな目で彼女を睨む。
魔理沙はそれをスルーしつつ、説明を始める。
「えっとな、私も人里に常に住んでるわけじゃないから、人里の全てを知っているわけじゃない。
が、不審に思う事はあるぜ。」
「不審?」
「ああ 、精霊異変が終わった後、一ヶ月くらいだったかな、私は異変が終わってから魔法の研究で外に出てなかったんだが、食糧が尽きてな、久しぶりに人里に行ったんだよ。
そしたらびっくり!
人間が増えていたんだよ。」
「人間が・・・・?」
「ああ、私の感覚だから具体的にどのくらい増えたのかはわからないが、とりあえず、一目でわかる程度には増えていたな。」
「確かに、建物が増えていたわね。」
「ああ、あれも異変解決後直ぐに建ったらしいぜ。
まるで地面から建物が生えてきたみたいにな。」
「地面から建物が生える・・・・それは例え?それとも事実?」
「私は実際にその光景を見たわけじゃないから例えに近いんだろうけど、そうと考えなきゃおかしいくらいの速度で建物が建ったんだ。
実際、異変が終わってから一ヶ月経ったの人里と今の異変が終わってから一年半経った人里は建物に関しては全く変わってないからな。」
確かにそれは建物が生えてきたと考えるのが逆に自然だろう。
異変が起きる前の人里は江戸時代の街並みの小規模な里であったが、今の人里はどうだ、明治時代を思わせる大規模な街に姿を変えていたのだ。
「・・・・魔法を使ったとか?」
「それは私も考えたんだが、それほどの使い手がいるとも考えにくいし、魔法はお前の思ってる以上に使い勝手が悪いんだよ。」
「転送とか召喚とか・・・・」
「できたとしても維持し続けるのは無理だぜ。
魔力も感じなかったし。」
「そうなの・・・・。」
「(けど、気になるわね、『増える』人間、『生える』建物・・・・)」
〈分かってるのは、魔法じゃないってことだけだがな。〉
「(他の可能性は?)」
〈さあな、わからん。〉
「(そう、貴方にはがっかりね。)」
〈相棒が女口調だとなんだか凄い冷たい・・・・〉
「(気の所為よ。)」
〈・・・・〉
「魔理沙、そろそろ私、家に帰るわ。」
現実の議論も脳内の議論も手詰まりになったので、日はまだ落ちてないが、真言は華扇の家に帰ることにする。
「おう、そうか。
何かわかったら伝えるようにするぜ。
じゃあな。」
「ほら、大ちゃん。
行くよ。」
「はい!」
大妖精は手をあげ、元気な声で返事をすると、身体を縮めて真言の肩に乗る。
真言の肩は彼女の特等席なのだ。
真言と大妖精は魔理沙の家を後にして、華扇の屋敷を目指す。
その途中、3人の人間達が2人の横を走り抜けて行った。
「おい!氷精を捕らえたって本当か!?」
「ああ、妖精を捕らえようとした時にやってきて、そこを捕らえたらしいぜ。」
「どうして、やってきたんだ?」
「同じ妖精として仲間を助けようとしたんだろ?
本当に馬鹿な妖精だよなあ!」
「ちげえねえ!」
「「「あっはっはっは」」」
彼等の会話を纏めると
妖精を捕らえようとしたところにパトロール中のチルノがやってきて妖精を助けようとしたが、逆に捕らえられてしまったということだ。
「チルノちゃん・・・・」
「不味いな・・・・首輪をつけられたら手遅れなってしまうわ。」
「言音さん・・・・」
「分かってる、追いかけるわよ。」
見つからないようにその3人の後ろを早足でついていく。
「・・・・こちら、スネーク」
「???すねえく?蛇がどうしたんですか?」
「なんでもないわ。」
どうやら、某傭兵はまだ幻想入りしていないらしい。
3人組を追跡してから数分後、開けた場所にでた。
そこには、真言が追跡した3人に元から居たと思われる2人の合計5人の人間がいた。
そして、彼等の足元に転がっている大きな氷塊、冷凍チルノ。
おそらく、元から居た2人がチルノを捕らえた奴らだと考えるのが自然だろう。
「で、兄貴。
どうやってこの氷精を捕らえたんだ?」
「奴が放った冷気をそのまま返してやっただけだよ。」
「なるほど、あいつを囲むように小さな『結界』を張ったんですね!」
「正解。」
人間達の会話を盗み聞きしていた真言は冷や汗をかいていた。
『結界』、それは陰陽術を用いて作られる閉鎖空間。
それを使いこなすということは、陰陽術の心得があるということで、かつ、結界を張ることができるのは陰陽師の中でも力量の強い者に限られる。
真言は相手が只の人間だから最悪、5対1の状況に陥っても勝ち残る自信があった。
しかし、相手の全員が結界を張れるレベルの力量を持つ陰陽師だとしたら・・・・
「(無傷でなんとかなるとは思えないわね。)」
〈下手したら死ぬぞ。〉
「(分かってるわよ。)」
時間は待ってはくれない、その数秒の躊躇いが運命を分ける。
「おーらよ!」
5人の内の誰かが大きな金槌を取り出し氷塊になっているチルノに向かって振り下ろした。
「あっ!」
短い悲鳴をあげる大妖精。
このまま、金槌が当たればチルノは絶命するだろう。
妖精は死んでも生まれ変わるが、死ぬ際に死ぬほどの痛みはちゃんと受ける。
不死でも死ねば痛いのだ。
けれど、金槌は止まらない。
真言はそれを止めようと飛び出すが、物理的に間に合わない。
必死に手を伸ばすが、届かない。
真言の目には、振り下ろされる金槌が遠くに見える。
諦めかけたその瞬間
景色が変わった。
目の前には振り下ろされる金槌とそれを持つ人間の姿。
真言は迷わず伸ばしていた手をグーに握りしめ、金槌を持っている人間の顔面目掛けてパンチをお見舞いした。
「ぐ、げへ」
顎の骨が砕ける音。
殴られた人間はそのまま吹き飛び、背後の木にぶつかって崩れ落ちた。
「だ、誰だ!?」
「何も無いところから現れたぞ!?」
「人間か!?妖怪か!?」
人間達に動揺が走る。
しかし、動揺しているのは人間だけではない。
「え、え、え?大ちゃん?どういうこと?瞬間移動?私、瞬間移動したの?」
「えっと、私がやりました。
私が言音さんをワープさせたんです。
ワープといっても、せいぜい5mくらいが限界ですけど。」
「おお、大ちゃん凄い!」
真言は大妖精の頭を撫でると、彼女は目を細め、喜ぶ。
「でも、私がワープしてっていったらワープ使ってね。」
「はい!わかりました!」
大妖精が敬礼する。
2人がワープについての話をしている隙に人間達は、武器を取り出し、戦闘準備を終わらせていた。
リーダー格の先程『兄貴』と呼ばれていた人間は、懐から札を取り出し、それ以外の3人は腰に下げていた剣を抜き構える。
「やる気満々じゃない。
かかってきなさい。」
「女だからって容赦はしねえ!」
「・・・・女だからって?」
人間の1人は真言の挑発に乗り、真言に向かって剣を袈裟に振り下ろす。
真言は、男の筋肉の緊張からどのように剣を振るのか予測できたので、避けるのは容易い事だったが、あえて躱さず、剣に拳を合わせた。
ここで、質問だ。
剣と拳がぶつかり合ったらどうなるだろうか。
当然、剣が拳を真っ二つにするはずである。
だが、今回はその限りではない。
現に、真言の拳は男の剣を見事に真っ二つにしていた。
理由は単純に彼の一年半の修行の成果だろう。
霊力は人間の生命のエネルギー。
それを鎧のように拳に乗せればそれは十分に剣を逆に真っ二つにできるほどの威力を持つ。
また、真言の拳は霊力を高密度に集中させているので、黄色に輝いていることからもその拳がいかに強力な凶器か分かるだろう。
剣を折られた男は驚き、怯え、震えで動きが止まっている。
後頭部を手刀で打ち、強制的に気絶に陥らせる。
「さあ、次はどなたかしら?」
「舐めやがって!」
「おらあっ!」
「ふふっ、女性相手に二人掛かりだなんて、恥ずかしくないのかしら?」
〈お前、男だろ・・・・〉
2人並んで襲いかかってくる男達。
2人共わかりやすいただの振り下ろすだけの剣撃。
真言は両方共左腕を盾のように構える受け止める。
そのまま、左脚を軸にして右脚の回し蹴りを相手の腹に打ち込む。
2人の人間はドミノ倒しのように倒れ、白眼を剥いて気絶した。
「さあ、貴方で最後よ。」
「ふっ、そうだな、俺で最後だ。」
真言は最後の陰陽師らしき男を睨みつける。
しかし、男はその視線をものともせず、怪しげな笑みを浮かべる。
「(何か、考えがあるのかしら?
でも、私のやる事は一つ。
接近して殴るだけ!)」
〈最低限の注意はしとけよ。
嫌な予感がする。〉
真言と男の距離は約5mほど。
真言は覚悟を決めて、ダッシュで距離を縮める。
真言の拳が届く距離にまで近寄り、拳を思い切り振り抜く。
だが、拳は男に当たる事はなく、その途中で動きが止まる。
止まったのは拳だけではない、真言の身体全体が動きを止めている。
「結界、縛」
男が指で印を結ぶ。
すると、四方に設置された四つの札から結界が生まれ、真言の四肢を拘束する。
札は陰陽師の男以外の男達が真言と戦っている間に、陰陽師の男が設置しておいたものだ。
結界の力は思いの外強く、真言の身体はまるで十字架に縫い付けられたかのような体勢のまま、動かない。
「これで、チェックメイトだな、お嬢さん?」
「っ!くそっ!」
「言音さん!大丈夫ですか!?」
余裕の表情の陰陽師。
それとは対象的な表情の真言と大妖精。
真言は大妖精に小声を指示をするが、大妖精はそれが不可能なのか困った顔をしている。
万策尽きる、とはまさにこの事であろう。
「貴女のような強い者をここで殺してしまうのは惜しい、実に惜しい。」
陰陽師は大げさなジェスチャーをしながら真言に近寄ってくる。
真言の顔を見て舌舐めずりすると
「お前は私の奴隷として一生涯を費やして貰おう。
これは氷精に使うつもりだったんだがな。」
懐から奴隷用の首輪を取り出した。
現実は冷酷だ。
真言は今、四肢を拘束されているので抵抗することが出来ない。
どんどん陰陽師の男は近寄ってくる。
ついに、陰陽師の男の顔が真言の目の前に。
そして、奴隷用の首輪が真言の首に
「そんなもん着けるわけないでしょうが!」
真言は結界を力で無理矢理破り、そのまま近寄る陰陽師に一撃を喰らわす。
彼の渾身の右フックが陰陽師の顔面を捉える。
それは見事に男のこめかみを捉え、彼は脳震盪を起こし、平衡感覚を狂わせ、ふらふらとたたらを踏み倒れこみ、気を失った。
「貴方みたいな下衆の作った結界なんかで私が捕まるわけないでしょ!」
「ひゅーひゅー、言音さんカッコ良いですー!」
真言はガッツポーズ。
右手を上げ、左脚折り曲げるスタイル。
さらに、大妖精は拍手で気分を持ち上げてくれる。
最早、ガッツポーズすら可愛く見える真言くんは完全に乙女である。
「でも、びっくりしましたよ!
捕まってるのに私に『なにもするな』っていうんですもん。」
「実際は捕まってなかったからねー、正直、何時でも逃げれたのよ。」
「私はひやひやしましたよー」
「そう?
あ、大ちゃん。
悪いんだけど、魔理沙の家に戻ってもいい?」
「どうしてですか?」
「これの仕組みを調べて貰おうと思って。」
真言は気絶した陰陽師の手から奴隷用の首輪を奪う。
前に見たものと同じく、札が一枚貼ってある。
「あと、チルノを溶かす為にも、ね。」
「あはは、はい、わかりました。」
2人は凍ってしまっているチルノを見て苦笑いを浮かべつつ、魔理沙の家に再び向かうのであった。
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そして、再び魔理沙の家。
「おーい、魔理沙あー」
「どうした、真言?
仙人の家に戻るんじゃなかったのか?」
「面白い拾い物を二つほどしたから持ってきたのよ。」
「面白いもの・・・・って、チルノじゃないか!確かに面白いけどさ!」
「あと、これな」
真言は魔理沙に首輪を手渡す。
「これは、奴隷の・・・・」
「そうよ、魔理沙にはその仕組みを調べて欲しいのだけれど。」
魔理沙は興味深そうに首輪をジロジロ見回す。
小声で「素材は・・・・」、「魔術回路が・・・・」などと言っているが、真言と大妖精には何が何だかわからない。
「おう、分かった。
こっちで調べてみるから、何か分かったら伝えるよ。」
「頼むわね。」
「私よりもお前の方が女のコ女のコしてる気がするのは気の所為か?」
「・・・・気の所為じゃない?」
〈気の所為じゃないぞ。〉
首輪を魔理沙に渡す事が出来たので、次の案件に移る。
凍ったチルノについてだ。
「大ちゃん、チルノ・・・・どう?」
「季節が季節ですからね、あはは、なかなか解けないです。」
魔理沙が家が濡れるのは嫌だと言うので、外で自然解凍中のチルノ(氷)。
それを見守る大妖精。
チルノを覆う氷は余程本気で攻撃したのだろう、全く溶ける兆しが見られない。
「・・・・殴って少し壊せば溶けるかしら」
「や、やめてください!
洒落になりませんよ!!」
「あははは、冗談!冗談よ!」
「あははははは(言音さん・・・・目が本気だった)」
少し真言と距離をとる大妖精であった。
「おいおい、チルノが溶ける溶けないは気になるかもしれないが、扉は閉めてくれよ、寒くてしょうがないぜ。」
やれやれ、といった様子で2人に近寄ってくる魔理沙。
彼女は外に少し出るとブルっと体を震わせた。
「うう、寒いぜ。
おっ!こういう時に来るとは、タイミングがいいな!」
魔理沙の視線の先に見えるのは、白髪のロングヘアーに真っ赤な瞳、白のカッターシャツに特徴的な赤いもんぺをサスペンダーでとめている不老不死の蓬莱人、藤原妹紅だ。
彼女は魔理沙の姿を見つけると、駆け寄って来る。
「おう、妹紅。
久しぶりだな、どうしーー」
魔理沙が挨拶の言葉を終える前に、妹紅は突然、深く頭を下げて
「頼む!魔理沙!
金を貸してくれ!」
「は、はぁ?」
「必ず、必ず返すから、頼むよ!」
「お、おい妹紅!
お前、ボロボロじゃないか!?」
妹紅の身体は『ボロボロ』と形容するに相応しい状態であった。
綺麗な白髪には彼女の血だろうか、赤色が混じり、カッターシャツは泥だらけ。
真っ赤なもんぺは所々破けており、顔色も寝ていないのか、顔色は真っ青だ。
彼女は肩で呼吸をしつつ、声を荒らげる。
「私の事はいいんだ!
それよりも、ハァハァ、けい、ねが・・・・」
言い切る前に体力が尽きたのか、妹紅は倒れ込んでしまった。
「おい、妹紅!妹紅!しっかりしろ!」
突然の事態に狼狽える魔理沙。
彼女は妹紅を揺さぶるが、妹紅は返事ひとつしない。
「魔理沙、彼女をベットに運ぶわよ。」
凛と響く真言の声。
女装してからというもの、何故か彼は冷静な性格になっている。
色々達観して悟りを開いたからだろうか。
「で、でも・・・・」
「安心しなさい、彼女は眠ってるだけよ。」
妹紅の口から寝息が聞こえてくる。
魔理沙は「心配させやがって」と言うと、彼女をベットに運んだ。
「それにしても気になるわね。」
「ああ、妹紅の様子、只事じゃなかった。」
「『慧音』って言おうとしてたから、恐らく人里関係の事よね。
何か起こったのかしら?」
「十中八九人里が関係しているだろう。
そして、慧音は今まで行方不明だったんだ。」
旧人里の守護者半人半獣のワーハクタク、上白沢慧音はちょうど今の人里が完成した頃から行方知らずとなっていた。
「成る程、これはますます人里に何かある可能性が高いわね。
考えるより動いた方がいいわね。
大ちゃん!人里に行くわよ!」
「はい!」
「いいや、待て待て。」
真言と大妖精は外に出ようとするが、魔理沙はそれを引き止める。
「チルノはどうする?
そして、これ。」
魔理沙は先程真言達が持ってきた首輪を取り出す。
「え?首輪がどうしたの?」
「これ、人間から奪ってきたやつだろ?
お前は何をやらかすかわからないからな。
人里行くのは駄目だ。
ここで大人しくしてろ。」
「(´・ω・`)ショボーン」
圧倒的な説得力。
真言はただ、魔理沙の意見を聞くしかなかった。
その後直ぐに魔理沙は「行ってくるぜ」と言って箒に跨り、飛び立っていった。
「大人しくしてろって言われてもねー
それを素直に聞くような私じゃないのよ。」
真言は外に魔理沙がいないことを確認すると、扉を開け人里目指して外にーーーその瞬間、彼は何かを踏みつけた。
「えっ?」
それは白銀の紐のように太い糸。
「きゃあっ!」
紐はひとりでに動き出すと、真言の両腕、両脚に枷のように巻きつき、彼の自由を奪い、彼を床に転がした。
魔理沙式拘束魔法である。
ついでといった感じで扉もひとりでに閉まり、もう手も足も出ない状況である。
「あー、大ちゃんは外でチルノを見てるし中には寝ている妹紅さん・・・・・・・・・・・・・・・・魔理沙が帰ってくるのを待つしかないのかーそーなのかー」
〈・・・・自業自得な気がするのは俺だけじゃないはず。〉
ーーーーーーーーーーーーーーー
「はっ!?慧音!!?」
藤原妹紅が目を覚ましたのは魔理沙が人里に向かってから2時間後くらいだった。
慌てて身体を起こすと、そこには
「ウィッス」
赤髪の芋虫がいらっしゃった。
「いやー、すまないっす!」
妹紅に拘束をといてもらい、2時間ぶりに身体を自由に動かせるようになった真言はヘラヘラ笑いながら彼女に礼の言葉を述べる。
妹紅は赤髪の芋虫の衝撃で一瞬忘れていたが、次第に自分が解決すべき問題を思い出して彼女の顔色はどんどん悪くなる。
浮かんでくる嫌な想像を頭を振って消し去り、妹紅は立ち上がる。
「行かなきゃ、私が助けなきゃいけないんだ。」
「何処へ行こうっていうのかしら?」
外に出ようと扉へ歩く妹紅を呼び止める真言。
「何処だっていいだろ。
お前には関係無い。」
「そんなボロボロの身体で?」
「うるさい!私には時間が無いんだよ!」
今にも暴れ出しそうな妹紅。
真言は扉の前で両腕を広げ、彼女の前に立ち塞がる。
「冷静に物事を見れない人が何処へ行ったって結果は同じよ。」
「退け」
「退かないわ」
「退け!!」
「退かないって言ってるでしょ?」
睨み合う二人。
特に妹紅の方は、人を殺すような目つきをしている。
「退かないなら、無理矢理押し通るだけだ。」
妹紅が術を発動させる、彼女の両腕に炎が灯る。
真言も霊力を両腕に集中させる、彼の両腕は黄緑色の光を放つ。
「ストーップ!!!」
「「は?」」
大妖精による静止。
「家が壊れちゃいますよ!!」
「そうね。」
「確かに。」
「だから、喧嘩なんかやめてーー」
「外でやれば問題無いわね。」
「そうだな。」
「逃げるんじゃないわよ?」
「ふっ、敵前から逃げる程落ちぶれてはいないさ。」
「・・・・敵じゃないんだけど。」
外へ出る二人。
家に被害がでないように、多少離れた木も何も無い、開けた場所で再び対峙する。
「逃げるなら今のうちだぞ?」
妹紅は炎を纏った拳を握り、真言を威嚇する。
「そんなボロボロの人から逃げ出すわけないでしょ。」
真言はファイティングポーズをとる。
数秒間見つめ合う二人。
先に動いたのは妹紅の方だった。
彼女はダッシュで直ぐに真言に近づくと身体の負傷を感じさせない程の鋭い右のストレートを真言の顔面目掛けて放つ。
真言はそれを頭をずらして躱すーーーが、躱しきれなかった。
確かに彼は妹紅の拳を躱す事はできたのだが、その拳に纏った炎が彼の頬を焼いた。
「熱っ!ちょ、ほんとに怪我人!?」
「安心しろ。
睡眠不足と空腹で今にも倒れそうだ。」
〈それでも戦えるから流石、蓬莱人といったところか。〉
「(蓬莱人って死んでも生き返るんでしょ?これ、絶対に勝てないんじゃない?)」
〈死ななきゃ、例えば気絶したりはすると思うぞ。
だから、相手が死なないように手加減すればいいだろ。〉
「(手加減したらこっちが焼け死ぬと思うんだけど?)」
〈確かにな。
じゃあ、死んで復活する間の時間に拘束すればいいんじゃないか?〉
「(成る程、じゃあ殺すつもりでいくわよ!)」
今度は真言が打って出る。
シンプルなワンツー、軌道も読みやすい基本のパンチ。
しかし、その速度はまるで弾丸、人間の動かせる腕の速度を楽に超えている。
肉眼でその拳を捉える事は不可能に近い。
けれど、妹紅には当たらない。
彼女は最小限の動作でそれを躱していく。
彼女の動体視力も人間のそれを余裕で超えている。
彼女も同じく、超人なのだ。
妹紅は少し後ろに下がって体勢を整えると、真言の拳に応えるようにパンチを繰り出した。
二人の拳撃はまるで雨のよう。
拳がぶつかり、火花が散る。
どちらも引かぬ互角の殴り合い。
しかし、段々と真言が後退していく。
理由はシンプル、妹紅の炎である。
拳がぶつかり合う度に、真言の皮膚が焼けていくのだ。
真言は大振りの回し蹴りを繰り出して妹紅を振り払い、距離をとる。
妹紅は回し蹴りをバックステップで躱して、息を整える。
彼女は負傷しているので長時間殴り合いを続けるのは辛いようだ。
「(くそー、強すぎるでしょ)」
〈単に相性の問題だと思うけどな。
こっちが攻撃をしかけても余裕で避けられるし、殴り合いをすると炎で焼かれる。〉
「(くぅ、諦めー)」
〈スペカ使うか?〉
「(相手が使うまで使わない。)」
〈そうか、なら頑張れよ。〉
真言はファイティングポーズをやめ、右手を人差し指と親指を立てて他の指を閉じる、銃を模した形にする。
「弾幕ごっこらしく、弾幕をしましょう」
真言の指先から次々放たれる霊力の弾幕、それは黄緑色の小さな光球。
それらは確かに彼のパンチやキックには威力で見劣りするけれど、超高速で放たれる彼の弾幕は命中した者の皮膚を銃の弾丸のように貫き、その場に縫い付けるだろう。
長髪にブレザーを着て右手の銃から弾幕を打ち出すその姿はまるで某月の兎のようでーーー髪の色とうさ耳と弾幕の形は違うけど。
さすがの妹紅でも超高速の弾幕を完全に見切ることは出来無い。
しかし、それは擦り傷を彼女につけるだけで、まともには当たっていない。
「くそっ!うっとおしい!」
弾幕を避けるというのは過度に身体を動かさなければならない、負傷している今の妹紅にとってそれは苦痛でしかないのだ。
この状態が長引けば自分が不利になると判断した妹紅は、スペルカードを懐から取り出す。
「弾幕ごと燃えろ!『不死【火の鳥ー鳳翼天翔ー】』!!!」
妹紅が放ったのは、巨大な火の鳥を模した炎の弾幕。
それは幾ら真言の霊力弾幕に当たっても消える事なく、段々と真言に向かって彼を焼き殺さんと近づいてくる。
「やっと、きたわね。」
けれど、彼が浮かべる表情は笑顔。
『仙符【霊力解放】』
次の瞬間、火の鳥は爆ぜて消え去った。
そして残ったのは倒れた妹紅だった。
To Be Continued
感想から始まる恋ってあるよね。