これは妖怪や幽霊などの存在を信じている人々が少なくなりつつあるこの世の中で、妖怪が起こす事件専門で探偵業務を行う男の話である。
ある日の朝、高校二年生の秋暮 連夜(あきくれ れんや)は同級生の男と二人で話しながら登校していた。
「そういえば、お前あの噂知ってるか?」
ふと、唐突にそんな話を彼に投げかけてくるのは同じクラスの宝条 朋也(ほうじょう ともなり)である。朋也は高校二年のクラス換えで一緒になった友人である。朋也とは出会ってからまだ二〜三ヶ月しか経っていないが人懐っこい性格で噂好き、しかもその話が面白いのでよく一緒にいた。ちなみに部活は水泳部。
「噂?どんな噂だ?」
連夜はまた面白い話が聞けそうだと内心わくわくしながら聞き返した。
「ここ一ヶ月くらい前から橋の補修工事で学校に行く道が変わっただろ?それでさ、最近は使われなくなってた昔の川沿いの道をこうして通ってるわけだよな?」
朋也の言うとおり、高校に行く途中には川が流れていて昔は学校に行くには川を迂回して学校に行っていたらしい。だが時間がかかり不便であるとして二十年程前に橋が出来た。橋が出来てからはその道をわざわざ通る人はいなくなった。朋也は続ける。
「でさ、この道の途中には一本のでかい松の木があるの分かるか?その松の木についての噂なんだけどさ。昼間はただのでかい松の木なんだけど、夜になると木から音が聞こえてくるんだとさ。」
「音?どんな音だよ。」
「確か、カラカラカラ、いやガラガラガラだったかな?」
「もしかして、噂って木から音が鳴るっていうだけか?」
連夜が少しガッカリしたような呆れたような顔で聞くと
「いや、実は違う噂もあってな。これは最近、俺の部活の先輩が見たらしいんだけど」
そう言うと朋也は話始めた。
「その日先輩は珍しく図書館で勉強してたらしくて、帰りが遅くなったんだってさ。んで、あの川沿いの道を帰ってたら松の木の方から音が聞こえてきたんだと。何だ、今の音って思って松の木の方を見たら木の根元のあたりに何かあるのに気づいたらしいんだ。少し近づいてみたらそれは桶みたいな何かでその中に光るものが入ってたんだってさ。ただな、そこで先輩はそれを不気味に感じてそのまま帰ったらしくて、その中に何があったのかははっきりと分からないらしいんだ。」
「なるほど。音だけの時と、桶みたいなものが置かれてる時があるのか。でも結局その光る何かっていうのは分からないままなんだな。」そう連夜が言うと、朋也はニヤッといたずらっぽく笑い、
「あぁ、光るものが何なのかは分からない。だから俺は今夜、いやその桶みたいなものが出るまで何回でもあの木に行ってみようと思う。そして、俺はその光る何かの正体を突き止めてみせる。」
連夜はまた始まったと頭を抱える。実は朋也は噂に曖昧な部分があるとその部分が分かるまで調査するという一種の癖のようなものがあった。事実何度もその調査に付き合わされている。
「もしかして、俺も一緒に行かなきゃならんのか?」
連夜が尋ねる。すると
「いや、今回は俺は一人で調査をする。その方が不思議な現象が起きやすくなるだろうからな。」
連夜はホッと胸を撫で下ろす。そして
「もし何か分かった時は俺にも教えてくれよ。期待して待ってるぜ。」
「おうよ。何か分かったらお前に朝一番に教えるぜ。」
そんな話をしながら学校に着く。そして授業を終え、帰る支度をした連夜は朋也に頑張れよと一言言ってから帰路につく。
そして、それが生きている朋也を見た最後だった。
次の日、松の木の下で多量の血液と左足首だけを残して朋也は消えた。警察も事件にしては何故左足首だけを残したのかが分からなかった。そして、もう一つの謎は足首の傷口がまるで食いちぎられたようになっている事である。もしこれが事件ではないとすると、朋也は松の木の下で人を食べるような「ナニカ」に左足首だけを残して喰われたという説明が当てはまる。結果的に警察はこの件を事故と判断した。だが、連夜はただの事故にしては奇妙であり、事故ならどんな事故なのか、一体何が起きたのかが知りたかった。しかし、どう調べればいいのかと思案しながらインターネットを調べているとある単語が目に入ってきた。
「妖怪専門探偵…?」
連夜はこんなに科学技術が進んだ現代日本で妖怪を信じる人がまだいるのかと思いながら、妖怪専門とはいえ探偵であるなら何かの参考になるのではないかとも思い、迷った末連絡する事にした。
そして、これが妖怪専門探偵 岳川 滋人との出会いだった。
読んでくださりありがとうございました。少し妖怪に詳しい方ならこの話だけで何の妖怪か分かるかもしれませんね。昔から妖怪の類が好きだったので文章を書いていて楽しかったです。夜に投稿したので、文章がめちゃくちゃかもしれませんがご了承下さい。更新は気分次第なので早かったり、遅かったりすると思いますが気長に待っていただければ幸いです。