GRIDMAN//CODE:Cypher   作:オンドゥル大使

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♯4‐3

 

「あーあ。取り込まれちまいましたっすねぇ。これじゃ、外からはどうしようもねぇっす」

 

 肩を竦めたツルギに、アノシラスは尋ねる。

 

「助けないんだ?」

 

「助けてどうするっすか。一端にグリッドマン気取るって言うんなら、俺の助けなんて」

 

「でも、じゃあ前は何で助けたの?」

 

 痛いところを突かれ、ツルギは憮然と応じる。

 

「……あそこでやらなきゃ、戦闘不能になっていたっす。そうなるとこっちもこっちで困るんすよ。一人でもナイトウィザードを減らしてもらわない事には」

 

「でも、ばれちゃったね」

 

 笑いかけるアノシラスに、ツルギは望遠鏡越しに黄昏の球体を睨んでいた。

 

 先ほどの光輪による攻撃波は恐らく牽制のつもりだろう。ナイトウィザードだけではない、他の勢力への見せしめ。あるいは、武力の誇示。いずれにせよ、自分達が容易く届く場所ではない。

 

 このままでは黄昏の球体は空高くへと飛び立ってしまう。

 

「……宇宙人ってのはこっちの都合は通用しないっすからねぇ。迴紫も後回しにしてたんでしょう。そのツケが、今回なわけっすが。……ナイトウィザードの怪獣が動かない限りは、俺が動くのは下策っす」

 

「でも、このまま待っているとグリッドマンは連れ去られちゃうよ」

 

 それも頭を悩ませる一因だ。グリッドマンに味方するわけではないが、ナイトウィザードを倒してもらう以上、的確にその場その場で判断を下さなければ自分が読み負ける。

 

「幸いにして、俺のところに襲撃者が来ないって事は、この間の《ゴロマキング》はあのまま死んだか、あるいは口を割っていないかのどっちかっすよね。そうじゃなければ、そろそろ強襲があってもいいはず……」

 

「何もないのは、いい事でしょ」

 

「……あのっすねぇ。こちとら仕掛けてるんす。何もないってのは相手にされていないか、あるいは仕掛けが正常に働いていないって事なんすよ。ったく、やってられるかって……」

 

 呑気なアノシラスはそれでもふぅんと興味もなさげだった。

 

「あの球体は全部持ってっちゃうのかな。この世界の何もかもを」

 

「そういう腹積もりの可能性もあるっすねぇ。超高空から攻撃をちょっと仕掛けるだけで、地上勢力は総崩れ。これなら、この場所にこだわる必要もないっすから」

 

 ナイトウィザードも嘗められているのだろう。実際、迴紫が出てこない時点で、相手の勢力も一枚岩ではないのは窺えた。

 

《ゴロマキング》を血祭りに上げたのがここに来て軋轢を生んでいるのかもしれない。迴紫は身勝手だ。それは前からよく分かっている。問題なのは、どこで亀裂が入り、どこで空中分解するか。そこを見極めなければ、最善の時を狙えない。

 

「でも、宇宙人なんていたんだね」

 

「今さらじゃないっすか。怪獣がいる。グリッドマンがいる。なら、宇宙人くらいいてもおかしくはないっすよ」

 

「でも、あんな姿なんて思いもしなかった。案外、宇宙人って忙しいのかな。こっちとコンタクトを取ったりしないんだ」

 

「いんや、コンタクトは取っていたはずっすよ。迴紫に、ですが、迴紫は面倒くさがりなので、それを追々にした結果なのは明らかっす。宇宙人は最初から、迴紫と共に覇権を握る気だったのは見え見えっすよ」

 

「お兄さん、ナイトウィザードと迴紫に詳しいんだね」

 

「そりゃ、暗殺対象っすからね。敵を知らばって奴で」

 

 望遠鏡を下ろして口にしたその言葉にアノシラスは、ふとこぼしていた。

 

「でも、あの時に迴紫を殺さなかったのは、何で?」

 

 そう、《サイファーグリッドマン》と《ウィザードグリッドマン》とのぶつかり合いが、好機であったはず。迴紫も油断していた。だと言うのに、狙撃銃の引き金を引けなかったのは自分だ。

 

「……殺す機会じゃなかったんで」

 

「嘘。お兄さんは相変わらず、嘘が下手だね。私、分かっちゃう」

 

 誤魔化すのも限界か、と嘆息をついて口火を切る。

 

「……目の前にすればすぐに殺せると思っていたんすよ。それが、甘かったって事なのかもしれないっすね」

 

「迴紫をお兄さんは殺せないの?」

 

「……いんや、何だかんだで迴紫だけじゃない。人間態のナイトウィザードをもっと、本気で殺そうとすれば出来たはずなんす。それをやらなかったのは、覚悟が足りなかった。俺もあの坊ちゃんを馬鹿には出来ないっすね。鬼になったつもりが、まだ成り切れていなかったっていう、単純な話っすよ」

 

「じゃあ、もう復讐は諦める?」

 

「まさか。……今度こそは殺すっすよ。絶対に、何があっても。己の信に背を向けてでも」

 

「……そっか。安心した」

 

「安心? こんなところで殺す殺すって言っている野郎なんてヤバいだけでしょ。何で安心するっすか」

 

 純粋な疑問にアノシラスは目線で応じていた。

 

「だって、お兄さんはお兄さんだからね。私の思った通りの人だなって、再認識した」

 

「何すか、それ。俺は何だと思われてるんすか」

 

 呆れ返りながらもツルギは二丁拳銃に弾を込めていた。次なる手を打つ準備は出来ている。武器はいつでも構えられる。問題なのは、今度こそ引き金を引けるか否かだ。

 

 自分は、誰よりも冷酷にならなければならない。そうでなくとも、グリッドマンをこのままでは失ってしまう。

 

 ナイトウィザードも黙ってはいまい。その時を狙うべくして、ツルギは携えた武器を確かめる。

 

「でも、あれ変な色だよね。何であんなのなんだろ」

 

 超高空へと飛翔した球体にアノシラスは心底不思議なようであった。ツルギは思索を述べる。

 

「案外、あの中の色なのかもしれないっすよね」

 

「中……中はどうなってるんだろ」

 

「知る由もないっす。ですが、こっちよりも幸福ってのはないでしょ。あれは侵略宇宙人の持つ、力そのものなんすから」

 

 奪還の術はない。グリッドマンは完全に宇宙人に奪われた形だ。

 

 しかし、この程度で、という思いもある。

 

「……これで終わりなら、グリッドマンを名乗る権利は、ないっすよ、坊ちゃん」

 

 

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